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秋霖  20
なんかやたら長くなりました。 もう少し御付き合い頂きたいです。すいません。
さて王宮に戻っての話になります。 陛下苛めはもう少し先です。 コメに毎回爆笑させて頂いております。



では、どうぞ。














王宮に戻った陛下は、眇めた視線の側近に直ぐに執務室に入るよう指示をされる。


「・・・・毎回、何時の間にか姿を消される陛下に翻弄される私の苦労をお判りになって頂きたいと常々思っておりましたが、そろそろ私の堪忍袋の緒が切れそうです。 しかし、先ずは遣らねばならないことが山のように陛下をお待ちしております」
「・・・・・お前の憤りは判るが、今回は良い結果に出たのだから多少は許して欲しいと願うな。 夕鈴のお陰で正気に戻れた。 ・・・・・で、奴は何処だ?」

刑吏に引き渡した隣国からの武器密輸入の商人らは厳しい取調べが済み、粗方は裏が取れていた。 後宮に住まう『御妃』 も陛下が下町に行ってからは部屋に閉じ篭っているのか、姿を見ることがないと報告が来ている。 
その報告を聞き、陛下は紅い瞳を細めて李順に伝える。

「私は今まで通りの演技で彼女の元に赴こう」
「御意。 それと浩大から武器商人と共に行動していた人物を引き続き捜索中との連絡が来ております。 隠密が追い詰めているとの事ですが詳細は未だ不明です」
「判った。 では女狐退治に赴こう」
「は。 政務も溜まっております故、手早く片付くことを願っております」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

執務室から出る寸前、李順から投げ掛けられた言葉に足を止め、陛下は振り向くと昏い笑みを側近に見せる。

「お前のその言葉が深く胸に響くよ。 罠に捕らわれていた私にかなり苦労しただろう」
「勝手に下町へと足を運ぶ陛下に比べたら大したことはないですよ。 御心を捕らわれていた陛下ですが、一応政務には取り組まれておりましたのでね。 それでも政務は日々溜まっていきますので、御覚悟を」

李順の言葉に片手を軽く持ち上げ、陛下は執務室から出て行った。 
肩を落とし深く息を吐いた李順は眼鏡を持ち上げて、周囲に居るはずの桐に声を掛ける。 声を掛けられた桐がするりと姿を見せると、陛下に付くようにと指示を出す。

「陛下が後宮に渡る。 万が一を考えて付き従うように」
「了解しました・・・・ が、陛下に万が一って有り得ないような気がしますけどね」
「・・・・・彼女を簡単に殺されては裏を調べる時に時間が掛かります。 後宮を陛下の怒気で穢されるのも困りますので、そちらを止めて欲しいという意味ですよ」
「ああ、了解です。 あー、お妃さんは直ぐに戻るのですか?」

李順が頷き 「此方が落ち着いてから戻るように浩大に伝えてます」 と話すと、桐が頤を押えながら何度も頷き、ほくそ笑んだ。 李順がその笑みに訝しむと、その視線に気付いた桐が片眉を上げて口を開いた。

「いや、お妃さんは一刻も早く王宮に戻って来た方がいいと思ってね。 あの陛下を止められるのも、宥めるのもお妃さんしか出来ないだろう。 今日中にでも戻って来て貰った方が裏を調べるのにも、陛下の精神安定にもいいだろうと。 老婆心ですがね」
「・・・・・・・・ふぅ。 今日は無理でしょうが、早朝にでも使いをやりましょう。 隠密にその旨を伝える手紙を渡すことにします。 まあ、早く戻って借金返済に勤しんで貰うことにしましょう。 最近の大臣らの動向も気になりますしね」

目を細めた桐が姿を消すと、李順は面倒だと文句を言いながら筆を持った。









・・・・・・・   ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・











後宮の回廊を歩く陛下の姿に警備兵が静かに低頭する。 
その冷酷非情な様相に全身を緊張させながら通り過ぎるのを一体何があったのだろうと、後宮へ渡る姿とは思えない様子に息を呑んでいた。 兵らのその気配を感じ、陛下は歩調を緩めて呼吸を整えた。 彼女を謀るつもりなのだから、ここからは演技が必要だと苦笑する。 
苛澄蘭の部屋の前で苦笑を冷たい笑みへと変え、部屋の扉を軽く叩き、同時に返答を待たずに部屋の中へと歩を進める。

「・・・・遅い時間に悪いが君の顔が見たくなった。 今、良いだろうか」
「陛下っ! え、ええ。 ・・・・暫らく御無沙汰でしたので驚きましたわ」

何かを書いていたのだろう、突然の訪問に慌てた様子で澄蘭はその文を丸めて袖に押し込んだ。 それを視界に留め、近くの椅子に腰掛けると澄蘭が妖艶に隣に寄り添って来た。 
彼女から甘い香りが纏いつくように鼻につき、眉間に皺が寄りそうになる。 

「少し政務が溜まり、側近に追い立てられていたんだ。 君を一人にさせてしまい申し訳ないことをした。 ・・・・・最近は眠れているだろうか」
「はい、少しずつ心穏やかな時間が増えてきております。 これも陛下の御寵愛のお陰と感謝しております。 ・・・・・・そう謂えば後宮にいらっしゃったもう一人のお妃様が退宮されたと伺いましたが、それでは私一人が後宮に・・・・ ということですね」
「そうだな。 君一人が私を癒してくれれば良い。 大変だろうか?」
「いいえ、陛下を独り占め出来ると知り嬉しく思います。 ・・・・お茶でも御飲みになりますか? その前に御疲れの陛下に良い香りを愉しんで頂きたいですわ」

すっと立ち上がった澄蘭は卓上の香炉に炭を入れる。 煙がゆっくりと立ち込めると甘い香りが部屋に充満し始める。 陛下が細めた視線で澄蘭を見つめると艶かしい笑みで振り返り、茶の用意を始めた。 陛下が静かに立ち上がり彼女の背後から声を掛ける。

「今日は綺麗な月が見える。 ・・・・星空も美しく瞬いているな」

窓を開けると満月に近い小望月が見て取れる。 部屋に滑り込んで来た夜気に目を見開いた澄蘭が戸惑いながら 「でも秋も深まり寒いですわ。 どうぞ窓をお閉めになって下さいませ」 と強張った笑みを浮かべる。 

「政務で疲れているんだ。 少し頭をすっきりさせたい」
「御疲れの陛下の為に香を焚きましたのに・・・・ 香りが消えてしまいますわ」 

卓に茶杯を置き、澄蘭は窓辺に佇む陛下に品を作ってお願いをする。 その言葉に陛下は口角を持ち上げ、低い声を響かせる。

「頭をすっきりさせて、これ以上怪しい術に陥らないように気を付けねばならない。 私はこの国の王だから。 ・・・・君は隣国の間諜なのだな」
「まあ・・・・、 何を仰っているのでしょうか。 その様な戯言を陛下が仰るなんて私への寵愛が薄れたということなのでしょうかしら? 悲しいことですわ」

月から視線を移した陛下は冷酷な表情で怜悧な視線を澄蘭に向ける。 
その鋭い視線に袖で口を隠した澄蘭は蒼褪めて見えた。 口角を上げたまま彼女へと大きく一歩足を進めると、澄蘭は目を細めて一歩後退る。

「苛澄蘭。 ・・・・ああ、すっかり思い出せたよ。 国境の村で家に入った途端、君に抱きつかれ鍼を打たれた。 そして香か・・・・ この私が暗示に掛かりやすい状況に持ち込まれたとは情けないな。 しかし、御陰で勉強になった。 ・・・・どんな場合でも女には気を付けろとな。 礼を言うぞ、苛澄蘭」

陛下がほくそ笑みながら更に一歩近付くと、澄蘭が陛下の足元に卓の香炉を叩き落とし踵を返して部屋を飛び出そうとする。 陛下が放った小刀が部屋の扉に突き刺さるも、澄蘭は瞬時身を翻し部屋から回廊手摺りを飛び越して庭へと降り立った。 彼女が着地と共に口に指を宛がい指笛を鳴らそうとした時、背後からひやりとした感触が彼女の首筋に突きつけられる。

「綺麗な女性は好きだけど ・・・・あんたの匂いは苦手だな」

彼女が振り返る隙を与えず後頚部に手刀を当て気を失わせ、地面に倒れた澄蘭を一瞥した桐が陛下を見上げる。 背後に月を従えた陛下の表情は昏く、ただ鞘から放たれた刀が月光を浴びて輝いていた。 やはりヤル気だったのかと桐が嘆息すると、陛下が肩を竦めて苦笑する。

「これ以上夕鈴に怒られるような事はしないつもりだ。 ・・・・その女は刑吏に渡すように」  
「御意。  ・・・・つもり、ね。 そういう事にしときましょう」

自分が来るのが遅ければ喋れるだけの状態になっていたかも知れない澄蘭を担ぎ上げ、桐は後宮を後にする。 目を眇めた陛下が見送ると、背後の部屋から甘い香りが流れて来た。 
その香りを振り払うように陛下は後宮を後して刑房へと足を向けた。














翌日、早朝から王宮よりの使者の伝言を受けた夕鈴は胸を撫で下ろして安堵した。 本当に陛下が元の常態に戻り、バイト継続を許されたと知り荷物を纏め出す。 退宮した時に持ち帰った小さな荷物を卓に置くと、早速朝餉作りに掛かる。

「姉さん、王宮でのバイト続けるの?」
「うん、下町でのバイトより高額だしね。 学問所の学費は任せて頂戴。 あんたはしっかりと勉強して科挙のことだけ考えていてね。 あとは姉さんに任せなさい!」

父さんに借金させないように・・・・そう追加しようとしたが青慎には無理だと思い、口を閉ざす。 心配げな表情の青慎が学問所に向かうのを見送ったあと、洗濯を干していると浩大が姿を見せて 「お妃ちゃん、迎えに来たよ」 と告げる。 

「王宮は大変な騒ぎかしら? 陛下は首謀者を捕らえたの? ・・・・彼女は?」

片付けを終えて荷物を持った夕鈴から浩大は矢継ぎ早な質問を受ける。 
曖昧な表情を浮かべた浩大が笑いながら 「ま、行けば判るよ」 とだけ伝え、王宮へと一緒に歩き出した。 下町を歩いていると几鍔の子分が驚いた顔で夕鈴に声を掛けてきて、王宮のバイト再開を知ると 「直ぐに兄貴に伝えて来るっ!」 と走り出した。

「何を伝えるのよっ!?」

夕鈴が叫ぶが子分が足早に姿を消してしまい、浩大がケラケラと哂う。 
几鍔から面倒なことを言われる前に!! と夕鈴が小走りに王宮に向かい出だすと、浩大が 「いいのかい?」 と意地悪そうな顔で夕鈴を伺う。 
当たり前だと足を早めるも背後から怒鳴り声が聞こえ、夕鈴は頭痛に襲われて眉間に皺を寄せる。 浩大が口を押えて哂いながらゆっくりと気配を消して離れて行くのを恨めく思っていると、強く腕を掴まれ振り返された。 そこにはやはり几鍔の姿が。

「お前っ、あんなにされて王宮に行くのかよ!」
「借金返済は自分で決めたのよ。 ちゃんと自分でやるって決めたって前にも言ったでしょう。 ・・・・今回は心配掛けた自覚はある。 でも大丈夫だから!」

確かに世話になったし、几鍔のバイト紹介で怪しい人物も見つけることが出来た。 そこはちゃんと御礼を言うべきだろうと夕鈴が頭を下げると、その頭をぽかりと叩かれた。 痛くはないが思わずむっとして顔をあげると、几鍔の呆れた顔が見て取れる。

「ばーか、心配なんかしてねえよ。 だが青慎にだけは心配掛けるなよな」
「あんたに言われたくないわ。 青慎はちゃんと判ってくれるわよ! ばーか!」
「馬鹿はお前だ、ばーかっ!」

そう言うと頭をぐしゃっと強く撫でて几鍔は背を向けた。 
乱れた髪を戻しながら去って行く几鍔を睨み付けていると浩大が傍に戻って来て何度も頷くから首を傾げると 「へーかが落ち込むのが面白いから後で報告しようと思ってね」 と意味不明なことを呟いている。

「それより几家の宿にいたもう一人の怪しい人の正体、掴めたの?」
「ああ、勿論だよん。 優秀な隠密浩大ちゃんだよ? 昨晩捕らえて王宮に連行済みだよ。 詳細は王宮についてからにしようぜ。   あ、饅頭買って行こうよ! 酒も欲しいな。 じいちゃんの分も買わないと後でうるせーなー」
「・・・・・・早く王宮に行くんじゃないの?」

買い食いを始めた浩大を置いて夕鈴は更に足を早めた。








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長編 | 00:55:20 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2012-11-28 水 06:37:26 | | [編集]
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2012-11-28 水 08:46:17 | | [編集]
Re: 下町さよなら
ビスカス様、体調が戻られて良かったです。子供の体調って気になりますものね。大人もうつらない様に充分気をつけねば! コメ、ありがとう御座います。下町編終わりですが、几鍔兄貴の登場が無くなって悲しいのは自分かも知れない。結構几鍔兄貴が出てくるの作品、好きだから。でもくっつけようとは思わない鬼畜な私。ごめんね、兄貴。
2012-11-28 水 08:48:20 | URL | あお [編集]
Re: 初めまして
makimacura様、はじめまして! そして温かいコメントありがとう御座います。きゃあ、うれしい!地獄の政務耐久マラソンとか爆笑です。 それ楽しいかも!!(陛下以外) うん、うん。 では陛下へこませに頑張ります。 もう少し御付き合いいただけると嬉しいです。
2012-11-28 水 08:50:33 | URL | あお [編集]
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2012-11-28 水 18:44:16 | | [編集]
Re: タイトルなし
「やれっ!」と言う方と、「あまり苛めないでね」と言う方が半々くらいになってます。(爆) 陛下、あらゆる意味で愛されていますね。 yuri様は優しいです。 どんな風に苛めようか楽しくて仕方がない私なのに。 お手柔らかに・・・・・はい。 出来るだけ。(笑)
2012-11-28 水 18:49:13 | URL | あお [編集]
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