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秋霖  7
続きです。 はい、今回も真っ暗闇です。御免なさい。
そろそろ進展させなきゃと思うのですが、恐い冷たい酷い陛下が気に入っています。
腹黒なんです、わたし。



では、どうぞ。



















その時、医務室外の回廊から陛下を呼ぶ女性の声が聞こえた。

「・・・此方に陛下がいらっしゃると伺いました。 如何かなさったのでしょうか」

その声に陛下は開きかけた唇を強く噛むと目の前の夕鈴を暫らく凝視し、無言のまま踵を返して医務室から出て行った。 扉近くまで来ていた女性に、 「心配を掛けたようだが、大事ない。」 と柔らかく声を掛け、彼女と共に去って行く。
 
痺れるほど陛下に強く掴まれた腕に手を伸ばすと、少し温かい気がした。
何か言いたそうな顔をしていたと思ったが、それは形になる前に霧散してしまった。 
何を言おうとしていたのだろう。 憤りより謝罪をした私に呆れたのだろうか。 
それとも・・・・・。
女性を伴って王宮に戻って来てからずっと冷たい態度を自分に見せていた陛下からの突然の熱に夕鈴は泣きたくなるほど心が掻き乱された。 
侍医が戻り、姿を消した陛下の存在に戸惑いながらも夕鈴の足に処置を施す。 包帯を巻き終えると 「もしかしたら熱が出るかも知れません」 と解熱剤を処方してくれた。 侍医からの説明に痛みが出てきて、夕鈴は今更ながらに 『危険手当て』 が出ないことを悔やんで苦笑した。

部屋に戻ると侍女が急ぎ血で汚れた衣装を脱がしてくれ、そのまま夜着に着替えると夕鈴は早々に就寝することにした。 思いも掛けず迷惑を掛け、そして陛下に抱き上げられた。 
あの時の陛下は以前のままだったと繰り返し思い出し、知らず目が潤んでいた。
 



秋の夕暮れは夜の帳を早々と降ろし、夕鈴が深い眠りにつく頃には冷たい夜気が王宮を包み込んでいた。 
そして深夜、冷たい風に流される雲が月を見え隠れさせる暗い回廊を渡る人物がいた。 夜間警護の警備兵が後宮へと近付く人影に静かに低頭する。 
その人物は慣れた足取りで迷うことなく夕鈴の部屋に足を進めた。 
部屋に入ると冷え渡った空気が静かに震える。 彼は物音も立てずに奥へと足を進め、寝所の扉を開き寝台へと近付く。
寝台で静かに寝息をたてる部屋の主に近寄ると、その顔を覗き込み額の髪をそっと流す。 
触れた肌に熱を感じ、その手が頬に落ちていく。 薄く開いた唇が窓から差し込む月の灯りに浮かぶと乾いているのが見て取れた。 熱が出たためかと近くの卓に置かれた布を取り水差しを傾け、そっと濡れた布を額や頬、唇に押し当てる。

「・・ぅ・・・ んん・・・・」

顔を傾けた彼女の唇が偶然指に触れた瞬間、驚いたように布を遠ざける。 
そして暫らくの間、月の灯りに浮かび上がる夕鈴の顔を眺めていたが踵を返すと来た時と同じように静かに部屋を離れて行った。





侍医に言われた通りやはり熱が出たが、早くから休んだため翌日には元気に書庫に向かうことが出来た。 昨日の陛下の優しさと戸惑いに、もしかしたら自分のことを少しでも思いだしてくれるかも知れないと、やる気を出していた。
書庫に入ると方淵が驚いた顔で 「・・・怪我をしたと聞いたが」 と問い掛けてくる。

「大丈夫ですっ! 折れた破片で足を切っただけです。 御心配掛けました」
「しっ、心配なぞしていない! 政務室に混乱を招くような行動は慎むように伝えようと思っていただけだ。 ・・・・大丈夫ならいいっ!」

背を向けた方淵は乱暴に書簡を書庫に入れると、扉を音を立てて出て行った。 
肩を竦めてその嵐を乗り切った夕鈴は口を押さえて笑いを堪えた。 もし扉の向こうに方淵が居たら怒鳴られてしまうだろうと肩を震わせる。 
すると直ぐに扉が開き夕鈴が思わず叫びそうになると、そこには水月の姿があった。

「お妃様。 方淵がなにやら難しい顔で出て行かれましたが、また一方的な小言でも言われましたか? まあ、いつも難しい顔付きではありますけどね」
「水月さん、おはよう御座います。 方淵殿は私の心配をなさって下さったんです。 まあ、後半は小言にも似てますが」
 
そう言ってくすくす笑うと、水月が柔らかい微笑みで夕鈴を見つめる。 持って来た書簡を置き、書架から必要な書簡や竹簡を取り出して持つと夕鈴の顔を覗き込んだ。 夕鈴が視線に気付き小首を傾げると、水月の瞳が細まり小さく頷いた。

「・・・いろいろな噂が私の耳にも届いていますが、お妃様はそのままで御過ごし下さい。 そのままの貴女様でいることが陛下の御為と私は信じておりますので」
「水月さん・・・・。 ありがとう御座います。 ・・・そうですね。 私は私なりに頑張ります。 お気遣い頂き嬉しく思います」

夕鈴は水月の言葉に静かに頭を下げた。 
後宮から書庫や政務室に移動するたび、大臣や高官、官吏らに中傷されたり嘲りの混じる哂いを受けるが、今は李順らと出来ることをするだけと、顔をあげた夕鈴は微笑んで過ごした。
 
今いた書庫に届けられた書簡をそれぞれ指定の書庫へと運ぶため、夕鈴が回廊を歩いていると後ろに付き従っている侍女が勢い良く夕鈴の横へと寄り添って来た。 驚いて思わず足を止めると、侍女の向こう側に陛下が女性を伴って庭園を歩く姿が見えた。 
夕鈴の視線に気付いた侍女が唇を噛締めるのが解り、胸が温かくなる。 侍女の気遣いに小さく御礼を伝えると、侍女は首を横に振り溢れた涙を拭った。
目にしてしまった陛下と女性の姿に心は痛むが、それよりも自分が出来ることを行い、浩大たちが必死に調べている事が明確になるよう祈るだけだ。 夕鈴は静かに息を吐くと背を正して笑顔で歩き出した。

その後も陛下と女性が共に庭園を歩く姿を数度見かけたが、女性と直接会うことはなかった。
しかし、夕鈴がいつものように書庫での仕事を終えて後宮回廊を歩いていると、角からその女性が突如現れた。 夕鈴を前にして整った顔を少し歪ませた女性は、直ぐに微笑むと静かに頭を下げて優雅に挨拶をしてきた。

「・・・これはお妃様。 挨拶が遅れましたこと御詫び申し上げます。 わたくしは新しく後宮に入りました、苛澄蘭と申します。 以後お見知り置きを」
「こちらこそ宜しくお願い致します。 私は汀夕鈴です。 澄蘭様がごゆるりと御過ごし頂けるよう祈っております。 何か私に出来ることがありましたら言って下さいませ」

すらりとした正統派美人の澄蘭を前に、夕鈴は拱手した袖の中で手を震わせながらもバイトで培った妃演技の微笑みを浮かべた。 その言葉に目を細めた澄蘭は嫣然とした微笑みを返しながら、袖を口元に寄せて夕鈴に囁いた。

「夕鈴様に御手を煩わせることはありませんわ。 願いは直接陛下にお伝えしますので。 陛下は毎日わたしくの部屋に訪れて御慰み下さいますので、日々安らかに過ごさせて頂いておりますの。 ・・・・ああ、夕鈴様も陛下に願いがありましたら、わたくしが伝えして差し上げますわ。 いつでも宜しくてよ」 

向けられた言葉に侍女が険しい顔で一歩足を踏み出したが、夕鈴は柔らかく差し止めて澄蘭を正面から見つめ、恭しく御辞儀をした。 澄蘭がくすりと笑ったあと、 「では・・・」 と悠然と歩き出し後宮奥へと姿を消して行った。 



「~~~っ、あの勝ち誇ったような顔は何でしょうか!」
「後から来て、あの態度は何たる無礼者でしょう!」

部屋に戻ると侍女らが憤りを隠そうともせずに騒ぎ出した。 悔しいと涙目で文句を言い出したのを聞き、夕鈴は苦笑してしまう。

「お妃様!? お怒りになりませんの?」

侍女が身を乗り出して問い掛けるが、夕鈴は困った顔で微笑むしか出来ない。 
正直、心身ともに清楚な女性が傷付いているなら陛下が御慰みされるのも理解出来ると思っていたが、彼女の言動から 『違う』 と夕鈴は感じていた。 陛下が嫌う要素の塊みたいな女性を正面から見て、やはり陛下は何かに捕らわれているのだと確信出来た。

「ええ、怒りを覚えることはないわ。 でも皆さんのお気持ちはとっても嬉しいの。 ありがとう御座います。 私は大丈夫だから本当に気にしないで下さい」

はっきりと伝えると侍女が面食らったような表情で夕鈴を見つめてきた。 
笑顔の夕鈴が侍女に執務室に居る李順を呼ぶように伝えると、侍女は何かを感じたのか拱手して急ぎ部屋を出て行った。


少しやつれたかに見える李順が夕鈴の部屋に姿を見せると、続いて浩大も姿を見せる。
侍女を下がらせたため夕鈴がお茶を淹れ始めると笑顔の浩大が 「ねえ、菓子は?」 と尋ね、李順が冷たく睨み付けた。

「・・・夕鈴殿、妃が後宮に陛下の側近を急に呼び付けるなど、本来ならば有り得ないでしょう? それを押してまでとは、一体如何されたのですか?」
「私 ・・・・先程、苛澄蘭様と御会いしました」

夕鈴が卓に茶を置きながらそう告げると李順が夕鈴を見上げる。 微笑んだまま夕鈴が椅子に腰掛け、彼女に会って感じた気持ちを李順に話し出した。

「あの女性は本当に盗賊に・・・・その、・・・穢され、たのでしょうか。 余りにも・・・・ 堂々として陛下に癒されるのは当然と、政務室近くの庭園や医局まで、御一人で歩かれておりました。 来たばかりの人が侍女も連れずに後宮や王宮内を歩くのは変です。 でも彼女は迷うことなく歩かれている様子です」
「ああ、それは桐から報告を受けているよ。 何かを探っているのか一人で行動することが多いって言っていたな。 まあ桐が背後から見ているのは気付いていないようだけど」
「・・・・・浩大、国境警備隊はその後どうなりました?」
 
懐から自分の分の菓子を取り出し食べながら浩大は今までの報告を始める。

「ん~、国境警備隊隊長はやっと呆けた頭が正常に動き出したようだけど、記憶に抜け落ちた部分が結構あってね~。 盗賊を追い駆けて村に突入しようとしたけど村人が質に取られ、その後思案している間に村で動きがあって、気付けば手篭めにされた女性が村人を逃がしている。 その流れは覚えているんだけど、陛下に来て貰う書状を出した記憶がないんだってさ」
「確かに女性として強いだけでは片付けられないものがあるようですね」

でも陛下はその彼女を傍に置いて心から気を配っている。 彼女は毎晩陛下のお渡りがあると言っていた。 それは彼女が陛下に愛されているということだろう。 それならば夕鈴が口を出すことは余計なお世話になる。 馬に蹴られて・・・・だろう。
でも彼女が陛下に催眠とか暗示を掛けているというなら、話は別で一刻も早く解かなければならない。 陛下を陥れる為に暗示を掛ける、または陰謀に巻き込もうとしている。

それも、あの狼陛下を相手にだ。

可哀想な傷付いた女性を演じ、陛下の優しい気遣いに闇い罠を仕掛けた。 
そんな事がどうやって出来たのだろう。  それに何が目的なのか。
皆は今まで通りに動きながら彼女の行動を静かに見張ることにした。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:00:07 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
くらい、暗すぎますけど何処か期待したゃいます
まさかの逆パターンのトラブル 確かにゆうりん記憶喪失より楽しいかも^_^
2012-11-07 水 23:35:34 | URL | 秋 [編集]
Re: タイトルなし
こんばんは、秋様。 本当に申し訳無いくらいに暗い話で御座います。 ひえ~! 最後は吃驚するくらい明るい話になるよう只今頑張っておりますので、お付き合い頂けたらうれしいです!
2012-11-08 木 00:29:11 | URL | あお [編集]
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2012-11-08 木 01:41:42 | | [編集]
Re: 健気さにうる
陛下の駄々もれ色香・・・・・爆笑させられました。 ビスカス様、駄々漏れですか! 確かに狼の時の陛下は妖艶ですよね~。 毎回爆笑のコメ、ありがとうです!
2012-11-08 木 09:35:52 | URL | あお [編集]
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2012-11-08 木 10:05:23 | | [編集]
Re: タイトルなし
ちび様、コメントありがとう御座います。 ええ、一直線に陛下が夕鈴に走っていく姿を書けるように頑張ります。 長くてなかなか進みませんけど、どうぞ宜しく御付き合い下さいませ!
2012-11-08 木 21:01:49 | URL | あお [編集]
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