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秋霖  12
さあ、ストレス解消に更新しませう。 今回は夕鈴可哀想マックスです。
本当にごめんなさい。 (・・・・今回、これを何度書いただろう?すいません。)
そんなサイトに通ってくれてありがとう! もう少しで、100000hit!
感激です!!! 感謝です!!!! ありがとうです!!!!!



では、どうぞ。


















出来上がったばかりの蒸篭を持ち、厨房から王宮へと足を向けると後宮の回廊を歩く苛澄蘭の姿を見かける。 侍女も伴わず一人で歩く姿はそれでも悠然としており、妃らしい品格が見て取れた。 貴族の息女らしい歩き姿を見て、本当に彼女は村人だったのだろうかと疑ってしまう。 
そして、そう疑ってしまう自分の矮小な思いを夕鈴は恥かしく俯いた。 
視線を足元に落として立ち止まっていると何処からか声が聞こえてくる。

「お妃ちゃん、熱々を届けるんだろ? あっちは桐が見ているから大丈夫」

浩大の声が小さくも力強く応援してくれる。 その声に涙が溢れてきた瞳をぎゅっと瞑り、小さな声で礼を言うと夕鈴は執務室のある方へと顔を向ける。 秋の夕暮れが冷たい風と共に回廊を通り抜け、蒸篭が冷めない内にと夕鈴は足を早めることにした。



扉を叩くと陛下の声がして、部屋の中に入ると睨め付ける視線が夕鈴を刺すように絡めとる。 緊張しながら執務室内の小卓に蒸篭を置き、書簡を紐解く陛下に声を掛けた。

「お忙しいと伺い、差し出がましいようですが差し入れを作らせて頂きました。 熱いうちに召し上がって頂けたら嬉しいのですが」

蒸篭の蓋を取るべきか悩みながら夕鈴が微笑むと、大仰な溜め息が卓の陛下から漏れる。 

「・・・・何故そんなことをする?」
「あ、あの、以前陛下は私の作る夕餉やおやつを美味しいと召し上がって下さったので、久し振りに作らせて頂きました。 思い出して・・・・ 欲しいと思い・・・・・」

陛下を見ると眉間に深い皺を寄せ、不機嫌な様子が見て取れた。 
やっぱり食べては貰えないのかしら・・・・。 
そう思いながらも微笑んで返事を待つと陛下が椅子から立ち上がり、卓を回って夕鈴に近付くのが判る。 李順が強張った表情で二人を見つめていると、夕鈴の目の前に立つ陛下が冷やかな声色で語り掛け始めた。

「ここは執務室だ。 私が以前、政務室にバイト妃が立ち入ることを許したそうだが、執務室までは許さない筈だ。 今は国の政に関する仕事の最中で部外者が立ち入るべきではないだろう。 立場を考えて行動をしてくれ」
「あ・・・・、も、申し訳御座いません・・・。 でも私・・・・」
「・・・・君を見ていると苛立ちと頭痛が増す。 思い出す必要もないだろう。 これ以上私を煩わせることは止めて貰いたい」

静かな声色に陛下の怒りの深さを知り、夕鈴は眼を瞠り唇を戦慄かせる。 
目の前が歪んで見えるが涙が滲んではいない。 ただ信じていた自身の心が崩れかけていた。 
余計なことをしてしまったという気持ちと、自分がしてきたことは今の陛下には届かなかったのかという気持ちが沈んでいきそうな心の中で昏く渦巻く。 

顔をあげると紅い瞳を細め、冷やかな視線を送る陛下の姿。 
その陛下へと夕鈴の口から紡ぎ出された言葉は悲しげな声色で届けられた。

「では・・・・ 貴方のために私が出来ることは・・・・ 目の前から消えることでしょうか」
「ゆ、夕鈴殿っ!?」

李順が焦って夕鈴に近寄ろうと足を踏み出すが、陛下が手を出し李順の足を止める。
暫らく夕鈴と見詰め合っていた陛下は、視線を外すことなく深く息を吐き小さく呟いた。

「・・・・そうだ」

見詰め合っていた彼女の瞳が瞬時大きく見開いたが、直ぐに柔らかく微笑んだ。 
その微笑みは酷く儚げだが、震える唇から紡がれた言葉は力強いものだった。

「判りました! 陛下の為に出来ることが消えることなら私は直ぐにでも退宮させて頂きます。 本当に御迷惑をお掛けしていたんですね。 申し訳御座いません!」

深く御辞儀をすると颯爽と踵を返して彼女は執務室から退室した。 その後を李順が勢い良く追い駆けるが、私はその場から身動きが出来なくなった。



・・・・借金があるのではなかったか。
そのために掃除婦までして、私に睨まれても残っていたのではないのか。
退宮するというが、借金返済の目処はあるのか。 

彼女を眼にすると頭痛がする。 
官吏と一緒にいる姿や話し掛けられている姿に胸が騒ぎ目を離せないでいると、頭の中を掻き回されている鈍ましい感触が襲ってくる。 その感触に苛立ち、バイト妃でいる彼女を何度睨み付けただろう。 その後に吐き気を催すほどの憔悴感を味わい、目の前が怖ろしいほどの闇に包まれる。

何故、彼女が気になるのか。 それが厭わしいと思うのは何故か。
彼女に居て欲しくないと思う反面、後悔しそうな予感に押し潰されそうになるのは何故か。
この気持ちに終止符を打ちたいと思っていた筈なのに、彼女から紡がれた言葉に傷付いていると思うのは何故なのか。 答えを出したいのか、伸ばしたいのか。

・・・・・彼女はきっと許しを請い、それでも王宮に留まりバイトを続けるのだと思った。 
それなのに、自分で彼女の問いに答えを出したというのに、それを今更否定したい気持ちになるのは何故なのか。 彼女が王宮を出て行こうとすることに裏切られた心境になるのは如何してなのか。 


静かになった執務室の中、ふと小卓上の蒸篭が目に留まり蓋を開けると仄かに湯気が立ち上がる。 無意識に中の肉饅頭に手を伸ばし、口にすると中から熱い肉汁が溢れてきた。 
慌てて手を宛がいながら食べ進めると何故かその味に胸が苦しくなる。 何か失ってはいけないものを手放したかのような消失感に苛まれる。

それが判らないまま、重い気持ちと共に飲み込んだ・・・・・。  








「夕鈴殿っ、待って下さい! ・・・・借金の件は如何なさいます?」
「っ!! そ、それは・・・・」

部屋に足早に戻ろうとする夕鈴を後宮立ち入り禁止区域に無理やり誘い、李順が言いにくそうに、しかしハッキリと問い質す。 その問いに夕鈴は身を竦め、そろそろと李順を伺うと眉間に皺を寄せている。 売り言葉に買い言葉だったのかも知れないが、あの時の夕鈴は泣き出しそうになるのを堪えるのが精一杯だった。 

「でもっ陛下は、今の陛下は私を見るのが辛いと、煩わしいと、頭痛がすると言っていたじゃないですかっ! 私は・・・・陛下を苦しめるつもりは・・・・ ないんです」

だから退宮するしか考えられなかった。 借金のことなんて浮かびもしなかった。 
自分が頑張れば頑張るほど、陛下を苦しめるなら逃げ出したって仕方がないじゃないかと李順を涙目で見上げた。 老師が 「どうした、若造メガネと揉めているのか?」 と二人の雰囲気に目を見開いて問い掛けて来たが、夕鈴は首を振って身を竦める。

「・・・・陛下が辛いのでしたら私は消える方が良いと思います。 だって、このままでは仕事ばかりで倒れてしまいます。 小犬にも戻れず落ち着く暇がないじゃないですか」

夕鈴の心配気な顔を見ながら、李順は眉間に皺を寄せた。 苛澄蘭の部屋に行く暇を与えないように周宰相と李順が大量の書簡を陛下に渡しているため、確かに睡眠時間を削っているのは確かだ。 しかし桐からの報告では、彼女が陛下の私室に足を運びことがあると聞いている。
彼女が陛下の私室に持ち込んだものは全て老師に渡し、薬物が混入されていないか調べ上げるようにしている。 妖しい茶を排除してから、他の者と接触しているようには見えないが、侍女を遠ざける彼女の行動は不穏な部分が確かにある。 
桐が気付いた足音を立てずに歩く動作と、優雅な所作が見せる彼女の品格。
勿論、村人が持つべきものではないが、何処の出自か未だ不明な状態。 
茶に含まれた特定作用のある成分が何処の国のものか急ぎ調べている最中だ。

「では、夕鈴殿。 退宮ではなく、一時的な里帰りということにしましょう。 実際に借金返済の目処もないままで、一方的な退宮は認められませんからね」
「うぐっ! ・・・・・では、それで・・・・・・」

夕鈴は渋々了承し、下町の実家に戻ることにした。 すっぱり王宮とは、陛下とは縁を切るつもりでいたのに、借金が夕鈴の枷となる。 期間未定の、もしかしたら其の侭借金だけが残る里帰り。 不安は残るが、今は仕方がないと夕鈴は項垂れるしか出来なかった。

急な妃の里帰りに部屋付きの侍女は揃って蒼褪めた。

「少しだけ、実家に戻らせて頂くこととなりました。 皆様には突然のことで御迷惑を掛けますが、少ししたら戻らせて・・・・頂きますので。  ・・・・ごめんなさい」

夕鈴が眉根を寄せて謝罪の言葉を言うと、侍女の一人が 「お妃様は悪く御座いません!」 と顔をあげた。 彼女は真赤な顔で涙を堪えているように見え、夕鈴は微笑みながら言葉を返す。 

「・・・・嬉しく思います。 では暫らくの間、失礼を致しますね」
「お妃様、御戻りになられますよね? 陛下は未だお妃様を想って居られます!」
「そうですわ。 新しい妃は目新しいだけで、陛下の御心はお妃様だけに・・・・」
「そうです! でなければお妃様を抱き上げたりはなさいませんわっ!」


夕鈴はじっと侍女らを見つめた後、深く御辞儀をして彼女らを退室させた。

 




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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:12:12 | トラックバック(0) | コメント(18)
コメント
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2012-11-13 火 22:59:30 | | [編集]
この続きは気になりすぎます
こっちが苦しいぐらいです
続きを続きをお願いします。
2012-11-13 火 23:09:59 | URL | 秋 [編集]
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2012-11-13 火 23:46:16 | | [編集]
Re: タイトルなし
yuri様。 いつもありがとう御座います。 いや~、借金がないと其の侭実家に・・・になるし、李順に言わせる台詞だから有りかな?と。(爆) これから実家に戻った夕鈴と王宮での陛下に分かれます。 ははは、さあ、どうしましょう?
2012-11-14 水 00:12:39 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
秋様、コメありがとう御座います。 今週はちょいちょい更新が遅れそう。 すいません。 ばたばたしているもので。 夕鈴ガッカリバージョンは可哀想なのであまり苛めないように頑張ります。 陛下を苛める事にします!!!!
2012-11-14 水 00:14:29 | URL | あお [編集]
Re: 泣かせたわね!
ビスカス様、毎回爆笑ものです。 深夜にコメント確認をしたので、声を抑えるのに一苦労!! 今回も有難い説教に感謝感激です。 さあ、陛下は今後どうするか! 私も知りたい!! 
2012-11-14 水 00:16:01 | URL | あお [編集]
キャアー夕鈴ついに耐えきれなくなって早まったことを口走ってしまいましたね
今の陛下には夕鈴がどんな行動をとるかなんて、よめないですもんね・
早く帰って来てね夕鈴
2012-11-14 水 00:17:14 | URL | ともぞう [編集]
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2012-11-14 水 12:53:37 | | [編集]
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2012-11-14 水 17:12:15 | | [編集]
初めて感想かきます!

もう続きが気になりすぎて毎日チェックしてます!
楽しみに待ってますねw
2012-11-14 水 18:54:41 | URL | 藤りんご [編集]
Re: タイトルなし
出来るだけ早く王宮に戻れるように頑張ります。 陛下落ち込ませて、落ち込ませて、落ち込ませてから夕鈴を戻しましょう! ともぞう様、落ち込ませるので少々御待ち下さいませ。
2012-11-14 水 21:30:53 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
秋様、皆様の御陰で10万HITです。 わあい!! 陛下が軟禁っていいな~。 ふん、ふん。 面白そう。 あ、頭の中にunderが浮かんで来ちゃった。 今はやばいですよね! ほほほほほ。
2012-11-14 水 21:35:05 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
rita様。 苛澄蘭(か ちょうらん)で読み方あっています。 猛禽女、爆笑です。 彼女の出番が最近なくて淋しい私です。 もっと猛禽女の活躍の場を作らなければ。 あら、駄目? 
2012-11-14 水 21:41:30 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
藤りんご様、はじめまして。 コメント嬉しいです。 ありがとう御座います。 時々サボるけど、出来るだけがんばって更新していきたいと思います。 どうぞ宜しくお願いします。
2012-11-14 水 21:42:44 | URL | あお [編集]
あまりに可哀想で泣けてきます。
と、同時に、戻った陛下がどれだけアワアワするかで笑えたりもします。
本当にあおさんのお話は引き込まれてしまいます。
あおさん、お忙しい様子ですしリアルを最優先ですが…続きが読みたくて胸がもたれそうです(>人<;)
どうか、短かくでもいいのであまり間をおかず…書いてください〜(>人<;)
2012-11-15 木 19:19:32 | URL | 希望 [編集]
Re: タイトルなし
希望様、なんて嬉しいコメントを。 もう感激の涙で前が見えません。 うるるるる。 頑張りますので、お付き合い下さいませ。 ありがとう御座います。
2012-11-15 木 21:09:01 | URL | あお [編集]
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2016-01-03 日 18:12:59 | | [編集]
Re: タイトルなし
れん様、コメントをありがとう御座います。この話ね~、陛下の記憶をなくしちゃって完全狼にして楽しんでいたら、夕鈴可哀想が結構来て、同じくらい『仕返しはどのようなものを?』と期待されて、急に焦った作品です。へこむ夕鈴に同情票が多くて、とっても楽しかったです。ありがとう御座います。
2016-01-04 月 15:56:56 | URL | あお [編集]
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