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一葉落ちて貴方の秋を知る  5
続きです。 下町に行くとやはり面倒に巻き込まれる夕鈴。 


では、どうぞ。






















少女が叫ぶのと同時に黒衣の人物が二人に迫って来るのが視界に入る。 と、同時に几鍔が夕鈴を背に庇いながら迫り来る人物に対峙しようと屈んだ時、突然地面にクナイが突き刺さった。
黒衣の人物の足元に投げられたクナイに反射的に足を止めた彼は顎を上げて空を見上げ、几鍔もそれに習い訝しみながら慎重に上を見上げた。 しかし、夕鈴はそれが誰の手によるものなのか瞬時に理解すると、几鍔の腕を掴み急いで逃げ出そうと踵を返す。 その動きに几鍔が直ぐに反応し、夕鈴の腕を掴みあげると腰を攫うようにして走り出した。

「ああっ! あの女が几鍔様を連れて逃げるわっ!! 追うのよ、直ぐにぃ!」

少女の悲痛な叫びに黒衣の人物が二人が逃げた方向へと身体を反転させると、その足を留めようとするようにクナイが地面に突き刺さり進路を妨害する。 瞬時戸惑った人物が顔を上げると、もう二人の姿は消えていた。 目を細め追うことを止め背をゆっくりと正した人物に少女は金切り声を上げて泣き叫ぶが、彼は二人の走り去った方向をじっと見つめた後、泣き続ける少女に深々と頭を下げた。





何度も民家の角を曲がり大回りをして、それでも周囲を窺うようにして自宅に戻った夕鈴は几鍔がちゃんと買い物籠を持っているのを確認すると、漸く息を吐いた。

「・・・・・あんた、日頃の行いの悪さを改めなさいよ」
「オレは悪くないって言っているだろう? どうだ、あの女の恐ろしさが解ったか!」

ふんっと鼻息で返答した夕鈴は買い物籠から食材を取り出し、汚れていないか折れていないかを見分し始める。 その様子に眇めた視線を夕鈴に向けるが、几鍔は直ぐに思い出したように呟いた。

「それにしても黒衣のあの男は初めて見たな。 それに地面に突き刺さったアレは何だ? 一体誰が投げたんだ? ・・・・お前、心当たりはあるか? いやに落ち着いていたが」

勿論、心当たりはある。 しかし其れは几鍔に言う訳にはいかない。
睨み付けるように夕鈴を見る几鍔から顔を背け、質問を無視して買い物籠から全ての食材を取り出すと、夕鈴は何を作ろうかと意識を夕餉支度に向けようとした。 
夕鈴は顔を背けたまま 「私は青慎の夕餉作りがあるの。 もう、あんたは帰りなさいよ」 そう言い、早速支度に取り掛かり始める。 
そして何より、早く王宮に帰らなきゃ浩大が陛下に何を如何伝えるか心配でならない。

「あんたの言う通りに彼女役をしたんだし、夕餉を作ったら戻らなきゃ! 早くしないと門が閉まっちゃうわよ。 あ、梨ご馳走様。 演技代として貰っておくわよ」
「・・・・助かったが、正直お前がこの家から出たところに黒衣装の男が居るかも知れない。 今晩は泊まっていった方が無難だろうな。 戻るのは諦めろ」
「なっ!! それは無理よ! だって上司に今日中に戻るって言ってあるもの! あの男が居るとも限らないでしょう? 見失って居ないかも知れないじゃない!」
「駄目だっ! 危険だと言っているだろう!」

如何しても王宮に戻らなきゃと 夕鈴は睨み付けるように几鍔を振り返る。 
それでも几鍔は危険だからと家から出ることを夕鈴に禁じた。 上から押さえつけるような言い方に夕鈴は思わず大根を持ち上げ、几鍔ににじり寄る。 青慎は二人の緊迫した遣り取りにオロオロするが、几鍔の強い視線を感じて姉に進言する。

「あ、あの・・・・如何しても戻らなきゃならないの? 姉さんが危険な目に会うかも知れないなんて、僕心配だよ。 明日、明るくなってから戻った方がいいよ。 ね?」
「青慎・・・・ でも」

心配してくれる青慎の気持ちは嬉しいが・・・・・、夕鈴は唇を噛み逡巡した。
 
二人の視線から逃げるように眼を伏せた夕鈴は 取りあえず野菜を洗ってくると大根などの野菜を抱えて外に足を向けた。 井戸で野菜を洗い終えると家の裏に廻り夕鈴が顔を上げると察してくれた浩大が姿を現す。 夕鈴が眉尻を下げて口を尖らせると浩大が哂いを堪えた声を出す。

「あの男のことは、オレに文句を言っても仕方ないからね~。 お妃ちゃんに危険が生じないように足止めくらいしか出来ないっすよ。 下町の諸事情に、これ以上手は出せないのを解って頂戴よね~、お妃ちゃん?」
「それは判ったけど・・・。 あの・・・・、陛下と李順さんへの報告は如何するの?」
「あ~・・・、悪いけど一応陛下付きの隠密なんでね~。 そこは正直に・・・・」

その言葉に夕鈴はガッカリと肩を落とす。 
正直に青慎の怪我の状態を伝え、その後のことも詳細に、そして湾曲した作り話を盛り込んで楽しげに浩大は伝えるだろう。 そうすると・・・・・。  
_____________絶対に陛下が来る。 

政務を放り投げて、几鍔を煽りに、おかしなことに巻き込まれた私を苛めに、陛下が嬉々として来るのが目に見えるようだ。 今、背後にひねた微笑みを浮かべた 『李翔さん』 が立って居たとしても 「もう来たんですか?」 と肩を竦めるくらいで、驚きはしないぞと夕鈴は溜め息を吐く。 
しかし、本当にそうなっては困るのだと浩大に向き直り真摯にお願いをする。

「出来れば青慎の為に一泊するとだけ伝えて欲しいのだけど。 几鍔のことも、あの彼女のことも、黒衣の人のことも言わないで、ただ一泊するとだけ伝えて欲しいの」
「う~ん。 でも後で面倒にならないかぁ? 李順さんの計画も今日中限定でしか陛下には効かないしな~。 弟くんを心配するのは判るけどさ~。 でも、お妃ちゃん。 あの男は」

浩大は眇めた目で先刻の黒衣の男を思い出した。 
細身のしなやかな体躯、そして強靭で揺るがない、命令されれば殺人すら厭わない確固たる意思が感じられた。 あれは自分と同じ立場が醸し出すものと酷似しており、その腕も確かだろうと浩大は思った。 呆気なく浩大が放ったクナイに足止めをされていたのは、主である少女の傍から離れるのを避ける為だったのかも知れない。 
その少女が無事自宅に戻った後、彼が命令通りに夕鈴を探している可能性もある。 どの様な命令にしろ、少女の希望通りに几鍔から夕鈴を離し、それで終わるとは思えない。 一途な想いだけで叫んだ少女の命令に冷酷に従うだろうあの男は、夕鈴に何をするのか不安になる。

「・・・・正直、あのお嬢さんに従っていた男が気になるから、急いで王宮に戻った方がいいな。 辻馬車を用意させようか? 夕餉を作るなら急いで・・・・」
 
浩大が危険を回避しようと戻ることを提案していた時、家の中から大きな物音がした。 
驚いた夕鈴は直ぐに踵を返して自宅に飛び込んだ。

「・・・・・くぅっ!」
「ど、どうしたの? 青慎!?」  

 
其処には蹲る青慎と地面に転がる大鍋を持ち上げようとする几鍔の姿が。 
何があったのか理解した夕鈴は蹲る青慎の背に手を宛がい、蒼い顔を近づけた。

「ぶつけ・・・たの? 大丈夫?」
「あ・・・、ちょっと痛いけど大丈夫だよ。 ごめんね、余計な心配を掛けて」

重い大鍋は普段夕鈴が居る時にしか使わないので、上の棚に乗せていた。 それを取ろうと手を伸ばし、打撲した右肘にぶつけたと言う。 几鍔が気づいた時には他の鍋なども転がり落ちてきて、それが青慎の頭にぶつからないようにするのが精一杯だったと言われた。
右肘を庇うように青慎が立ち上がるも、その腕は震えていて青慎の顔も痛みに少し歪んでいるのが解る。 夕鈴は涙目で青慎の頭を撫でると 「今日は泊まるから青慎は休んでいてね。」 と夕餉の支度を始めることにした。 几鍔に青慎の肘を冷やすように頼み、井戸に置き忘れた野菜を取りに戻る。

浩大が夕鈴の表情を見て嘆息し、 「李順さんには弟君が更に怪我をしたから一泊すると伝えておくよ。 だけど明日は戻るようにね。」 と小声で告げる。 
夕鈴も浩大の心配が判るだけに黙って頷いた。 
本当にあの黒衣の人物が自分を除外しようと何か行動を起こした場合、上手く逃げられるか分からない。 その上、陛下が政務を放り出して此処に来たら如何しよう。 
それでも李順さんには申し訳ないが、一泊だけ青慎のために家に泊まることにした。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 20:45:05 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
報告
あぁ浩大が夕鈴のことを気遣いながらも、面白おかしく報告する姿が目に浮かぶようです・
夕鈴どうなるのかしら・ハラハラドキドキ
2012-10-11 木 22:04:33 | URL | ともぞう [編集]
Re: 報告
ともぞう様 早速のコメント有り難う御座います。 やっと陛下が出せます。 下町に行くとつい兄貴ベースに話が進んでしまうので・・・・。 えへ。 今回浩大も青慎も出せて幸せです。 浩大の報告は勿論・・・です(笑)
2012-10-12 金 00:36:23 | URL | あお [編集]
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