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水難の相  5
波乱の料亭庭園ですが、どうにかなるものです。(如何にかしたというか・・・・)
陛下の叱責と、李順の小言。 どちらが怖いかな? 
今月号買いました。 もう、今から来月が楽しみで仕方ありません。 何を考えているのか解りませんが、怖い展開になりそうでドキドキしてます。 


では、どうぞ。

















夕鈴を侍らせながら庭を散策する水月は、正直 妹紅珠の話に乗ってしまった自分を、過去最大級レベルで後悔していた。 恋人役をするはずの妃付き侍女が急病とお妃より聞き、縁談を上手く断るには如何しようかと悩んでしまった。 
いや、それよりもお妃様を一刻も早く王宮に戻さなければ駄目だと、直ぐに危険性を予知し離れようと算段を始めた。 自身の安全のためにも、お妃様を早急に帰し、この縁談に関わらせては駄目だとその時までは解っていたはずだった。

それなのに・・・・・・。 
現れた邱親子とその娘を目にした瞬間、心が激しく拒否をしたのだ。
目の前の親子と縁を結ぶ。
目の前の女性と婚姻を結ぶ。
それは絶対にあり得ないと、全身に鳥肌が立つほど気持ちが拒否を示した。

気付けばお妃様の肩を抱き、脚本通りに言葉が出ていた。 
兄様のためと半泣きで訴える妹と連日練習したため、覚えた台詞が流れるように出てしまう自分にも驚いた。 結局はお妃様も涙を滲ませながら、ここまで付き合う破目になり・・・・。
申し訳ないと思う反面、これで縁談は上手く流れるかも知れないと安堵する。
 
安堵すると、じわりじわりと心の奥から心配事が濁った水のように湧いてきた。 
お妃様は・・・・・・・・ 陛下に黙って来たのだろうか。
この縁談に侍女を貸し出すだけでお妃様は一切関わりは持たない、持てないのだと話していたと紅珠が言っていたのだから、黙って来たのだろうことは明白だ。 
自分は・・・・・・・・・もう二度と王宮への出仕は出来ない。 
例え引き篭もっても、もしかしたら陛下は邸までやって来るかも知れない。
そう思うだけで背筋が凍るように寒く感じ、歩行も覚束無くなる。

もうひとつ、背筋をざわつかせるのが、背後から黙ったまま従うように歩く邱林杏だ。 
彼女は縁談が始まってから一言も話さない。 料亭内の席では血色の悪い顔色でじっと水月を見つめているだけで、父親や母親が話すことに小さく頷く以外、何も話さず大人しく座っていた。 今も黙したまま背後から付いて歩いて来ているが、俯いているため表情が良くわからない。 
今は視線を反らしながら 恋人役のお妃様の手を引きつつ、広い庭園を歩くしかない。
 
目に映る築山も池も見事ではあるが興味を持つほどではないし、自分の邸の庭で胡弓を弾いていた方が心休まる。 ふと現実逃避していると、手から力が抜けそうになり慌てて意識を向けると、自分が許可無くお妃様を連れ回し、手を握り、更に膝上抱っこまでしてしまったことが思い出される。 思い出すとこれまでの人生が走馬灯のように頭の中をくるくると廻り出す・・・・。 

水月が肩を落とし深く深く息を吐くと、ふいに背後から上ずった声が掛けられた。

「す・・・・水月様っ! あ、あのぉ、私、恋人がいても側室がいても、貴方様の奥方になれるのでしたら文句は御座いません。 この後も数件縁談があると伺いましたが、ぜひ私を選んで下さいませ。 私は水月様のご趣味に副うよういろいろ勉強をして来ましたの。 貴方様の御子を授かり、一緒に育てて行きとう御座います」

夕鈴、水月が振り返ると、少し俯いた林杏のはにかんだ顔が。 
途端に夕鈴の顔が曇り、それを見た水月が困ったような顔でお妃の手を引いた。 
手を引かれて慌てて顔を上げたお妃は自分が何の為に此処にいるのかを思い出したようだが、その表情は曇ったままだ。 

しかし幾らお妃が表情を曇らせていても、林杏の望む通りに彼女を選ぶことは出来ない。
自分の美意識がそれを許さない。 痩せぎすの彼女が品を作るその仕草にも・・・眩暈が。
彼女の家が氾家に齎すのは 『名家』 であることと、過去正妃を輩出したという家系。 
それと隣国出身の奥方が持つ鉱山の権利。 しかし自分には興味のないことであり、それを欲しがるなら父が林杏を・・・・いや。 父も美意識が高い。 たぶん私以上に高い。 
だから息子である私にこの縁談を振ったのだろう。
 
如何したものかと嘆息していると、煌びやかな衣装の女性がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。 まさかと思い目を凝らすと、楽しげに手を振りながら駆け寄ってくる女性は・・・紅珠。
紅珠が駆け寄って来るのに気付いたお妃に慌てて 「声を出さずに、併せて下さい」 と告げて、私は笑顔で紅珠を迎えた。 

「水月様ぁ~。 清禾だけ連れて行くなんてひどいですぅ。 大蓮も連れて行ってくれなきゃ嫌ですわぁ! 大蓮ってば他にも行きたいってお姉様達を押さえ込んで、急いで来たんですのよ。 清禾が水月様のお気に入りだからってずるいですわ」
「え、他のお姉様達って・・・・水月様、他にも女性を囲われているんですの・・・・?」

動揺した林杏は血色の悪い顔色を更に白くさせ、新たに姿を見せた美少女に戸惑っている。
水月に抱き付き、そのまま抱え上げられた紅珠は林杏を見下ろしながら、高慢なお嬢様らしい仕草で笑った。 水月の髪を撫でながら耳元に唇を寄せ、何かを囁きながらくすくす笑うその様はしなやかな猫のようで、傍にいる夕鈴でさえ見慣れた紅珠の笑みに頬を染めてしまうほどだ。

「貴女が水月様の縁談相手・・・・? ふぅん。 水月様好みの可愛さしさも色気も妖艶さも無いですわね。 この方を選びますと邸に住まうお姉様方に怒られますわよ。 お姉様方の機嫌を治すために、またお妃様に遊びに来て頂きましょうか。 そうそう、お妃様が出仕されていない水月様のことを心配されてましたわよ。 大蓮、妬いちゃいますわ」
「お、お妃様まで水月様の心配を・・・? あの狼陛下の・・・・お妃様が?」

畳み掛けるように喋る紅珠は睨ねつけるように林杏を見下したあと、ふわりと水月から降りると今度は呆ける夕鈴の腕を掴んだ。 

「ああ、お姉様は今日も素敵ですわぁ! でも邸の虎がお姉様をお待ちですの。 あとは大蓮と香蓮、蓬蓮に任せてお帰りになって大丈夫ですわ」
「え? 紅・・・いえ、虎って・・・・? あ・・・・・戻って良いの?」
「ええ、大丈夫ですわ。 香蓮、蓬蓮も来ましたし、どうぞお戻りになって下さいませ」

花が咲き乱れるような可憐な笑顔を見せる紅珠に、夕鈴は泣きそうなくらい安堵した。
振り返ると林杏の背後から二人の妖艶な女性が肌も露わな衣装で現れた。 
双子のように揃いの衣装を着た女性は水月の両側に立つと絶句し呆然と立ち竦む林杏を見て、鮮やかな紅で彩られた唇を優雅に持ち上げ、冷笑する。 
水月は唖然とした表情のまま両側から女性に腕を絡め取られると、そのまま何処かへと連れて行かれてしまう。 夕鈴も唖然としたまま去って行く水月を見送り、そして林杏をそっと窺った。

彼女はぽかんと口を開け、茫然自失の面持ちで固まっていた。
無理も無いだろう。 
紅珠のような美少女が登場した上、今度は妖艶な美女が二人、水月を攫うように連れ去って行ってしまった。 紅珠が水月の邸に沢山の美女がいると話し、虎までいるというのを信じた彼女は蒼白な表情を呈している。
そんな林杏を置き去りに、紅珠に引き摺られるように料亭の裏口に連れて来られた夕鈴は、そこで美術スタッフのような人達にまたも囲まれ、元の衣装に戻された。

「お姉様・・・・いえ、お妃様付きの侍女、清禾は如何なさったのですか!? 何でお妃様が兄様の恋人役をっ!? ・・・もしも陛下がこれを知ったら・・・・あぁ・・・・・」

流石の紅珠も陛下の怒気を想像しただけで恐ろしくなったのだろう、その場でふらりと立ち眩みを起こし夕鈴の腕に縋り付いてしまう。 支えた夕鈴も急いで王宮に戻らなければならないことは判っている。 ここまで勝手に動いてしまったのだからどの様な叱責が待ち受けているか想像するのも怖い。 
しかし、侍女を町医師に預けたままだし、なにより自分には多額の借金返済がある。 
逃げ出したいけれど、このまま逃げる訳には絶対いかない。 
頑張って勉強している可愛い青慎に迷惑を掛けることだけはしたくない!

「侍女は出掛ける直前に具合が悪くなって、それを伝えようと思ってココに来たら何故か衣装を着せられてしまい、なんだか解からないまま恋人役をしていたの。 だから私は急いで王宮に戻るわね。 紅珠・・・、私はここに来なかったっ! お願いよ!」
「え、ええ・・・・。 それは勿論。 うちの者がご迷惑をお掛けすることになってしまったのですね。 関われないと仰っていたのに。 お妃様、本当にごめんなさい・・・・」

蒼褪めた紅珠にひたすら謝られると夕鈴は逆に困ってしまった。 謝り続ける紅珠を抱き締め、髪を撫でながら大丈夫だと繰り返す。

「以前貴女の邸で面倒を見て貰った、そのささやかな御礼だと思って頂戴。 本当に大丈夫だから紅珠は水月さんに付いてあげて。 少しでもお手伝い出来て良かったわ」

涙を流す紅珠に別れを告げた夕鈴は、裏口から通りに出て辻馬車を拾おうと辺りを見回した。
急いで町医師に侍女の様子を確かめて、良くなっているようなら連れて戻りたい。 そして勝手に王宮から離れたことを誠心誠意謝らなければならない。 
無断で王宮を離れたのだから、もしかしたら今度こそ首かも知れない。 借金が残っているというのに、本当に首になったらどう返済していけばいいのか。 
思わず眩暈がして近くの壁に凭れ掛かる夕鈴の肩に、誰かの手が触れ力強く支えてくれた。

「どうして君がここに居るのかな?」

背後から聞こえる冷たく低い声が、夕鈴の目の前を真っ暗に染め上げた。 瞬時に蒼褪めた夕鈴の心に、このまま永遠に意識を失えたらいいのにな・・・・・。

そんな思いが過ぎった。







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長編 | 23:24:24 | トラックバック(0) | コメント(10)
コメント
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2013-01-25 金 01:07:18 | | [編集]
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2013-01-25 金 01:11:11 | | [編集]
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2013-01-25 金 01:21:09 | | [編集]
きゃあー背後にぃ~っ・水月さんの前に夕鈴がピンチお仕置きかしら?いったいどんなお仕置きが…考えるだけで恐ろしい((((;゜Д゜)))きっと回りも被害を被るんだろうな凄まじく荒れていそうだ(^-^;
2013-01-25 金 08:34:45 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。はい、小犬ではありません。大変な方です。お仕置き&夕鈴凹み編にはいりますので、次はまっくろくろすけになる予定です。お付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-01-25 金 10:52:27 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。次はあの方登場です。怯える夕鈴を書くのが楽しみです。いっぱい泣かせようかと妄想しております。 のんびりお待ち頂けたら嬉しいです。
2013-01-25 金 10:55:45 | URL | あお [編集]
Re: わたしも…
makimacura様、コメありがとう御座います。 紅珠の登場に少し悩みましたが、無事に夕鈴が退場出来てほっとしております。そして予定通りの人が登場と。 これから夕鈴怒涛の反省編になりますので、のんびりお待ち頂けたら嬉しいです。 本誌のへたれ陛下、私もツボです。 それに振り回される李順さんがもっとツボでした!!

2013-01-25 金 11:00:04 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。このあと、背後の方が夕鈴とペケペケとなりますが、水月を如何しようか思案中。 あまりひどいことになると出仕しなくなるしな~っと。笑っちゃいけませんが、夕鈴のお陰で出仕出来るようになったのに、夕鈴のせいで出仕出来なくなるのは嫌ですから、今必死に考え中です。(笑)
2013-01-25 金 11:02:29 | URL | あお [編集]
存続?滅亡?
氾家の今後は夕鈴の言動次第かしら?(いや、陛下次第ですね( ´∀`))
そして、見計らったように登場しましたあのお方!!
夕鈴の波乱はまだまだ続くようですね…

2013-01-25 金 20:05:56 | URL | ダブルS [編集]
Re: 存続?滅亡?
ダブルS様、コメありがとう御座います。見計らい陛下。 これから夕鈴の反省会となる予定です。泣くかな~。 泣きますよね。 うん。 いっぱい泣かせましょう。
2013-01-25 金 23:02:55 | URL | あお [編集]
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