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一葉落ちて貴方の秋を知る  14
続きです。 思ったよりも長くなってしまいました。 
最初は2、3話で終わる話のはずだったのに・・・・。 まあ、いつものことです。 
わはははは、と笑って下さい。
そして、皆様からの温かいコメント、有り難う御座います。
心から本当に楽しませて頂きました。 超嬉しかったです。 



では、どうぞ。

















涙目で細い指先を縄目に差し入れ解こうと必死になっている凛佳と、その姿に恭玖が頭を振り身体をずらそうと抗っている。 恭玖が猿轡を噛締め、凛佳の動きを止めようとくぐもった声で制止しようとしているのが判る。 
凛佳が真赤な顔でこちらを強く睨み付け、戦慄く唇から掠れた声で叫び出した。

「は、外しなさいっ! この縄を直ぐに外しなさいっ!」

凛佳の紅潮した頬に流れる涙が綺麗だと夕鈴は見つめ、そして自分の考えが確かなことを確信した。 真白い指先が擦れて真赤に染まり、それでも縄目に挑むように指を指し入れる彼女を見つめ夕鈴は胸が痛くなる。

陛下を見上げると眉根を寄せて困った顔を夕鈴に見せたが、すっと背を向けると二人の下へと足を進め出した。 縄と格闘している凛佳に近寄ると彼女が悲痛な声で叫ぶ。

「早く、早くこの縄を外してぇっ! 恭玖、恭玖、大丈夫!?」
「・・・・隠密が使う特殊な結び方だから容易には外れないぞ。 大事な者がその様な扱われ方をして、お前はどう思った? 涙を流しているのは何故だ?」

狼陛下の冷やかな声色に蒼褪めた顔を向ける凛佳はそれでも震える指で縄を掴んでいる。 
恭玖が眉間に皺を寄せて後ろに回された腕を必死に動かすも縄が解ける事は無く、却って結び目がきつく締まっていく。 
恭玖を見下ろす形で几鍔も凛佳の背後に立った。 彼の表情も冷たく昏く、未だ血の滴る手が今にも彼女の首を捻りあげそうに見えて夕鈴は震えながら見つめていた。

格子の後ろから浩大が夕鈴に小さく呟いた。

「へーか、すげぇ怒ってるな・・・。 おっかねぇ・・・」
「・・・・浩大」

陛下が怒っているのは夕鈴も判る。 独りよがりの彼女の言動が周囲を翻弄して混乱を招いたのだ。 市井の安寧を重んじる陛下が憤るのは重々承知だ。 
浩大が小さく息を吐き、立ち上がるのが伝わる。

「さあ、オレは警備兵を連れてくるよ。 お妃ちゃんは彼らと話がしたんだろう? 時間は長くあげられないからな。 今の陛下の怒りが爆発する前に警備兵に渡さなきゃ、どうなるかオレだって判らないからね」
「・・・・判った。 浩大、ありがとう・・・・」
  
痛む頭を布で押さえながら夕鈴は立ち上がり、陛下と几鍔に近寄って行く。 
陛下がゆっくりと振り向き、夕鈴はその冷たい紅い瞳に足が竦みそうになった。 口の中がカラカラに乾いていたが、夕鈴は無理やり唾を飲み込み足を進める。
凛佳が夕鈴の姿を捉え弱々しく睨み付けるが、夕鈴は柳眉を下げて傍に腰を降ろした。

「まずは御免なさい、私は几鍔の彼女じゃないの。 ただ頼まれて演技をしていただけ。 でも、どうしてそうしなきゃならなかったのか、貴女に判るかしら?」
「・・・・下町の悪女の言うことは信じられませんわ。 それより恭玖の縄を解いて頂戴っ! こんな・・・、こんなの酷いわ!」

凛佳の激昂ぶりに夕鈴は瞬時言葉を失ってしまう。 やはり話は通じないのかしらと逃げ出しそうな自分を叱咤し、もう一度彼女に伝えたい言葉を頭の中で反芻してみた。 
紅潮した頬に流れる涙を拭いもせずに縄を必死に解こうと血が滲みそうな勢いで縄目に指を差し入れている凛佳の姿を見て、夕鈴は大きな声で凛佳に話し掛ける。


「恭玖・・・・ 彼のしたことは貴女の命令だったそうね。 それがどんなに迷惑なことでも、例え犯罪に近いことでも、犯罪でも行なっていた。 それは如何してか判る?」
「そ、それは・・・・。 恭玖は私の下僕だからよ!」
「下僕の彼が行なった罪は彼だけの罪だと・・・・ 貴女は命令するだけで全ての罪は彼に有るというの? 人を斬り付けようとしたり、火を放ったり、脅したりしたのは彼だけの罪だと言うの? それで彼が斬首になっても下僕だからと切り捨てるの?」

蒼褪めた凛佳が短く息を吸い込んだ。 
夕鈴はその表情を見つめながら続けざまに冷たく言い放った。

「下僕だからどうなっても良いと言うなら直ぐに離れなさいっ! 恭玖は罪人よ! 直ぐに警吏が来て捕縛する。 その後、彼は放火の罪で斬首になる」
「・・・っ!! そっ、それは・・・・」
「それでも良いと、放火や脅しや斬り付けは彼が実行したのだから彼だけの罪だと、斬首になっても下僕の代わりは幾らでもいると言うのなら直ぐに警吏に引き渡します」

夕鈴が凛佳に強く言い放ち、陛下と几鍔に 「警吏を呼んで下さい!」 と告げると、彼女は泣き叫びながら恭玖の身体に覆い被さった。

「嫌ぁっ! 駄目駄目駄目っ!! 恭玖は悪くないっ! 悪くないからっ!」
「では誰が悪いのっ? こうして捕縛されたのはどうしてなのか解っているの!? 貴女がしてきたことを思い出しなさいっ!!!」

夕鈴の怒声が外庭に響き、短く息を吸い込んだ凛佳は恭玖に覆い被さったまま全身を震わせる。 そして、しゃっくり上げる声が聞こえ、凛佳が子供のように大泣きし始めた。 
それでも更に追い詰めるように夕鈴は問い詰める。

「貴女がしてきた事が周囲の人にどれだけの迷惑となったか、恭玖と離れて考えなさい。 一人で考えて結果が出たら、それからすべき行動をしなさい。 ・・・・・几鍔」

名を呼ばれて几鍔が目を瞠り、恐る恐る夕鈴に近寄って行く。 
振り向いた幼馴染は凛として背を正し冷静な表情で彼女を指差した。

「几鍔、彼女を家に連れて行って欲しいの。 彼女の家を知っているでしょう? 今の彼女を一人で家に帰すのは無理だからお願いするわ」
「・・・・お、おう。 わかった」
「陛・・・、李翔さん。 警備兵がそろそろ来る筈です。 来たら・・・お願いします」
「解っている。 ・・・・それより夕鈴、頭痛まない?」

几鍔が凛佳の腕を掴み立たせている間に、陛下がそっと頭に触れただけで痛みが奔り、思わず夕鈴が眉間に皺を寄せると、頭から手が離れて肩をそっと包まれた。

「夕鈴、御苦労様。 彼女が離れたら今度は彼と話したいんだろう?」
「・・・いいですか? 警備兵に直ぐ渡したりしませんか?」

顔を上げて陛下を窺うように見上げると困ったような顔で見返された。 小さく息を吐いた陛下の視線が真っ直ぐに夕鈴を見下ろしているのが判り、夕鈴は自分の頬が赤くなるのを感じた。

「ご、ごめんなさい。 我が侭言ってますよね? で、でも彼ともちゃんと話をしたくて。 そんなに時間は取りませんからお願いします!」
「解っているからいいよ。 それより頭を下げたりしたら痛みが増すよ?」

凛佳が泣きながら恭玖の頬を撫でた後、几鍔に引き摺られるように門から離れて行くのが見えた。 自分の言った言葉が彼女に少しでも届けばいいなと、門から消えていく彼女の姿を見送っている間に、陛下が恭玖の傍に跪き、彼の猿轡をゆっくりと外してくれた。

「恭玖、万が一 お前が舌を噛み切ろうとしたら、全ての罪は彼女が負うこととなる。 今から夕鈴の言うことに正直に答えるんだ」
「っ! ・・・・解った」

陛下が背に回された恭玖の腕を掴み、上体を起こし話しやすいように座らせる。 見ると本当に頑丈に縄が巻かれ、容易に解く事は出来ないのが判る。 恭玖の口の端が切れているのが解り、夕鈴は膝をつくと自分の頭を冷やしていた布で口の端をそっと拭った。 
痛みに顔を顰めたが声を出さない恭玖を夕鈴は静かに見つめる。

「凛佳さんに強く言ったことは本心です。 でも斬首とかは私が勝手に言ったことだから心配しないで下さい。 脅かして御免なさい」

その言葉に驚いた顔で恭玖は頭を下げる夕鈴を見つめる。 まさか自分に謝罪をするとは思っても居なかったのだろう、思わず恭玖は夕鈴から目を逸らし俯いた。
 
「何故貴方は彼女の言うなりになっていたの? いけないことだと判っていたでしょう。 彼女の一方的な恋愛感情でどれだけの人が振り回され、迷惑を掛けられたか、貴方は知っている筈ですよね」
「・・・・凛佳お嬢様は私の恩人なのです」

恭玖は俯いたまま、静かに語り出した。





恭玖が幼い頃、両親が流行り病で亡くなり養護施設に預けられたが、そこは最悪な環境で碌に食べ物も与えられず暴力に怯える日々が続いていた。 見目良い女の子は売られ、男の子は無償で働かれ続ける地獄のような場所だった。 或る日数人で施設を逃げ出したはいいが、行く当ても食べ物も無く、一緒に逃げ出した仲間も何時の間にか消え、路地裏で倒れた恭玖はこのまま死んでいくのだと思った。
   
『貴方・・・・、具合が悪いの?』

その時声を掛けてきたのが凛佳だ。 可愛らしい顔が奇妙に歪み、眼の前の少年が空ろな瞳で少女を見つめると踵を返して姿を消した。 最後に綺麗なものを見ることが出来て良かったと何故か嬉しく思った恭玖が意識を取り戻した時、そこは凛佳の家の一室だった。

『もう大丈夫だからね。 ご飯食べて元気になって』

可愛らしい少女が心配気に恭玖の頬を撫で、数日間真摯に看護をしてくれた。 幼い小さな手が毎日恭玖の頬を撫で、その柔らかさに何度も涙が零れた。 
そのまま彼女の家で奉公人として仕えることになった時、彼女との立場の違いを知り、それならば彼女の役に立つことなら何でもしようと心に決めた。 彼女の望みならばどんなことでも、どんなことをしてでも叶えようと心に誓った。 それが例え罪に問われる犯罪だとしても。




「凛佳お嬢様に縁談の話が来た頃から、お嬢様は自分には好きな人がいるからと言い出しました。 何かのきっかけで出会った相手を執拗に追い詰めるような行動を始め、最初はお止め頂くように説得もしたのですが、しかし・・・・」
「止めることが出来なかったのね。 それは・・・・」

夕鈴は恭玖の過去を聞き、言葉を途中で紡げなくなる。 
身分の差が彼を走らせたのだと、妄信的に彼女に尽くすことで自分の存在を彼女に訴えたのだと、その彼の悲しいほどの献身さに何を言えばいいのか夕鈴は苦しくなるばかりになった。 
俯いたままの恭玖がゆっくりと顔をあげ、夕鈴に歪んだ笑顔を見せる。

「判っています。 自分のしたことは凛佳お嬢様の為のものじゃない。 凛佳お嬢様の役に立っていると思いたい自己満足のものだと・・・・ 判っています。 それでも俺は尽くしたかった。 自分を必要としてくれる凛佳お嬢様の傍に居ることが出来るなら・・・・ 何でもしたかった・・・・・。 例え、それが罪であろうと、地獄に落とされる所業であろうとも」

掠れた声で訴える恭玖に夕鈴はもう何も言えなかった。 判っているのだと、それでも彼女の言う通りに動きたかったと切なそうな顔で語る恭玖の気持ちが切なかった。 

「・・・・恭玖さん」

それでも犯した罪は償わねばならない。
 
夕鈴は恭玖を見つめながら目の前が滲んで来て、膝に置いた手に涙が零れ落ちるのが解る。
恭玖の背後にいた陛下が立ちあがり、自分の袖で涙を優しく拭ってくれた。 顔を上げると柔らかい笑みで夕鈴の頭をそっと撫でてくれたから、余計に涙が零れてしまう。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 20:30:14 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
いつも大変楽しく拝見させて頂いております♪
日参してますwww

あお様の更新度の高さに、驚きと尊敬が入り混じっております。
でも、本当に嬉しいですけど♪♪

今、何度目になるかという程の、全読みを最初からしているところなのですがw、目次から【一葉落ちて貴方の秋を知る】の[14】へ飛べません。
ただし、[13]を読んだ後の【→ 次へ】からは大丈夫でした。
お手数ですが、目次からのリンクのご確認をお願い致します。

これからも日参させて頂きますので、宜しくお願いします♪
あお様、本当に尊敬します!!

2013-04-18 木 14:29:16 | URL | aki [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメありがとう御座います。嬉しいコメントに小躍りしてます。そして、直ぐに目次を修正させて頂きます。申し訳御座いません。あちこち、そういうポカがあると思います。ひぃいいい!見直しの時間を作ります。教えて下さってありがとう御座います。
2013-04-18 木 21:05:32 | URL | あお [編集]
あお様、そんな!
謝らないで下さい!!

むしろ、あお様のお宅にお邪魔しているのはこちらの方なんですから^^
これからも伺わせて頂きますので宜しくお願いします~♪
2013-04-19 金 23:41:41 | URL | aki [編集]
Re: タイトルなし
aki様、いえいえ~。 結構夜中更新が多いので、抜けているところがあると思います。申し訳ありませんが、その都度教えて貰えると助かっちゃいます。また遊びに来て下さいませ。 ありがとう御座います。
2013-04-20 土 00:27:53 | URL | あお [編集]
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