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一葉落ちて貴方の秋を知る  12
続きですえ。 最近うちの犬の食欲が増しています。
フィラリアの薬もおやつ欲しさに躊躇なく飲み込みます。 バカです。
そこが可愛いのですが。(親ばかです)


では、どうぞ。


















邸の奥へと夕鈴を抱き上げたまま陛下は走り続ける。 
夕鈴は必死に陛下の首に腕を巻き付け振り落とされないように強くしがみ付いていた。

「そう、しっかり抱き付いていてね!」

こんな状況だというのに、陛下は何故楽しそうなのかなんて考える余裕がない。
急に踵を返したり、横に飛んだりするから、その度に驚いてしがみ付いてしまう。 陛下がしっかりと抱えてくれているのは解るが、小刀が飛んでくる音や何処かに突き刺さる音が聞こえ、その度に嫌な震えに襲われた。
しがみ付いているから陛下の衣装から焚き上げた香の香りが鼻を擽り、密着しているのを嫌でも感じさせる。 恐いのに恥ずかしい!! 
もう、いっぱいいっぱいだと夕鈴は涙が滲みそうになってきた。

浩大は何をしているの!?  居る筈よね??
も、怖過ぎるからっ、恥ずかし過ぎるからっ、早く助けて~~~!

夕鈴は頭の中で必死にそれだけを繰り返し願っていた。
邸をどのくらい走り逃げ回っていたのだろうか。 必死にしがみ付いていた夕鈴の脇に陛下の手が入り、 思わず叫びそうになった時には床に降ろされていた。 今頃になって震えが夕鈴を襲い、かくんっと膝から力が抜けて腰を降ろすと陛下が唇に指を当て、 「ここで静かにね」 と衝立が沢山置かれた小部屋の隅に隠れるように指示される。
口の中がカラカラに乾いていて声が出ず、唾を如何にか飲み込み陛下に尋ねる。

「あ、あの人、恭玖は? あと几鍔は? 浩大は如何したの?」 
「奴は僕らを見失ったみたいだけど直ぐに追い駆けてくるだろうね。 それより、お嫁さんから他の男の名前ばかり紡がれるのは面白くないなぁ。 ねえ、僕の名前も言ってみて、ゆーりん?」
「・・・・はぁ?」

一瞬、眼の前が真っ暗になったように感じる。
状況を明らかに楽しんでいる陛下の言葉に崩れ落ちそうなほどの眩暈を感じた。 いや、既に自分は床に座り込んでいるのだから、これ以上落ちようも無いだろう。
・・・・って、突っ込むところはそこじゃない!!
いつ背後から恭玖が刀を持って襲ってくるか解らないじゃない!!
自分だけじゃなく、几鍔以外は邪魔な存在なのだから攻撃対象とされているのに。

「へ・・・陛下、皆がどう動いているのか気にならないんですか?」
「僕は君が他の男の名を繰り返すのが気になる。 僕も名前を呼んで欲しいな~。 ・・・・ねえ、駄目かな。 ゆーりん?」

いやいやいやいや、今はそういう状況じゃないだろう。
この状況で耳や尻尾を下げられても、淋しそうな顔を見せられても困るんだって! なんで其処に拘るのか解らないわよ。 心の中で 『きぃいいいいいっ!』 と悶えたが、夕鈴は諦めて深い溜め息を吐き顔をあげた。 期待に胸膨らませている陛下の顔が憎らしいほど可愛いと思えてしまう自分が悲しかった。 

「は・・・珀、れ、黎翔様・・・・」
「呼び捨てがいいな~! ねえ 他のみんなみたいに呼び捨てにして?」

なんかもう吐きそう。
こんな状況で尻尾を振る陛下が目の前にいて 『呼び捨てにして?』 だって? 
出来る訳がないでしょう!?  国王陛下なのよ? 私はその国の一庶民なのよ?
『臨時花嫁バイト』 しているから御傍に居る機会があるだけの一庶民なのよ? 

「ねえ、ゆーりん! 言って欲しいな~。 あの男を傷付けないで捕まえるから~」
「ほ、本当? 話し合いもさせてくれる? 逃げろって言わない?」

思わず縋り付くと陛下は腕を広げて抱きついて来た。 叫びそうになって慌てて陛下の胸に顔を埋めて声を消すと、私の頭に頬を擦り付けて来たから吃驚して強く突き放した。

「・・・・逃げろって言わないし、話し合いもさせるから僕の名を早く呼んで!」

苦笑しながら腕を広げたままの陛下にじっと見つめられて、本当にこんな事をしていていいのかと、のんびりしている場合じゃないだろうと迷う。 でも敬称無しで名を言えば約束は守ってくれるだろうと、夕鈴はコクンと唾を飲み込み唇を開いた・・・・・。



「へーかぁ、そんな場合じゃないっすよ。 ・・・・来たよ!」

扉が音を立てて開き、その瞬間私は衝立の奥へと突き飛ばされた。 尻餅をつき足が上がった場所に小刀が突き刺さり、声なき悲鳴をあげる。

「そんなのんびりしてるから~!」

浩大の呆れたような哂いが聞こえる中、邪魔にならないようにしなきゃ!と、衝立の奥へ隠れようと這い始めた夕鈴の腰が陛下に持ち上げられ、また移動を始める。 

「浩大、御託は後でいいから捕縛しろっ! 無傷でな!」
「えー、この難しそうな相手に無傷かよっ。 無茶振りですね~!」

そう言いながら浩大が笑顔で鞭を宙に放つのが目に入った。 直ぐに扉から陛下に担がれた状態で外へと飛び出した私は浩大が心配になり、陛下の外套を強く掴んで目を瞑った。 
今度は直ぐに黙って隠れなきゃ! 私だけじゃなく陛下に傷でも負わせようものなら、李順さんが怒髪天を突く勢いで私達を叱責するだろう。 
その前に陛下に万が一でも怪我なんかさせられない!!

「陛下っ! 私を囮に、浩大と一緒に恭玖を捕まえて!」

悲痛な叫びに何故か陛下の足がぴたりと止まった。 
渡り廊下の途中で、ここで止まられると隠れようがないのに何で止まるのかと足をバタつかせると、腰に回っていた腕から解き放たれ足が地に着く。 如何したのかと陛下を見上げると明らかに・・・・拗ねている。

「・・・・さっきから何なんですか!? 早く恭玖を捕まえないと・・・・」
「だって夕鈴、僕の名前言ってくれない! 他の皆は呼び捨てなのにっ」

その台詞に夕鈴の頭の中に何かがブチギレタ音が響いた。
陛下の袖を掴んでいる腕が震えているのが判る。 俯いた自分の口から忍び哂いが漏れているのが判る。 今、それが必要かしら? 呼び捨てにして欲しい? ほぉ~・・・・。
一庶民に国王陛下が呼び捨てにして欲しいと何度も繰り返し、空気を読まずに要求するなんてこと、あるのかしら? 明らかに楽しんでいる陛下に沸々と怒りが沸いてきた。

すっと顔をあげると 『プロ妃』 の笑顔を貼り付けて微笑んで見せる。
陛下は拗ねた表情を止めて 「あ、れ? 夕鈴、・・・怒った?」 と戸惑った顔になった。
もう、遅い。 口角を上げ微笑んだまま陛下の胸に手を当て、夕鈴はじっと見上げた。

「・・・・今の状況を判っているのでしょうか?」
「あ、あの、ゆーりん。 ご、ごめんね。 でも・・・・」
黎翔、黎翔、黎翔、黎翔、黎翔っ!! ・・・・これで良いでしょうか? 言いましたからね。 聞こえなかったなんて言わせませんよ? ちゃんと私は呼び捨てにして言いましたっ!」  
「・・・・はいっ!」

 
尻尾と耳をこれ以上無いくらいに下げた小犬が目を潤ませて夕鈴を見つめているが、そんな場合じゃないだろうと陛下の手を引き、渡り廊下の奥へと走り出した。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:12:12 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
ぷっ(*≧m≦*)陛下おバカさん・もうお約束ですね・楽しすぎる・
せっかく名前呼んでもらっても、あれじゃあね…何時ものことですが、自業自得と言うことで・

でも、夕鈴はあんな言い方でもあとで悶絶してそうですね

几鍔あんなに脅えおののいているのに、裏ではこの有り様…怒りを通り越して呆れるでしょうね知らないって幸せなこともあるんですね・
2012-10-22 月 06:30:13 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
几鍔が裏事情を知らないままでいることを願います。呼び捨てって親しい間柄でしか出来ないか、上から下への命令形ですからね。今回は親しい呼び方・・・・・ではないような気がしますが、一度言わせてみたかった台詞です。 
2012-10-22 月 07:51:20 | URL | あお [編集]
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