スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
暦の果  3
今回誘拐された夕鈴ですが、皆様からのコメントに「痛い?痛い?」と心配する声が多くて、
夕鈴は本当に愛されているなと嬉しくお茶を啜っています。 すいません。 痛いです。


では、どうぞ。
















_________ 混沌とした闇の中、夕鈴は全身の痛みで目が覚める。
 
未だ縛られたままで縄で擦れた場所が痛みを訴える。 薄着でいるため寒気にも襲われ、時期的に凍死させるのが目的かと思い浮かんでしまうほどだった。 
目隠しをされているので周囲の様子も時刻も解からないが、未だ朦朧とした頭に自分が宴で酒を飲み酔ってしまって部屋に戻り、その後自室から攫われた経緯が思い出される。 
後宮の正妃自室にまで忍び込んだ手口と自分の今後を思うと、涙ぐむよりも先に恐怖に襲われる。 宴開催という事で通常より警備は厳重だった筈だ。 禁軍を纏める将軍が宴の前に全警護を任されたと正妃である夕鈴の元に挨拶をしに来ていた。 大道芸人や楽団の出入りがあるため、夕鈴自身も充分気を付けるようにお願いされ、また禁軍兵士の配置を教えられていた。 
日中から警護兵がいつも以上に緊張した表情で配され、禁軍将軍が李順と共に何度も警備に関しての話し合いを行なっていた。
 
それなのに如何して自分は攫われたのか。 
きっと皆に迷惑を掛けてしまった。 立場が変わって今まで以上に気を遣わなければ為らないというのに、勧められるがままに酒を飲んでしまい、酔い、こんな状態に・・・・・。
自覚がないのかと側近である李順にどれ程の叱責を受けても構わない。 
今は直ぐにでも戻るべき努力をしなければならない。 
しかし縛り上げられた腕は後ろへ捩じ上げられており、少し動かすだけで酷く痛みが増す。 
それでも足首と手首を必死に捻ってみる。 痛みを痛みと考えないように、李順の怒っている顔を思い浮かびながら必死に動かしていると床に振動が伝わり、誰かが来るのが解かった。
 
扉が開き、急ぎ力を抜いて寝た振りをしたが、近付いて来た足が夕鈴の元で止まったと同時に髪を掴まれ持ち上げられた。
 
「・・・・っ!」
「御正妃様、目覚められましたか。 手首に酷く血が滲んでおりますよ。 これでは寝た振りも出来ないではないですか。 狼陛下の正妃として多少粗忽で御座いますね」

背後で手首と足首が引き攣り新たな痛みを覚える。 視界が塞がれた状態だが、その声にはやはり聞き覚えがあった。 確か夕鈴に杯を勧めてきた大臣の内の一人。 
普段夕鈴が係わる部署ではないが、財政管理に関する部署だったと思い出す。 
掴まれていた髪から手が離れ、夕鈴はそのまま強かに床に頬を打ち付ける。 衣擦れの音が聞こえ、相手が立ち上がったのが解かると同時に横たわった夕鈴の腹に蹴りが打ち込まれた。

「ぐ・・・ぁっ!」
「ああ、失礼致しました。 出来るだけ綺麗な御姿のまま陛下にお返ししようと思って居りましたのに、不調法なことを。 申し訳御座いません。 ・・・・・いや」

ふと黙り込んだ相手の無言が頭の上から降り掛かる。 腹に受けた蹴りが後からジクジクと鈍い痛みを夕鈴に与え、その際に引っ張られた縄により手足に痛みが増し、瞼の裏に赤と黒の火花が散った。 数回短く息を吐き呼吸を整えることが出来た時、沈黙していた相手から非情な言葉が転がる夕鈴に届く。

「どうせなら慰み者になり陛下の前に戻れない姿になった方が後腐れないでしょうかね。 抵抗され、抗った跡ということで多少の痣は奇怪しくはないでしょう。 ああ、その様に怯える御顔がたいへん宜しい。 では、楽しみに御待ち下さいませ」

目を瞠るも視界が塞がれているため、相手の表情が掴めない。
その相手が発した内容に背筋が凍る。 自分を攫ったその目的は陛下へ何かを要求するのだろうと思っていたが、今の発言で要求の内容が朧気ながら解かった気がした。
正妃である私を穢し、陛下の前に出られないようにすると。
その後、きっと新たな正妃、または妃を勧めるつもりなのだろう。 
頭の芯から冷水を浴びたかの様に怖ろしい程の寒気に襲われる。 痛みなら我慢出来る、時間の経過と共に薄れていく怪我や痣を何度も体験している。 バイト時代囮として、それは安定した平和な御世の為に、陛下が望む泰平の世の為に必要なことだった。
でも正妃となった今、謂われた言葉通りに穢されたら私は如何するのだろう。 陛下は、そんな妃を傍に置くだろうか。 勿論、捨て置くことなどせずに労わり慰めるだろうとは思うが、陛下がそれを赦したとして臣下はそれを良しとするだろうか。 それに自分はそれでも陛下の傍に居ようとするだろうか。 自分の想像に縛られた手先までが冷たく痺れ出した。 

しかし、夕鈴が深く沈みこんで考えていたのは短時間。
 
酒に溺れて、窓を開け放して眠り込んだのは自分が悪いのだと解かっている。 だったら出来るだけの事をするだけだ。 抗って抗って、それでも駄目なら次の手を考えるだけ! 
先ずは視覚の確保。 床に覆われた布地を押し付けて如何にか取り外そうと頑張る。 
肌が擦れて涙が出るほど痛むが怒りの方が勝っていた。

ちくしょー! 庶民根性をなめるなよっ!!









・・・・ ・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・











「陛下、お待たせしました。 ご報告は此方に」

桐が息を引き取る寸前に聞きだせる事は全て聞き出せたと報告に参上する。 
冷酷な表情を呈した陛下に殺気を抑えることもせずに睨ね付けられ続けていた側近が肩から力を抜き嘆息する。 桐の報告により大臣の名が判明し、陰謀が明らかにされたのだ。
大臣の親族一派が現正妃を良しとせずに企んだものと知り、殺気を漲らせた陛下の声が響く。

「・・・・場所は突き止めているのだろうな」
「彼の者の別邸数箇所を押えるように兵を密かに動かしてます。 首謀者が何処へも逃げられぬように国境警備隊にも伝達済みです。 直ぐにでも動けるよう全て手配済みです、陛下」
「一番怪しい邸は大臣の親戚の邸と思われます。 王宮よりその邸へと真っ直ぐ馬車が向かったと報告があり、本人は遅れてその邸へ向かっております。 先の馬車に妃が乗っていた可能性がありますね。  ・・・・直ぐに行かれますか?」

無言のまま踵を返した陛下に皆が動き出す。 
「一足先に!」 と浩大らが走り出し、李順が拱手して送り出した。
 
華やかな宴の締め括りの挨拶に最後まで残っていた大臣らの眠気も酒気も一気に吹き飛んだ事だろうと、李順はこめかみを押える。 冷酷な笑顔を浮かべ、散会の儀のため戻って来た陛下に皆は何を思っただろう。 方淵と水月も困惑の表情を呈していただろう。

正妃の手を取り柔らかな笑顔で宴に姿を現した陛下に、遠方より出席した各州からの貴賓や貴族、大臣、臣下一同が国の未来を祝い、和やかに始まった冬宵の宴。 
狸どもの腹の裡は窺い知れないが、大抵の者は自己に火の粉が降り掛からなければ、自己の利益が脅かされなければ、現行の幸せに浸かっていたいと願うだろうに、未だ己を省みずにより高い地位を利益を求めようとする愚かな輩もいるのだ。 

「・・・・全く馬鹿な輩がまだ居たとは驚きですよ。 冬の嵐が一刻も過ぎるように、お后の御身に傷ひとつ無いことを願っておりますよ」

李順が蒼褪めた表情で執務室の卓に視線を移す。 年内に済ませたい政務が、書簡が小山を作っている。 本当にお后に一刻も早く王宮に戻って、無事な姿で戻って貰わなければ、この山が積み重なり聳え立つことは間違いない。 それだけは・・・・・。
深い溜め息を吐くも、執務室にはそれに嫌な顔を見せる者は今はいない。
李順が背を正し咳払いをすると、隣室から黒衣の衣装を身に纏った密偵が姿を見せる。

「彼の大臣の親族、及び奥方の親族一族郎党、調べ終えたか?」

隠密が差し出した書類に目を通すと、眼鏡の奥で妖しい輝きが増す。 暫らく密偵を前に考え込んでいたが書類の一文を指差して隠密へと新たな指示を出し、ほくそ笑んだ。 口の中で何かを呟いた李順は密偵に向き直ると 「早急に」 と追加して送り出す。
自分のすべき事は一旦終えたと李順は自ら茶を淹れ、漆黒の闇が広がる庭園に視線を移す。 
あとは、陛下唯一であるお后がかすり傷ひとつ無い状態で戻るように祈るだけだ。

 








その頃、李順の願い虚しく、夕鈴は自分で額や頬に擦り傷を作りながら、どうにか目隠しの布を取り外すことに成功し、あとは手足を括りつけている縄との格闘を前に小休憩をしていた。

荒い息を落ち着かせ、周囲を見回す。
壁に常夜灯が数箇所灯されており、窓には厚手の布が掛けられている。 攫われて、そんなに時間が経過していないのか、一昼夜過ぎてしまったのか判らないが兎も角今は夜なのだと思えた。 板張りの床に転がされているが、近くには重厚な長椅子、卓、衝立があり何処かの一室と判る。 広くは無いが、置かれている家具や調度品はどれも高級そうで、衝立に描かれている風景画は素晴らしい作品だと夕鈴でも判る。

「椅子も・・・・ これは白磁の陶製。 窓布に刺繍も施されてて高そうな布・・・・。 すごい・・・。 余程の御邸なんだ、ここ。 大臣ともなるといい所に住んでいるのね。 それなのにまだ求めるものがあるなんて、なんて贅沢なっ!!」

陛下に推進めたい女性がいることは先ほどの会話から何となく伝わった。 ただバイト時代と違って、それを良しと諦める訳にはいかないのだ。 それは陛下の為にはならない。 
彼が決め、彼が求めたのは私自身で、そして私もそれを望んで今がある。

深呼吸をしてヤル気になった夕鈴は血が滲もうが、痛かろうが必死に縄を捩った。 
少しでも隙間が作れたら、片手だけでも自由になれば活路が見出せるだろうと両手に力を入れた。 力を入れ頑張っている内に少しだけ手首の縄が緩んだようだが其れ以上は無理と判る。 
顔をあげた夕鈴は周囲を見回し、眉間に皺を寄せた後、ごろごろと床を転がった。 蹴られた腹も後ろ手に捩じ上げられた手足も痛むが、必死に転がると目当ての物にぶつかる。 身体を何度も揺らし、勢いを付けて身体ごとぶつかりに行くと、それは大きく揺れながら倒れた。 
それに近くにある卓が当たるよう、何度も距離を測りながら身体を転がし、重い卓足を浮き上がらせて、傾かせる。
割れた音が大きく響いたが、この部屋自体が奥まった所にあるのだろう。
息を詰めて周囲の音を確認したが、誰かがやってくる足音はしない。 それならば誰も来ない内にと、夕鈴はまた身体を転がし割れた破片を後ろ手で探りながら掴み、縄に当てて切るように動かし出した。 大臣が何時戻って来るか、どのくらいで切れるか判らないから時間との勝負だと、夕鈴は必死に手を動かしていた。



→ 次へ


スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 00:40:03 | トラックバック(0) | コメント(20)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-13 木 01:20:04 | | [編集]
寝る前に、お邪魔させてもらって良かった!
続きが気になってました~。
夕鈴、痛いですねm(__)m
でも陛下の為、自分の為、出来る事をしようと必死ですね。
もう無傷ではないけれど(お腹も蹴られちゃったし…)、なんとかこれ以上傷付かずに助け出される事を祈ってます。

陛下、早く行ってあげて下さい(>_<)
2012-12-13 木 03:07:48 | URL | 高月慧ネン [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-13 木 03:40:27 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-13 木 06:31:40 | | [編集]
男っ前夕鈴(´д`|||)
カッコいいよ、夕鈴!と思いますが、傷を増やさないで~
しかし、全てが解決すれば、陛下の甘い傷手当てがあると想像すると…(*´ω`*)自然と笑みが!
頑張れ夕鈴&陛下!!
2012-12-13 木 07:11:36 | URL | ダブルS [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-13 木 08:38:01 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-13 木 09:09:31 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-13 木 20:48:49 | | [編集]
Re: タイトルなし
思い切り蹴ると内臓破裂しちゃいますよ。ぶるぶる・・・・。ユナ様、痛いのは嫌ですよね。一番痛いのは麻酔なしの歯科治療だと思っております。 男性が経験できない出産も痛いけどね。 おおまいがっ!
2012-12-13 木 21:31:49 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
怪我した夕鈴って可哀想だけど、ありなんですよね~。 ひどい妄想してごめんなさい。 陛下には頑張って貰いたいのですが、上手く書けるかどうかちょい不安が残ります。高月慧ネン様、陛下の尻を叩いて下さい。(笑)
2012-12-13 木 21:33:45 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
rita様、悪大臣への呪い。 そのまんまの台詞に爆笑です。 ありがとう御座います。呪い、届けてあげましょう! そろそろ陛下も到着するかな?
2012-12-13 木 21:35:23 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
yuri様、お陰様で旦那は「便座ぶろっく」が効いたと喜んでおりました。 さすが「便座ぶろっく」です。 磯人でのうがいも欠かしておりません。 今回は懲りたようで、手洗いもちゃんとするように指導し、実践しております。(当たり前じゃ) 本当はさっさと病院に行けば良かったのに。 
2012-12-13 木 21:37:55 | URL | あお [編集]
Re: 男っ前夕鈴(´д`|||)
ダブルS様、夕鈴の心配、ありがとう御座います。 陛下の甘い傷手当て・・・・。 そうですね~、ありですよね。ぷぷー。 萌えの提供、ありがとう御座います!!
2012-12-13 木 21:39:25 | URL | あお [編集]
Re: おぉ~!!
makimacura様、コメありがとう御座います。うきゃ、underも御覧になって下さって嬉しいです。 のんびりですので、その内滞るかも~。 のんびり御付き合い下さいませ。 再起不能の、「不能」だけが目に入り、思わず吹き出してしまいました。 (あほでしょー!)
2012-12-13 木 21:41:39 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
あー、こっちの陛下のあんだーですかー。まだ考えもしていません。この話の最後も思いついてませんのに・・・・。 でも・・・・と自分の首を絞めような予感に震えています。ますたぬ様、やっぱりご希望ですか?(爆)
2012-12-13 木 21:43:56 | URL | あお [編集]
Re: メラメラ!
ビスカス様、コメありがとう御座います。 バイト夕鈴が狙われてもあんなに怒っているのに、正妃ばーじょんだとドウナルカ、想像すると恐いですね~。 想像出来ないから書けない・・・・! くぅう、手が動かない!! ああ、如何しましょう!?
2012-12-13 木 21:45:44 | URL | あお [編集]
大臣赦さーん!!!!!!

夕鈴を蹴るなんて・・・蹴るなんて・・・ガーーーー!!!!ってなりました。

陛下に痛い目あわさせてもらんなさいよ!そして浩大たちにも痛い目にあわさせてもらんなさいよ!!と思いました。

にしても夕鈴は夕鈴なんですね~~~
シリアスなはずなんですけど夕鈴に癒されたというか
夕鈴・・・(ほろり)としました。

大臣が来る前に夕鈴は縄から脱出出来るのか、いつ陛下と再会できるのか、大臣どんな目にあわせてくれるのか楽しみにしております!!!
2012-12-13 木 22:40:39 | URL | ななすけ [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-13 木 23:05:42 | | [編集]
Re: タイトルなし
正妃になっても夕鈴は夕鈴だろうなと想像しちゃいまして。 もっと落ち着いているはずだとは思うのですが、他サイトの正妃夕鈴と違って、振り返るとうちの正妃夕鈴は落ち着かない・・・・・。 ななすけ様、こんな夕鈴ですがもう少し御付き合い下さいませ。(^^)
2012-12-13 木 23:28:02 | URL | あお [編集]
Re: 大変申し訳ございません!!
makimacura様、爆笑ーーーーー!!! いやあ、笑わせて頂きました。 爆笑ですよ。 あんだー陛下はエロ魔人なので大丈夫だと思いますが、いまあ、笑えた。 腹筋8つに分かれましたー! ありがとーです。
2012-12-13 木 23:29:49 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。