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暦の果  6
今週はPC前で怒涛の追い込み作業が待ち受けています。 
エアコンで空気が乾燥しているためか、目が痛い。 腰が痛くなるので何度か椅子を上下して調整したり、立ち上がってコーヒー飲んだり、他の部署でちょいと仕事をしたりするので、正直余り進んでいない? 集中出来ない自分が悪いのはわかっているけど、マジに腰が痛いんだー!


では、どうぞ。 














泣くものかと目を瞠り、口を噤んだ夕鈴は追い詰められた兎のように見えて、僕は困った顔で震える君の手を胸から外し視線を落とす。 
袖が下がり、傷が露わになるとその酷さに眉間に皺が寄る。
 
後ろ手で陶器の破片を使い縄を切ったと言っていたが、よく太い血管を傷つけなかったものだと僕の手が震えそうになる。 額の傷は目隠しを外す為に床に擦り付けたと言っていたが、それだけではないのは明白だ。 こめかみに残る打撲の痕は奴に殴られたのか打ちつけられたのだろう。 幾度叩かれたのか頬は腫れ上がり唇は切れている。 衣装は捩れて埃だらけに汚れ、首筋の刀傷は血が止まっているが紅い筋が幾層にも付けられている。
君が恐がるだろうから憤りを無理やり押さえ込み、抑揚のない声で語り掛ける。

「・・・・夕鈴、取りあえず傷の手当てをしよう。 本当に君は悪くないから気にするな。 ただ酒はもう絶対に駄目だ。 飲む時は僕が傍にいる時だけに限定する。 酔った君を介抱するのは僕だけにして欲しいからね。 ・・・・他に傷はないのか?」
「お酒はもう絶対に飲みません! ええ、絶対に飲みませんから御安心下さい! 傷は・・・・ あとは大丈夫です。 それより衣装に付いた血を早く洗わなきゃ! それと飾紐の宝飾が何個か取れてしまって・・・・ 李順さんになんて言おうか・・・・」

飾紐はあの場で捨ててしまった。 君を束縛したモノを後生大事に持ち帰る訳がない。 
そんな事より君が無事で良かったと伝えるのに君は申し訳なさそうに項垂れて小さく呟いた。

「それと・・・・ 火事を起こしてごめんなさい」
  
奴の邸から出火させたことなど気にする必要はないと苦笑すると 「でも・・・」 と身体を震わせる。 これから私が行なうことを君が知れば、身体を震わせるだけでは済まないだろうなと考えながら、膝の上の君をもう一度きつく抱き締める。 
頭から顔中に軽い口付けを落とすと、肩を竦ませた君が頬の痛みに新たな涙を浮かべた。 

君が無事で良かったと安堵する溜め息にさえ怯える君に苦笑してしまう。 
自身につけられた傷よりも衣装の汚れを気にする様に呆れてしまうほどだ。 
後宮という閉鎖空間から攫われたことすら自分の責だと身を竦ませる君に、何度繰り返し責はないのだと伝えたら判ってくれるのだろうか。 もう二度と同じことが繰り返されないように、君が項垂れ悲しまないように厳重な警備体制の見直しが必要だろう。 より徹底した警備と冷酷非情な国王陛下を如き、どんな微風にも君を攫われないようにしよう。 
それは君を王宮に迎え入れた私自身の責であり、矜持だ。 王宮というこの魑魅魍魎が跋扈する空間で、君らしい君に傍にいて貰いたいと願い、君らしい君を守ると誓った。

もし君が飲まされた酒に混ぜられた薬が毒だったら・・・・・・・・・。
そう考えるだけで目の前が真赤に染まるのを感じた。 同時に指先まで冷たく強張り、顔からは表情が失われ、全身から血の気が下がる。 抱き締める君の熱が消えるなど考えたくもないが、万が一を思い浮かべるだけで自分が自分でなくなりそうになる。 
・・・・考える事さえ厭わしい。 

「まずは汚れを拭って着替えをして、そして侍医に診て貰おう。 診て貰ったら軽く食事を取って、今日はこのまま僕の部屋で何も考えずに眠るんだよ。  ・・・・・出来るだけ早く戻るから」
「陛下はお休みになったのですか? もしかして一晩中・・・・ 探してくれて?」
「僕は大丈夫。 李順らと先のことを少し話したら、君のところに戻るから安心して」
「戻って・・・・ 来るのをお待ちしてます」

一刻も早く離れなきゃ駄目だろうと思った。 
傷を負い疲れ果てている君を前に、私は何をするか解からない。 やっと自分の元に戻ってきた夕鈴を前に、ジリジリとした焦燥感に追い立てられ、君の身体を掻き擁き、貪り、自分自身の安堵の為に君を泣かせることだけは避けたい。 その潤んだ瞳や傷付いた肢体を前に、どれだけ我慢を強いているのか君は知らなくていいことだ。 
今はゆっくり身体を休ませて、心身ともに君らしい君に戻ったら全てを私に与えて欲しい。

君が休んでいる間に・・・・・・ 私にはすることがある。

女官と共に侍医が部屋へ姿を見せる。 丁度夕鈴も顔や手の汚れを拭い終え、着替えを済ませたところだ。 あとは任せると女官に伝えると、踵を返して部屋を離れた。

部屋から離れた自分の表情は夕鈴に見せられるものではないと自覚していた。









「陛下、お待ちしておりました」

李順が拱手して出迎える。 眇めた視線の先には浩大が出窓に腰掛けて饅頭を貪っている。 
視線を感じたのか、浩大は笑顔で返すと 「纏めて牢に入れているよ」 と報告を述べた。

「埃だらけで何処を叩けば良いのか困惑していますよ。 ここまで巧みに隠されていたとは正直驚きました。 ひとつ暴いてみると、次から次へと彼らが隠蔽してきた企みが出てきて、それらを纏めるのに苦慮するほどです。  ・・・・まあ、この苦労は倍にして返して貰いますけどね。」

李順が密偵より報告された書類を持ち、眼鏡を持ち上げる。 口角が薄く上がったのを見ると隠し財産など、廚大臣が隠匿したものは全て回収出来るのだろう。 
その廚大臣が他国との密約に、私との婚姻を確約させると言っていた件を伝えると、浩大が腹を抱えて苦しそうに哂い出した。 冷たい視線で彼を見つめると肩を竦めて悪びれた様子もなく話し出す。 

「お妃ちゃんしか目に入らない陛下に他の女を薦めるって、まだそんな考えを持つ奴が居るって驚いただけっすよ。 悪気は全くないからね~」
「ふん。 ・・・・・牢には廚だけか?」
「密談に加担していた高官も既に捕らえているよ。 この高官の親戚に薬師がいてね。 酒に一服盛ったと白状しているよ。 持ち込みの食材はちゃんと調べなきゃね~。 ・・・もし毒だったなら今頃お妃ちゃ・・・ っ・・・  悪いっ、ごめんなさい!」

浩大は慌てて口を押え言い過ぎたと反省をする。 蒼褪めた李順が視線を反らすのが視界の端に映り、今の自分がどんなに冷酷な表情をしたのかが窺え、咽喉の奥からくぐもった哂いが漏れる。 
毒などを我が后に仕掛ける度量のある奴がまだこの王宮に居るのだろうか。 
そんな考えを一欠片でも抱こうものなら、どの様な目に遭わされても文句はあるまい。 狼陛下の唯一に傷を付けた輩の終焉はどのようなものか、王宮に仕える全ての人間に然らしめたいものだ。

まだ日中だというのに凍てつく厳夜のような冷気に包まれた執務室で、陛下の瞳だけが紅く揺らめいていた。 出窓に腰掛ける浩大は外の日差しに暖まったはずの背に寒気を覚え、陛下がこれから先に起こすであろう行動を思い昏く哂った。 
長くなるだろうから先に昼飯を食べなきゃ体力と気力が持たないな~と首を左右に揺する。

「陛下、周宰相より急ぎの書簡が届けられておりますので、先に目を通して署名をお願い致します。 その間に私も纏めの作業がありますので離れます。 桐が案内に来るまで、こちらで御待ち下さいませ」

少し蒼褪めた表情で陛下に拱手した李順が執務室から離れると、浩大が問い掛けてきた。

「あー・・・、邸で捕らえた男共を絞め上げたら、唯一の后を襲って陛下の前に出られないようにしろと、大金引き換えに指示されたってさ。 その前に傷を作ってまでも自力で縄を切って、邸に火を点けて逃げ出そうとしたなんて、頑張ったね~。 さすが狼陛下の嫁さん!! それに対して表面は清廉な態度で王宮にお勤めの、下劣極まりない御考えをお持ちの大臣様か。 ・・・・なあ、へーか。  それらも踏まえてきっちりと罰してよね」

卓に腰掛けた陛下が顔を上げると、冷やかな笑みの中に怒気を浮かべる隠密がいて、彼も深く憤りを感じているのが判る。 私が小さく頷くと 「腹拵えして来る」 と姿を消した。
夕鈴警護を任せていた浩大が今回の事に激しい憤りを感じているのは承知している。 
臨時花嫁時代の夕鈴に興味を持ち、事有るごとに煽るようなことを彼女にも私にも伝えていた。 それだけに今回の夕鈴に対する奴らの行動が気に喰わないのだろう。 

「浩大が考えるより酷い罰し方ね・・・・」

書簡を広げた陛下は紅い目を細めて薄く哂った。 その前にこの山を多少なりとも崩さなければ李順がどんな罰を私に与えようとするか、考えるだけで頭が痛いと肩を竦める。
桐が来る前に奴らに与える罰を考えながら、目の前の山を崩すことに集中しようと目を眇めた。





・・・・・夕鈴はもう休めただろうか。

宴に出れると知った時の彼女は大きな瞳をさらに見開き、本当に参加していいのかと嬉しそうに頬を染めていた。 正妃として参加出来ることの他に、前回同様宴に係わっていたその流れを、初めて見ることが出来ると本当に嬉しそうだった。
君の周囲に近付こうとする輩が気になったが、傍に居れば大丈夫だろうと思っていた。
遠方より足を運んだ州牧などへの挨拶さえなければ、君の傍を離れることなど無かったものを。 一刻離れただけで君の周りには良からぬ考えを腹にもつ輩が集まり、あまつさえ酒を勧めていた。 頑張って最初は断わっていたのだと君が酔いに頬を染め目を潤ませて申し訳なさそうに伝えるが、そんな表情さえ周りの奴らに見せることが我慢出来ず部屋に連れ帰った。

君の嬉しそうな顔が次の宴でも見られるのか。 
もう二度と係わりたくないと俯く君の姿を想像するだけで、筆を持つ手に力が入る。

君が着飾った姿を皆に見せたい。 ・・・・着飾った姿は私だけが知ればいい。
正妃として立つ姿を皆に然らしめたい。 ・・・後宮に閉じ込めて私の腕の中で啼かせたい。

相反する思いに苦笑してしまう。  
ただ君が俯くことのないように、君の知らぬ場所で君の嫌がることを行なう私に気付かないで欲しいと願うだけだ。 たとえ君がそれを知ったとしても私から離れないだろうと信じているが、それでも君に知られる訳にはいかない。 王宮の闇は闇のままに私の管轄とし、君は民のために光の中を歩いて欲しい。
そして いつまでも私の手を離さないでいてくれたら・・・・・。





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もしもシリーズ | 21:06:06 | トラックバック(0) | コメント(14)
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2012-12-19 水 21:51:57 | | [編集]
Re: タイトルなし
李順さんが恐いのはこれからですよ。(笑) いろいろ頑張って動いて貰わなきゃ終わりが見えません。 年末が近付いて来て、わたくし、焦っております。(爆) yuri様、早速のコメ、ありがとう御座います。
2012-12-19 水 23:16:00 | URL | あお [編集]
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2012-12-19 水 23:44:40 | | [編集]
切ないです…(;´д`)
良からぬ事を考える輩が悪いので、陛下と夕鈴の会話が切ない…
そして、陛下の矛盾する考えに、笑いが出るけど切ない( ノД`)です!

年末でお仕事大変でしょうけども、お身体に気をつけてお過ごしください(*´∀`)

お邪魔いたしましたm(__)m
2012-12-20 木 07:09:52 | URL | ダブルS [編集]
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2012-12-20 木 09:09:34 | | [編集]
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2012-12-20 木 09:16:46 | | [編集]
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2012-12-20 木 09:53:07 | | [編集]
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2012-12-21 金 19:26:05 | | [編集]
Re: タイトルなし
わかります、秋様。 テスト勉強の為に教科書を開くのですが、その上に何時の間にか漫画の本や小説が。 あら? なぜかしら? まあ、少しなら・・・・ そう思っていると何時の間にか深夜になって翌日後悔するんです。 そうならないように頑張れましたか? コメ、ありがとう御座います。
2012-12-21 金 23:10:42 | URL | あお [編集]
Re: 切ないです…(;´д`)
ダブルS様、労わりのコメ、ありがとう御座います。 昨日、今日で9割がた仕事を終えることが出来ました。 お陰で目が痛いです。 でも明日も忙殺されそうで早く寝なきゃと思うのですが・・・・。 来週はしっかり休みたいのですが、やっぱり持ち越しそう・・・。 次は陛下がやっと怒ってくれます。
2012-12-21 金 23:12:49 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
希望様、お久し振りです。コメ、ありがとう御座います。 陛下の怒り表現が自分的には物足りなくって悶々としております。 もう少し脳みそにシワが欲しい! サンタさん、お願いします。私に「シワ」を! って願ったら顔に「シワ」が来そうで恐いです~! 
2012-12-21 金 23:16:49 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
最後のお勤めと頑張っております。 老体に鞭打って、目の痛みと腰の痛みに整体に通いたいな~と呟きながら頑張っておりますよ。 ますたぬ様、滞っておりますが、見捨てないでね(笑) コメ、ありがとう御座いまする~。
2012-12-21 金 23:37:55 | URL | あお [編集]
Re: がっつり
あー、今回浩大が怒ってましたね。 陛下はどう動かそうか思案中。 思った方向に進みません。 仕事で呆けて帰宅するのであんだー仕上げて昨日はバタンキュー! いやいや、楽しいのですけどね。(笑) こちらも頑張りますので、ビスカス様、また遊びに来てください。 コメ、ありがとう御座います。 腰、揉んで貰いたいです。 とほほです。
2012-12-21 金 23:50:39 | URL | あお [編集]
Re: じんわり…
makimacura様、自分の作品名が出てきて、鼻血拭きそうな位嬉しかったです!! ありがとう御座います。 次は夕鈴出てこないのですが、余り陛下が思ったように動いてくれなくって。 腰も陛下もとほほです。 皆様のコメに癒されて あおは出来ております。 ぺこり
2012-12-21 金 23:57:50 | URL | あお [編集]
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