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一葉落ちて貴方の秋を知る  16
やっと、やっとまとまりました。 如何してこうも長くなるのだろうか?
もう少し纏めて書ける腕が欲しいです。 長ったらしくてすいません。 
でも楽しかったです。 


では、どうぞ。
















その後、凛佳と二人きりで話す場を作って貰い、恭玖と互いの気持ちをしっかり話し合うことを約束させることが出来た。 凛佳は魂が抜け落ちたかのように脱力し、椅子に身体を任せて呆けている。 空ろな瞳は何も見ておらず、呆然としたまま流れる涙を拭うこともせずにいた。 
夕鈴が考えていた通り凛佳は恭玖のことを愛しく思っており、いつか彼と添い遂げるのだと信じていたのだが、親に縁談を組まれてしまい、抗う為に多数の男性に言い寄ったと話してくれた。

「・・・こんな馬鹿なことをしている娘に誰が申し込むというの? 恭玖と添えないなら、一生結婚なんかしなくていい・・・・。 恭玖じゃなきゃ嫌なの。 身分とか関係ない。 私が好きなのは、欲しいのは恭玖だけなの・・・・」
「親に相談したことは? 店はお姉さん夫婦が継いでいるから問題は少ないように思うけど」
「・・・・親に言ったことは・・・・ ないわ。 無理だって解ってるから・・・・。 今までのことだって全てお金で解決してきた親よ? だから放火まで・・・・・」
 
項垂れた凛佳から涙がぽろぽろと膝へと零れ、夕鈴はそっと彼女の肩を抱き寄せた。 

「・・・親が言う通りに結婚するのは小さい頃から躾けられていたけど、私は恭玖しか見えなかったから、どうしたらいいか必死に考えて・・・・。 ねえ、恭玖はどうなるの?」
「彼は・・・・ きっと全ての罪は自分にあると言うでしょうね。 彼は貴女が好きだから。 今までのように親が隠そうとしても、お金を積んでも、今回は無理だと思うの」

陛下が係わったから無いことには出来ないだろう。 もう少し上手く出来なかったのだろうかと今更だが夕鈴は自分を責めた。 肩を震わせて涙を零し続ける少女を、ここまで追い詰めてしまった自分が酷い人間に思えてしまう。
深く反省している凛佳の姿に夕鈴は居た堪れなくなり、黙って肩を撫で続けた。

彼女の自宅を出ると陛下と几鍔が店先で待っていてくれた。 
夕鈴が眉根を下げて彼らの顔を見上げると陛下が頭を撫でてくれる。 

「・・・・もう少し、何か方法は無かったのかな・・・・」
「夕鈴は頑張ったよ。 あとは警吏に任せて大丈夫」

二人だけで話をさせてくれた上、何も聞かずに自分の気持ちを慮ってくれた陛下の優しい言葉に涙が滲み出す。 几鍔が 「下町の噂は直ぐに掻き消してやる」 と言ってくれたから、瞬きを繰り返して涙が溢れないように頷いた。




 ◇◇◇  ◇◇  ◇◇◇  ◇   ◇◇◇  ◇◇◇  ◇◇  ◇◇◇  ◇






青慎の打ち身も随分良くなり湿布も必要なくなったと嬉しい手紙が王宮に届き、夕鈴がその報告に執務室に顔を出すと李順が大量の書簡を卓に置くところだった。

「おや夕鈴殿。 その手紙は弟君からですか?」
「はいっ! 元気になったとの報告です。 それで陛下にも御知らせをと思ったのですが」

夕鈴が尋ねると卓上の山のような書簡から手が伸びて、ゆらゆらと揺れ無言のまま力無く下がっていく。 その手が陛下だと理解すると李順から大仰な溜め息が漏れる。

「陛下はお忙しいですので、報告が終わりましたら速やかに退室して下さい。 夕鈴殿は後宮に戻るか立ち入り禁止区域の掃除に勤しんで下さい。 宜しいですね?」

李順の眼鏡が恐いほどに白く輝き、夕鈴は黙して頷くしかない。 
陛下が勝手に王宮を抜け出し下町に来ていたことで政務が滞ったのだと夕鈴も解る。 
静かに拱手して場を離れようとすると卓上の書簡の山奥から陛下の声が聞こえた。

「ごめんね、夕鈴・・・。 夜には部屋に行けると思うから~・・・・・」
「御無理はいけません。 お仕事が終わられましたら、陛下は早めにお休み下さいませ」 

夕鈴が苦笑しながら返答すると李順がその通りだと頷いた。 
「・・・・終わるかどうかは陛下次第ですがね」 と李順が止めを刺し、数秒後、次の書簡を広げる乾いた音が聞こえてきた。 


本当は青慎からの手紙に書かれていた 『その後』 の報告もしたかった。
凛佳と恭玖の処分が早々に決まったことを。
几鍔の件だけが今回審議され、刑としては思った以上に軽かったこと。 放火や暴行行為、執拗な付き纏いなどの過去にしていた行為は一旦金で決着が付いているためか、親戚筋の上級役人が絡んでいるためか表沙汰にはされない様子だということ。
それらが青慎の手紙に書かれているということは、下町では周知の事実として皆が知っているということだ。 青慎が知る頃には皆が知っていて当たり前なのだ。


____また引越しになるだろうな。 


以前も同じように引越しをして来たと聞いている。 でも今度は引越しをしたとしても同じことは繰り返されないだろう。 もう凛佳と恭玖はそれぞれの気持ちを解かっている筈。 例えそれを押し殺していても二度と同じ過ちはしようとは思わないだろう。 
几鍔には悪いと思うが、最後のターゲットが彼で良かったかもと夕鈴は思った。
青慎からの手紙を丁寧に畳み、あとで陛下にも報告出来るよう鏡台に置くと夕鈴は後宮立ち入り禁止区域の掃除に向かうことにした。





夕鈴が湯殿から戻ると、丁度陛下が部屋に訪れて来た。

「陛下、お疲れ・・・・様です。 ・・・・あの・・・・ 憔悴しきった御顔をされておりますが、すぐに自室でお休みになった方が宜しいのではないですか?」

驚いた顔で夕鈴が心配の言葉を掛けると 「大事無い。 我が妃の顔で安らぎに来た」 そう言いながら片手を上げて侍女らを下がらせようとする。 顔を赤らめることなく心配気に陛下の元へ寄り添う妃を、微笑ましく見つめ侍女らは静かに退室した。
途端に陛下は小犬になり、全身から力を抜き長椅子にぐったりと横たわる。

「はぁ・・・・。 李順が容赦ないほど仕事を押し付けてくるから逃げて来たんだ。 熱いお茶を淹れてくれるかなぁ、ゆーりん」
「では甘い菓子も用意しますね。 御飲みになったら直ぐに身体を休ませて下さい。 わざわざ此処まで来て演技しなくても大丈夫ですよ? 体調崩されてしまいます」

手早く茶の用意をしながら夕鈴が気遣うと、長椅子の陛下から深い溜め息が漏れる。

「・・・・そんなに僕を追い返したいの?」
「そっ、そうではありませんっ! すごっくお疲れのようですから・・・・」
「うん、ありがとう。 でも執務室に来た時 何か知らせようとしたんだろう? 弟君からの手紙にはなんて書いてあるのかな?」

卓に茶杯を置くと夕鈴は直ぐに手紙を持って来た。 
起き上がった陛下は手紙を受け取るのと同時に夕鈴の腰を攫い、膝の上に押さえ込む。 

「へっ、陛下っ!! 何でぇ?」
「一緒に読むのに最適な体勢を整えただけだよ。 ん~、・・・・・そうか。 刑吏が今回のことだけ罰したと。 ・・・これで良かったんだよね? 夕鈴」

陛下の腕にお腹を押えられ、眼の前には青慎の手紙。 逃げることが出来ず夕鈴は諦めた。

「・・・・そうですね。 今回のことだけを取り上げて刑に処されるのでしたら存外軽いものかも知れません。 凛佳さんも恭玖さんも安堵されているでしょうね」

それからは二人で頑張るしかない。 二人だけの力で足で立ち上がり、自分達の幸せを掴むために努力を積み重ねるしかない。 今度こそ周りを巻き込むのではなく、周りに認めさせるように努めるのだ。 これからの二人の未来の為に。
夕鈴が手紙を見つめながら真摯に願っていると、手紙を持っていた陛下の手が離れ、夕鈴は慌ててそれを受け取る。 すると腹部に回っている陛下の腕に力が入りきゅうっと抱き締められ、背に頭が触れるのを感じる。 驚いて叫び出す寸前に柔らかい声で陛下が呟いた。

「夕鈴、良かったね・・・・」
「・・・・ひゃ、ひゃい! よ、良かったです、けど・・・・ あの、陛下。 手を・・・・」
「夕鈴って温かくて癒されるなぁ。 ・・・・もう少しこのままでもいい?」

激務で御疲れの陛下にそう言われると恥ずかしいのだけど我慢しなくきゃならない気がする。 きっと顔が真っ赤になっているだろうと思いながら返事が出来ずに戸惑っていると、背後から小さな声で 「ありがとう」 と呟きが聞こえた。 少し声が掠れて聞こえ、夕鈴は申し訳なく感じた。

「陛下が来てくれなきゃ、こんなに早く解決することも軽い刑になることも無かったと思います。 本当にありがとう御座います」
「うん・・・・。 夕鈴が喜んでくれて僕も嬉しい・・・・」
「陛下・・・。 あの、声が・・・眠そうですが? ね、眠いですよね・・・?」
「うん・・・・。 夕鈴が温かいから寝ちゃいそう・・・・」

のんびりした声で背に頬を摺り寄せる陛下に押さえていた叫び声があがりそうになるが、疲れた声を出しながら夕鈴の背に体重を掛けてくるから、声が出し難い。 おまけに腹に回った腕が抱き寄せるように力を入れるからバランスが保てない。

「へっ、陛下、落ちちゃう! 前のめりに落ちちゃいますっ!」
「・・・ああ、ごめんね。 うん、もう寝ることにするよ・・・・」

夕鈴の腹から手が離れ、ほっとして離れるように立ち上がると膝裏に手が回り、あっという間に横抱きにされていた。 何と思う間も無く陛下の足取りは寝所方向へと向かい、夕鈴はここに来てようやく叫んだ。

「なあああっ!! ね、眠いのは陛下ですっ! 御帰りになってゆっくり休んで下さい!」
「ん~・・・・。 李順が仕事を山のようにして待ち構えているから、僕、こっちで休むよ」
「で、では、ごゆっくり休むためにもっ、お、お、降ろして~~!」

「はい」 と降ろされたのは寝台の上。 その横にごろんと横になった陛下は片手で夕鈴の頭を抱え込み、もう片手を彼女の腰にまわした。 夕鈴が余りのことに呆然と為すがままで身体を硬直させていると、陛下が気だるそうに呟きを漏らす。

「ここで暫らく休ませてくれ。 夕鈴は温かいから・・・・ 少しだけ・・・・」

元はといえば勝手に王宮を抜け出して下町に繰り出し、勝手に市井の事情に立ち入った陛下が溜まりに溜まった政務に追われる立場になっただけ。 自分で自分の首を絞めただけだ。 
夕鈴が陛下の 『アンカ』 にされる謂れはない。

しかし掠れた声で呟いた後、静かな吐息が髪に掛かり夕鈴は硬直させた身体を動かすことが出来なくなってしまう。 陛下が下町に来て二人をおびき出す算段をし、恭玖を捕らえてくれなければ同じことの繰り返しになっていたか、更に酷い被害を被っていたかも知れない。 
几鍔が腹に据えかねて暴れていたかも知れないし、刃傷沙汰になっていたかも知れない。 
そう思うとどうしたらいいのか解らなくなり、縛られたように身体は動かせなくなる。 

「ゆーりん・・・・ いい匂い」

陛下が囁くように呟いて夕鈴の頭を更に抱え込むから、陛下の胸に顔を押し付ける形になり、夕鈴は息が苦しくなる。 せめて陛下の身体に掛け布をと思うのだがこうも拘束されていては届かない。 せめて風邪をひかないようにと自分が出来ることを考え、真赤な顔でそろそろと陛下の背に手を回す。 

少しだけ・・・・。 少し陛下を休ませてあげるだけ。 
陛下が寝たらそっと起きて掛け布を掛けて、離れればいい・・・・・。 
今までも侍女の前で抱き付かれたこともある。 
それと一緒だから、陛下は寒いだけだから、演技の延長だからっ! 
せめて自分は寝ないように唇を噛締めて耐えていると、陛下が安らかな寝息を立て始めた。 
夕鈴はじっと動かないように心掛けながら、陛下がゆっくり休めるなら 『アンカ』 代わりでもしてあげようと目を閉じた。 もう少ししたら、もう少ししたら陛下から離れて掛け布を掛けて・・・・ と頭の中で繰り返し繰り返し考えて。    





「・・・・寝ちゃったね、夕鈴」

少ししたら起きる予定の夕鈴は陛下の胸の中で深い眠りに入っていた。 静かに身体を起こした陛下は夕鈴に掛け布を覆うと、寝台に腰掛けて愛しそうに彼女の髪を撫でる。
問題事を寄せ付ける体質なのか、問題事に好かれる体質なのか、夕鈴といると兎角退屈はしない。 幼馴染君が係わるのは面白くないが、元は弟を心配して巻き込まれたこと。 そして夕鈴が係わると問題は更に大きくなり、何時の間にか彼女の希望通りに穏やかな解決に向かう。 

それで良いと思った。 彼女が悲しむ顔は見たくない。
彼女が良かれと思って行動したことが、彼女が望む通り解決したならそれで良い。
夕鈴のご飯は美味しかったし、弟君の怪我も早く治癒したし、警備兵の見回り強化も指導出来たし、手を握って町を歩くことも出来たし・・・・・。

そっと額の髪を掬った。 そこには几鍔に殴られた時の青痣が斑模様に浮かんでいる。
腫れはすぐにひいたと言うが未だ痛むようで、触れようとすると顔を顰めて、それでも大丈夫ですからと決して見せてはくれなかった。

「まだ腫れているじゃないか・・・。 妃演技が出来ないって湿布も貼らずにいるから」

確かに湿布を貼って妃を演じろと言うのは無理だろう。 侍女の手前、心配を掛ける訳にも湿布の説明をする訳にもいかない。 それなのに今日も掃除をしていたと聞く。 休んだあとはしっかり働くのが彼女の信条だから。

「そんな君だから僕は _______ 」

掛け布ごと君を抱き締めて、額の傷の横に唇を落す。 眉間に皺を寄せて身体を丸める夕鈴に苦笑しそうになり、口元を押さえて立ち上がる。

さあ、早く仕事を片付けてゆっくり語る時間を作ろう。
あの迷惑な二人の今後の話しでもしながら、深まる秋の庭園を散策しようか。
眠る夕鈴に目で語り掛け、陛下はそっと部屋を出た。










「陛下、まだ御忙しい様子でね・・・・。 李順さんも余程腹に据えかねているらしくて、逃げ出さないように宰相の元で政務を執らせているらしいの」

暫らく執務室に陛下は居ませんので、立ち入り禁止区域の掃除をしていて下さいと李順に告げられ、夕鈴は床を拭きながら浩大に話し掛ける。 菓子屑を零さないように何度も注意しながら睨み付けるも平然とした顔で美味しそうに饅頭を食べる浩大。

「まあ、早速お妃ちゃんの部屋に逃げ出したらしいじゃん。 仕方ないよね~!」

へらへら笑う浩大に何故知っているのかと驚いた顔を上げると 「お、何かあったのか?」 と目を瞠られた。 唇を噛んで視線を落とし床拭きを続けると、忍び笑いが聞こえてくる。
何時の間にか寝台から陛下が消えていて、私は掛け布をしっかり掛けて朝まで熟睡だった。 何があったかなんてこっちが聞きたいくらいだ。 いや、何があろう筈も無い。
ただ私が睡魔に負けただけ。

窓から入り込んだ紅葉した葉が舞い散って、床にはらりと落ちた。

「・・・・陛下、早く休めるといいんだけど」
「そうだね~。 でも周宰相は容赦ないから暫らくは無理じゃねぇ?」
「でしょうね。 以前もそうだったから・・・・」

窓から見える庭園には徐々に深まる秋の気配。 
床上の葉を手に取り、夕鈴は可哀想な陛下を想った。







FIN   





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 17:45:16 | トラックバック(0) | コメント(2)
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2012-10-30 火 16:16:20 | | [編集]
はじめまして。
ネットに沢山の作品があって、私もはまった一人です。 ピクシブにも沢山の作品があって、同じように寝不足になりながら楽しんでました。 拙いものばかりですが、どうぞよろしく御付き合い下さいませ。 コメント嬉しいです。 ありがとう御座います。
2012-10-30 火 21:14:43 | URL | あお [編集]
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