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水難の相  1
本誌で紅珠が出てきたので、こちらでは兄様登場させちゃおうかと妄想してます。
また見切り発車なので、ノンビリ更新となります。 



では、どうぞ。















人に頼まれると基本断われない。
それが時として悩みに変わることもあるが、基本やっぱり断われない。 
自分を頼ってくれるなら、自分が役に立てるなら応えたいと思ったり努力しようとするのは夕鈴は当たり前だと思っている。 そして実はそんな自分も嫌いじゃない。 自分が誰かの役に立てるなら、その努力はするべきだし、その努力で誰かが喜んでくれるなら自分も嬉しい。

しかし、時に残念な結果が待ち受けることもある。 
残念過ぎて、自分の甘い考えを呪いたくなるほど・・・・・・。







或る日いつものように、氾紅珠が一緒にお茶をしませんかと手紙を送って来てくれた。
早速庭園が見える一室でお茶を楽しむことにした。 彼女とお茶をする時は多少緊張はするが、貴族子女としての振る舞いや最新の流行などを勉強するには良い機会だと夕鈴は出来るだけ時間を設けることにしている。 バイト妃をしている夕鈴の大事な先生でもある。
陛下は政務に負われて周宰相と別室に籠もって話し合いをされているというから、丁度良い機会だと思えた。 陛下が執務室で政務をされていると必ずといって良いほど顔を出すので、紅珠が怯えてしまい、正直困ることもある。  
今日はゆっくりと女同士の話をしようと思っていると紅珠が袖から書簡を取り出した。 
途端に自分の顔が強張るのが判る。
 
・・・・・・・紅珠が紡ぎ出す壮大な愛の物語り。
主人公たちは互いの苦難を乗り越え、真実の愛に向かって手に手を取り合い、互いを高めながら至高の愛を掴み取る為に歩み続ける、数巻にも亘る遠大な愛の物語り。 
聞かされるたび、口から砂が出そうなほど甘過ぎる台詞と展開に、夕鈴は居た堪れなくなる。 
更にその主人公たちが陛下と自分を模しているのが丸判りの上、貴族女性の間で大流行していると知り、その場から頓挫して逃げ出したくなるほど気恥ずかしいのだ。 
それを妃として微笑みながら紅珠から聞くのが何より困る。 彼女を泣かせないように微笑みながら、時に頷き、共感しているように演技するのは逆上せるほど辛い。
それが今日も始まるのかと思わず強張った笑みを浮かべたが・・・・・。

しかし、紅珠の袖から出てきた書簡はいつもの壮大な愛の物語ではなかった。

「お妃様、御聞き下さいますか? ・・・・実は兄様のことなのですが」
「水月さんのことですか? 何か御座いましたでしょうか。 もしかして早退を繰り返すことを氾大臣に咎められて・・・・? でも以前と比べると出仕率も上がっていると」
「そうでは御座いませんの・・・・・」

ほぅっと艶めいた溜め息を漏らす紅珠は眦に薄っすらと涙を滲ませている。 
一体如何したのかと夕鈴が慌てると紅珠は縋るような視線を投げ掛けてくる。

「実は・・・・・・ 兄様の意向を伺いもせずに父様が・・・・ 父様が」
「氾大臣が水月さんに何か強要していると?」

よよっと泣き崩れた紅珠は袖口で目元を押さえながら、静かに頷いた。 
それでも水月さんなら器用に逃げ出すだろうと思えたが、紅珠の嘆きようからそれは無理なのかしらと首を傾げる。 氾家当主であり、父親である氾史晴大臣の言うことならば、家人として従わなければならないだろう。 
が、今まで陛下が怖いという、夕鈴には理解し難い理由で出仕を拒んできた水月のこと。 
どうしても嫌なことならば如何とでも理由をつけて、上手く逃げ出すだろう。

「でも水月さんなら強要されたとしても、嫌なことは嫌だとお断りしそうな気がします。 そういうところは芯があるというか、本当にきっぱりされている方ですから。 ・・・・なのに、それも適わないと言うのでしょうか」
「父様が如何してもいやだと言うのなら、陛下付きの側近見習いとして推奨すると言うのです。 それには兄様も蒼白になり・・・。 邸を出ようにもあの兄様ですから何も出来ないのは火を見るより明らかですわ。 それで兄様は、今邸に閉じ篭ってしまいまして」

夕鈴はそっと手を伸ばしてさめざめと涙を零す紅珠の肩を撫でた。 
確かに最近、政務室で水月の姿を見かけていない。 それは体調不良などではなく、親との確執から逃げているのだと判り、肩から力が抜けた。 季節柄体調不良で人手が足りない政務室において、親子ケンカ(?)で引き篭もっているなんて、皆には絶対に言えない。 
特に柳方淵には口が裂けても言えない。 大変なことになるのは想像に易い。

それに陛下側近見習いって、李順さんの見習いってこと? 大臣といえど、氾大臣がそこまで人事に関われるの? 李順さんがそれを許さないと思うのだけど、どうなのかしら? 
まあ、それこそバイト身分では関われないことよね。 線を引いた向こう側の更に向こう側の話。 
それにしても水月さんが嫌がることを提示してまで何をさせたいというの?

そして兄を想い、涙を零す紅珠を見ていると、実家の弟青慎を思い出して何か自分が手伝えることは無いだろうかと夕鈴は切なくなった。 
もちろん、氾家当主である氾大臣に抗することなぞ、陛下の妃といえど出来ないだろう。 
それは一貴族、一家族間での私事であり、口を挟むことは余計なお世話だと思えた。 
おまけに自分はバイトであり、ただの庶民だ。 貴族である氾家の家庭の事情に口を挟むことは論外だし、殊更に難しいと思えた。 しかし、目の前で涙を零す可憐な少女の役に立てることは無いだろうかと、思わず夕鈴の唇から気遣う言葉が零れてしまう。

「紅珠、何か私に出来ることはあるのでしょうか」
「いいえっ、お妃様に御気を遣わせることなぞ・・・・・。 でも私の気持ちを聞いて頂けるだけでも気分が晴れますので、御耳汚しかと存じますが聞いて頂けますか?」
「ええ、聞くだけでも良いと紅珠が仰るなら、幾らでもっ!」

それだけでも紅珠の気持ちが楽になれるというなら、壮大な愛の物語を長時間にわたって聞かされるよりも随分簡単に思えた。 差し出したお茶を飲み、紅珠は涙を拭って咲乱れる華のような微笑みを見せた。 夕鈴はその微笑みに姿勢を正し、紅珠に先を促す。

「実は父様が兄様に縁談を勧めたんです」

そう言って持っていた書簡を卓上に広げた。 
書簡には貴族の名前が記され、その家族構成や子女の年頃、容姿、趣味、親族関係などが細かく書かれ、それが数件分記されている。 そのうちの誰かと縁談をしろと氾大臣が水月に勧めているのだと紅珠は語った。
きっと黙って持って来たのだろうなと夕鈴は目を通し始めた書簡から急いで視線を外した。
自分が見ていいものでは無いだろう。 絶対に!

「・・・そうですか。 まあ、氾家の御長男ですし・・・ そういう話も有りではないかと」
「兄様はまだ二十歳ですのよ? 通常の貴族男性としても早いですわ!」
「そ、そうですか? でも氾大臣のお薦めでしたら皆様、きっと良い御子女様なのでしょう。 父親としても水月さんに良いと思われる御縁を結ばれると思うのですが ・・・・紅珠は嫌なのね?」

赤い目尻を押えながら紅珠は小さく頷いた。 すんっと鼻を啜り、夕鈴を見上げる。

「父様が薦めるなら格式のある貴族の子女であるとは思いますが、兄様の性格を思うと、どのような方がいらしても合うとは思えませんの。 ですが父様はきっと無理にでも進めようとするでしょう。 兄様が追い込まれるのが目に浮かび、可哀想で・・・・」
「いや、あの・・・・。 可哀想って・・・・。 良縁に恵まれるかも知れませんよ?  最初から水月さんが可哀想になる想像をされるのは、それこそ可哀想ですよ」
「でも・・・・ あの兄様に結婚はまだ早いですわ」

夕鈴が紅珠を見ると、首を振った彼女の瞳にはまた涙が浮かんでいた。 その涙を見ると兄を心配する彼女の気持ちが判り、それ以上何を言うべきか言葉が出てこなくなった。 
彼女自身は14歳で狼陛下の妃として後宮入りを切望していたのに、20歳の兄水月のことは早いと思うんだと、頭の片隅で別のことを考えてしまう。 そして愚痴だと言っていた紅珠が、肩を落とし涙に泣き濡れている彼女を見ていると何か出来ないかと考えてしまう。
バイトであり、それも陛下の唯一の妃を演じている立場の自分。
簡単にここから動ける訳も無く、何の役に立てるのだろうかと思案する。

「ごめんなさいね、紅珠。 話を聞くだけで何の役にも立てそうにないわ」
「いいえ、お妃様。  そうですわ・・・・ これは自分でやらなければ駄目なのですわ。 兄様の未来のためにも父様の思惑を阻止して・・・・。 お妃様と陛下のような熱い愛の物語を紡げるように・・・・。 ああ、兄様にはこの先例えどんな障害があろうとも乗り越えて、真の愛をその手に掴めるよう、妹の私が画策して差し上げなければなりませんのね! ああ・・・・・。 その為には一体何が出来ると御思いになりますか、お妃様?」 
「・・・・え。 ・・・はぁ?」

急に目を輝かせ、夕鈴に向き直った紅珠は頬を染め、期待に満ちた視線をぶつけて来た。
態度の急変に驚いた夕鈴は、紅珠の台詞の内容にも驚いた。 
紅珠が今言っているのは、・・・・・・・氾家長男縁談阻止のための相談?
夕鈴が真っ青になり首を横に激しく振ると、肩を竦めた紅珠が頬を染めて震えた声を出した。

「あ・・・わ、私・・・。 そ、そうですわね。 また私ひとりで夢中になってしまい・・・・。 ご不快でしたわよね。 申し訳御座いません・・・・ お妃様」
「あ、 いや、 そ・・・・。 紅珠・・・・」

染めた頬は真っ赤になり、涙がまだ滲んできた紅珠は恥ずかしそうに俯いて全身までを震わせる。 そんな紅珠に違った意味で蒼褪めた夕鈴は、如何したらいいのか判らなくなった。 
取り合えず紅珠が泣いてしまうのだけは困ると、妃らしく微笑んで言葉を紡ぎ出す。

「~~~~っ! ・・・・あ、あの、縁談阻止って言っても容易にはいかないでしょうけど、な、何か妙案があるのでしたら、それなりに協力も出来ますが・・・・」
「え・・・・。 お妃様が御協力して下さる? あ、ありがとう御座いますぅ~!」
「そ、それなりに・・・・ です。 でも、表立っては手を貸すことは出来ないんですっ!」
「ええ、私の考えに賛同頂くだけでも嬉しいのです。 そのお気持ちが嬉しいですわ」

悩みに悩んだ夕鈴が呟くようにそう言うと、ぱああっと紅珠の顔が明るくなった。 
紅珠は笑顔の方がいいのだけど、その後に言われた言葉に夕鈴は 『後悔先に立たず』 と言う言葉の意味を深く勉強することになる。





         ***************************







紅珠との波乱のお茶会が終わり、後宮の妃自室にて頭痛と戦っていると、一人の侍女がいやに落ち着かない様子で夕鈴の傍に近寄って来た。 

「あの・・・お妃様。 先程のお話なのですが・・・ 私・・・ 私では駄目でしょうか?」
「・・・・・・え?」

頬を染めた侍女は恥ずかしそうに俯いて、それでも胸に手を重ねて必死に訴える。 彼女は紅珠とのお茶会の時、傍で給仕をしていた侍女。 何が駄目なのか、夕鈴にはぴんとこない。

「先程のお話で御座います。 氾紅珠様とのお話の中の 『縁談』 に協力なさるのでしたら  ぜ、是非、わ、私をお使い下さればと思いましてっ!! 差し出がましいとは存じますが、私で役に立つのでしたら、どうぞお使い頂けますでしょうか?」
「・・・・・・え?」
「私でしたら一生、この後宮に仕えるつもりで御座いますし、このような縁でもなければ、氾水月様のお役に立てる機会など今後望めません。 どうぞ、私をお使い下さいませ!」
「・・・・・・え?  えっ! い、いい・・・ 宜しいのですか? 本当に?」
「はいっ!」

あの後、色々な話し合いを行なったが良い案が直ぐに出ることもなかった。 夕刻近くなり、困り果てた夕鈴がぼそりと呟いた言葉に紅珠が食い付いた。

『水月さんにお付き合いしている人が居るって言えば、・・・・諦めるかしら?』
『それですわ! そうですわ、恋人と共に縁談に赴けばいいのですわ!』

夕鈴が蒼白になり、それはやっぱり無理ですっ! と首を振るも懐から紙と携帯筆を取り出した紅珠は何かに取り付かれたかのように、するすると書き出した。 
見合いの日付から逆算して用意をする準備期間、兄である水月との演技期間、相手の素性を調べる期間など、必要事項を書き出す紅珠の表情は夕鈴の知らぬものであった。

「兄様に想いの方が居ると知れば相手の方だって強行には出られませんし、氾家次期当主の意向を無碍にも出来ませんわよね。 兄様の美しさに副うような美しい女性を要しなければなりませんが、そこは桃香に伝えて急ぎ探させましょう! 忙しくなりますわ」
「でも氾大臣がなんと言うか・・・・。 ばれたら怖いですわ・・・・ よ?」

控えめに、でも釘を刺すように夕鈴が告げるが、紅珠は可愛らしい顔に決意を浮かべて声に張りを漲らせる。

「父様のお考えには今回ばかりは私だって賛同しかねます。 それに兄様に想い人が居ると知れば考えも変わるでしょう! それに当日は顔合わせだけで、父様は足を運ぶ予定はないと存じております。 相手の方さえ黙らせることが出来たら上出来ですの。 まずは兄様に仮の相手を探すことですわ!」

「うっふふふふふふふふ・・・・」 と可愛らしい微笑で妃を見つめる紅珠に、夕鈴はそれ以上言うことが出来なくなった。 水月さんが上手く演技出来るのかも判らないのに、紅珠の頭の中では、すでに新たな物語が紡ぎ出され始めているのだった。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 20:05:28 | トラックバック(0) | コメント(10)
コメント
暴走[i:63943]
紅珠の暴走がどれだけの人を巻き込んで行くのか楽しみです
2013-01-18 金 21:40:12 | URL | ともぞう [編集]
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2013-01-18 金 21:52:04 | | [編集]
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2013-01-18 金 22:04:56 | | [編集]
Re: 暴走
ともぞう様、コメありがとう御座います。 わたしも紅珠先生がどれだけ暴走するか不明です。 見切り発車なのでどう転ぶかも不明なんです。(笑)
2013-01-18 金 22:15:21 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。可愛い妹の暴走に兄の対応がどう出るか、わたしも解らないという無責任な暴走です。 お待ちして頂けたら嬉しいです。

2013-01-18 金 22:18:20 | URL | あお [編集]
Re: ご馳走様でした!
羽梨様、コメありがとう御座います。真っ黒陛下を御気に召して頂き、嬉しいです。追い詰めるのが好きな狼ですので、兎がどう食べられるかお楽しみ頂けたら嬉しいです。
2013-01-18 金 22:19:57 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-01-18 金 23:57:05 | | [編集]
計算?自然?
紅珠先生の潤んだ上目遣い(///∇///)
子犬陛下と同等威力(笑)

何故、夕鈴が自分で陛下に同じことしてるって気付かないのかしら…

さておき、水月さんの縁談話で頭一杯でしょうが、陛下の事を一番に考えてあげないと…
後々、面倒、もといタイヘンなメにあうよ?
2013-01-19 土 00:27:16 | URL | ダブルS [編集]
Re: 暴走が増える!?
makimacura様、コメありがとう御座います。 暴走するのはまず紅珠ですよね。次は陛下でしょうかね。翻弄されるのは夕鈴と水月? あとは誰を巻き込もうか妄想中です。 
2013-01-19 土 01:10:30 | URL | あお [編集]
Re: 計算?自然?
そうそう、あとで自分の首を絞めることになるので、そこは学習している夕鈴の予定です。ダブルS様、コメありがとう御座います。 紅珠の潤んだ視線は計算か天然か。 それは・・・・・・・・・どっちでしょうねー。
2013-01-19 土 01:12:32 | URL | あお [編集]
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