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一葉落ちて貴方の秋を知る  10
続きです。 今日定期歯科受診でした。 虫歯はなかったけど前回行なった歯茎チェックの
結果が返ってきて、歯石取りをして、先生と話をして・・・・。 本当に歯が弱いんです。
職場でも磨いているのに。 旦那と息子は歯科受診殆どしたこと無いのに、娘と私は
定期健診が欠かせない。 くぅうう・・・・。 悔しい。



では、どうぞ。






















倉庫街から料亭街へと移動する間、陛下は夕鈴と腕を絡めたまま楽しそうに話し続ける。

「夕鈴は何食べる? 軽いものがいいよね。 あと青慎君にも買おうね!」 

対する夕鈴の足は震え、今にも泣き出しそうな顔で口元だけが如何にか笑っていた。 
絡められた腕の熱も、楽しげな陛下の声も、周囲の視線も、今の夕鈴には居た堪れないもので、楽しげに歩く演技すら上手く出来ず、強張った笑顔を引き攣らせて歩くのが精一杯。

「・・・・夕鈴、もう少しだから頑張ってね」

その緊張を解こうと励ます甘い声が耳元に低く響き、逆に腰が砕けそうになる。 
しかし此処は下町なのだ。 
間違っても陛下に抱かれて移動する訳にはいかないと、必死に微笑みを返して頷く。
プロ妃として日々頑張っているはずなのに、耳元に少し囁かれただけでこれでは駄目だと目を強く瞑った。 頭では判っているのに、腕に縋るように歩くのが夕鈴の限界だった。 
それでも背後からの刺すような視線を感じ、必死に演技を続けて一つの店に入った。

「・・・・すいません。 陛・・・ 李翔さんみたいに上手に演技出来なくて。 それでも上手く引き寄せることが出来たようですね」

隣に腰掛け、夕鈴が微笑みながら陛下の耳元に囁くと陛下が夕鈴の肩を掴み寄せて来る。 
声なき悲鳴をあげながらぎゅっと目を瞑ると耳に息が掛かるほど近い場所で低い声が囁かれた。 

「ねえ、・・・・彼とは打ち合わせもしてないのに、 『いつもの場所』 でわかるって、僕に焼きもち妬かせたいの? 幼馴染君と手も重ねていたし、頭も撫でて貰っていたし、笑顔見せていたし」
「はぁ? あの・・・・ 囮になる為に、こういう演技でって浩大から指導がありましたよね? 男を手玉に取る悪女を演じるって!! だから必死だったんですよ?」

耳を押えたいのを我慢して握り拳を膝に当て、笑顔のままで陛下の耳元に小声で返す。
本当は余り近寄らないで欲しい。  幾ら演技とはいえ近過ぎる!!
深紅に染まった頬を押えるのを我慢しながら夕鈴が陛下を見ると、近過ぎる場所で小犬が口を尖らせている。 耳に囁かれるのは困るが、小犬陛下を見ると苦笑してしまいそうな自分がいて肩から力が抜けたのが解る。 注文した品が卓に並び、摘みながらこれから自分達がすることを陛下ともう一度話し合う。

夕鈴が囮として彼女らをおびき寄せ、捕らえ、間違いを正す。 
それが無理なら捕縛だけでもして警吏に引き渡す・・・・・・。 
言ってしまえば単純なことなのだが、実行に移すのは難しいだろうと思えた。
しかし、それらが上手くいったとしても夕鈴には頭の痛いことが待っていた。

陛下が黙って来たことを李順さんは既に存じているだろう。
囮になって黒衣の人物に狙われるより、李順さんの昏い視線を受けながら長時間に渡る説教の方が数倍恐いと夕鈴は蒼褪めて考えてしまう。 

夕鈴が嘆息すると陛下の手が頭に伸びて引き寄せられた。 仲の良い演技中なので真赤な顔をしながらも夕鈴は逆らわない。 陛下の肩に頭を乗せて、何をされるのかと身体を強張らせる。 しかし頭から手が下がり、首筋を撫でられた時は思わず短い悲鳴をあげて、椅子から飛び跳ねた。

「なっ、なっ、何をするんですか!」
「ゆーりん、声大きいよ。 ・・・ばれちゃうよ? いちゃいちゃ恋人の演技だよ。 几鍔君と僕を天秤に掛ける悪女の役でしょ? これくらいで叫んじゃ駄目だよ」
「~~~~~~っ! で、でも急に首筋を・・・・ 撫でるのは・・・・」

涙目で陛下を睨み付けると袖を引かれ、椅子に座るように促される。 渋々隣に腰掛けると今度は手を絡め捕られる。 プロ妃を思い出して必死に笑顔を作るが、陛下の大きな手から伝わる温かさに頬が染まる。 指と指の間に陛下の指が絡み、ゆるゆると動かされ擽ったいと眉を寄せた。 指の股を掠めて関節を確かめるように触れ、指先までゆっくりと撫でられる。
眼の前には小首を傾げて柔らかい微笑みを浮かべる小犬がいるが、卓下では妖しい動きを見せる狼の指先。 背がざわりと震え、思わず腰が引けてしまう。

「夕鈴、お茶が冷めるよ。 もう少ししたら約束の場所へ行こう」
「は、・・・はい・・・。 あの陛・・・、李翔さん。 手を離して貰えますか?」

真赤な顔で陛下を見上げると、きょとんとした顔で見返られる。 何で離す必要があるのかという顔で見返され、夕鈴の方が困惑してしまう。 指先までゆっくりと往復する陛下の手の動きに肩を竦めて引こうとするのだが、柔らかい束縛に震えるだけで陛下から離れることが出来ない。

「お茶が・・・ 飲めません。 お願いです、か、ら・・・ 手を離して下さい」
「・・・・それより、ひとつ聞きたいんだけど良いかな」

絡められたままの指の動きに全身へ戦慄くようなざわつきが広がり、涙目で陛下を見た。 
口元は微笑んでいるのに、視線は鋭く、夕鈴は何を聞かれるのかと指先に力が入る。

「囮になってまで彼女らを捕らえようとするのは・・・・・金貸しの幼馴染君のため?」
「・・・・はぁ?」
「危険を冒してまで、夕鈴が頑張ろうとするのは彼を助けたいが為なのかなって・・・・」
「・・・・陛下? 浩大からの報告聞いてましたよね? 油を掛けて火を放とうとしたとか、人の旦那に懸想して離婚させたとか、役者人生を終わらせようとしたとか。 私だって黒衣の男に狙われたんですよ? 他にもそういう人達が居たんじゃないですか? それを金を握らせて隠蔽したとか、駄目でしょう!? 話が通じないなら行動で示すしかないでしょう? 几鍔のことは関係なしに、民の安全平和のために動かなきゃ!!」

何故自分があのバカ金貸しの為に動かなきゃならないのだと腹が立って、陛下にそう思われていたのかと情けなくなって、夕鈴は周囲に気を使って小声だが、それでも睨み付けながら怒声を放った。 余りにも頭に来て絡めた手を強く握り、夕鈴は 「陛下、分かりますか!?」 と低い怒声で陛下に詰め寄った。
夕鈴の勢いに陛下は焦った表情で何度も頷き 「ご、ごねんね・・・」 と小声で返す。 

「分かってくれたならいいです。 ちゃんと食べて対処出来るように体力を付けましょう! 早く片付けて青慎の湿布を替えて、ご飯を作って・・・ 王宮に戻らなきゃ・・・・。 私・・・・ 本当に李順さんが恐いです。 黒衣の男より恐いんですっ!」

怒りから今度は哀愁漂う表情で震え始めた夕鈴に思わず苦笑した陛下は、また夕鈴に睨まれてしまったが、今度は本当に嬉しそうに夕鈴の指を絡め出した。











約束の時刻に几鍔はやって来た。
久し振りの里帰りで 『大根の特売』 に釣られて夕鈴がおびき寄せられた邸の庭園。
几鍔が子分達と集まったり、たむろする場所で周囲は民家が少なく人の気配も無い。

「・・・・お前、本当に大丈夫かよ。 余計な首を突っ込んで怪我でもしたら嫁には絶対にいけないな。 ああ、その前に借金返済か。 根っからの貧乏なんだな・・・・」

男を手玉に取る悪女演技中の夕鈴は几鍔の辛辣な台詞に、口角がひくついたが思い切り手を握り締め、睨み付けるに留めた。 横の陛下が肩を抱き、楽しそうに頭を擦り付けて来て几鍔に笑い掛ける。

「本当に心配性だね。 大丈夫だよ、夕鈴はいいお嫁さんになるって、僕、前にも言ったでしょ? ね、ゆーりん!」

そう言いながら几鍔にだけ解るように視線を背後に向ける。 頭の上で視線だけ動かされたので夕鈴は知らず、ただ陛下の言葉に真っ赤になった。 夕鈴の表情に舌打ちしながら、几鍔は上手く付いて来た彼女らの居る方向に視線をちらりと向け、邸の中へ二人を誘った。

「・・・何処に遊びに行くか、話し合おうぜ。 夕鈴、こっちに来いよ」
「嫌そうな顔で言わないで、一応あんたは私にメロメロな感じでやってよね。 李翔さんも付き合ってくれてるし。 引き寄せて捕まえるまでの辛抱だから・・・・」

差し出された手に近寄った夕鈴は小声で几鍔に話し掛けると、嫌そうにまた舌打ちをされる。 
人が必死に頑張っていると言うのに、この金貸しの舌打ちと仕打ちは何だというのだろうか。
憤りを隠せず、几鍔の腕を思い切り抓った。

邸に入り扉を閉じると、几鍔はそっと外を窺う。 姿は見えないが、居るのは確かだ。
陛下が夕鈴の肩を押して、入って来たとは違う扉へと誘導する。

「さあ、これ以上は危険だから、夕鈴は裏から逃げた方がいいだろう」
「一応何人かがお前を家まで送る手筈を整えてあるから、早く行け!」

裏門には几鍔が予め用意した子分達が夕鈴を安全に逃がそうと数人待機していた。 
しかし、それを聞いて夕鈴は首を強く横に振る。 几鍔が深い溜め息を吐くと、陛下も肩を竦める。 二人の気持ちは嬉しいが、ここまで来て蚊帳の外では気持ちが落ち着かないし、納得がいかない。 出来るならもう一度彼女と話をしてみたい。 話が通じないのなら仕方が無いが、まずは歩み寄りが必要だろうと思っていた。 
方淵と水月のように何時の間にか仲良く (と、夕鈴には見えてきているようだ) まではいかずとも、この町で暮らす町民として、この国に住む民として問題が解決して普通に暮らして行けるようになればいいなと考えていた。

「ねえ? 黒衣の人物を捕らえたら、彼女と話せないかな? 黒衣の人にも自分がしていることは彼女の為にならないんだよって伝えたいし、これ以上同じことを繰り返さないようお願いしたいんですけど・・・・」
「バカか!? その考えは無謀だ。 ・・・・頼むから余計な動きはするな、邪魔だから。 怪我だけはしないようにな。 本当に嫁の貰い手がなくなるぞ」


余計なお世話だと几鍔を睨み付けながら、夕鈴は外へと続く扉を開いた。
どんな闘いになるか判らないが、あの少女が泣くのは嫌だなと思いながら。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:58:58 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
やっぱり・
囮をしながらの、陛下のやきもち…夕鈴お気の毒様ですでも、陛下じゃなくても、やいちゃいますよね・いつも会うと喧嘩してる二人なのに、いつもの場所でなんて言ってツーカーでなやりとり見せられたら幼馴染みなんだしそのくらいはしようがないという気持ちは陛下には皆無ですね・でも、そんなやりとりが堪らなく好きです

そして、顔が小犬で指先が狼っ・何ですかその業はぁ~っ・くらくらしますっ陛下にノックアウトもとい、あおさんにノックアウトされた感じです・
2012-10-19 金 08:01:09 | URL | ともぞう [編集]
Re: やっぱり・
細かいところまで見て頂いて嬉しいです。 手を繋ぐシーンってあんまりないので、思わず陛下の妖艶な動きを妄想してしまい・・・・・・。 むふっ! 次からはもみくちゃな場面になるはず・・・です。
2012-10-19 金 13:19:44 | URL | あお [編集]
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