スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
暦の果  7
あまり・・・恐い陛下にはなってませんね。 すいません
仕事のストレスで多少壊れておりますので、ご勘弁くだされば幸いです。
もう少し続きますので、お時間ある方は御付き合い下さいませ。


では、どうぞ。


















正妃は居ても良い。 
しかしあの正妃は献上品にも金品宝飾にも興味がなく、親族関係から取り入ろうにも不明な点が多く、さらに陛下が厳重に囲っているため話も碌に出来ず、正直少しも旨味が見当たらない。 
 
陛下が新たに妃を迎え入れてくれれば・・・・・ 後宮に新たな妃が入ることさえ出来れば、きっと陛下の気持ちも変わることだろう。 
あのような凡庸な正妃が居なくなれば、新たに迎え入れた妃が次の座につく可能性もある。 
その妃を誰が推奨したかによって、王宮での昇進は勿論、親族の地位さえも大きく変わるのだ。 昔から後宮という寵愛と欲と雑多な思惑が蔓延る密閉な空間では、何が起こってもおかしくはないのだから。

しかしいまや後宮は閉鎖されており、新たに妃を迎え入れる場所も無ければ、陛下にその気もない。 それならば場所を作り、陛下をその気にさせるためにも正妃を消すしかないだろう。 
あの正妃さえいなければ、後宮は以前のように恩恵に預かろうとする人間達の浅ましい思いが犇めく場所となるだろうし、その場所で己の地位を向上させるためにと美しい妃を次々と推奨し、裏で操り蠢くのは楽しかろう。 
妃推奨により自己の地位と親族が伸し上がる為には、あの正妃はどうしても邪魔なのだ。
正妃が 『質』 となるか、 『生贄』 になるかは陛下次第だった。 
しかし、そう考えるのは私だけでは無い筈だ。 私は自己の立場と地位の為にあの正妃を貶めようと動いたが、この王宮では誰しも考えは同じの筈。  ・・・・そう、私だけではない。 


充血した瞳を見開き、捕らえられた廚大臣は忌々しそうに語った。 
皆同じ考えを持ち、ただ其れを隠しているだけで腹の裡は同じ穴の狢なのだと。

『正妃として彼女は王宮唯一の妃である。 私にとっての唯一だ』 

陛下が臣下へと伝えたその言葉は、彼にはまるで伝わっていなかったということだ。 

未だ退路があると思っていたのか、牢に入れられてからも大臣の態度は一貫していたが、その態度は冷酷な表情を浮かべた陛下が姿を見せるまでの短い間だった。 


企てに加担した高官の親族である薬師を呼び出し、彼の為に自白剤を作らせたと桐が報告する。 それを聞いた陛下が頷くと、彼らの目の前で廚大臣に飲み込ませた。
半刻もすると硬い表情を呈していた大臣の瞼が下がりだし、それでも桐の問い掛けに最初の内は眉間に皺を寄せて頭を横に振っていたが、時間の経過と共に彼は心の内を零し始める。

「御后様を攫い、どのような思惑があったと?」
「・・・あの后を人質に・・・・ 隣国の王女を陛下に勧めようと・・・・ 会えば陛下はきっとお気に召すだろう。 お気に召せば私の・・・・ 地位と利が大きく変わる」
「隣国との取引とは何だ?」
「それは・・・・」

言い淀むごとに桐が漏斗を大臣の口に押し込み自白剤を注ぎ嚥下させる。 高官と薬師が悲壮な表情でその様子を目の当たりにし、冷水を浴びたかのように全身を震わせ続けた。

「で、隣国との取引とは?」
「・・・・国境にある・・・・ 河川工事に掛かる費用の大半を・・・・ あちら持ちとするが、書面では同額と記して代わりに希望通りに王女を狼陛下に嫁がせる。 ・・・・后を質に承諾させようと・・・・」
「差額はお前の懐行きか。 ・・・・いつそんな話が出た?」

頤を持ち上げると廚大臣の焦点の定まらない視線がゆっくりと陛下に向けられる。

「陛下が・・・・ 隣国・・・ 乎東国国境河川の視察に行かれた時に・・・・ 隣国の王女が見初めたと。 は、ははは・・・。 狼陛下とも知らずに、逆上せた王女の願いに・・・・ 乎東国王が何度も縁談を申し出たと言っていた。 その書簡が間違って私の手に・・・・」
「己の利のために、裏で橋渡しを行なったという訳か・・・・」

桐が馬鹿馬鹿しいと肩を竦めると、廚大臣は嬉しそうな顔で陛下に申し出る。

「あ、あの后より身元が確かで、その上、わた、わたしにもそれ相当の金品をっ、財を約束すると! う、後ろ盾になれば王宮での私の地位は約束されたも同然っ!!」
「陛下、そのような話しが隣国から有ったのですか?」
「はっ、知らぬな。 ・・・・あったとしても興味ないものは捨て置くに決まっている」

苛立ちを増した陛下の怒気が冷笑の下に押し込まれているのが解かり、桐は背筋に嫌な汗が流れるのを感じた。 しかし廚大臣は自分の世界に落ち、陶然と心の裡を語り続ける。

「あんな后より、乎東国の王女の方が旨味がある。 財も地位も手に入れれば・・・・。 は、氾大臣や柳大臣などより・・・・、もっと大きな顔が出来るというものだ!」
「御后様を後宮よりどのように攫ったのだ?」
「か、金を掴ませて武官をふ、ふたり・・・・ 上手くいった・・・・。 質になりそうもないから、い、甚振って後宮に戻れなくすれば、必然的に王女がその後に・・・・」

涎を流しながら虚ろな瞳で語る廚大臣から視線を外そうとする高官と薬師の前に大刀が鈍い光を放つ。 咽喉の近くで刀身が傾き、二人はその輝きから目が離せなくなった。

「まだ彼の語りは終わっておらぬではないか。 奴の語りに仲間として間違いがないか、しっかり聞いておけ。 何処か相違があれば薬を幾度でも作り直せば良い」
「ひぃ・・・っ! あ、わ・・・ わわ・・・・」

呆けた顔で正妃を攫った事実を訥々と語る廚大臣に高官が震える視線を向ける。 
後ろ手に縄で括られながら椅子に腰掛け気味の悪い薄ら哂いを浮かべた廚大臣を見て、高官は戦慄く唇から呻くように意味のない言葉を零す。 廚大臣と自分の間に陛下が差し出した大刀が傾きを変えるのを声なき悲鳴をあげて注視し続ける。 
その時、廚大臣がかくんっと項垂れると、高官は堰を切ったように叫び出した。

「御后様を・・・・ 御后様を弑逆しようなぞ、そんな事までは考えてはおりませんっ! ただ陛下の御為に妃を推奨しようと・・・! ただそれだけでっ!」
「ただそれだけと・・・・。 それは貴様らが我が后に何をしたのか知っての台詞か?」

高官が叫んだその内容に陛下の冷笑は消え去った。 
高官らの目の前で揺れていた大刀の剣先がゆっくりと下ろされると、彼らの視線も追うように地面へと下りる。 押さえ込んだ陛下の怒気が今にも溢れそうだと解かり、桐が眉根を寄せて小さく溜め息を零す。 ・・・・馬鹿な奴らだ、と。 
剣先が届く範囲を目で捉え、桐は静かに一歩後退した。

「私が申し伝えたことが理解出来ない輩に、何の価値が有るというのか。 彼女は私の唯一と伝えていたはずだ。 己の欲の為に貴様らは何をしたのか、話してみろ」
「ただ、攫っただけで他には・・・・ 他には何も・・・・」

言い淀んだ高官の耳傍で風が舞い上がったと同時に鮮血が散った。 

「・・・ひっ・・・ ぎぃ!」 
「・・・・狼陛下は気が短いということを臣下であるお前が知らぬと申すか?」

重量感のある大刀を軽々と扱い、片耳だけを切り落とした陛下は眇めた視線で耳を押える高官を見下ろした。 高官が陛下と桐に蒼白な表情を向け、隣で平伏していた親族の薬師が短い悲鳴を上げ続ける。 気を失いたいところだが切り落とされた耳からの激しい痛みに顔を歪めながら高官は戦慄く口から協力者の名を語り出した。 
高官が語り終えると同時に房にいた刑吏が静かに立ち上がり、その報告を禁軍将軍へと告げに出て行く。 その動きを見送った陛下が眇めた視線を桐に向けて問い掛けてきた。

「さて、廚大臣の自白剤はいつ消えるのか? まともな思考の奴からも話を聞きたいものだがな。 正気を戻した相手でないと、罰は罰足り得ないだろう」
「そうですね。 ・・・・薬師、どうだ?」

問い掛けられた薬師は平伏したまま背を大きく震わせて答える。 その答えを聞いて陛下は大仰に溜め息を吐き、刀を桐に渡した。 

「・・・・一度后を見舞ってくる。 奴が正気を取り戻した頃には戻るから、自害などさせぬように見張っていろ。 私が直々に話しを聞いてやろう」
「御意。 その頃には他の者も引き立て、この場に揃わせて置きます」

冷笑を浮かべた陛下から視線を外した桐は背筋を伝う冷たいものを感じながら拱手した。

「浩大も呼んでおこう。 あれも伝えたいことがあるようだ」
「では、交代で私が後ほど御后様の警備に当たりましょう」

そのまま陛下は刑房から離れ、後宮へと足を進めた。 
桐は肩から力を抜くと、抗うことを放棄したかのような高官の耳に素早く止血を施し縄で束縛し、ぶつぶつと呟き続ける廚大臣を見た。 俯いているため大臣の表情は見えないが、陛下が戻るまでが彼の最後の安息の時間となることだけは解かった。


ふと自分の過去を逡巡した桐は、陛下と対峙した時のことを思い浮かべ肩を竦める。 
飄々とした顔で陛下と会話をしていたが、自分の命運はここまでかと内心では覚悟をした。 
冷酷な視線に囚われ、刀の鞘に押し付けられ地面に膝をついた時、迫り来る死が脳裏を過ぎった。 刺客としての矜持も束縛も死を前にしては何の役にも立たないと知る。 
金で動かそうとする立場の者と、金で動く立場の者という関係は、役に立たなければただ切り捨てられ、切り捨てられれば終わりが待つばかりだ。 

それでいいと思っていた。
ただでは死なないつもりでいたし、もし死ぬことがあれば其れまでの人生だったのだと思うだけだろうと。 ・・・・しかし思いも掛けず、あの妃に出会った。
陛下暗殺の依頼のため、後宮にまで忍び込み一旦は失敗したが、重ねた失敗は出来ないと再度侵入した時に妃に会った。 彼女は余りにも無防備で、正直で、素直で、馬鹿が付くほどお人好しで、この王宮では生きていけないのではないかと懸念を抱かせる性格。 
知れば彼女は一庶民で、臨時花嫁のバイトとして王宮に来たという。 
しかしその気性と真面目さ、王宮ではまず目にすることがない真っ直ぐな性格を陛下は愛しく思い、強く求め、政治的配慮を押さえ込み正妃へと据えた。 自分にはない裏表のない性格を正直疎ましく思うことも有るが、基本、自分もあの彼女が好ましく思うのだと桐は嘆息した。
あの時、彼女に会わなければ今の自分は居ない。
今の仕事に深い満足を得、嬉々として狼陛下の為に奔走する自分を気に入っている。

その后のために陛下がこの大臣をどの様に扱うか、容易に想像出来る。
傍らで蒼白な顔で震え続ける高官と薬師は自分の未来が見えているのだろう。 底無し沼へ首まで浸かっているかのような浅い息を繰り返している。 意識を彷徨わせている大臣の顔を凝視して何かを求めているようだが、今の彼に何の返答が得られようか。





→ 次へ




スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 23:57:07 | トラックバック(0) | コメント(12)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-23 日 00:29:14 | | [編集]
Re: タイトルなし
こうやどうふ様、早速のコメありがとう御座います。 今回遅れがちな更新となりましたが(最近多いか?) 読んで頂けて嬉しいっす! 腰は爆痛いです。 8時過ぎまで残業だったので、整体にも通えず湿布人間となっています。 コメに癒されて明日の休みはゆっくり寝かせて貰います。
2012-12-23 日 00:35:01 | URL | あお [編集]
陛下の本気は役者が揃ってからですね!
桐さんの心情に安心!!
陛下と浩大と一緒に夕鈴を守っていってください(*´∀`)
お身体大事に!お邪魔いたしましたm(__)m
2012-12-23 日 07:31:56 | URL | ダブルS [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-23 日 09:01:05 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-23 日 10:35:42 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-12-23 日 11:56:36 | | [編集]
アオさま
浩大がでておりません(>人<;)
私、切れた浩大が見たいです
2012-12-23 日 17:31:36 | URL | 秋 [編集]
Re: 陛下の本気は役者が揃ってからですね!
オリキャラの長い独白に御付き合い頂き、ありがとう御座います。 ダブルS様もこの時期流行中のインフルなどには充分お気を付けて御過ごし下さいませね。
2012-12-23 日 18:42:31 | URL | あお [編集]
Re: うふふ
ビスカス様、気にいって頂けて超嬉しいです~! ありがとう御座います!!! そうです、今度は浩大ちゃんが出てきます。 勿論、陛下も夕鈴もの予定。 本当に長くなってしまいましたが、お付き合いよろしくお願い致します。
2012-12-23 日 18:45:02 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
yuri様、萌え萌えでした!!! 基本コミックス派だったのに、これだけは・・・これだけはと買い始めて余計にハマリマシタヨ~。 やっぱりカッコイイし、可愛い! あ、陛下恐いって言ってくれてありがとう御座います。 もっと恐い陛下を書きたいものです!
2012-12-23 日 18:47:08 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ななすけ様、今回のオリジナルキャラの桐が結構いい感じに受け入れられていて、わたしは感動で御座います。マジに嬉しいです! 皆様のコメにこちらが癒されておりますよ。 本当に感謝です。 ブラック浩大がブラックぽく見えるように頑張らなきゃな~(汗)。 毎回嬉しいコメをありがとう御座います。
2012-12-23 日 18:50:04 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
すいません、秋様。 浩大は今回書ききれませんでした。次に登場予定です。 申し訳御座いません!! 
2012-12-23 日 18:51:15 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。