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暦の果  5
静電気が気になる時期です。 結構バチッとくるので静電気防止のブレスレットや輪ゴムを必需品としています。 娘と手が触れた時にバチッと来ると、二人で睨み合いです。
同じ体質同士、本当に困ります。



では、どうぞ。















深い安堵と共に夕鈴は息を吐いた。 陛下に腕を拘束していた腰紐を解かれ、疲れ切った身体を預けて全身から力を抜き瞼を閉じた。 いろいろ考えなきゃならない事があるとは思うのだが、少しだけでいいからこの腕に縋り、何も考えたくないと目を瞑る。

「夕鈴・・・・。 無事か」

頭上から聞こえる掠れた声に夕鈴は頷いた。 全身を包み込む腕に力が入り、その甘い束縛に力が抜けていく。 痛みも憂いもこの腕の中では全て消えていくように感じる。
・・・・・・何も考えたくない、考えられない。 
でも自分はこの陛下の正妃なのだ。 やはり何時までも目を閉じては居られない。 
夕鈴はこくんと唾を飲み込むと陛下の胸に手を置いて顔を上げた。

「陛下、廚大臣を・・・・ 廚大臣が今回の首謀者です。 聞こえた声は間違いなく大臣の声でした。 他にも協力者の声がしてましたが、それは誰か解からないのですが」
「夕鈴、解かっているから・・・・・。 それより、これは?」

背から離れた陛下の手が夕鈴の両頬を包み込むと同時に低い声が聞こえ、その声色に夕鈴は瞬時に蒼褪めた。 指先が擦り切れたこめかみや叩かれた頬、切れた唇をなぞる。 
ちりっとした痛みに顔を顰めて顔を背けようとするが、陛下に囚われた頬は逃げようとする動きを阻まれる。 首筋に当てられた刀傷は見ていただろうが、他の傷にどれだけの怒りが向けられるか過去を鑑みても恐ろしいと夕鈴は視線を逸らす。

「血が・・・・・」
「あっ、これはっ 自分で付けた傷なの! 縄が上手く外れなかったから陶器製の椅子を割って、破片で縄を切ったんだけど上手く切れなくて。 血で滑って何度も他の場所まで傷つけたみたい。 こめかみとかは目隠しを外そうと自分で床に擦り付けて出来たものでして・・・・・」
「頬に傷が・・・・」
「それよりも正妃衣装に血が付いたから急いで水洗いして、ああ、それよりも廚大臣を! あっ! 飾紐の宝飾が・・・ 数個無くなっている!? ひぃいいいい!!」
「唇が切れている・・・・」

夕鈴が自分の傷より衣装に目が奪われ蒼褪めて騒ぎ出すと、身体に外套が被せられた。 
陛下の大きな外套に頭からすっぽりと包み込まれると抱え上げられ、視界が奪われた状態で何処かへと移動を始めたのが伝わる。

「右軍隊長、この邸の火事を消し他への延焼を防ぐように! 捕縛した輩は直ぐに刑吏に渡せ。 引き続き廚大臣の行方を捜せっ! 随時報告を上げるようにしろ!」
「御意っ!」

怒気を孕んだ陛下の声の恐ろしさよりも、聞こえた言葉の内容に目を瞠った。
夕鈴は陛下や浩大の他に禁軍までが動いていたと知り、驚愕する。 元はといえば宴の席で勧められるがままに酒を飲み、窓を開け放ち居眠りをしていた自分が招いた事態。 
酩酊していた状態でも浩大が言った言葉を覚えている。

『宴の時って良からぬ輩もいるんだからさ~』
『桐が怪しい奴の後を追っている』

後宮での会話を思い出した途端に蒼白になり、夕鈴は外套を掴んで震え出した。
 
なんて・・・ なんて失態を仕出かしたのだろう! まさか禁軍を動かすほどの事態になっているとは思いもしなかった。 臨時花嫁の時に囮として幾度も攫われたり傷付くことがあったが、国の軍を動かすなんてそこまで大仰な事態に陥ったことはあっただろうか。 

抱き上げらえた体の震えを知り、陛下が背を撫でながら 「恐かっただろう?」 と心配してくれるが、夕鈴は首を横に振るしか出来ない。 震えている場合じゃないと思うのだが、咽喉が張り付いたように声が出ない。 
如何しよう!  申し訳ない、赦して欲しい、如何したらいいの!?

抱え上げられたままで馬上に移動したと知った時にはもう涙が零れて来た。 泣いている場合じゃないと思うのだが、自分の情けなさに後から後から涙が零れてきて止めようが無かった。 
陛下は禁軍へと指示を出した後、無言で夕鈴を抱き締め、王宮へと馬を駆らせた。






王宮へ着くとそのまま陛下の自室へと連れて来られた。 
女官が侍医を呼びに走ろうとするが一刻だけ待つように言われ、侍女が衣装や湯桶や手布等の用意を整えると、皆直ぐに退室させられた。 
外套を纏ったままで立ち竦んでいた夕鈴は止めようも無い涙を何度も拭っては、自分の愚かしさを呪うしかない。 こんな情けない自分が陛下の隣に居ていいのだろうかと、如何したらこの失態を取り消せるのかと項垂れるたびに涙が零れ落ちる。

「夕鈴・・・・。 座って」

外套を脱がされ長椅子に腰掛けると、その時になって襟元が大きく肌蹴られていたのかと肌寒さで気付く。 身を屈めた陛下が夕鈴の襟元を直して肩に手を置き、頭や頬に口付けを落すから、その優しさに余計に涙が零れ落ちる。

「遅くなってごめんね。 こんなに傷を・・・・ ごめん」

温かな手が頬を掴み上げ、切れた唇をそっと舐める仕草に痛みが走る。 流れ落ちる涙を指で拭いながら何度も謝罪をしてくる陛下に夕鈴はしゃっくり上げながら首を横に振った。

「ごめ・・・なさ・・・ 如何したらいい・・・のでしょうか。 私がお酒なんか飲んで部屋の窓を開けて・・・・ 攫われちゃって・・・・ 赦して下さい・・・・」
「夕鈴、君は悪くないだろう! 悪くない・・・・・ 大丈夫だから謝らなくていい」
「わ、悪いです。 正妃なのに、皆に迷惑掛けて・・・・ き、禁軍まで」

陛下は夕鈴を抱き上げると膝へ乗せ、頭をぎゅっと抱き寄せる。 手首の傷を見て眉根を寄せると、そっと口付けをして夕鈴の全身を掻き擁いた。 強い抱擁に夕鈴の息が詰まり、そしてその暖かさに震える身体から力を抜いて身を預ける。 

「・・・・・大臣の怪しい動きは把握していたが、今回の宴で動き出すとは想定外だった。 取調べで詳細は明らかになるだろうが、君は悪くない。 水面下での動きを把握しきれていなかった私に咎がある。 ・・・・・君に傷をつけることになるとは思いもしなかった」
「でも勧められたとは謂え、お酒を飲んじゃ駄目って陛下が言っていたのに・・・・。 断わり続けるのが難しくて少しだけって、つい口にして。 甘いお酒があんなに強いなんて思っても・・・・・ あ、そう言えば・・・・ お酒に薬を入れたって言っていた」

ふと思い出した夕鈴は涙目で陛下を見上げて伝える。 訝しげな表情となった陛下が眉間に皺を寄せて 「他に聞いたことは?」 と問い掛け、夕鈴は必死に思い出す。

「・・・・私を 『質』 とした策があるって。 それって多分陛下との・・・・」

言い難くて夕鈴が唇を閉ざすと抱き締める腕に力が入った。 
「解かっている」 と呟かれ、夕鈴はやはりそうなのかと嘆息する。 

「隣国との取引に私との婚姻の申し出があったようだ。 その様な申し出受け入れる筈が無いと言うのに、理解出来ない臣下もまだ居たようだな。 その上、財政管理に関して放置出来ない動きが見つかったと報告が来た。 まだ私の執政もぬるいということか」
「そんな事ないです! 陛下が毎日頑張っているのは皆、承知のことです。 私が・・・・ 私がちゃんと正妃らしく出来ていないから、そんな風に考える人が出てくる訳で、私がもっとしっかりしていれば良かったのに・・・・」
「夕鈴は悪くない。 奴が・・・・」
「でもっ!!」

陛下の胸を押し出し、顔を上げた夕鈴は涙を零すことはなく真摯な表情を見せる。 大きな瞳で陛下を見上げた夕鈴は強い口調で宣言するかのように言い放つ。

「でも、私は貴方の傍にいることを決めたんです。 今回は失態を見せましたが二度とこんなことが起きないように充分気を引き締めます。 皆に認められる正妃になるよう、今まで以上に努力します。 だから・・・・、だから・・・ ごめんなさい、陛下!」

目を瞠った陛下は、大きな瞳に力を入れて泣くのを我慢している夕鈴を注視した。
後宮で攫われた夕鈴に何の呵責があろうか。 どんな小さな責だって君にはない。 悪いのは自分だと叱咤する君に驚くばかりと、陛下は唖然とした。 ぷるぷると震える君は僕からの言葉を待っているようで、強く噤んだ唇が戦慄き出したのがわかる。



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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 22:05:05 | トラックバック(0) | コメント(14)
コメント
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2012-12-17 月 23:08:02 | | [編集]
お帰りなさいませ!
安心?の膝上定位置!だが、会話が重い(笑)
いつもの甘いイチャつき雰囲気に戻って欲しいですね…
2012-12-17 月 23:23:47 | URL | ダブルS [編集]
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2012-12-17 月 23:44:22 | | [編集]
Re: タイトルなし
ななすけ様、コメありがとうどすえ。 衣装を心配する夕鈴って好きだー! 酒に飲まれる若かりし頃、誰しも失敗はしますよね~(とほほ) 今回どっぷり反省の夕鈴です。 寵愛・・・・頑張って書いてみます。(照)
2012-12-17 月 23:47:40 | URL | あお [編集]
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2012-12-17 月 23:51:07 | | [編集]
Re: お帰りなさいませ!
ダブルS様、コメどうもありがとうです! ちょい甘さが足りないのは健康診断の結果が悪かったから! 生活習慣病に気をつけましょうと、歩けと言われちょっとショックが・・・・。 甘い雰囲気になる前に恐い陛下を出さなきゃなと思案中で御座います。 もう少し御待ち下さいませ。
2012-12-18 火 00:13:36 | URL | あお [編集]
Re: 重ねて。
ビスカス様、どっちのコメもありがとう御座います。 あっちの陛下は・・・・4で何をやっているのやら(笑)余りのギャップに苦慮される方もいらっしゃるかと思いますが、ご勘弁を。 こっちの陛下はそろそろお怒りになられる頃と思います。上手く表現出来れば良いのですが(汗)
2012-12-18 火 00:19:18 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
あー、口から砂吐くほどの甘さ。 コーヒー1杯に砂糖一kgでよろしいでしょうかね。(爆) もう少し御待ち下さいませ。 こっちの陛下は先ず怒らせないとな~と思案中で御座います。 その後、上手く書けるといいのですが。 yuri様好みになるように祈って下さい。
2012-12-18 火 00:21:51 | URL | あお [編集]
夕鈴のたくましさには、もう脱帽ものですね・

正妃になっても衣裳の汚れをきにする辺りは笑っちゃいますね・軍を動かすことなど、微妙な知識もついていたりと、そのちぐはぐさが夕鈴だなぁとしみじみ思ってしまいました止めは陛下の膝の上なのに甘くない…(*≧m≦*)可笑しくて・夕鈴に甘えてもらうには一生かかっても難しいのかな?

なにはともあれ、無事に救出されてよかったです
2012-12-18 火 07:30:47 | URL | ともぞう [編集]
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2012-12-18 火 09:08:56 | | [編集]
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2012-12-18 火 12:49:24 | | [編集]
Re: タイトルなし
甘くはならないんですよね。困ったものです。もう少し二人の絡みが続きますので、御了承下さいませ。ともぞう様の優しいコメに癒されながら仕事しますね!! ありがとうです~!
2012-12-19 水 14:11:05 | URL | あお [編集]
Re: 果ては…
makimacura様、ちょっと滞っており、申し訳ありません。(汗)あっちとこっちの陛下の余りの違いに皆様のコメに爆笑させて貰っております。 こっちの陛下はもう少ししたら怒って貰う予定です。 あと少し、お付き合い頂けたら嬉しいです。
2012-12-19 水 14:13:33 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、滞っております。頭の中も妄想も手も動きません。 もう少しで仕事が落ち着く予定ですが、胃と目の痛みと戦いながら、日々過ごしております。 でも痩せません!!!! くぅうううう! 癒しのコメント、ありがとう御座います。
2012-12-19 水 14:15:33 | URL | あお [編集]
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