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一葉落ちて貴方の秋を知る  6
続きです。 やっと陛下登場です。 
すいません、毎回長くなってしまって。 如何して簡潔に書けないのか、書きたいものが溢れてくるのを止められないのが最近の悩みどころです。 哂って下さい。



では、どうぞ。




















「夕鈴、戻らないって?」
「ええ。 弟君が痛んだ肘を更にぶつけてしまい、今日だけは看病に残りたいと浩大に伝えたそうです。 全く、姉弟揃って粗忽者なのでしょうね。 ・・・・・・陛下」

眼鏡を持ち上げた側近は眉間に皺を寄せ 「そんな事より」 と、卓に山と積まれた未決裁の書簡を差し、陛下に向かい、言い飽きた厳重注意をした。

「明日の午後には戻って来るそうですので、容易に下町へお出掛けになることは御止め下さるよう、願い申し上げますよ。 政務が滞る事だけは為さらないように!」
「・・・・肘をぶつけて夕鈴が看病かぁ。 弟君、痛いだろうけど・・・・いいなぁ。 夕鈴が作った美味しいご飯を食べるんだろうな。 もしかして痛くて動かせないって、夕鈴に食べさせて貰っているのかなぁ・・・・。 それっていいなぁ・・・・」

李順の 【厳重注意】 という言葉は右から左へと流れて行ったようで、陛下は 「いいな~」 を繰り返した。 夕鈴が今晩は戻ってこないと聞き、すっかりやる気を失ったように見える。 
陛下は筆を置き、書簡を押しやり、椅子に深く腰掛け愚図り出した。
咳払いをした側近が早く仕事をしろと睨ねつけるが、卓に肘を付いた陛下は口を尖らせて止まらない文句を続けて零し続けた。 主に 『僕も夕鈴のご飯が食べたい』 と訴え続け、書簡の山を更に押しやり遠のけようとしている。 

「あと、几家の御子息が何やら面倒に巻き込まれ、夕鈴殿が多少係わったと報告を受けておりますが、其方はもう片付いたそうです。 詳細は後程浩大より受けて下さい」

取り合えず陛下に書簡を一刻も早く片付けるように伝え、署名済みの書簡を宰相の下へと運ぶため李順は執務室を離れた。 最後の報告に陛下の眉が動いたのを李順は知らない。
 
宰相から新たな書簡を頼まれた李順が執務室に入ると、窓から夕刻の爽やかな秋風が入り込む室内が見て取れた。 _____部屋の主は何処か。 
その静かな部屋に李順の強い舌打ちが響き、急ぎ動ける隠密を呼びに走った。









「・・・あちゃぁ~。 やっぱり来たんですか、陛下」
「浩大から詳細を聞けと言われたから来たんだ。 何があったのか話せ!」

門が閉まった状態の章安区にまで、どうやって来たのか想像しただけで浩大は苦笑した。
そして何処まで正直に話そうか夕鈴の困り顔が浮かんで言い淀んだ。 陛下が関わることで更に夕鈴が困るだろうことは明白だが、しかし彼女に襲い掛かりそうな危険は早めに消去した方がいい。 ここは陛下付きの隠密として正直に話しておこう。 そう、正直に。 

「お妃ちゃんは陛下に知られたくないと言ってましたよ。 まあ、言いますけどね」

浩大は夕鈴が実家に戻って来てからの流れを滔々と話し出した。
恋焦がれて付き纏う女性に辟易した几鍔が、その恋情を諦めさせるために偶々実家に戻った幼馴染の夕鈴に頼み込み 『恋人』 役をして貰ったこと。 夕鈴がそれを承諾して二人で楽しげにいちゃいちゃしながら市に赴き買い物しながら歩いたこと。 その帰り道にストーカー女性に襲われそうになったこと。 女性の侍従または下僕らしき人物が女性の指示に従い夕鈴を狙ったこと。 危険を考慮し、夕鈴を急ぎ王宮に戻そうと説得している時に不意の事故で青慎が更に打撲したことを伝えた。

その間、陛下は静かに表情を変えずに黙って話を聞いていた。

「相手の女人を調べるか? 今迄お妃ちゃんから離れることが出来なかったけど、調べるなら直ぐに動くよん。 ついでにあの男の裏も調べようか・・・・・」

昏い視線を陛下に投げ掛け、暗に調べさせて欲しいと訴える浩大に陛下は沈黙したまま腕を組んだ。 その冷やかな表情からは考えを読むことが出来ず、浩大は一旦陛下の傍を離れて夕鈴たちの様子を窺いに移動した。 楽しげに夕餉を食べていた夕鈴と弟は、そろそろ就寝する頃だろう。 其れを確認したら、浩大は几鍔が狙われる原因となった茶屋に勤めた少女の身辺調査を行い、黒衣の男の詳細を調べるつもりだ。 
陛下の元へ戻り夕鈴と弟が就寝した報告をすると、やはり調べるよう指示を受ける。 
陛下は夕鈴の家を見上げ、表情を変えることなく踵を返し王宮へと戻って行った。



王宮へ戻るなり李順の叱責を受けるが、黙って書簡を開き仕事を開始する陛下の峻厳な態度に李順は訝しみながら嘆息した。 きっと夜間であったため夕鈴に追い返されたか、浩大から報告を受け納得したかだろうと思ったのだ。

早朝、朝議のため陛下の私室を訪れ、その姿が無いことに気付くと李順は自分の甘い考えを深く反省し、肩を落とした。 諦めた表情で署名と審察が終わった書簡を宰相の下へと運び、朝議の中止を伝えるしかない。 李順が何度夕鈴は 『バイト』 であると伝えても陛下は彼女に深く係わろうとする。 幾ら止めても、陛下は嬉々として出掛けてしまう。 
そして陛下が王宮から出て行かれると李順にはその尻拭いに翻弄されるのだ。 

「私は絶対に早死にするでしょうね。 胃を病み血反吐を吐いて・・・・・」

悵然として溜め息を吐いた李順の表情は勿論冴えなかった。










   ・・・・  ・・・ ・・・  ・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・










朝、夕鈴が水を汲みに井戸へ向かうと、そこには居てはならない人物が居た。
夕鈴は一度目を瞑り、自分の手の甲を思いきり抓り痛みを感じたのを確認し、ゆっくりと瞳を開くと、そこには誰も居なかった。  「もう・・・・、やだな~」
たった一晩王宮から離れただけで陛下の幻を見るなんて重症だと思わず苦笑する。

「ゆーりん、どうして笑っているの? 何か楽しい夢でも見たの?」
「・・・ひぃっ!」

背後から耳元に囁かれ、夕鈴は持っていた桶を落して悲鳴をあげた。 囁かれた耳を押えて振り向けば、外套を纏った 『李翔さんスタイル』 の陛下が立っている。 早朝から夕鈴の自宅敷地内に何故陛下が居るのかパニックに陥ると、陛下が夕鈴の手をぎゅっと握ってきた。

「ねえ、夕鈴! 几鍔君の恋人って、どういうこと?」
「なっ、何でもう知って・・・・・ 浩大ですね。 言わないでって伝えたのにぃ!」

真赤な顔で明らかに狼狽する夕鈴を見て、陛下は口を尖らせてにじり寄る。

「・・・・・陛下、浩大からどんな風に聞いたのか正直恐いのですが、私は几鍔の彼女役を臨時で演じただけです。 期間限定の、昨日だけの演技です。 もう其れは終わったことですから蒸し返さないで下さいね。 恥ずかしいですから。 今日は昼過ぎには戻りますので、陛下が此方まで足を運ぶ必要はないですよ?」

握られた手に真っ赤になりながら夕鈴が説明すると、陛下が面白くなさそうな表情を見せる。

「危ない奴に襲われそうになったと聞いたよ? 浩大が足止めをしなきゃ危なかったとも聞いた。 だから迎えに来たんだよ。 ね、直ぐに帰ろうよ」
「・・・・わざわざ陛下が? あの・・・・、それは李順さんも御存知のことなのでしょうか?」
「直ぐに戻るつもりだから黙って来たけど、それが如何したの?」

陛下からの明るい返答に、夕鈴はくらりと眩暈を覚えた。 
しかし此処で倒れる訳にはいかないと踏ん張り、涙目で陛下を睨みあげる。

「陛下、黙って出たら李順さんが御心配されますでしょう! 如何して毎回・・・・。 それに私はこれから朝餉の用意と青慎の湿布交換があります。 直ぐに戻るのはは無理です。 お願いですから陛下は王宮に御戻り下さい」
「お嫁さんの心配するのも駄目なの? 待ってるから一緒に戻ろう?」
「だ~か~ら~、黙っていてもちゃんと帰りますから! 一緒には無理ですっ! 絶対、絶対、李順さんに怒られるから嫌です!」
「僕だってお嫁さん置いて戻るのは嫌だよ。 夕鈴、僕が心配する気持ちも解ってよ」

むっとした顔を夕鈴に向けて、それでも陛下は夕鈴の手を掴んだまま離さないでいる。
あー言えば、こう言う陛下に夕鈴は脱力しそうになる。 
困った夕鈴は眉間に皺を寄せて、言いたくは無いが言わざるを得ない言葉を紡いだ。

「・・・・・粗末ではゴザイマスが、うちで朝餉を召し上がっていかれますか?」
「うんっ! 久し振りだね、夕鈴のご飯! あ、僕何か手伝おうか?」

盛大に尻尾が揺れている幻が見えるような気がした。 
軽い眩暈を感じながら桶に水を汲むと陛下が当たり前のように持ち運んでくれた。 勝手口から青慎が驚いた顔で 「り、李翔さん? ど、如何されたんですか?」 と小さく叫ぶ声が聞こえる。
夕鈴は額に手を当て、やっぱり叫ぶわよね・・・・と嘆息するしかない。 

「僕も青慎君を見舞おうと思ってね。 更に酷くぶつけてしまったと聞いたよ。 大事無いかな? 医師に見せたのかい? 湿布は足りている?」   
「は、はい! 大丈夫ですっ! それより仕事中の姉に心配を掛け、呼び出してしまうような手紙を書き、更に見舞いまで。 本当にすいませんでした」

恐縮して頭を下げる青慎だが、その右肘は痛々しく大判の布で肩に吊るされており動かさないよう固定されている。 陛下の視線に気付いた青慎が慌てて布を取り外し、 「姉が大袈裟にしているだけで動かすことは出来ますので、本当に大事無いです」 と明るい顔を向ける。

「でも無理に動かしたら痛みが増すでしょう? 本当ならもう一泊したいのだけど」
「姉さん、でも几鍔さんも言っていたように王宮に戻った方が安心だよ。 僕もその方が良いと思うし。 万が一怪我でもしたら、僕・・・・・」

朝餉の支度を始めていた夕鈴は青慎の言葉に涙を滲ませながら振り向くと、感動の余り青慎に抱き付きそうになった。  「姉さん、包丁持ってるからっ!!」 
青慎の声に、急いで陛下がその包丁を取り上げた。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:46:06 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
相変わらず・
陛下相変わらず早いですねでも、浩大の報告を聞いた後、一度戻ったのは驚きました・まぁ朝一に、すでに再び現れましたけど・お見それしました報告を聞いた陛下はどんなやきもちを妬くのかしら?楽しみです
2012-10-13 土 07:23:31 | URL | ともぞう [編集]
Re: 相変わらず・
泊まるところが無いからですね。(笑) 几鍔と陛下の絡みって大好物なんです。 美味しいですよね。さあ、この後如何しましょうか?どう調理したら美味しいかしら? 私の味付けは甘いので、旦那にはよく七味を足されます。 そんな味に仕上がる予定です。
2012-10-13 土 21:16:57 | URL | あお [編集]
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