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水難の相  4
今回、自分でもドキドキするほど水月さんが暴走(?)しております。 心臓に悪いです。
コメントでは皆様が余りにも心配されるので、流れを変えようかしらとも考えてしまいました。 
でも苛めちゃいます。 本当にごめんなさい。




では、どうぞ。














「御紹介します。 彼女は私を追い掛けて此処まで足を運んでくれた愛しい人です。 邱様には大変申し訳御座いませんが、私は愛しい人を放り出しては置けません。 この場にご一緒させて頂いても宜しいでしょうか」
「・・・っ!」

微笑を浮かべた水月を思わず見上げると、口元を指差しているのが判った。 
夕鈴は急いで持たされていた団扇で口元を隠し、目を細めて邱夫妻とその娘を見つめた。 
案の定ぽかんと口を開け、目の前の現実を把握するのに困惑しているようだ。
それもそうだろう。 氾家長男との縁談に来たのに、その相手が恋人を連れて、あまつさえ同伴させようというのだから開いた口だって塞げないのは確かだ。 普通は有り得ないだろう。
それなのに・・・・・・・。

「氾家長男として捨て置けない方という訳ですね。 愛人や側室の一人や二人、貴族の間では問題御座いません。 何しろ今回の縁談は氾水月殿の正室の縁談ですから。 どこの貴族の御息女か存じませんが、うちの娘を良く知ればそんな気持ちは一時のお遊びとお分かりになると思いますよ。 ご一緒にとのこと、当方は構いません」

「はっ」 と鼻で笑われたのを感じた。 
貴族の間では愛人や側室は当たり前なんだ。 それを奥様の横で当たり前のように言うんだ。 
下町で、一夫一婦制が当たり前で育った私には到底理解出来ない世界だ。
ああ、陛下はそういう世界の人なんだよね・・・・・。 それも一人や二人どころじゃない。
内政が安定したら、十人でも五十人でも後宮に侍ることが出来る、いや実際そうなる予定なんだろうな。 今は内政安定のために 『臨時花嫁』 で牽制しているけど、それはいつか来る現実。

あれ?  わたし・・・・・ 何で今、そんなことを考えているんだろう。
それよりも目の前の現実を如何にかしなきゃ駄目だろう。

「・・・・そうですか。 ではお言葉に甘えて、清禾。 席に着きましょう」
「え? 清・・・ あ、はい。 ・・・・水月様」

って、流れていいのか! だから侍女さんが急性胃炎で来られないんだってっ!
私はそれを伝えに来ただけでっ! な、な、何で一緒に料亭の中に移動するの、私っ!
ああ、紅珠は何処に居るの? 
きっと何処かで見ているはずなのに、何処に居るのか判らない。 侍女さんの容態も気になるし、悠長にここで演技している場合じゃないというのに、もうどうしたらいいの? 
衣装は重いし、心臓はどきどきだし、どうしたら・・・・。

すっかり涙目になった夕鈴を気遣い、水月は手を取って料亭内へ案内した。 
その後を縁談相手である邱夫妻とその娘が黙って付いて来る。 席に着くと水月が小さな声で 「仕方がありませんので演技を続けて頂いても宜しいでしょうか」 とお願いして来た。 
夕鈴が団扇で口元を隠しながら 「で、出来ません・・・・」 と涙目で訴えるが水月は困った顔でじっと見つめるばかり。 流れで席に座ってしまった夕鈴は簡単に逃げ出す訳にはいかず、かといって恋人役を続ける訳にもいかない。 
何故水月に付き従い、共に席に着いてしまったのだろうと悔やむが後の祭り。 
でも陛下との約束もあるから水月の縁談に私が関わる訳にはいかないのだと団扇を盾にして、そっと水月の耳元に囁いた。

「わたし早く王宮に戻らないと困りますし、侍女さんを町医師に預けているんです」

目元だけは微笑を浮かべながら唇を震わせて、水月に寄り添って囁き続ける。

「へ、陛下には関わらないことを約束したんです。 お願い・・・・ 水月さん」
「・・・・では短時間で済ませましょう。 此処まで来て帰ってしまっては清禾さんにも申し訳が立ちませんでしょう。 私も・・・・ 陛下は怖いですし・・・・」

顔を上げて水月の顔を見上げるとそこには微笑みを貼り付けた空ろな眼が。
水月の陛下恐怖症は折り紙付きだというのを夕鈴も良く知っている。 
それでも演技を続けたいと思うほど、縁談が嫌なのかと目の前の家族にそっと視線を移す。
氾家と縁を結ぼうとするほどなのだから、名の知れた名家なのだろう。 氾家は白陽国内で最も歴史あると言われる名家だ。 その氾家に釣り合うだけの名家なのは判るが、夕鈴の目にはどうしても狸と狐にしか見えない。 その娘は母狐よりも細い体格で、衣装が豪華なだけに着せられている感があり、重そうで逆に可哀想に見えてしまう。 それに母娘共に化粧が濃すぎる。 水月じゃなくても大概の男性は好まない化粧の仕方だろう。 普段化粧や衣装に気遣うことの無い自分でもそう思ってしまうほどだ。 

「水月殿、そちらの女性は兎も角、本日はお忙しい氾大臣様を抜きにした気楽な顔見せ。 まずは私どもから娘の紹介をさせて頂き、後程二人で過ごして貰いましょう」
「ええ、結構です。 簡単な紹介を事前に書面にて貰ってはおりますが、面と向かうと違った面が見えることでしょうからね。 ・・・・清禾、退屈だろうけど私の顔だけを見て待っていてくれるかい? 私の気持ちはずっと君だけを見つめているから我慢してくれ」
「・・・・ええ、水月様。 いつものように貴方だけを見つめておりますわ」

自分で言った台詞に鳥肌を覚えながらも、夕鈴は水月をじっと見つめ続けた。 見つめ合いながら卓上に置かれた互いの指がゆるゆると何度も絡めあう。 紅珠先生の脚本通りに。 

『たーすーけーてーっ! 紅珠は何処なのっ? 何処なの、紅珠ーっ!』

心の中では盛大に紅珠を捜し求め続けながら、一刻も早くこの縁談が終わるのを祈った。
氾家次期当主を前に、愛人だか恋人だかを侍らせるのをやめてくれとも言えず、卓上で絡み合う指を凝視する娘の視線が痛いと夕鈴は泣きそうになる。 普段様々な楽器を巧みに演奏する水月の指は細く長く、夕鈴の指と絡み合う様は自分で見ていても艶かしい。 水月を紅珠の脚本通りに見つめ続ける夕鈴は本当に泣きそうだと目を潤ませた。
それが卓を挟んだ相手にどういう風に見られているか、想像も出来ずに。

「えー、水月殿。 娘 林杏は十六歳。 水月殿はあらゆる楽器を弾きこなすと伺っておりますが、うちの林杏も演奏が好きなので、是非ご一緒に演奏などを楽し」
「水月様! 私も久し振りに聞きたいですわ。 今夜、月琴を奏でて下さいます?」
「私は君を奏でる方が得意なんだが、いいよ。 清禾のためだけに奏でよう」
「え・・・と、ではその後で私を奏でて下さいませ・・・・ ね?」

夕鈴は意味が判らないまま、脚本通りに繰り返す。 
水月相手だと絶対に楽器や演奏に関しての話が出るとあった通り、一発目に話が出た。 父親の話に被さるように介入するのは心苦しかったが、上手くいったようだ。 最初に言われたように団扇で顔を隠した状態で、夕鈴は必死に水月だけを見つめ続けていた。 相手の顔なんか見たら演技が出来なくなる。 背中には嫌な汗がだくだくと流れているのを感じている。
水月の手もしっとりと汗を掻いているのが判り、空ろな瞳が酷くもの悲しい。
それでも滑らかに台詞が出てくるのだから、流石あの氾大臣の長男か?

意味が判らないまま夕鈴が紡いだ言葉は、母狐とその娘の目を大きく見開かせ、憤怒の表情にさせてしまう。 しかし夕鈴は水月を見つめ続けるよう指示されている為に、それに気付かない。 それが余計に林杏を怒らせていることにすら気付かない。
父親が大仰な咳払いをして、水月の気を引き、もう一度咳払いをすると話を続ける。

「えー、水月殿。 水月殿の邸には大きな池があり、見事な鯉が飼育されていると伺っております。 うちの娘も鯉の飼育には一家言あり」
「そう言えば最近は鯉ばかりに構ってますわね。 それに出仕もされていませんでしょう。 いつもお傍に居られて私は嬉しいですけど、お仕事大丈夫ですの?」
「出世のために働くより、君の傍で君を愛でている方が楽しいからね。 池の鯉にまで焼きもちなんて、君は本当に可愛らしいことを言うね。 そんな君が本当に愛しいよ」
「・・・・まあ・・・・」

夕鈴が団扇で顔を隠しながら、『鯉より出仕して欲しいんですけどっ!』 と心の中で愚痴る。
もちろん、林杏が鯉の飼育に詳しいのは紅珠が調査済み。 それに関しての話題が出た時に遮る台詞も頭に入っている。 話の途中で遮るように介入するのは演技といえども酷く辛く、それでも必死に演技を続けるしかない。 嫌な雰囲気は如何したって伝わってくるから、顔を動かすことさえ出来ずに強張った笑顔で夕鈴は頑張り続けた。
またも父親から大仰な咳払いがあり、夕鈴は汗ばんだ指で水月の指を引っ掻く。

「水月様・・・・ 清禾・・・・ お・・・・ お尻が痛くなりましたの」
「ああ、ではいつものように」

紅珠の脚本通り、超恥ずかしい台詞を言ってみると水月は立ち上がり、夕鈴を横抱きに抱えて自分の膝の上に移動させた。 自分で言った台詞だが、まさか水月が本当に膝上抱っこするとは思ってもいなかった夕鈴は真っ赤になり、頭の中は真っ白になった。 
紅珠の脚本だと、この辺りで邱親子が激怒して 『この話は無かったことにっ!』 と料亭を後にして出て行く・・・・・ 予定なのだが。

「・・・・水月様はお優しいのですね。 側室にまで、そのような愛情を注がれるならば、正式な妻との間に御子がお生まれになりましたら、より深い愛情を注がれるのでしょうねえ。 水月様に似た御可愛らしい御子・・・。 素敵ですわ」
 
母親が唐突に会話に参加し、夢見るように語り出したから夕鈴は慌てた。 
恋人を連れて縁談に臨み、更に膝上抱っこをしている状態を目の前に、そんなことを言い出すのは想定外だと、そっと水月を見上げた。
見上げた先の水月は・・・・・ 柔和な微笑を浮かべたまま固まっていた。
小さく嘆息した夕鈴は、このままでは逃げられないと頭の中で紅珠先生の脚本を勢いよく捲り出した。 確か、あらゆる想定に対しての攻略法が書かれていたはず。 侍女と一緒に目を通したから覚えているはずなのに、焦れば焦るほど朧気になっていく記憶が恨めしい。
卓の下で水月の腹を突くと、意識を取り戻した水月が邱親子にゆっくりと話し掛ける。

「ところで林杏様には兄上が三人いらっしゃるとか。 王宮には誰か出仕なさって御出ででしょうか。 一補佐官である私は日々忙しく、父のように官吏全てを把握しきれてないもので御会いした記憶がなく、もし無作法な振る舞いでもしていたらと申し訳なく思っております。 邱家ほどの名家でしたら有名でしょうに」

水月の言葉に邱側が息を呑むのが伝わった。 どうやって調べたのか判らないが、邱林杏の兄たちは素行が悪く、現在は仕事にも就いていないそうで、だからこそ余計に氾家とのこの縁談が必要なのだろう。 例え恋人を連れてこようが、愛人がいようが、子供がいたとしても庶子扱いすれば良いことで、氾家との縁を繋ぐことこそが大事だと必死になっているそうだ。

「うちの息子は・・・・ いま、家の仕事を継ぐための修行中でして、まだ年若い者ですから親の言う通りにはなかなか・・・・。 落ち着きましたら氾家とも良い付き合いが出来ると思いますので、改めて宜しくお願いしようと思っております。 は・・・ははははは」

乾いた笑いが聞こえた。 夕鈴はこの流れの後の恋人役の台詞を思い出したが、とてもじゃないが言えないと水月の腹を突いた。 団扇で口元を隠しながら 「言えませんっ!」 と涙目で訴えると水月は小さく頷き、硬い表情で邱を見つめた。

「その話は今後、父を交えてゆっくりと。 ・・・・・良い天気ですし、料亭自慢の庭でも散策致しましょうか。 清禾、立てるかい?」

夕鈴を膝から下ろして手を取り、水月は嫣然とした微笑を見せて庭へと足を向けた。
紅珠先生の脚本だと、恋人を抱き上げたまま庭へと行くのだが、それは省かせてもらった。 
庭に出ると良い天気の中、他の客も数人見掛けることが出来たが、その中に紅珠が混じれ込んでいるかもと、必死に目を凝らすも夕鈴にはどうしても判らない。
 
「水月さん・・・。 紅珠は何処に居るんですか? それに、いつまで演技したらいいの?」
「紅珠は料亭内に居るはずですが、私にも判りかねます。 演技は何処までしましょうか。 早く諦めて頂き、私は邸に戻りたいです。 ・・・・本当に困りました」

夕鈴を伴い庭に出た水月は、細めた目で庭を眺めながら長い溜息を吐いた。 





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 10:15:15 | トラックバック(0) | コメント(12)
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2013-01-23 水 12:37:27 | | [編集]
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2013-01-23 水 13:57:03 | | [編集]
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2013-01-23 水 17:09:30 | | [編集]
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2013-01-23 水 19:12:25 | | [編集]
恐ろしい14歳…
紅珠先生は意味をわかって脚本書いたのかしら?
「私を奏でてください」って…(///ω///)♪
夕鈴に後日、意味教えてあげてください(笑)

夕鈴以上に大変な水月さん、確実に首が庭園に転がる…
氾兄妹&夕鈴と侍女さん、どうなるのでしょう?

終始笑いが止まりませんでした!
2013-01-23 水 21:13:22 | URL | ダブルS [編集]
あぁ…
水月さんの命のカウントダウンが聞こえる…そんなにいやなんだお見合い氾大臣が選ぶにしては('_'?)なお人ですが、何かあるのかしら?

浩大どう報告するのかな?お腹抱えて笑ってそうそれとも余りのことに青くなってるのかな?
2013-01-24 木 06:37:11 | URL | ともぞう [編集]
Re: 相は…
makimacura様、コメありがとう御座います。紅珠ね~、何処に居るんでしょうね~。 水月さん頑張ってますね~。 ドキドキして頂き、ありがとうです!!
 ミ★(*^-゚)v Thanks!!★彡 

2013-01-24 木 16:26:29 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。 水月さんの演技お楽しみ頂けたようで嬉しいです。 お尻が痛いは、是非何処かでお使い下さいませ。 私は旦那に言ったら 「座りっぱなしだからだろう。 運動しろ」 と言われました。 余りにも普通だったので、ものすごく腹が立ちました。
2013-01-24 木 16:28:37 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
羽梨様、コメありがとう御座いました。 水月さんの心情が次で書く予定ですが、まあ可哀想ですよね。 なんて不憫な人なのでしょう。 さあ、如何料理しようか思案中です。 ほほほ。 まあ「難」が付いている作品なので、それなりに・・・・・。 合掌。


2013-01-24 木 16:31:16 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。夕鈴の心情を可愛いと言ってくれてありがとう御座います~! お膝抱っこはやり過ぎたかな感がありますが、やっぱ紅珠先生脚本だと、有りかなと妄想。(爆) 兎を追い駆けてくる人の心情を考えると、やっぱり水月さんが可哀想過ぎたかな? 
2013-01-24 木 16:45:15 | URL | あお [編集]
Re: 恐ろしい14歳…
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 意味深な台詞まで掘り下げて頂き、感謝で御座います。 何処かで使いたかった台詞が、あら、こんなところで!(笑) そうですね、あとで夕鈴に教える場面を作ります。 楽しみですわ。 って、ドSですか?


2013-01-24 木 16:49:32 | URL | あお [編集]
Re: あぁ…
ともぞう様、コメありがとう御座います。 水月さんの命のカウント・・・・ 受けました。 浩大の報告を聞いた陛下がどうするのかも楽しみですね~。(笑)
2013-01-24 木 17:16:37 | URL | あお [編集]
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