スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
秋霖  13
嬉しいです、100000hit突破!!!! 
偏に皆様が飽きもせずに足を運んでくれた御陰です。 本当に感謝してます。 
鳥肌が立つほど嬉しいです。 ありがとう御座います。 (^^)/




では、どうぞ。
















「暫らくお仕事、お休みになったの・・・・」

急に実家に戻って来た夕鈴に青慎は驚いたが、憔悴しきった様子の姉に 「そうなんだ。」 と短く返答して茶を淹れた。 ありがとうと掠れた声で呟く姉に微笑み返し、一人にしてあげようと青慎はいつもより早い時間に学問所に向かった。 
ひとりになった家で夕鈴は虚ろな瞳で台所に立つ。 
今、自分が出来ることは青慎の為に食事を作り、洗濯をして、過ごしやすいように家を整えることだけ。 今はもう余計な事は考えずに家で過ごすのだと瞑目した。 
それなのに頭の中には雑多な想いが浮かんできては夕鈴を苦しめる。

長い間王宮に勤めることになり、その上、青慎には嘘までついている自分。 
しかしその嘘もこれで終わるかも知れない。 嘘を嘘のままで 『臨時花嫁』 をしていた自分を消してしまえるかも知れない。
・・・・・・問題は借金だけ。

陛下の問題が解決したとして、・・・・もしかして苛澄蘭が操られていたとしたら、彼女はそのまま陛下の妃としてお傍に侍るかも知れない。 本当に彼女が酷い目に遭っていたとしたら・・・・・ 優しい陛下ならそうするだろう。 きっと捨てては置かないだろう。 
そして私は後宮立ち入り禁止区域の掃除をしながら借金返済の為に一生を遂げるのかも知れない。 陛下と妃が、陛下と正妃が寄り添う姿を見ながら・・・・? 
胸の内を告げることも出来ない立場、いや陛下を見ることも出来ない立場の掃除婦として、王宮の片隅にいることになる? 
もう二度と見ることも触れることも出来ない立場となって、それでも王宮に留まることに?
 
そう考えると全身が強張り、胸が締め付けられるように痛くなる。
でも今は何も考えずに食事の支度をしようと大きく首を振り、頭の中の考えを振り払ってから大きく深呼吸をして夕餉つくりの為に震える手で用意を始めた。







・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・








しかし、王宮では問題が起こっていた。

夕鈴付きの侍女がお妃様が御実家に御戻りになったのは陛下の寵愛が消えたからだとの蔑視や嘲りに耐え忍んでいた。 出自不明の妃らしい消え方だと嘲笑する声が後宮勤めの侍女の耳に届いても、彼女らは黙って夕鈴の戻りを待っていた。

そんな或る日、夕鈴がいつ戻っても良いようと部屋に花を飾るために庭園で花を摘んでいると、陛下が後宮にある苛澄蘭の部屋へ渡る姿を見かける。 拱手してその姿をやり過ごしていたが、夕鈴が後宮から去る前に 「お妃様は悪く御座いません!」 と声を張り上げて真赤な顔を向けた侍女が勢い良く夕鈴の部屋へ駆け出した。
悔しくて、陛下が他の妃の部屋へ渡る姿を見るのが辛いのだろうと他の侍女が眉根を寄せて彼女の姿を追っていたが、その侍女は直ぐに部屋から飛び出すと、手に何かを持って陛下が渡った苛澄蘭の部屋へと走り出したのだ。
驚いた他の侍女が追い駆けると、彼女は大きな声で陛下へ叫んだ。

「国王陛下様っ! 今までお妃様だけに向けられていた微笑みを他の妃に向けることは耐えられませんっ! お妃様を、夕鈴様のことをお見捨てになられるのですかっ!?」

突然の声に振り向いた陛下は紅い瞳を大きく見開き、侍女を黙して見る。 真赤な顔でワナワナと振るえながら侍女が陛下からの返事を待つが、冷たい視線で見下ろされるだけで返答は無い。 涙を流しながら侍女は手に持っていた壜を持ち上げ、陛下に悲痛な声で叫んだ。

「お妃様を・・・、お見捨てにするのは嫌ですっ!!」

そのまま手を振り下げて持っていた壜を陛下の足元へと投げ落とした。 壜は鋭い音を立てて割れ、香油が回廊に飛び散り、そして陛下の長袍裾にまで香油が跳ねた。 
彼女に追い着いた他の侍女は悲鳴をあげて蒼褪めたが、壜を投げた侍女は荒い息を吐きながら陛下を涙を溢れさせながら見上げた。

「いつも陛下の為に心から尽くしておられたお妃様をお忘れになるのは嫌です・・・・」

全身を震わせながら侍女はポロポロと涙を零した。 直ぐに斬り捨てられてしまう姿を脳裏に浮かべた他の侍女が彼女の元へと走り、陛下の前に跪き低頭する。

「陛下、大変申し訳御座いませんっ! この娘はお妃様に心酔しており此度のことに酷く困惑をきたしての行動で御座います故、どうぞ、どうぞ御容赦を願いますっ!!」
「苛澄蘭様へ御渡りの途中、大変な無礼をしましたこと、心より謝罪申し上げますっ!!」

壜を投げた侍女を引き摺るように鎮座させ、侍女らは平伏して陛下の沙汰を待った。
このまま刀に貫かれるのかも知れないと、息を詰めて震えていたが、陛下はその場から動くことなく彼女らを見下ろしている。余りの緊張に一人の侍女が意識を失い倒れるが、真赤な顔をした侍女は涙を流しながら陛下を見上げ続けた。

「・・・・お願いで御座います。 お妃様を・・・・」

その震える声に何も答えず、踵を返した陛下は回廊を歩き出した。 
侍女らは陛下の背を見つめながら唇を噛み、涙を流し続ける彼女を伴い夕鈴の部屋へと戻るしか無い。 後できっと沙汰があるはずだろうと、年嵩の侍女がしゃっくり上げる彼女の身体を包み込むと 「わたし、お妃様に叱られますね・・・」 と淋しそうに笑った。 

「そうね・・・・。 お妃様は陛下が大好きですから、悲しませるような事はしてはなりませんよ。 きっと御戻りになったらすごく叱られますよ?」
「わたし・・・・ お妃様に叱られたいですわ」

侍女らはその言葉に胸が詰まり、皆が涙を浮かべて今は居ない妃のことを想った。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







夕鈴が夕餉の支度を終えて洗濯物を片付けていると青慎が学問所から帰って来た。 
何故か几鍔も一緒に部屋に入ると、いきなり夕鈴に大きな声で問い質してくる。

「おい、急に仕事辞めたってどういう事なんだ? あの役人野郎に何か言われたのか!」

今もっとも聞きたくないことを、我が物顔で家に入り込んだ金貸しに何故言わなきゃならないのだと、夕鈴が無視を決め込むと几鍔が目を細めて窺うように顔を覗き込んでくる。 
洗濯物を畳み終えて立ち上がる夕鈴の腕を掴むと、几鍔はもう一度同じことを問い質す。

「お前、仕事辞めたんだよな?」
「違うわよ、暫らくお休みを頂いたのよっ! 毎回人の家に勝手に入ってくるのは止めて頂戴! 私は金貸しと知り合いではないんだからっ」

しつこい几鍔に夕鈴が吼えると、やっと腕が開放された。 
眇めた視線で几鍔が小さく 「ふうん」 と呟くのが聞こえたが、夕鈴は背を向けて片付けの続きを開始した。 台所で勝手に茶を飲みだした几鍔を睨み付けるが、飄々とした彼は青慎に茶菓子まで要求し始める。 その存在自体を無視して、青慎のための夕餉の用意を始めると背後からまた声を掛けられる。

「・・・・お前、暫らく休みって、どのくらいの期間なんだ?」
「答える義務はないわ。 放っておいて頂戴」

夕鈴が短くも返答すると、几鍔は暫らくの間黙っていたが立ち上がると家から出て行った。 
二人の遣り取りにオロオロしていた青慎が 「几鍔さんは心配で顔を出してくれたんだよ。」 と 姉に告げるも、夕鈴は押し黙ったまま鍋を掻き混ぜている。 

「姉さん、あの・・・・・、本当に元気が無いように見えるけど大丈夫?」
「青慎・・・・ 大丈夫よ。 長い間王宮で働いていたから纏まったお休みを頂いただけ。 休みの間は下町でバイトして過ごすつもりだから青慎は学業に勤しんでね」

振り返った姉の微笑みは辛そうに見えて、青慎はそれ以上何も言うことが出来なくなった。 
几鍔との遣り取りにもいつものような覇気がなく見えたし、その上少し痩せて戻ってきたことにも口を出せなくなった。 ただ姉が家でゆっくり休めるようにと、それだけを青慎はそっと祈った。
夕鈴は青慎の気遣いと心配を背に感じながら、それでも説明する事は出来ずに黙るしか出来ない。 掃除婦として王宮に居るはずの自分なのだから、ただの休みとしか伝える事が出来ない。 思い出すだけでも涙が溢れそうになるから、触れないで欲しいと心の中で願った。

「父さんはきっとまた遅いのでしょう? 温かいうちに食べましょう! 姉さん特製の野菜たっぷり湯は久し振りでしょ? まあ、野菜の処分整理とも言うけど・・・・」
「ううん、嬉しいよ。 姉さんの湯は美味しいから嬉しいよ。 ありがとう」

眉根を下げた弟の微笑みに、夕鈴も同じような笑みを返して食事を始めた。 家に居る間だけでも、静かに、穏やかに過ごしたい。 今は、何も考えたく無い・・・・。






それなのに次の日の朝から几鍔はまた顔を出し、夕鈴に声高にバイトの紹介を始める。

「お前、暫らく休みで家にいるなら、短期間のバイトをして親父の借金返済でもしろ」
「・・・・朝から人の家に入らないでくれる? 父さんの借金は父さんが返すでしょ。 悪いけど関知しないわ。 短期間のバイトも・・・・・」
「そっちはばーさん絡みだ。 親父は抜きにしても人手が足りない。 出来れば直ぐに来てもらいたいとばーさんが言っている。 お前の仕事振りが気に入ってると」

夕鈴は背を向けて台所に立っていたが、おばば様絡みと聞き耳が大きく動いた。 
おばば様は怖ろしいほど口うるさくて我が侭だが仕事に関しては歳を感じさせない熱意と行動力を発揮するし、高商店で捕まった時は夕鈴を逃がそうとしてくれた恩人でもある。 
そのおばば様が夕鈴を指名している?

「如何する? 無理にとは言わないが呆けて過ごすよりいいんじゃねえか?」
「・・・・・どんな仕事なの?」

振り向くと腕を組みながら真摯な表情を見せる几鍔が立っていて、夕鈴は少し戸惑いながら尋ねると、おばば様が管理する高級宿の下働きが足りないとのこと。 
主に客室掃除や料理の運搬、風呂場の掃除などと聞き、夕鈴は 「それなら・・・」 と頷いた。 
自宅で無為に過ごすより、身体を動かしていた方が余計なことを考えることは無いだろう。

「青慎が帰って来たらバイトのことを伝えるわ。 短期間なら・・・・」
「短期間なのは確かだ。 ばーさんの情報だと隣国から多くの商人が来て商売をするそうで、その為に宿がフル回転になるそうだ。 頼めるなら正直助かる」
「・・・隣国って、庚土国のこと? フル回転になるって、そんなに沢山の商人が白陽国に来るの? 何の商売なの? そんなの私・・・・・」

・・・・・聞いていない。 いや、ただのバイト妃が知る訳が無いだろう。 
そこは以前から線引きされていたことだ。 しかし苛澄蘭が襲われたという国境近くの村は、庚土国に近かった筈。 何か関連しているのかと疑ってしまう。 
商売とは陛下に飲ませていた妖しい茶葉に関係するのだろうか。 
それとも全く関係のない商売なのだろうか・・・・・。
 
「青慎がお前の心配をしていたぞ。 家に閉じ篭って過ごすよりは、金にもなるし親父の借金返済に少しは役立つだろう。 お前も・・・・ 借金があるんだしな」
「父さんの借金分まで働くつもりはないわよ。 でも・・・・ 早く返事をする」
 
几鍔の言う通り、確かに青慎が心配気な顔で窺うように何度も見てくるのを知っている。 
それに確かに借金返済の為に動き出さなきゃならない。 このまま借金まみれで下町に居座るか、借金返済の為に王宮で掃除婦になるかしか考えられないのだから。 
短期間のバイトなら、この先何があっても支障は無いだろうと思えた。 
おばば様の役に立てるのだし、几鍔の勧めはいい考えのように思えてきた。






→ 次へ





スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:13:13 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-11-16 金 08:35:08 | | [編集]
更新ありがとうございます!

泣ける〜(T_T)
侍女さんの気持ちがめっちゃ切ないです(T_T)
なんてドラマチックなお話が書けるんですか!←いや、怒ってるわけではないのですが、めっちゃはまります!!
もうこんなに悲しませて、後々陛下はどうするんでしょう!
余韻にたっぷり浸りたいし、ラストも長くお願いしたいです、悲しませた分、陛下にめっちゃ苦労させて長々甘くしてほしい…希望です、あの、意見じゃないです(>人<;)

本日もリアも頑張りつつ…続きも頑張ってください。
応援してます( ´ ▽ ` )ノ
2012-11-16 金 08:36:50 | URL | 希望 [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-11-16 金 10:26:24 | | [編集]
Re: タイトルなし
侍女さん、小刀を持って突撃。 ・・・・・・いや、それでは侍女さん、あっという間に昇天ですよね。 今の陛下相手だと。 そう思って壜にしました。 侍女さんは名無しですが、また登場する予定です。 yuri様、いつもコメントありがとう御座います。
2012-11-16 金 20:34:58 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
希望様、遅くなりましてすいません。 どうも仕事が進まずに・・・・。 職員会議で遅くなる日もあったりして、帰るとぐったりと・・・。 リアは頑張るだけ疲労が増します。 くすん。 さあ、下町編突入となります。 こちらも宜しくお願いします。 いつもありがとう御座います。
2012-11-16 金 20:37:06 | URL | あお [編集]
ありがとうです。
ビスカス様、楽しいコメント、いつもありがとう御座います。 夕鈴活躍・・・・・して欲しいです。 私の妄想がどう転ぶか、自分でも判らないので困りものですが。(爆) 下町での動きも悩みながら書いていくつもりです。 どうぞ御付き合い下さいませ。 コメ、ありがとう御座います。
2012-11-16 金 20:41:48 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-11-17 土 18:50:26 | | [編集]
Re: タイトルなし
うわお、すごっく嬉しいコメントを頂いてしまい、恥ずかしい位です。 バニーガール様、恥ずかしいけど嬉ししい、そしてありがとう御座います。(^^) 拙い乱文ばかりが並んでおりますが、自己満足で開いたサイトです。 覘いてくださるだけでも嬉しいのに、コメントありがとう御座います。 のんびり書いておりますので、時々更新が滞ることもありますがこれからも御付き合い頂けたら嬉しいです~!!!
2012-11-18 日 00:36:19 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。