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暦の果 甘さも痛さも君次第
毎度で申し訳ありません。 暦の果実の「おまけ」です。
長くなると、「おまけ」書きたくなります。 短いのですが楽しんで頂けたら嬉しいです。



では、どうぞ。









 




 

「ねえ夕鈴。 ・・・・乎東国の王女の件は李順から聞いた?」
「聞きました。 国境沿いの河川工事の件を含めて再度話し合いも行なうそうですね。 王女の婚姻申し込みは無かった事になったと李順さんから説明を聞きました」

抑揚のない声で答える夕鈴を少し驚いた顔で見つめると、彼女は暗い表情で菓子を茶杯に入れようとしていた。 慌てて菓子を取り上げ、顔を覗きこむと虚ろな瞳に遭遇する。 それはそうだろう。 夕餉後まで夕鈴はずっと李順からの 『宿題』 に掛かり切りだったのだから。 

「・・・夕鈴、今日は早く休むことだよ。 明日はその宿題の答え合わせをするんだろう? 体調が優れないからと伸ばすことも可能だけど、そうする?」
「いえ、大丈夫です。 早く答えないと忘れちゃいそうなんです! そっちの方が恐い!」

陛下からの優しさも、李順さんの冷たい微笑みの前には敵わないんですと、蒼白な表情で怯える夕鈴の肩を撫でて苦笑してしまう。 卓上に書簡を広げて老師から教授して貰った箇所の確かめをしている夕鈴を見る。 本当は乎東国王女に対して、必要のない 『焼きもち』 を感じていた夕鈴を見に来たのだが、想定外の表情を見せられ、陛下は困惑してしまう。

「腰・・・・ とかお腹の痛みは如何?」
「桐さんが突然窓から顔を出した時は驚いてちょっと痛みが走ったけど、今は大丈夫です。 ちゃんと休んでいたのですが、休む暇があったら書簡を広げたら良かった・・・・」
「でも夕鈴は薬湯を飲んでいたんだから仕方ないだろう。 休むことも必要だし」
「いいえっ! ・・・・李順さんには通用しません。 寝ながらでも広げることは出来るだろうと言われるのが落ちです。 忘れていた私が悪いんです!」

涙目の夕鈴が可哀想で可愛くて、陛下は膝に抱き上げると書簡を取り上げた。 涙目に口付けて頬を撫で、 「じゃあ僕が質問するから夕鈴答えてね。 今もう一度勉強したら大丈夫だよ」 と明日の為の予習をすることにした。 

「でも陛下もお仕事で忙しかったでしょう? 早くお休みになられた方がいいですよ」
「大丈夫。 それに夕鈴が気になって寝られないよ。 さ、早速質問するよ。 まずは季節毎の大きな宴のそれぞれの正しい名称と使用する殿の名前は?」
「そ、それは~~~~~」

陛下の質問に夕鈴は何度も眉間に皺を寄せながら必死に答え、間違えは直ぐに書いて覚える。 それは深夜遅くまで続いた。 寝不足にはなったが、お陰で李順からは如何にか合格点を貰うことが出来、やっと夕鈴は心底安堵することが出来た。 
そのまま、その日は早めに就寝し、翌日侍医から薬湯を中止しても良いと言われ、手足の包帯も取り外すことが出来た。 頬の腫れも引き、こめかみの痛みも痣も消えた夕鈴は久し振りに後宮立ち入り禁止区域に掃除のために足を運ぶ。

「お、元気になったか?」
「老師、この間は御教授承り、大変助かりました。 ありがとう御座います!」

やっぱり老師は老師なんだと、李順さんの上司でもある小さな老人を尊敬の眼差しで見つめると老師は近寄って来て、夕鈴の手首を確認した。

「・・・・正妃が傷を受けるなど遭ってはならぬ事じゃというのにのぅ。 大丈夫か?」
「はい。 と、いっても手足の傷は自分で縄を切る為につけた自傷ですし、痛みも無くなりました。 同じことは二度とないと陛下も李順さんも仰ってましたから大丈夫ですよ」

袖捲くりをして元気よく掃除を始める夕鈴を眉根を寄せながら老師は見つめた。

「・・・・掃除をする正妃もいなかったがな」







李順に押し付けられた大量の政務を片付けながら陛下は深く考え続けていた。
年も開け、このままでは政務に追われている内に次の行事がやってくる。 
正妃である夕鈴は大方の怪我が治癒したと侍医より報告が来た。 腹部に受けた打撲も薬湯で随分改善されたと聞く。 しかし二人でのんびり過ごす時間が無い。 夕鈴の身体を慮って温泉治療に行きたいと言ったら側近から白い目で見下ろされた上、即答で却下された。 
面白くないと、睨み付けるも側近は表情も変えずに新たな書簡の山を築き上げる。

飄々とした表情で浩大が姿を見せたのは、腐りきった態度で筆を持ち溜め息を吐いていた時。

「へーか、お妃ちゃん元気になって良かったね! ・・・って、こっちは元気ないねぇ」
「浩大、夕鈴は如何している?」
「お妃ちゃんは老師のところで掃除しているぜ? 本当に働き者の良い嫁だよな~。 それなのにへーかは如何してそんなに落ち込んでるのさ」

夕鈴が嬉々として掃除をしてる姿が思い浮かび、がっくりと力が抜け、窓辺で浩大が菓子を食べ始めても睨むことさえ忘れてしまう。 休んだ分掃除で取り返そうとする夕鈴は確かに良い嫁で働き者だが、正妃として他にすることがあるだろうと思う。 
政務室に行くのはまだ廚大臣が犯した罪で揉めている最中だからやめた方が良いだろうが、せめて執務室に来て僕の為にお茶を淹れてくれたりしたら仕事も捗るかも知れないのに。
愚痴を言いそうになって、ふと思い出す。

「そう言えば・・・・・。 李順の宿題に必死になっていたから忘れていた」
「ん? 何がぁ~? 何を忘れていたって、へーか」
「・・・・そうだ、何故忘れていたんだろう。 よし、励む意欲が俄然湧いて来た!」

浩大が不思議そうに陛下を見ると、昏い笑顔で書簡を広げ素晴らしい速度で筆を走らせる姿があった。 口角を薄く上げ、腹に一物ありそうな笑顔を浮かべた陛下を見て、浩大は頭を掻き毟りながら目を閉じて溜め息を吐いた。
勘の鋭い隠密は瞼の裏で今夜は警護が要らないなと小さく頷いた。

「李順は周のところだろうな。 どれだけの仕事を持って来ても熟して遣る!」

舌舐めずりしながら署名をする陛下は正に獲物を狩る寸前の狼そのものだ。 
せめてもう暫らくは休ませてあげようよ と意見を言うことも今の狼には出来ない。 今の浩大が出来るのは、兎に一刻も早く身体を休めるように伝えることだけだろう。 

「仲がいいのはいいけど、ちょっと今回は可哀想かな~・・・・」
「浩大、私も可哀想だろう? これ以上放って置かれると暴走するぞ」
「・・・・一刻も早く休むように伝えて来なきゃな」

ふふんっと哂う陛下を置いて、有能な隠密は正妃の下へと足を運ぶ事にした。 
刑房のことは言わずもがなだなと浩大は考えた。 
廚大臣は未だ生かしてある。 陛下と正妃の為に憂いを残すことなく、さっさと片付けてしまおうと考えていたが、斬り捨てて終わりでは廚大臣にも、自分にとっても簡単過ぎると思い直した。 彼には果てが見えないほどの長い地獄を彷徨わせようと、一人残った高官と共に房の中で震わせている。 高官はすでに意識を遠い世界へと飛ばしてしまい、時々流涎と意味不明な言葉、奇声を吐き出す。 それに怯える廚大臣を刑吏が監視続けている。 他はもう既に土塊と化した。 陛下が彼らを思い出した時が終になるのだろうが、それは今の彼らには安堵になるのか更なる苦難となるのか、そこまでは浩大も把握出来ない。 今の陛下の頭の中に彼らはすでに鬼籍に入ったのだろう。 新たな思案に高揚している陛下に伝えることも無い。

それよりも正妃に苦難が迫っている。 いや、甘い誘惑か束縛か。 
どの道体力が必要となるのは目に見えている。 愛しいと想う気持ちが烈し過ぎるのを本人は判っているのだろうかと苦笑してしまう。 受け止める側の体力と許容範囲を理解してあげて欲しいが、それこそ 『馬に蹴られて』 しまうだろうと浩大は身を捩りたくなるほどの笑いを堪えた。









夕鈴は久し振りの掃除に夢中になっていた。 身体の痛みも薄れ身体も軽く、目の前が綺麗になるたびに顔を綻ばせて次の作業に取り掛かっている。 
単純な作業は余計なことを考えずに済む上に、綺麗になっていく状況は心までを軽くした。 
正妃としてはまだまだ未熟でも、他の面でこんな風に陛下を手伝えることが出来るなら、こんな嬉しいことは無いだろうと手を動かし続けていた。 久し振りに夕餉を作ろうかしらと考えたが、首筋にたくさん付けられた紅い印を思い出して暫らくはやめようと首を振り思い留まった時、明るい声と共に突然、隠密の姿が夕鈴の前に飛び込んで来た。

「お妃ちゃん、お元気そうで何よりっすね~!」 
「浩大、相変わらず脅かすわね! ねっ、見て。 綺麗になったでしょう?」

驚いた夕鈴は直ぐに笑顔になり、棚から床まで輝くほどに磨き込んだ部屋を見てくれと振り返った。 窓を開け放ち、空気の入れ替えをしながらなので寒さはあるが、冬の日差しが部屋に差し込み、拭いたばかりの床が艶を放っている。

「もうね、三つ目の部屋なの。 暫らく掃除に来れなかったら気になっていたのよね。 今日は政務室に行く予定がないし、天気が良いから回廊や庭も掃除しちゃおうかしら」
「・・・・いやいや、お妃ちゃん。 今日は終わりにして湯浴みをして昼寝でもしなよ」

窓に腰掛けた浩大が含み笑いしながら窺うように自分を見るから首を傾げてしまう。

「午後から何か后としての仕事があった? 李順さんは数日は後宮で過ごすようって言っていたし、予定は無かったはずだけど。 誰か来る予定でも出来たのかしら?」
「ん~、そうそう! で、オレが教えに来たんだよ。 夕刻以降になるはずだから、湯浴みして休んで置かなきゃ体力が続かないだろう? 掃除で疲れましたなんて正妃は居ないから、ちゃんと昼寝して、しっかりとお勤め出来るようにしてなきゃね」

雑巾を持っていた夕鈴は肩を落として 「そうね。 じゃあ侍女さんに湯浴みの用意をお願いしようかな?」 と部屋を見回した。 まだ掃除し足りない顔を見せるが、息を吐くと素直に正妃の仕事が優先と片付けと着替えを始めた。

「宦官に湯浴み準備を伝えてくるから、お妃ちゃんは真っ直ぐに湯殿に行ってね~」
「うん。 浩大、ありがとう!」

真っ直ぐな微笑みが痛いなと、浩大は曖昧な笑みを返した。 宦官に湯浴み準備を侍女に伝えるように告げ、女官には昼寝の準備と夕刻以降に陛下が渡るだろうが、それを正妃には内緒にして欲しいと伝えた。 女官は大きく目を瞠ったが、察しが良いのか直ぐに黙って頷いた。

知らぬは夕鈴だけだ。 
彼女の用意は整えたから、あとは陛下の仕事次第。 李順さんが追加の仕事を運んで来たら執務室から抜け出すのは困難になるだろう。 いや、それでも陛下なら抜け出すかな? 
正妃寝所までは李順さんも怒鳴り込みには行けないだろうしな。
嘘は言っていない。  誰か来る予定・・・・ 陛下が渡る予定なんだから。
それも酷く餓えた狼が一匹。 兎に出来ることは狼に食べられるまでに体力を温存すること。
後は野となれ山となれ。


「本当、オレって有能な下僕だよな~」

自分の采配に満足した浩大は、早速、事の流れを報告しに陛下の元へと足を運ぶ。
褒美はどの国の酒にしようかと舌舐めずりしながら。




FIN


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 18:00:25 | トラックバック(0) | コメント(12)
コメント
ニヤニヤが止まりません(///ω///)
陛下は満足、夕鈴は足腰立たず、後日浩大は夕鈴に怒られる?李順さんは仕事が滞らないので、ご機嫌(笑)

楽しいお時間、ありがとうございましたm(__)m
2013-01-04 金 20:23:46 | URL | ダブルS [編集]
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2013-01-04 金 20:34:44 | | [編集]
Re: ニヤニヤが止まりません(///ω///)
ダブルS様、早速のコメありがとう御座います。 にやにやして頂けて嬉しいです。浩大いっぱい出せて嬉しいですよん。 勿論、あっちへの移行を考慮した内容になっておりますので、時間は掛かりますが御待ち頂けるなら嬉しいです。
2013-01-04 金 20:57:30 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
慎様、足を運んで頂き、感謝です。ありがとう御座います。こちらこそ本年も宜しくお願い致します。
2013-01-04 金 20:58:41 | URL | あお [編集]
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2013-01-04 金 22:17:46 | | [編集]
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2013-01-04 金 22:40:05 | | [編集]
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2013-01-04 金 23:17:36 | | [編集]
Re: キタ~!!
なんかもう、すいませんと言うしかない流れであんだーへ移行します。makimacura様、コメありがとう御座います。お時間多少頂きますが、御待ちいただければと思います。学習能力欠如の夕鈴が可愛くてしょうがないんです。(笑)
2013-01-05 土 00:37:43 | URL | あお [編集]
Re: 続きは?
あんだーでは「女官長からのお叱りに怯える陛下」も入れた方が楽しいかしら?ますたぬ様、コメありがとう御座います。旦那様のご実家滞在、御苦労様でした。わたしゃ、同居ですから慣れっこになりましたが、たまに行くと疲れるでしょうね。旦那がうちの実家に行くと、そう言ってましたから。ゆっくりお休み下さいませ。
2013-01-05 土 00:39:37 | URL | あお [編集]
Re: 爆
ビスカス様、コメありがとう御座います。夜の後宮って、声が漏れて当たり前なんですってね。 警備の者はいるし、侍女は付き添っているし、閨の手伝いも当たり前にしていたそうですが、夕鈴は無理~~~~っ! そういうところで 『出来る男』 陛下ってすごいですよね、歴代の人たち! もちろん、日本もそうでしたよね。大奥なんか衝立の隣に番がいたんですもの。 考えられないっす。
2013-01-05 土 00:42:18 | URL | あお [編集]
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2013-01-07 月 09:37:00 | | [編集]
Re: タイトルなし
ななすけ様、コメ嬉しいです。ありがとう御座います。夕鈴がぼそっと呟く『貼り紙』に爆笑。それいいかも。さっそくあんだー更新してますので、お時間有る時にでも御覧下さいませ。まだえっちぃではありませんが、あっちのサイトなので、ええ、そっちに流れます。(笑)
2013-01-07 月 14:29:51 | URL | あお [編集]
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