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窮兎  1

久し振りのバイト夕鈴です。 翻弄されっぱなしの夕鈴がメインです。 
痛いことがないと思うのですが、流れでどうなるか判りません。(見切り発車ですので!) 
それでもO・Kという方、お付き合いして下さるなら嬉しいです!



では、どうぞ。














侍女が或る日の午後、部屋で刺繍をしている夕鈴に 『爆弾』 を投下した。
それは後宮においては至極当たり前の事として有り得ることなのだが、夕鈴にとっては青天の霹靂と言うか、著しく想定外のことでこの上なく激しく動揺してしまった。

「そ、それは・・・!」
「ええ、陛下次第というか、こればかりは神頼みにも似たことで御座いますのでしょうが、私共は心からお待ち申し上げておりますとお伝えしたくて」

夕鈴は刺繍糸と布を放り出して慌てて団扇で口元を隠し、目元だけは如何にか微笑みを浮かべることが出来た。 これが精一杯。 これ以上の演技は自分には到底無理だと理解出来ている。

「そ、そうですか。 ほっ、ほほほほほ・・・・」
 
夕鈴の強張った微笑みに侍女は柔らかな微笑みを浮かべる。 その微笑みは期待を込められたものであり、対する夕鈴は俯く訳にもいかずに強張った頬をどうすれば解きほぐせるかが課題となった。 内心は酷いパニック状態なのだが、李順からの厳しい指導のお陰で如何にか表面には妃としての微笑みを浮かべることは出来た。 
が、こめかみや掌にはびっしりと汗が滲み、背筋に嫌な汗が流れるのを感じ、全身から湯気が立ち昇っているのではないかとさえ思えた。

「陛下付きの女官たちは占者にお伺いを立てようかと話しているそうですわ」
「わたしも聞いたことが御座いますわ。 あの有名な占者で御座いましょう? 可家では失せ物をその者に占って頂き、直ぐに見つけることが出来たと聞いたことがあります」
「凋大臣の下の娘様はその占者の御導きで良縁に恵まれ御結婚されたと聞いております」
「占者にお伺いを立てられたら、そのお答えが楽しみで御座いますわね、お妃様」

突然話を振られて夕鈴は目を瞠ったが、突然過ぎて何を言われたのか頭が追い着かない。
侍女は嬉しそうに微笑み、首を傾げた。 夕鈴も一緒に首を傾げたが、それは疑問の動きに他ならない。 今にも涙が零れそうなくらいにパニックなのに、侍女たちが楽しげに語る話しの内容に追い着けず、微笑みだけが貼りつく。 

占者って、下町でいう 『占い婆』 や、ちょっと怪しい 『呪い師』 とどう違うのか解からないし、何でそういう話の流れになったのか全く理解出来ないんですけどっ!!

「大層な身分の方々がその占者のもとへ詰め掛けていると聞きて居りますが、その方はどの様に御会いする機会を設けることが出来たのですか?」

侍女の一人が問い掛けると、問い掛けられた侍女の一人が頷いた。

「女官のお一人に大貴族が親族にいらっしゃる方が居て、その方の仲立ちだそうですわ」
「お妃様はどう思われますか? 御一人目は後継者たる男御子様をお望みでしょうか」
「あ、わた、わたし・・・・は」
「でもお妃様に似た女御子様でしたら、陛下はすごく可愛がるのでしょうね」
「わかりますわ! お妃様を御抱きになるように愛しむのが目に浮かぶようですわ」
「占者の答えが楽しみですわね」

きゃあきゃあと嬉しそうに騒ぐ侍女らに夕鈴は微笑みながら眩暈を感じていた。

誰が・・・・・・ 誰が言い出したの?

占者に陛下との間に 『いつ御子が授かるか!』 って視て貰おうなんてーっ!!












侍女たちの賑やかな話を如何にか逃げ切った夕鈴が、ふら付きながら執務室に向かうと、途中見知った官吏が心配気に声を掛けてきた。

「お妃様、具合が悪そうですが大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。 身体は丈夫ですから! 御心配頂きありがとう御座います」

背を伸ばして夕鈴は官吏に微笑んだ。 侍女の他愛無い話しでの精神的疲労なんて有り得ないだろう。 官吏の皆は狼陛下の下で、日夜精神的にも肉体的にも厳しい政務に励まれているというのに。 その官吏に気遣われるとは 『プロ妃』 として情けない。

「時期的に寒くなっておりますので、お気をつけ下さいませ」
「ありがとう御座います。 貴方も風邪には気を付けてお仕事に励まれて下さいませ」

妃らしく夕鈴が微笑むと、官吏が恭しく拱手しながら 『爆弾第二弾』 を投下した。

「丈夫な御子様が御生まれになる日まで、どうぞ御身を大事になさって下さいませ。 臣下一同、その日を心より御待ち申し上げております」 

ビキリッと固まった夕鈴は遠ざかって行く官吏の台詞が頭にぐるぐるぐるぐると回り続け、寒風吹き荒ぶ廊下の真ん中で暫らくの間呆然と立ち続けていた。 
通り掛った李順が廊下の真ん中で、カカシのように立ち竦む妃に驚き、引き摺るように執務室に押し込めるが、夕鈴は暫らくの間、何も喋ることが出来ずにただ固まっていた。

「夕鈴殿っ! 妃らしく出来ないようなら借金返済が滞るばかりですよ!」
「・・・・はっ!」

李順の辛辣な台詞に意識が戻るも、戻った途端に震えが走り、思わず李順にしがみ付いた。

「り、李順さんっ! た、たい、大変ですっ! 如何したらいいんでしょうか!?」
「夕鈴殿、少しは落ち着きなさい! 一体如何されたんですか? 普段から常に妃らしい振る舞いや、御しとやかな仕草を心掛けるようにと進言しておりますでしょう!」
「そ、それどころじゃないんですっ! わ、私どうしたらいいのか、そ、相談をしにっ!」

縋るように李順の袖を掴み、揺さぶりながら必死に訴えると大仰な溜め息と共に肩を強く叩かれた。 余りにも動揺しすぎて涙目になっているのも判らず、叩かれた衝撃に夕鈴がやっと揺さぶるの止めて、息を詰めていると李順が頷いた。

「賭けのことは存じております。 その事ですよね?」
「・・・賭け、ですか? いえ、そうではなくて占者のことですが・・・・?」
 
初めて聞く 『賭け』 の言葉に首を傾げると、眼鏡を持ち上げた李順がもう一度深い溜め息を吐いた。 困惑したまま袖を握り締めていると、聞き慣れた声が恐ろしいほど低く耳元に響いた。

「夕鈴、何で李順にしがみ付いているのかな・・・・」
「ひいっ!!」

夕鈴が驚いて悲鳴を上げると同時に背後から廻った腕に抱き締められ、今度は耳に熱い吐息が掛かるほどの距離で甘く囁かれた。

「君が抱きついていいのは私だけのはずだ。 如何して李順に? それも二人きりで」
「・・・っ!」

そこが限界だった。 至近距離からの狼陛下ボイスは決定打だ。 
かくんと膝から力が抜けた夕鈴は、いつものように陛下に抱き上げられた。 今までの流れでふらふらの精神状態のところに狼陛下の妖艶な低い声。 完全に脱力した夕鈴は陛下の肩に頭を乗せたまま、小さく呻いた。

「借金って・・・・・ 後どのくらい残っているの?」



 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 20:30:40 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-01-08 火 22:32:44 | | [編集]
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2013-01-08 火 22:44:45 | | [編集]
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2013-01-08 火 23:05:32 | | [編集]
Re: ドキドキ!
ビスカス様、まあ、吃驚仰天っす! そしてコメ、ありがとう御座います。 本誌流れとは時間の流れが多少異なりますが、まああってもいい話しではないかと妄想しちゃいました。 ナイスタイミング! あっちの陛下も深夜発車予定です。よろしければ御覧下さいませ。 ご乗車、ありがとう御座います。
2013-01-08 火 23:12:52 | URL | あお [編集]
Re: ぐぅ~るぐる
あれ? 泉水、温を含むかな? ・・・・・・で、調べてみたら 「しみず あたたかをふくむ」でしたので、泉水、温を含むでした~。すいません。(^^;)makimacura様、妄想暴走中止になっちゃいますか? 恥ずかしいです。 それでも呆れずに御付き合い頂けたら嬉しいです。 本当、すいません(爆汗) コメ、ありがとう御座います。
2013-01-08 火 23:17:01 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。 絶対ある話だと思って。後宮ですしね~。でもバイトの夕鈴。 どうするんだろうかな~っと妄想しちゃって!わたしも楽しみに書かせて貰います。
2013-01-08 火 23:23:37 | URL | あお [編集]
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2013-01-09 水 02:23:57 | | [編集]
Re: 刺客よりも恐ろしい…?
ダブルS様、コメありがとう御座います。underと全く違う内容ですが、お楽しみ頂けたら嬉しいです。久し振りに、のた打つ夕鈴を書きたくなりました。 ちょっと「もしも」が続きましたのでね。イチャイチャ書けたら楽しいなと想っております。
2013-01-10 木 00:18:44 | URL | あお [編集]
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