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暦の果  9
暗い、暗すぎる!! 如何してこんなに暗くなったのだろう。 
最初は酒飲んだ夕鈴がちょっとドジして、陛下に怒られて~・・・の予定だったのに!
(いや、最初から飛ばしていたよね?) 攫われるは、大臣は出てくるわ、怪我するわ!! 
本誌の夕鈴たちと大違いだ! でも続いちゃうよー。 真っ暗だよー! 




では、どうぞ。
















天蓋を降ろした寝台からは薬湯の香りがした。 その天蓋を捲ると小さく胸を上下させて深く眠る姿が見て取れる。 夕刻近くの弱い日差しが君の姿を柔らかく包み込んでいるように見えた。

夕鈴は処置を済ませ、薬湯を飲んでからも暫らくは起きていたという。 
部屋を離れる時に 「李順と少し話したら戻るから」 と伝えたからだろう。 一晩中縛られ、その束縛から逃げようと足掻き続け、疲労している体を押して待っていてくれたのだと思うと申し訳ない気持ちに苛まされる。 周に急かされた政務よりも君の元へ直ぐ足を運ぶべきだった。

眠る君の頬をそっと撫でるが瞼は開くことは無い。
腫れた頬に切れた唇。 紅い筋が残る首筋。 こめかみには擦り傷と打撲の痕。
痛々しそうな傷痕を見つめていると眉間に皺が寄る。 
この傷をつけたのは廚か、あの男共か。 どの道、自分たちの犯した罪がどれ程のものなのか、あとで知ることになるだろう。 もちろん直ぐ楽にはしない。 
時間を掛けて丁寧に少しずつ・・・・、狼陛下唯一の妃を傷つけた代償を身を以って償わせよう。 
王宮での闇の拷問がどのようなものか、奴らは耳にもしたことが無いだろう。 
それを知る者は皆一様に誰に伝えることも出来ない世界へと旅立っているのだから。
新たな住人がその世界へと足を踏み入れるまで、どの位の時間を要するかは彼ら次第。

こめかみに見える痣に触れた時、夕鈴が眉根を寄せて横を向いた。
掛け布からそっと片手を出し、包帯に包まれた手首を見る。 指先や手の平にも傷があり、破片を握り締めた時に出来た傷だと判る。 自分の頬に寄せると冷たい指先に胸が痛む。 
その上、縄で縛られ抵抗出来ない夕鈴の脇腹に蹴りを入れられたと・・・・・。 
黎翔は思わず力が入りそうになり静かに夕鈴の手を褥へ降ろした。

「・・・・・陛下?」

眠そうな声が聞こえ、君を起こしてしまったのだと気付いた。
仄かな灯りだけの肌寒い部屋が君の一言でほんのりと暖かくなる気がする。 眠気を拭おうと目を擦りながら夕鈴が身体を起こそうと身動きするから、侍医からの 『安静に』 の言葉を思い出し、肩を押し付けて君を褥に縫い付ける。

「起きなくていい。 夕鈴は暫らく安静にしなきゃ駄目だ。 ・・・・脇腹を蹴られのか? 直ぐに思い出していたら馬に乗せずに馬車を用意したのに。 今、痛みは如何だ?」
「もう大丈夫ですよ。 自分でも驚いたんですよ・・・・ 本当に。 後から腰が痛くなって蹴られたことを思い出したんです。 侍医様に診て頂き痣に気付いてから、どんどん痛くなって来て。 あ、でも薬湯を飲んで、湿布も貼って頂いてからは随分と良くなりました」

眠気が強いのだろう、目を擦りながら話すから傷付いたこめかみに手が触れ、眉間に皺が寄る。 そっと頭を撫でると夕鈴は微笑みながら眉根を寄せた。 
 
「・・・・侍女さんに御懐妊の時じゃなくて良かったと泣かれて、本当にそうだと思ったの。 自覚が無い訳じゃないけど・・・・。 心配も迷惑もいっぱいさせてしまい、本当にごめ」
「それ以上は聞きたくない! 君が悪いのではないと・・・・!」

何度・・・・ 何度伝えたら解かって貰えるのか。 切ないほど愛しい君にどう伝えたら。
微風にも当てずに、誰の目にも触れさせず、私だけが知る君が欲しいと、私だけを求める君が欲しいと幾度伝えたら君に届くのだろう。 狂おしいほど君を欲していると、どう伝えたら・・・・。 
安静にの言葉がなければ、今すぐにでも折れるほど強く抱き締めたいと奥歯を噛締める。 

眉根を寄せて夕鈴を凝視していると、頬を撫でる感触に我に返る。 そっと頬を撫でているのは夕鈴の手だった。 白い包帯が痛々しい手が優しく何度も頬を撫でる。

「・・・ええ、判っています。 どんな事があっても貴方の傍にいると私自身が決めたのですから。 何度も謝ってばかりいて・・・・ ごめんなさい」

そう言って柔らかく微笑む夕鈴に、僕は言葉を失い、ゆっくりと覆い被さる。 
君は昔から変わらない。 僕のために出来ることを模索し、懸命に努力しようとする姿に何度救われただろうか。 今も君の言葉に心の淀んだ澱が溶けていくのを感じる。  
体重を掛けないよう気をつけながら、頭や頬にそっと口付けをするとくすぐったいと笑い声が聞こえてくる。 顔を持ち上げると嬉しそうな顔で僕を見上げる君がいて、その表情に泣きたくなる自分がいる。 君を失うなんて考えたくも無い。 
君が君らしく僕の傍で微笑んでくれたら何だって出来るだろう。 君が望む平和な御世にする努力を惜しまず、次世へと繋げていくよう最大限努めるだろう。
だから・・・・ いつまでも微笑んで傍に居て欲しい。 

「君が判っていると言うなら何も言うことはない。 今は身体を労わって休んで欲しい。 夕餉になったら起こすから、それまではゆっくり休むこと。 今日は一緒に寝るから」
「ふふ・・・・。 李順さんに寝かせて貰えますか? 私を探して昨夜はお仕事されてないでしょう? 大丈夫ですよ、ちゃんと大人しく寝てますから」
「仕事か・・・・。 時間を掛けたい仕事だから大丈夫だ。 兎も角、後で来るからね」 

牢獄で待っているだろう大臣らを思い出し陛下は昏く哂ったが、眠気が強くなって来たため瞼を閉じていた夕鈴はその笑みに気付くことはなかった。 もちろん陛下が気づかせる筈もなく、額に口付けると掛け布を肩口まで掛けて、静かに夕鈴から離れた。

「体調が戻ったら、お仕置きが待っているからね。 夕鈴」
「・・・ん。 ・・・へいか、何か・・・・ 言った?」
「ゆっくりお休み、奥さん。 じゃ、行って来るね」

寝台の天蓋を引くと夕鈴の返答を待たずに陛下は踵を返した。












牢獄には高官が新たに二人、武官が二人、夕鈴を襲っていた男が二人、廚大臣と同じ房に転がるように並べられた。 自白剤が切れたのだろう、周囲の様子を知り蒼褪めた顔色にはなっているが、廚は大臣らしく背を伸ばし浩大と桐をじっと睨ね付けている。
睨まれた浩大と桐が嘆息しながら、集められた彼らに塩の粒と水を飲ませる。
戸惑った顔でそれでも大人しく飲み干す彼らに薄く哂いながら説明を施す。

「あー、時間が掛かるだろうし、直ぐに倒れちゃったら面白くないから脱水防止にね~。 水はたっぷり用意したから 幾らでも飲んでいいからね~!」
「何か言い残しておきたい方は申し出て下さい。 代筆致しますよ」

高官らは目を剥いて二人の言葉を耳にする。 
表情が全く読めない背の高い男が、懐紙と携帯の筆記用具を取り出しゆっくりとした足取りで近付いてくるのを怯えながら凝視する高官は声無き悲鳴を上げて震え出した。

「わた、私はなっ、何もっ・・・! たっ、ただ廚大臣の言う通りにぃ!」
「はい、はい。 それは後で陛下に伝えてよね~。 ほら、他に言いたい事はないの?」
「最後に誰かに伝えたいことが有るなら聞いておくぞ」
「・・・・・ひぃいっ!!」

後ろ手に縛られた高官らが地面に額を押し付けて平伏し、全身を戦慄かせながら泣き崩れる。 
その様子を微笑みながら黒衣の二人が見下ろしているのを、武官が蒼白な表情で見ていた。 
武官らは自分が警護すべき正妃保護の責務を、金と引き換えにした罪は如何程なのだろうと唇を噛締め、ただ震え続ける。
先に囚われ陛下に耳を斬られた高官は呆然と皆の様子を眺めているが、隣の薬師はその高官に縋るような視線を這わせ続ける。

それぞれがこれから訪れるだろう免れない 『死』 に向かって悶えながら抵抗し、そして仄かな期待を寄せているのが手に取るように判り、浩大は苦笑しそうになる。 
桐が肩を竦めて 「皆、喋ることもままならない様子ですね」 と嘆息した後、後宮へと正妃警護のため退房した。 入れ替わるように姿を見せた李順は房を一瞥すると、浩大に 「陛下は?」 と短く尋ねる。 
  
「お妃ちゃんの様子を見に行ったよ。 侍医からの報告もあるみたいだしね」
「・・・・そうですか。 それでは我々も覚悟を決めなければならないでしょうね。 先ほど急ぎの分だけでも政務をして頂いて良かった。 今日は 仕事にはなりそうもないでしょうからね」

首を傾げた浩大に李順は眼鏡を持ち上げて口角を上げる。 

「夕鈴殿の怪我の報告ですよ? あの陛下が詳細を伺い、平常心で居られると思いますか? 侍医から先に伺いましたが、脇腹に酷い痣があり安静に過ごすよう話を聞いてます」
「脇腹に痣? それってもしかして蹴られたってことじゃん? それは・・・・ 恐ろし!」

浩大は房内を見回した後、刑吏に追加の水瓶と手布の用意を頼んだ。 土嚢と陛下の替えの衣装も一緒に頼み、火鉢も数個急ぎ用意するように伝える。 昨夜は一睡もしていないだろう陛下が足を運んだ後、どんな惨劇が待っているかが脳裏に浮かび、もう一度腹拵えをしておこうか少し悩む。 時間を掛けるか、さっさと蹴りをつけるかは陛下次第だ。 
ふと気付くと李順が持つ書類も気になる。

「それは何?」
「廚大臣が財政に関する書類の中に紛れ込ませていた隠蔽証拠です。 大臣の親族一派が正妃を陥れようと画策していた証拠もあります。 河川工事費用に関しては乎東国に侵入させている密偵の報告待ちですが、まあ極め付けは正妃の拉致監禁でしょうね」
「まあね。 それが無けりゃ普通に投獄か、追放、身分財産没収・・・・ か?」
「本当に馬鹿な輩ばかりです。 あの陛下相手によくもその気になったものですよ。 あと、この書類は彼らの私邸から王宮へお返し頂ける物を算出した計算書です。 先ほど計算が上がってきたばかりです。 正気になったところで・・・・・、廚大臣」

李順は房の中へ入ると、刑吏に顔をあげさせて書類の確認作業に入った。 早くに行なわなければ陛下によって口を聞くことも出来なくなるだろう。 
時間との勝負だねと、浩大は牢獄の出入り口に視線を向けた。





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もしもシリーズ | 13:19:19 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2012-12-26 水 14:16:24 | | [編集]
Re: タイトルなし
あらあら、早速コメありがとう御座います。ますたぬ様、お仕事中ですよね。 ほほほほほ。あんだーも読んで頂けて嬉しいですわ。正月からあんだーってなんか最高の気がしてきました(爆発!) 恐い陛下が書けるかなと悩みながら頑張りますわ。
2012-12-26 水 15:50:37 | URL | あお [編集]
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2012-12-26 水 17:48:49 | | [編集]
温度差激しい…(笑)
前半の陛下と夕鈴の会話シーン後の、牢獄会話シーン…
早く甘い雰囲気の陛下&夕鈴と、お仕事催促しに来る李順さんとの日常に戻ってほしいです(*´∇`*)
牢獄での拷問も楽しみですが(笑)
2012-12-26 水 20:18:59 | URL | ダブルS [編集]
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2012-12-26 水 20:19:11 | | [編集]
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2012-12-26 水 20:21:30 | | [編集]
Re: こっちの暗さは…
あんだーでの黎翔の冷笑・・・・・ あらら、如何しましょうか(爆) まあ、哂って下さい。 makimacura 様、コメありがとう御座います。 夕鈴と陛下の中は・・・・まあ如何にかなるでしょう。 本誌でのXXXはご馳走様ですよね。 もう次号が楽しみで楽しみで!! 今から萌えまくっております。
2012-12-26 水 21:01:16 | URL | あお [編集]
Re: 温度差激しい…(笑)
次は牢獄シーンが続きますので、ちょい暗い話になっちゃいます。 夕鈴も入れられたらいいな。 温度差あった方が書くほうも楽しいです。 ダブルS様、コメントありがとう御座います。
2012-12-26 水 21:09:41 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
私の中で李順さんはその位置なんですよね~。 李順さんファンの皆様、大変失礼しました。 御許し下さい。
yuri様、老師が来たら・・・・・ぎっくり腰再来ですよ。 その前に雰囲気に怖気付きそうですよ。 コメ、ありがとう御座います。
2012-12-26 水 21:16:43 | URL | あお [編集]
Re: 真っ黒
ビスカス様、腰の心配ありがとうです!! 大丈夫になりました。 今は膝の痛みが・・・・・(笑) 真っ黒万歳\(^-^)/ありがとう御座います。 次も真っ黒陛下頑張ります!
2012-12-26 水 21:20:11 | URL | あお [編集]
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