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秋霖  4

「うーん、陛下どうしたんでしょう」のコメントが多くて思わず吹き出してしまいました。
そして浩大と李順さんが一緒のシーンが想像出来ない・・・・。 
でも宴の時侍官の衣装を用意してくれたのは李順さんなんですよね。 いい人だ。
陛下の為に動くこの二人が大好きです。


では、どうぞ。








 








「・・・お妃ちゃん、陛下に何があったのか調べる間、悋気起こさずに掃除でもしててよ。 絶対何かある。 狼陛下を落としいれようなんて誰の差し金か早急に調べるよ」
「浩大。 他の隠密には連絡が取れませんか? 盗賊討伐に行ったきり戻ってくる気配がないのです。 それも奇怪しいと・・・・。 いや、国境警備隊ごと調べられませんか?」

卓上で二人が話し合いを始めたので、夕鈴は立ち上がり茶を淹れ始める。
もしも李順の言う通り、陛下が何らかの陰謀に巻き込まれ、今は尋常じゃないとしたら早急に元の陛下に戻って貰わなければならない。 暗示か毒か・・・・、毒は多少慣れていると言っていたが催眠系のものだったとしたら別なのかも知れない。 
身体に無理はないのかしら? 暗示だとしたらどうやってあの陛下に掛けたのだろう? 
・・・・お、女の色香・・・とか?

そこまで考えて夕鈴は唇を噛締めた。

今まで王宮で働く見目麗しい女官や侍女たちや宴に招かれていた舞姫にさえ目もくれなかった陛下が連れて来た女性。 それも楚々として儚げで美しく・・・・。 
心と身体に陵辱を受け酷く傷付いた彼女を連れて来て陛下は癒そうとしている。
 『暫らくは二人きりで過ごすことを強く望んでいる・・・』 
他の者からの視線を寄せ付けないように心身を癒そうと彼女を包み込む陛下を思い、夕鈴は唇を噛む。 では何故自分を無視したのだろうか? 私が居ると邪魔なのだろうか。
 
本当は暗示などに関係なく、彼女を妃にしようとして連れて来たのかと考える。 
自分が雇ったバイトとはいえ清楚な彼女と比べてもう厭きてしまったからとか。 
自分の想像に胸が潰れるかのように痛む。 指先が冷たく痺れたように感じた。
陛下に無視される日が来るなんて・・・・・。 大臣らからの嘲笑や侮蔑の言葉より陛下の視線から外される方が辛い。 辛過ぎて心が壊れそうだ。

「お妃ちゃん、大丈夫か?」

はっと目を見開くと私は茶杯を握り締めたまま固まっていた。 震える手で茶杯を置き浩大の問い掛けに頷いた。 茶を淹れて卓に置くと浩大が口を尖らせて見上げている。

「本当に大丈夫。 陛下の身体が心配なだけ・・・・。 何かの暗示が陛下を苦しめなきゃいいのですが・・・。 毒は多少耐性があると以前伺っているのですが、もし毒ならどの様な作用があるのかも心配です。 私はちゃんと後宮のこの部屋から出ないで大人しくしてますから、お二人は陛下のために出来ることをして下さい」

陛下のためにと手作りしていた菓子を差し出し、二人に振舞った。 
「悪くなっちゃうから食べましょう!」 と笑うと李順が呟くように零した。

「そういえば、あの村で食事のたびに陛下は何かを御飲みになっていましたが、お茶とは異なる香りがしていたのを思い出しました。 やはりあの女性は陛下を陥れるための間諜なのかも知れませんっ!」

李順が自分で導き出した言葉に立ち上がった。 踵を返そうとする李順を浩大が押し留めるが憤った李順はそれを振り払って夕鈴の自室を出ようとする。 舌打ちをした浩大が李順の前に回り両手を広げて声を顰めて、それでも強く言い放つ。

「今の陛下に何を言っても通じないだろう? あの女が間諜だとしても、証拠も何も無いだろうが! 李順さんの言うことを今のあの陛下が信じるか?」
「しかし・・・・・ ただ黙って手を拱いて居る訳にはいきませんよ!」 

浩大が李順から視線を外すことなく首を振って眉間に皺を寄せる。 
先程浩大が様子を探りに行った時、他国の使者や賓客を泊まらせる養延斎の一室にて共に長椅子に腰掛け女性の肩を抱く陛下を見て来た。 すすり泣く女性を真摯に慰める姿はいつもの狼陛下ではない。 身体を寄せる女性の髪を梳きながら睦言を零す陛下に寒気にも似た違和感を感じた浩大は、李順を押し留めながら繰り返す。

「兎に角、今は駄目だ。 李順さんが何を進言しても届かない。 それよりもあの女の裏を探って何をしに来たのか調べた方がいい。 証拠集めを先にしよう!」
「・・・・ならば今は陛下の動きを遮らない方が良いと? 悪の汁が滴り滲むのをただ黙って眺めて居ろと言うのですか?」
 
李順が怒気を孕んだ声を浩大に向けるが、静かな瞳に見返され今は他に手立てがないと判ると裏を探る為に動ける隠密に指示を出せるよう熟考し始めた。 
浩大が他の隠密、武官に国境警備隊の不穏な動きを捜査するよう指示し、李順は溜まった政務を周宰相と話し合うために動き出す。
話の流れに置いて行かれた夕鈴は戸惑ったまま、部屋で自分なりに考え始める。

二人の話からすると、陛下が望んで妃候補を連れて来たのではないと漸く理解出来た。
暗示、もしくはそれに準じたものに捕らわれた陛下が国境から王宮まで連れて来た女性だということがゆっくりと理解出来て、胸の痛みが薄れているのに気付いた。 それが本当なのかは確たる証拠が集まるまで不安だが、二人の動きに夕鈴の心は安堵に包まれていた。
そんな風に安心してはいけないと思うのだが、泣き出しそうなほど安堵している自分が恨めしくなる。 陛下に危害が加えられる可能性もあるというのに、彼女が 『本当のお妃様候補』 ではないという事実に縋りたいと切に願っているのだ。
危険な間諜であって欲しいと、傍にいる陛下のことを心配しながらも同時にそう思ってしまう自分が情けないほど恥ずかしい。 同時に今の現状で自分に出来ることは何か必死に考え始めた。



次の日早朝、後宮立ち入り禁止区域で老師を含めた4人が集まりそれぞれの考えとこれからの行動を話し合うことにした。 浩大は早速国境警備隊の調査をする為に隠密を赴かせたと告げ、桐に女性の動向を瞠るように指示していた。
李順は周宰相と夜通し大量の書簡を手分けし、緊急性のある物だけを陛下に託すことにした。 周宰相も事情を聞き、宰相権力で動かせることは独自で行なってくれる事を承諾してくれたと李順が蒼白い顔で報告する。 
老師が二人の話を聞き目を瞠って 「あの陛下が・・・?」 と訝しい瞳を向ける。 それでも催眠作用のある薬物の一覧詳細を調べ、その解毒剤を用意すると動き始めようとする。

それまで黙って話を聞いていた夕鈴が俯いていた顔を上げて、三人にお願いをした。 
  
「あの、私を今まで通りに政務室や書庫に行かせて下さい」

その言葉にまず難色を示したのは浩大だった。 隠密らを纏め動かすために夕鈴から離れなければならない場面も多くなる浩大は、出来れば部屋に閉じ篭っていて欲しいと夕鈴に願っていた。 更に今の陛下は、妃排除を願う輩からの壁にならないだろうと考えていた。

「・・・お妃ちゃん。 あの陛下の態度で寵愛が離れたと思っている大臣らに何を言われるのか判っているのか? 今までの対応とは異なり冷たい言葉が待ってるぞ」
「そう・・・だよね。 でも私の今まで通りの行動に陛下がどんな態度を取るのか知りたいの。 あと陛下が奇怪しいと思っている官吏や大臣がどれだけ居るのか調べるためにもお願いです。 私が邪魔だと思い、陛下の邪魔をしようとする大臣さんや高官さんを捕らえることも出来ますし。 ・・・・今まで通りの行動を取らせて下さい」

一人の女性に溺れる陛下を奇怪しいと思わない臣下。 大半は奇怪しいと思っていても口出すことが出来ずに今まで通りに動き、美味しい話はないかと水面下で動く者が多いとは思うが、正直に奇怪しいと態度に表わす人もいるかも知れない。 協力してくれるかも知れない。 助けになってくれるかも知れない。 自分は何を言われても、どんな視線を浴びてもいい。
元の白陽国 国王陛下に戻ってくれるのであれば。

考えたくはないが、もし陛下が本当にその女性を求めているのであれば自分の行動は目障りで余計なものだろう。 そうだったとしたら、その時こそ潔く退宮するしかないと夕鈴は思った。 
借金は一生掛かっても、孫子の代になったとしても返済してやろう。 
夕鈴は昨夜碌に眠れずにずっと考えていた。
自分は 『囮』 役も兼ねているのだから、多少危険があっても大丈夫。 
危険な目に遭えば逆に陛下は操られていたという証拠にもなるのではないかとさえ考えた。

迷いのない瞳をみんなに向けると、眉間に皺を寄せた李順が暫らく黙考する。

「・・・・暫らくは二人で過ごしたいと陛下は申されていましたが、政務が滞っておりますので今日の午後には執務室に戻って頂きます。 昨夜は私も陛下に御会い出来ませんでしたので、今後の事も併せてあの女性の進退を伺う予定です・・・・」
「・・・と言うことは、陛下はその女人と一夜一緒にお過ごしになられたのか!?」

浩大は慌てて老師の口を押えた。 が、蒼褪めた夕鈴を見て遅かったのだと知る。 
夕鈴の視線が宙を泳ぎ強張った表情が何を想像したか容易に判る。 老師も瞬時に自分の言い放った言葉に夕鈴が傷付いたのを知り、肩を竦めて身体を小さくした。

「あ・・・・、でも御慰めされている内に本当に愛しく思われたのだとしたら陛下のご自由にされるのも・・・・。 だって国王陛下ですし・・・・。 ねえ、李順さん?」

声が震えているのを承知で夕鈴が尋ねると、李順が難しい顔で溜め息を吐いた。

「もし・・・・、陛下がお手を出されて御子が御出来になったとしたら国母になりますが、まさか心体の傷を癒すために御連れになった方にその様な事はないでしょう」

李順の答えに夕鈴は目を閉じて戦慄く唇から詰めていた息を吐く。 李順は続けて捜査を続けるように皆に伝え、夕鈴に 『囮』 として今まで通りの行動をしても良いと許可を出した。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 21:04:04 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
頑張って・
浩大活躍してますね早く情報集めて、夕鈴を安心させてあげてね!でないと夕鈴余計なこと考え出しそう・李順さんもさすがに動揺して冷静な判断をくだせなさそうですしね…こうなると宰相って凄いと感心してしまいます
2012-11-05 月 06:48:48 | URL | ともぞう [編集]
Re: 頑張って・
周宰相の予言もあながち間違いではないと。 そして出て来てないけど頑張ってます、周宰相! 浩大とか皆を出したいのでいろいろ考え中。今は暗いけど御付き合い頂ければ嬉しいです。
2012-11-05 月 08:33:39 | URL | あお [編集]
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