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窮兎  2
バイト夕鈴が振り回されてます。 楽しいです。



では、どうぞ。










 






 
「夕鈴も 『賭け』 の噂を聞いて来たんだろ? 本当に暇な臣下が多くて困るね、全く。 僕、一度ちゃんと怒っておこうかなと思ってるんだー」
「陛下、そんな些事は放置していていいです。 それより書簡の山を先に片付けて下さい」

側近が睨ね付けるも、陛下は口を尖らせて膝上の妃を抱き締める。 

「えー、だって夕鈴が李順に縋って相談するくらいなら狼陛下で一喝した方が早くない?」
「それは怪文書と同じで放置するに限ります。 陛下が一々係わることではないでしょう。 いいからさっさと仕事に執り掛かって下さい。 また山が出来ますよ!」

腰がすっかり抜けていた夕鈴だが李順の怒気を孕んだ台詞を耳にして慌てて陛下を見上げた。

「もう立てると思いますので椅子に降ろして頂いて、陛下は御政務をして下さい!」
「大丈夫だよ。 それより夕鈴が聞いたのは 『賭け』 じゃないの? 何が大変で李順に相談しに来たの? あんなに慌てて李順の袖を掴むなんて、僕妬いちゃうよ?」

かくんっと身体が傾く。  何が妬いちゃう、だ?  今は演技が必要ないでしょうに!
頬を膨らませて拗ねた様子を見せるなんて、本当に陛下は妃を愛しむ演技が上手だ。

「侍女さんとか女官さんが、あ、あの・・・ その、ですね。 実は・・・・」

そのまま伝えたらいい単純な話しのはずが、改めて伝えようとすると上手く言葉に出来ない。 
上手く伝えようと言い淀んでいる内に身体が何故か熱くなってくるのを感じた。 
頬を触ると確かに熱い。 おかしいと夕鈴は小さく左右に首を振る。 

・・・・・・陛下との間にいつ御子が出来るかを占って貰うことになっている。
 
その一言が言えない。

・・・・・・皆が御子の誕生がいつになるか、男が先か女が先かを占おうとしている。

そう伝えようと思うのに出来ない。

ただのバイトなのに、ただの臨時花嫁なのに、みんなが二人の間の御子を楽しみに占って貰おうとしているということが・・・・ 変に心苦しい。

「えっと、 あの・・・・・」
「夕鈴、赤くなったと思ったら今度は蒼くなった。 風邪でもひいた?」
「い、いえ。 身体は丈夫ですので! そ、それより 『賭け』 って何でしょうか?」

頤を掴まれたため、至近距離に陛下の心配そうな顔がある。 夕鈴は心臓が止まるんじゃないかと思うほどに動揺し、慌てて陛下の胸を押しやった。 陛下は少し驚いた顔を見せたが、夕鈴の頭を撫でてながらその 『賭け』 について教えてくれた。

「高官や大臣の間で狼陛下の御子がいつ生まれるかの 『賭け』 が横行しているって。 それも自分たちが推す占者の宣託を信じて、それぞれが結構な金を賭けていると聞く」
「全く馬鹿らしいことです。 暇な者が多いのでしょうが、それだけ内政が落ち着いて来たということなのでしょうかね。  兎も角、夕鈴殿は一切無視していて下さい」
 「は・・・・い。」

占いの結果を賭けている?  それも大金を賭けて?  高官や大臣が?
唖然として話しを聞いていた夕鈴は最後に李順から 「無視して下さい」 と聞き、確かにそれ以外にしようが無いと思った。 幾ら大臣らが大金を賭けていても、いつまで待っても、御子が生まれることは絶対にないのだから、放置するしかないだろう。
李順が言う通り、内政が安定してきたということなのだろうか。
そうなると、以前李順が言っていたように・・・・・・・・。

「で、夕鈴の相談って何?」
「ほぇ? ・・・あ、お、同じようなことで・・・・ す。 侍女さんや女官さんがいつ御子が、それも男御子が先か、女御子が先かと占者にみて貰うんだって話されていて・・・・。 ちょっと驚いてしまっただけで。 そうか・・・、だから官吏の方も・・・・」
  
王宮に仕える人にしてみれば、それも仕事の一環であり、妃が居るならば当たり前のことなんだろう。 陛下のために用意された妃は、いずれ国母になる可能性を秘めている。
そうだよね。 まさか 『偽者』 が後宮に居るとは思わないものね。 
それも短期の予定が備品破損のため長期に亘るなんて、李順さんも想定外だったろうし、こんなことになるなんて思いも寄らなかっただろうな。 
そういう点でも迷惑・・・・ 掛けていることになるんだろうか。
借金が返済して退宮する頃には内政が安定し、そして。

「夕鈴? また何か変なことを考えているのか。 君が考えることは私のことだけにして貰いたいものだがな。 我が妃よ」
「今は李順さんしかいませんので、演技は必要ありません。 それに・・・・ そうですよね。 余計な考えですよね。 ・・・・・李順さんの言う通り、無視することにします」

狼陛下を一睨みしてから、夕鈴は膝の上から漸く立ち上がった。
バイトには関係ない、区切られた線の向こう側の話しに自分が立ち入ることは出来ないし、今回の 『賭け』 は幾ら皆が賭けても結果が出ることは無い。 それは本当の本物の正妃なり、妃が来てからの話になるんだから。

「ちょっと驚いてしまいましたが、落ち着きました。 相談することも無かったですね。 本当にすいませんでした、御政務があるというのに」

深く頭を下げて急いで執務室から逃げ出した。 
陛下が何か叫んでいたようだが、夕鈴は耳を閉ざして聞かないように足を早める。 
正直落ち込んでいたし、恥ずかしくもあった。 ぽんっと頭に浮かんでしまった陛下との御子を慌てて抹消しようと頭を思い切り振る。 そのまま後宮の庭園まで早足で歩き、誰もいないことを確認して四阿に飛び込むと柱に抱きついて、大きな溜め息を吐いた。
 
有り得ない!と、柱を叩く。
なんてことを想像するんだ!と、柱を蹴り上げる。
煽られて馬鹿みたいじゃないか!と、頭突きする。

最後の頭突きはかなりキテシマイ、夕鈴は声も出せずに蹲った。 
余りの痛さに目の前に真赤な星が飛び散り、涙が滲む。 それでも、頼むから今は誰も来ないで、一人にさせてっ! と願わずには居られない。

それなのに・・・・・。

「お妃ちゃ~ん? どうしたのさ、四阿を壊す気ぃ?」

のんびりした声が背後から聞こえて、地面に膝をついて脱力した。 
そうだよね、一人きりだから浩大が来るんだよね。 妃警護だから仕方がないよね。
それも警護対象が四阿で暴れているんだもの、おかしいと思うわよね。

「四阿を壊すつもりはないし、壊せる自信もないわよ。 ・・・ちょっとした自己嫌悪に陥って自分を痛めつけていただけよ。 浩大もいちいち姿を見せなくていいから・・・・」

溜め息を吐き夕鈴は立ち上がった。 浩大がニヤニヤして自分を見るから余計に居た堪れない。 きっと浩大は 『賭け』 のことも、『占者』 のことも知っている。 そして自分がのた打ち回って暴れている原因も承知しているだろうと思うと、恥ずかしくて顔を上げられなくなる。 
しかし、部屋に戻ると侍女が期待を込めた視線で妃を見つめてくるだろうし、後宮立ち入り禁止区域に行くと老師が 「では御子を作ればいいだけじゃ!」 と言うだろうし、政務室に行くと官吏を始めとして高官や大臣が露骨な視線を向けてくる。
四面楚歌状態では落ち着ける場所が無い。
勢いで四阿に来たが結局は浩大に見られてしまい、つんと横を向いて顔を背けるしかない。

「どうしようか、ちょっと悩んだけど、無視するしかないから私はそうするわ」
「陛下にお願いするのはどう?」

浩大が思い付いたようにそう言うので、夕鈴は眉根を寄せた。

「陛下は一度怒ってみるって言っていたけれど、もう既に女官さんが占者にお伺いを立てているようで、侍女さんがその結果を楽しみにしてるのよ。 だから無視するしかないでしょう?  賭けの件は、李順さんにも無視してなさいって言われたし」
「そうじゃなくって!!」

夕鈴が顔を上げると浩大のにやけた笑いがあった。 夕鈴が首を傾げると浩大は四阿の柵に腰掛けながら、同じように首を傾げて楽しそうに告げた。

「陛下に占者の言う通り、御子を作りましょうって言ってみればいいじゃんか」
「・・・・・・・・・・」

思わず腕が伸びて柵に腰掛ける浩大を突き飛ばす。

「っお! 落ちちゃうよ、後ろは池だぜ? 寒中水泳はパスさせて~!」
「そうされたくて言うんでしょう? ・・・・無視をしてるから、賭けでもなんでもやったらいいわよ。 いつまで経っても結果は当たらず無駄なだけなんだからっ!」

もちろん浩大は柵から落ちることなく、身軽に四阿の屋根に飛び上がると他の仕事があるとばかりに笑い声だけを残して姿を消してしまった。 
一人残された夕鈴は唇を噛み締めると手を振り上げて、もう一度四阿の柱を思い切り叩いた。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:58 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-01-10 木 00:52:20 | | [編集]
Re: タイトルなし
ユナ様、コメありがとう御座います。 夕食後からのんびり打ち込んでいると、こんな時間になっちゃうんですよね。 柱・・・・壊れるかしら?夕鈴関取並み?壊れたら、また借金追加になっちゃいますね!浩大が切れ目を入れないように願います。
2013-01-10 木 01:10:42 | URL | あお [編集]
あらあら
夕鈴翻弄されてますね行き場がないのは可愛そうですが、読んでいて楽しいです・いっそのこと、浩大の言うようにおねだりしちゃえ・と言いたいくらいです・夕鈴はしないでしょうけど…・

続きが楽しみです
2013-01-10 木 06:18:03 | URL | ともぞう [編集]
殺人未遂(笑)
阿室での夕鈴と浩大のやり取りがツボでした(*^^*)
浩大だから大丈夫な行動ですが…
(落ちてたら、それはそれで楽しい展開が、あったのかも?)

夕鈴がドタバタしてるのは、可愛くて楽しいです!
それでは、今晩もお邪魔いたしましたm(__)m
2013-01-10 木 20:00:37 | URL | ダブルS [編集]
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2013-01-10 木 21:04:15 | | [編集]
Re: あらあら
ともぞう様、コメありがとう御座います。浩大に翻弄されていじめられる夕鈴って好きなんですよね。結構そういうのが多いかも(笑) 次から少し動きが出てきますので、また遊びに来て下さい。
2013-01-11 金 01:12:42 | URL | あお [編集]
Re: 殺人未遂(笑)
ダブルS様 コメありがとう御座います。 殺人未遂。 そうか、寒中水泳はこの時期きついですよね。 確かに! きっと半目で押し出したんですよ、夕鈴は。 あの表情のときの夕鈴は怖いから~。
2013-01-11 金 01:14:13 | URL | あお [編集]
Re: 可愛い
ビスカス様、コメありがとう御座います。 追い詰められた兎は可哀想だけど苛めがいがあるんです。 次はうたうだ悩む夕鈴と、少し動きが出てきます。 
2013-01-11 金 01:16:00 | URL | あお [編集]
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