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一葉落ちて貴方の秋を知る  3
几鍔を出してから反響があり、あおが驚いています。 兄さん人気者なんですよね。
ほう・・・・。 


では、どうぞ。























「そうですか・・・・。 僕も噂だけは聞いています。 几鍔さんがとんでもなく大変な目に遭っていると。 それで・・・・大丈夫なんですか?」
「大変・・・どころじゃねぇ。 酷い目に遭っている最中だ。 あれは地獄だ!」

いつの間にか姉弟は、頭を掻きながら肩を落とす几鍔をじっと見つめていた。
町の警備というか、自主的な見回りをしていた或る日、酒に酔った店の客にからかわれ困っている様子の店員に気付き、酔っ払いに声を掛けて追っ払った。 
几鍔や子分にとってはいつもの見回りでの出来事。 
そのまま店で軽く食事をしていると、助けた店員が几鍔に近寄り 『惚れてしまいました!』 と頬を染めて告白をしてきた。 それも几鍔に抱きついて 『結婚を前提とした交際をして欲しい!』 と叫んだらしい。 

明玉を始めとした下町にいる年頃の女性たちは几鍔の性格も面倒見の良さも知っているので、 『風采の良い男』 と知ってはいるが彼の気持ちが誰に向いているのかは周知の事実であった為、アタックしようする女性は殆ど皆無といっても良かった。 その上彼に付き従っている子分が幅を利かせていて近寄ることも容易では無い。 おまけに界隈では有名な几家のおばば様が背後にいる。

しかし、そんな背景を知らない女性が現れたのだ。 

お茶卸の商いをしている大店の次女である彼女は社会勉強という事で、初めて茶屋でバイトをした日に酔っ払いにからかわれ、もう二度とこんなバイトはするものかと震えながら蒼褪めていた。 執拗な誘いに酒臭い息。 周囲の者達もどうしたらいいのだろうと手を拱いている状態。 脂ぎった手が伸びて来て、衣服に触れられるのも恐怖で涙が滲んでいた。
そこへ颯爽と現れた几鍔が、ひと睨み、ひと声で酔っ払いを撃退したのだ。

見ると隻眼だが上背は高く、整った容貌で男らしい体躯。 沢山の子分を引き連れているが、子分に頼ることなく彼自身が酔っ払いを撃退し、彼女の窮地を救ってくれた。 几鍔の醸し出す男気に彼女は一発で惚れてしまった。 几鍔が何の気なしに助けた店員はその日から几鍔に猛烈なアタックを開始する。


私達は大店の家で身分的にも釣合いが取れて似合いだわ。 
私と結婚を前提にお付き合いをして下さい。 
貴方好みに染まります。 是非御家族様に挨拶をしたい。 
今日は何処に行かれるのか、明日は何処か、予定を教えて欲しい。
貴方の好きな料理を教えて欲しい。 お弁当を作るから出掛ける時は必ず教えて欲しい。
好きな色を教えて欲しい。 貴方好みの衣装で逢いに行くから。
いつも一緒にいたい。 いつも傍にいたい。 いつも一緒にお出掛けをしたい。 
・・・・・・何故なら、貴方に惚れたからっ!!!!

目の細い子分が蒼褪めるほど几鍔の日常は日々損なわれ、体調も機嫌も最悪の一途を辿る。
それでもストーカー化した彼女は朝から夕刻 日没の閉門間際まで几鍔に文字通り纏わりついている。 そう言われると、以前より痩せたように見える几鍔の頬から顎ライン。 見える鎖骨までくっきりしているように見えてしまう。

「え、と。 ・・・・可愛いのかしら? その方は」
「僕が見ても可愛いと思うけど、几鍔さんはどう思うんですか?」
「・・・・オレは駄目だ・・・。 ただ恐怖の対象としか見えない。 嬉々として先回りして来るんだぞ。 旅館の見回りに行っても、支店に行っても、荷物の運搬場に行っても必ず、絶対に其処に居るんだぞ! 訳の判らない真っ黒な液体を目の前に出して栄養剤だと言って飲ませようとしたり、得体の知れない焦げた丸いものを出して食べさせようとしたり~~~~~!」

珍しく恐れ戦き震える几鍔を見て、夕鈴も流石に唖然とするしかない。 
ここまで几鍔を動揺させるなんて尋常じゃない相手に興味が湧く。 夕鈴から見ると父親をカモにする極悪非道の金貸しだが、明玉が 『几鍔はその面倒見の良さから実はもてる』 のだと言っていた。 それは夕鈴も判る気がする。 
几鍔の為なら たとえ火の中水の中と走り回る子分を見ていると、それは充分判る。 
面倒見が良く、チンピラと呼ばれる悪餓鬼がいつの間にか几鍔の子分になっていたり、縄張り争いを収めるだけだと言いながら両方の意見を聞き喧嘩を上手く裁いているのを見たこともある。 意外に老若男女問わず人気があるのも知っている。  

ただ、今回は相手が悪いようだ。 普段ここまで几鍔の弱ったところなんか見たことない。 
会えば喧嘩上等で怒鳴りあう昔からの間柄だが、肩を落とし此処まで憔悴した几鍔は見たことが無い。 憔悴しきった几鍔が哀れにも見えてくるから不思議だ。

「それで几鍔。 私があんたの彼女になるって言うのは・・・つまり、演技って事で?」
「ああ、オレに好きな奴がいると解ればあの女も身を引いてくれると思うんだが・・・・。 演技とはいえ怖ろしい女相手だ。 お前ぐらい図太い神経と気概がなきゃ、相手役は無理だろう」

そんな人なの? 几鍔が女性を此処まで貶めて言うなんて初めて聞いた。
自分を図太い神経・・・ なんて酷く言う几鍔を怒れないほど、彼は蒼褪め憔悴し切っていた。 

「でも私は直ぐに王宮に戻らないといけないのよ? 青慎の様子を見に来ただけだから」
「夕餉の買い物に行くんだろう? 付き添うよ。 そうやって二人で歩くだけでいい。 直ぐに王宮に戻ると言うなら、その方があの女からお前も守られるし、逆に都合がいい」 

守られる・・・・? その言葉に一瞬戸惑ったが、几鍔と二人で歩いているのを見られたら新たな噂が流れるのではないかと眉間に皺を寄せた。 そんな噂が流れたら、余計に嫁き遅れそうな気がする・・・・。 今更かしら・・・・?と、自分でそう思うのも悲しい事なのだが。

「あの女がどんな嫌がらせをしようと、お前はバイトがあるから王宮に戻るだろう。 アイツが大店の娘でも王宮までは手が出ないだろうし、追いかける事も出来ない。 そしてオレを諦める」

眉間に皺を寄せたまま夕鈴は暫らく考えた。 青慎の怪我の様子を見に来ただけなのだから遅くとも今夜中に戻る予定だ。 最悪でも明日の午前中には戻らないと李順さんに叱責を受ける。 しかし眼の前で必死に訴える几鍔は見たことのない表情で、夕鈴の弱いところを押してくる。

「本当に・・・・ 困っているんだ。 幼馴染のよしみで少しの間だけでいい。頼む!」
「う、うううっ、~~~~~~っ!」

唇を思い切り噛んで夕鈴は渋々小さく頷いた。 
ほっと小さく息を吐かれ几鍔が安堵した様子が伝わり、夕鈴は何故頷いてしまったのか、如何していいか解らなくなる。 几鍔が買い物籠を持ち、早速買い物に行こうと言うから夕鈴は慌てて後を追う。 青慎が 「姉さん、気を付けてね。」 と言うから背筋に嫌なものを感じたが、自分は直ぐに王宮に戻る立場なのだから少しの我慢だと気持ちを奮い立たせ、弟に強張った笑みを浮かべて頷いた。




買い物の為に市に赴くと、直ぐに几鍔の子分が近寄って来た。 
いつもは笑顔で夕鈴に 「姐さん」 と声を掛けるのだが、今日は緊張した顔で周囲を窺いながら几鍔に頷いている。 そして夕鈴を見ると眉根を寄せて小声で呟いた。

「姐さんも充分気を付けて下さい。 怪我だけはしないように充分気を張って下さい!」
「え? ・・・・ええ」
「本当に悪いな、夕鈴。 刃傷沙汰にはならないように気を付けるから・・・・」
「え? ・・・ええ!?」

そんなに凶暴な女性なのかと思わず周囲を見回すと、近くの屋台の影から此方をじっと見つめている可愛らしい少女の姿が見て取れた。 
朱色の衣装に鮮やかな濃い桃色の帯に梔子色の飾り紐を締め付け、片側に纏められた黒髪に同じ梔子色の紐を巻き付けた、大きな瞳が印象的な可愛らしい少女。
きっと几鍔のファンだろうと、良く見る光景に夕鈴は肩の力を抜いた。
几鍔は面倒見が良いせいか男女問わずに人気がある。 
だから、毎回自分に構う暇があったら特定の人を作って欲しいと切に願っていた。 
子分が自分に 「姐さん」 なんて纏わりつくのも几鍔が特定の人を作れば終わるだろうと。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:30:04 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
素敵[i:63951]・
几鍔には気の毒ですが、なんて素敵な展開なんでしょう・しかし、几鍔だけでなく、子分たちも緊張している様子…いったいどんなお嬢さんなんでしょう?続きが楽しみです
2012-10-08 月 23:45:45 | URL | ともぞう [編集]
Re: 素敵・
ともぞう様にそう言って頂けると嬉しいです。 それよりどのタイミングで陛下を出そうか思案中です。仕事中にも悩んでしまいます。 仕事になりません。 仕事したくありません。仕事なんかポイです。 あ~、宝くじ当たらないかな。
2012-10-09 火 01:26:28 | URL | あお [編集]
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