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窮兎  4
続きです。 パソコンの調子が悪くて、最近ワタワタしてました。
ちょいと新しいのを入れると、すぐにイジケルから困りものです。


では、どうぞ。













最近の侍女の言動は日に日に夕鈴を戸惑わせていた。 

「お妃様、お部屋は寒くありませんか? 膝掛けをお持ちしましょうか?」
「今夜は夕餉にさっぱりした湯を用意させました」
「珍しい果物で御座います。 宜しければ御薬湯をお持ちしましょうか?」

最後の薬湯には流石に驚いて、侍女に尋ねた。

「身体を芯から温める薬湯で御座います。 御風邪を召しませぬよう御用意致しました」

最近巷では悪性の風邪が流行っております故と言われると有難く頂戴するしかないが、それでも違和感を感じ続けていた。 恋愛経験が乏しい・・・・ というか皆無の夕鈴はその後の展開である懸念も全く理解出来ずに、侍女の優しさをただ過剰なものと受け止めるしか出来なかった。



それよりも 『囮』 として如何あるべきか。 
そう考えると今回の 『賭け』 は陛下の敵を探るには絶好の機会に思われた。 もちろん容易に狙われる訳にも、その為に命を落とす訳にもいかない。 そんな奴らの為に落とす命ではない。 借金を返済し、青慎の学費捻出の為にも危険手当は歓迎だが、殺されることは避けたい。

政務室近くでの妃への暴力行為。
それは本来あってはならないことだ。 陛下唯一の妃である私が、臣下から謗りを受けるのは理解できる。 旨みの無い素性の知れぬ妃を排し、己の利を追求できる者を後宮に入れたいと願う大臣が多いというのは老師からも李順からも何度も聞いている。 その為の 『臨時花嫁』 だし 『囮』 だから。 そして実際に狙われたこともある。
・・・・・狼陛下に、こんな妃では。
そう言われているのだと判っている。 いくら努力しても叶わないことだから、それは如何思われようといい。 だけど、それらの行為が横行するような王宮であってはならない。 
陛下の御為にならないなら、自分は 『囮』 でもなんでもやるしかない。
 
しかしそうなると困るのは、最近妙に過度な対応を取る侍女さんたちだ。
彼女達が巻き込まれるのは困る。 非常に困る。 彼女達から離れるのことが出来るのは政務室や後宮立入禁止区域や書庫など。 政務に関する場所は侍女も立ち入れない。 その時は回廊や別室で侍女は待つしかない。 いや、本来なら自分も立ち入るべき場所ではないのだが、陛下から許可が出ているから、こうして後宮からふらふらと歩き回ることが出来ている。
それならば誘いやすく、歩き回る場所を広げてみようかしら?

敵が襲いやすくて、浩大が発見しやすくて、捕縛しやすい場所。 
・・・・・少し探求してみようか。

そう思った夕鈴は、後宮管理人の老師の下へ勉強の為に伺うと侍女に伝え、静かに他の建物へと足を進めた。 後宮立ち入り禁止区域の庭を幾つか抜け、人影少ない場所を歩き、政務室近くに向う。 しばらく歩き続け、ふと気付くと見たことの無い建物が見えていた。 
周囲を確認するが、見知った庭園では無いとわかり、数歩戻るも人影が見当たらない。

「・・・・・・あれ? ここは・・・・・何処?」

一気に蒼褪めるが、誰が通るか判らないから妃らしく楚々として歩く。 
内心はバクバクしていたが、そこは李順からのお妃教育で培った演技でどうにか押さえ込み、 『迷子』 なんかじゃありませんと装いながら、微笑みを浮かべて足を進め続けた。 

一刻も歩き続けると、見知った風景が広がってきた。 
ここは見たことがある場所だと漸く安堵する。 御前試合の時に来たことがある場所だと判り、王宮内禁衛 禁軍指揮官 菰将軍が管轄する武陽殿近くのはず、と一人頷いた。 
少し歩けば御前試合が行なわれた演武場がある承久殿前の広場があると判り、夕鈴は涙が出そうなほど安堵した。 そして眉根を寄せて周囲を見回すが、望む人物は現れそうに無い。 

「浩大・・・ いないのね。 この間は一人にして欲しい時に姿を見せたのに、居て欲しい時には姿を見せてくれないなんて、なんか悔しい気がするんだけど・・・・」

溜息と共に呟いて、武陽殿近くへと足を向ける。 そこまで行けば帰り道は覚えている。 女官に先導されて赴いた場所だが、帰りは一人でも帰れた場所だ。 
回廊に上がり、一人で肩を落として歩いている内に、夕鈴は段々急いで後宮に戻らないと駄目だろうと思えて来た。 陛下唯一の妃が侍女も伴わずに一人でこんな場所までウロウロと彷徨い歩くなんて、あり得ないと。 ここまで幸い、誰にも会うことが無かったが、妃が共も連れずに歩くなど在ってはならないことだと、漸く思い至った。 
『囮』 になるにしても李順に相談もせず、勝手に出歩いて、勝手に襲われたら危険手当など出して貰えるはずもないだろうと気付く。
もし、このことがばれたら・・・・・敵を誘う前に、李順に殺されるかもしれない・・・・。 
脳裏に浮かんだ李順の微笑みに、恐ろしいほどの寒気に襲われる。 

早歩きが小走りになった時、肩近くを鋭い風が掠めた。 何と思って肩を見ると衣装に切れ目が入っていることに気付く。 振り向くと背後の回廊には小刀が突き刺さっていて。

来たっ!!  ああ、やっぱり来た!
そして、どうして? 妃を狙うのはやっぱり私が邪魔だから? って、それ以外無いか!

一人突っ込みを頭の中で展開すると、すぐに壁に身体を寄せて、周囲に神経を張り巡らせる。 
浩大はやっぱり姿を見せない。
侍女さんたちが傍にいない時で良かったけど、この状況では喜んでいる場合じゃないのは理解出来る。 如何しようと逡巡するが相手が何人いて、何処から狙っているかが判らない。 
こういう時は下手に動かない方がいいのだろうか。 
でも、じっとしていたら次の小刀の標的にされるかも知れない。 頭の中は沸騰寸前だが、視界の端に何かが動いたのが映り、視線を動かすと黒衣の影が揺れた。 その影から死角になる場所へ足を静かに動かしながら、扉に手を掛ける。 
音も立てずに扉が開いたことに、思わず心の中で担当掃除人を盛大に褒め称える。
気付かれませんようにと祈りつつ、身体を扉の中へと移動させることに成功した。

「・・・・・・はぁ。 兎に角、隠れる場所を探すか、逃亡方法を考えなきゃ・・・・」

小さく呟きながら薄暗い室内に視線を巡らす。 確かこの奥の殿に行けば禁軍が詰めているはずだが、それにしても何故こんなに人が居ないんだろう。 警護対象が政務室に居るというのもあるだろうが、それでも武官の一人も居ないなんて奇怪しいじゃないか。
動くべきか動かざるべきを逡巡していると、小石を踏む音が微かに聞こえた。

動かなきゃ・・・・ 駄目だ。

目を凝らすと部屋の奥に扉があるのが見え、震える足をどうにか叱咤して少しずつ進む。 
怖くて本当は動きたくないけど、でもここから逃げ無きゃ駄目だというのは判っている。 
陛下の為に 『囮』 としても 『臨時花嫁』 としても役に立てないまま傷つけられるのは嫌だ!
震える指でそっと扉を押すと静かに開いた。 

次の間は座卓ばかりが積まれた倉庫のようにみえる。 宴で使うのだろうかと目を眇めると奥にまた扉があると判り、壁に沿うように進んでいると隣の部屋で物音が聞こえ、夕鈴はそっと身体を沈めた。 今、自分を守るのは自分だけと息を潜める。

お願い! お願いっ! 何処かにいっちゃって!

息を詰めて、目を強く瞑って必死に祈る。 それなのに身を潜めた近くに小刀が突き刺さる。 

・・・・・・・ばれてる~~~~~~っ! もう、いやぁ~~っ!

「貴方・・・ 私を殺すように頼まれたの?」

埒が明かないと、夕鈴は座卓を盾として持ちながら立ち上がった。 荷物ばかりの部屋の対面に黒衣の人物がいるのが判る。 片肘があがっているのは獲物を持っているのか、他に判るのは相手が一人だけということ。 間には座卓が大量にあり、簡単には近づけないだろうということ。 それでも相手が近づこうとすれば容易に自分に向ってくるだろう事は想像出来た。

「御子誕生がいつになるかの賭けをしているのは知ってるけど、それで私を殺そうとするのは如何して? ふつーに賭けたらいいじゃないのっ! 勝つ時もあれば負ける時もあるのが賭けでしょうにっ! 負けるのが嫌なら賭けなきゃいいじゃない!」

刺客相手にそんなことを言っても仕方ないのは判っている。 目の前の刺客が賭けをしている訳じゃないのは重々承知だ。 それでも殺されるかもしれない立場としては、目の前の相手に文句を言うしか出来ない。 すると黒衣の人物が小さく揺れ、眉間に皺を寄せて注視すると、相手が口元の布をずらして答えてくれた。

「・・・今居る唯一の妃が懐妊したとの噂があり、男御子誕生となれば国母だ。 それを阻止したい御方から、子を流すか、妃が消えるかの依頼を請け負っただけだ」
「懐・・・・・ 妊って、噂が・・・・?」

刺客からの返答に頭の中が真っ白になった。 

誰が懐妊?  国母?  流す?  何を?

賭けに乗じている臣下の誰かが 『負け』 が嫌で刺客を送っただけじゃなく、妃の懐妊を阻止しようと流産させるか殺害しようと・・・・ って、誰が懐妊? 
 
・・・・・まさか私が懐妊?  あら、いつの間に・・・・・。

「って、懐妊なんかしてないわよっ! 誰が言ったのよ、そんな事!!」

私は清らかな身体なんです! ただの庶民で バイトで 偽者で 臨時なんですっ! 
そこは口から零れることはなかったが、余りの動揺に座卓から顔を出して叫んでしまった。 そこへ乾いた音を立てて小刀が突き刺さり、同時に夕鈴は扉へと走り出していた。 
開けた扉に小刀が突き刺さる音が耳元で聞こえたが、どうにか足が止まることはなかった。
回廊に出て直ぐ右に足を向ける。 背後で座卓が倒れる音が聞こえたが、振り向くことは出来なかった。 必死に走る、その足に熱い痛みが奔ったが構わなかった。 

「わっ、分かんないの!? 懐妊してたら、こんなにぃ・・・ 走れないわよっ!」
「・・・・それなら妃に消えて貰うだけだ」

そうね、確かに言っていた。 でも 「はい、そうですか」 って訳にいくかっ!!

「お妃、・・・・覚悟」
「来ないでぇー!」

回廊の直線じゃ小刀の標的にされやすいと思った夕鈴は庭に向って移動した。 庭の木立に隠れようと考えた瞬間、また足に酷い熱さが奔る。 顔を顰めて耐えようと思ったのに、石畳に膝がつき思い切り倒れ込んでしまった。

「いっ・・・ ぐぅっ!!」

急いで立ち上がろうとしたのだが、息が切れて目の前が暗くなる。 背筋が粟立ち振り向くと、黒衣の刺客は目を細めて夕鈴を見下ろしていた。 
刺客がゆっくりと小刀を持ち上げるのが見え、夕鈴はぎゅっと目を瞑った。   






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 21:00:42 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
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2013-01-12 土 23:02:47 | | [編集]
日に日に
夕鈴の女子力ならぬ、男前度が上がっておりますね(笑)
乙女のピンチ!!
次回、陛下か、浩大か、はたまた意外な誰かが、助けに来るのかな?
楽しみですが、また夕鈴怪我…( ´△`)
2013-01-12 土 23:37:50 | URL | ダブルS [編集]
Re: タイトルなし
怒りの側近登場にはなりませんな~。笑っちゃうでしょう。陛下の出番がなくなっちゃう~。思わずコメ読んでにやりとしてしまいましたよ。ビスカス様、毎回コメありがとう御座います。 次でまとめて、あんだー更新に勤しみますわ。
2013-01-13 日 00:44:47 | URL | あお [編集]
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2013-01-13 日 01:05:45 | | [編集]
Re: その時、陛下は…
makimacura様、コメありがとう御座います。そうなんですよ、李順に言わずに行動しちゃ、危険手当が貰えませんよね。 でも李順さんって本当は優しいから・・・・・・ どうでしょうか! 見切り発車だったので、最終まとめが楽しい方向に走り過ぎちゃいました。 
2013-01-14 月 02:21:06 | URL | あお [編集]
Re: 日に日に
ダブルS様、コメありがとう御座います。 浩大出せませんでした。 もう、夕鈴の行動でいっぱいいっぱいになっちゃって。 他の人物が出せない状態で、あれれーでした。 次は刺客に対抗できる人を出します。 ええ、あの方です。
2013-01-14 月 02:24:47 | URL | あお [編集]
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