スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
秋霖  1
夕鈴バイト中です。 今回は痛い目に遭わないように・・・・・なるかな?
ai様リクエストありがとう御座います。 時間掛かってしまった上、長くなりそうな
予感がします。 宜しければ御付き合い下さいませ。 



では、どうぞ。















或る日、国境で小規模な諍いが起こったとの報告が国境警備隊長より王宮に届けられた。 


「李順、国境警備隊長は誰だ?」
「は、櫨圭収です。 昨年より北方警備隊隊に配され、その後隊長に昇進した者ですね。 武があり、任に対しては真面目過ぎる程の人物と称されております」
「それが小規模の諍いに関して、何の報告をあげて来たか」

隣国との堺を守る国境警備隊を任せるに値する人物であることは確かだが、小規模と称している諍いに苦慮していると王都まで早馬を出すのには何か裏でもあるのか。 
各州や国境、将軍らの動向を探る隠密からの報告には、現行据え置いている人物らに問題があるとの報告はあがっていない。
問題がないはずの警備隊隊長が王宮まで早馬を出して、一体何を訴えたいのか。 

「・・・櫨か。 李順、詳細を報告しろ」

諍いは確かに最初は小規模のもので、国境に出没する盗賊の討伐中に隣国の盗賊までもが加わり、隣国の火器を使用して抵抗されたため隊員に怪我人が大勢出てしまった。 
そればかりか近くの村に盗賊が侵入し、村民を盾に膠着状態が続いていたと書かれている。 
村の周囲を調べ、即刻村民開放を検討していた時、突然村民が解放されたという。 
そこで一気に警備隊が押し込み盗賊を討伐したのだが、その際由々しき問題が起こり、大変御足労ではあるが国王陛下である珀黎翔に辺境であるこの地まで足を運んで頂きたいのだと櫨からの文書には書かれている。

「・・・由々しき事態とは何だ?」
「ある村民により膠着状態が解かれたので国王陛下直々に御言葉を賜りたく、この地まで御足労願いたいと・・・・ だけありますね。 全ての盗賊を捕らえた訳ではないので、警備隊が場を離れること難しく、さらに彼の人物を王宮に連れ行くことが出来ないのだと書かれています。  ・・・・一体、何事でしょうかね。」

火器を持った盗賊に襲われた村の人間が警備隊の突入を待たずに問題を解決に導いたと聞き、尚且つ櫨警備隊長が国王陛下に御目通りを申し立て、国境の村まで足を運んで欲しいと懇願している。 それは一警備隊長の立場で国王に申し立てる言葉では無い。 
裏に何があるか解らない以上容易に一国の王が赴くことなどは出来ない筈なのだが、怪しい誘いの報告に 「逆に興味が湧くな」 と陛下は冷やかに笑みを零す。 
陛下の様子に李順が小さく嘆息して首を振った。

「内政が安定してきた時期ですが、まだ不安定な面もあります。 隣国との境まで国王に足を運んで欲しいなど何かの罠やも知れません。 櫨隊長にはその者へ褒美を与えるよう指示を出しましょう。  あとは隠密に詳細を調べさせて・・・・・」

滔々と話す李順に陛下が手を差し出した。 

「来いというなら行ってやろうじゃないか?  狼陛下を誘き寄せ何を企んでいるのか、詳細をこの目で知りたいものだ。 少数の武官と明朝早速出発することとしよう」
「・・・なっ! 陛下、馬鹿な事をさらりと仰らないで下さい。 まずは隠密を現地へ向かわせ裏を調べ上げてからにして下さい!  余りにも無謀ですよ!?」
「では、直ぐに隠密を現地へ。 ・・・・村に着いた時に詳細を聞くこととしよう」

狼の紅い瞳が細まり遥か彼方の地を見据え昏く微笑んでいた。 李順は額を押さえつつも早急に発てる隠密を頭の中から選び出し、禁軍へ急ぎ数名の武官を選び出すようにと算段を始めるしかなかった。






「陛下が国境まで視察に・・・・。  数日お留守ですか。」
「そうです、夕鈴殿。 その間刺客の問題もありますが、その警護は浩大に任せることにして 貴女は今まで通りに後宮で過ごすように申し付けます。 大半は掃除をして、時に庭園でお妃然と散策をして過ごすようにお願いしますよ」

執務室に呼び出された夕鈴は李順の説明に小さく頷いた。 政務に追われて数日陛下の姿を見ないこともあったので、いつも通りに過ごせと言われればバイトの身としては頷くしかない。 
政務室や書庫に行くことは厳禁とされ、掃除をするか部屋で過ごすしかないが文句は無い。 

「ごめんね~。 僕がいない間、夕鈴には下町に帰って貰うのも考えたんだけど、王も妃も両方居ないのって変だと言われてね。 浩大や老師には言っておくから 後宮で過ごしていて欲しいんだ」
「いいえ、確かにそうですね。 ただの視察に王も妃も王宮から姿を消すとあらぬ心配を掛けてしまいますから。 私は大人しく後宮で陛下のお帰りをお待ちしてます。 時々庭で侍女さんとお茶をして存在をアピールして置きますから御心配なく!」

にっこり笑って頷いた夕鈴の手を掴むと、陛下は 「お土産は何がいい?」 と唇に寄せた。

「なぁっ! 何もいりませんからっ!!」
「バイト娘をからかっている暇があるなら書簡を一つでも片付けて下さい!」

李順と夕鈴の叫び声が重なり、陛下は耳を下げて肩を落とした。



李順を始めとして、王宮警護の禁軍より数名の武官と菰将軍が陛下と共に彼の地へ赴くこととなった。 地方視察と大臣らには告げ、王宮に残る人間で詳細を知っているのは周宰相と浩大だけ。  夕鈴には余計な心配を掛けたくないと詳細は告げず、大臣らには余計な詮索を受けぬため尤もらしい視察内容を李順が告げ、暫らくの間政務は柳大臣らが中心となり請負うこととなった。 今までも地方巡察や視察は不定期で行なっていたため、今回の件に対して誰一人として不審がる者は居なかった。

強面の柳大臣が政務室に陣取ると解り、絶対に政務室には行かないでおこうと夕鈴は思い、陛下が御戻りになる頃には驚くほど綺麗になった後宮立ち入り禁止区域を見て貰おうと掃除に力を入れる決心をした。

陛下が出立した後、実際大人しく後宮の自室に座っていられる訳もなく、夕鈴は侍女らに老師の元で勉強をしてくると昼に少しだけ妃の衣装で庭を散策する他は掃除に勤しんだ。
散策時に政務室から書庫を行き来する方淵や水月を見かけるが、方淵は相変わらず睨み付けてくるから知らず口喧嘩のような台詞の応酬が始まってしまうし、水月は微笑みながら書庫とは違う方向へ足を向けるから追い掛けて仕事をサボらないようにお願いをしなきゃならない。
掃除以外の余計な仕事ではあったが、日常として夕鈴は受け止め過ごしていた。

その日常が一人の人間により脆くも壊れることなど、この時の夕鈴は未だ知る由も無い。





「・・・っ!!」

夕鈴が夢の中で叫んだであろう声に目を覚ました時、周囲は深い闇に包まれていた。
夢の中とはいえ、自分があげた叫びを訝しみながら襟元を押えて震える身体を起こす。 
心臓の鼓動がいやに早く、襟を掴む自身の指先が小刻みに震えているのが判る。 
自分はどんな夢を見て叫んだのか・・・・、 闇の中で目を凝らしてみても混沌とした渦が思い出されるだけで不安だけが夕鈴を襲う。 夜気に寒気を覚え、ふと首筋に触れるとしっとりと汗ばんでいた。 今見た夢が良い夢でないのだけは確かだと早い鼓動が知らせている。

思い出せない夢に嫌な予感が過ぎり、今王都に居ない陛下は無事なのだろうかと祈るように窓に目を向けると、下弦の月が夜の雲に消えようとしていた。
その後浅い眠りを繰り返し、余り寝た気がしないまま後宮立ち入り禁止区域で掃除をしていると、浩大が夕鈴に尋ねてきた。

「へーかが心配で夜も眠れない? もう直ぐ帰ってくるから、そしたら添い寝でもして貰ったら?  『淋しくて眠れなかったの~』 とか言ってさ~!」
「おお、それはいいのぅ。 早く世継ぎが見てみたいものじゃ! 掃除娘、頑張れよ」

二人のきゃっきゃっした声が頭に響くが、止めようとすると余計に騒ぎ立てるのを知っているから雑巾を握り締めて夕鈴はぐっと堪えた。 聞こえない振りで床磨きを続けていると浩大がしゃがみ込み、 「そんな淋しがり屋のお妃ちゃんに朗報!!」 と声を張り上げる。

「へーか、明日の昼過ぎには戻る予定だってさ~。 数日の予定が一週間以上になって淋しかっただろうけど、明日には戻ってくるから安心してよね。 お妃ちゃん!」
「あ、した・・・。 良かった・・・・」

浩大からの報告に腰から力が抜け床に座り込み、夕鈴は心から安堵した。 
夕鈴が夢に魘されるようになったのは数日といっていた『視察』が5日過ぎても終わらず、何かあったのではないかと皆が噂するようになってからの事。 陛下や菰将軍に限ってと噂を否定していたが、毎晩悪夢に魘されて飛び起き、夕鈴は言い知れぬ不安と焦燥感に駆られていた。 しかし、明日には戻ると知り、安堵の余り涙が浮かびそうになる。 

「・・・・陛下が戻って来たら美味しいおやつでも作って出してやりなよ。 どうせ周宰相に溜まった政務を押し付けられるだろうからさ、息抜きに甘いものでも」
「うん。 そうね、明日の午前中にでも厨房を借りられるようにお願いしておくね。 浩大にも作るから食べてよね」
「掃除娘っ! 沢山作って此方にも寄越さんかいっ!」

老師の元気な声と浩大の笑顔で数日の愁いが消え去り、久し振りに夕鈴は心から微笑んだ。 
その笑顔を見て、浩大も小さく嘆息する。
夜間の警護のたびに嫌でも耳にする夕鈴の呻き声。 最初は何かに襲われたか、毒にでもあたったかと緊張して寝所の前まで近付いたが人の気配はなく、夕鈴の深い溜め息と呟くような祈りに彼女の夢見の悪さが伝わった。 ここ数日深夜に飛び起きる夕鈴の顔色は日に日に悪くなり、陛下の戻りがこれ以上遅くなるようなら水月に匿名の文を渡し、夕鈴の気を紛らわすために紅珠を呼んで貰おうかと考えていた。 
陛下の帰りを知り、眼の前の夕鈴は頬を赤らめ、血色の良い表情で笑っている。

「暫らく振りに逢うんだから侍女さんに綺麗に着飾って貰えばいいよ。 ああ、陛下は大喜びで抱きついて来るかもよ? 抵抗したいなら今日はしっかり食べて体力つける事!」 
「・・・・浩大。 心配・・・ 掛けていたんだね。 ありがと」
「見れば判るほどにお前さん、憔悴しておるぞ。 ここはもういいから湯に入って、しっかり食べて早く休むことじゃ。 菓子は沢山作るのじゃぞ」
「・・・・老師。 すいません。 では、お言葉に甘えさせて頂きますね」

二人の気持ちが伝わり、夕鈴は涙を拭って頭を下げた。 
ただのバイトが勝手に陛下を心配して、毎晩夢見まで悪くするなんて馬鹿げた事だ。 国のために動いていらっしゃる陛下に対し、悪夢を見るほど悪い方に考えるなんて有ってはならないことだろう。 今日は二人の言う通りに早く休んで、明日は沢山の菓子を作って差し上げようと夕鈴は顔をあげた。






→ 次へ





スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:01:01 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。