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水難の相  9
毎回長い話にお付き合い頂き、ありがとう御座います。 
今回、狼、小犬どちらにも応援コメントを沢山頂き、すごっく楽しかったです。 
さて、陛下は夕鈴を怒らせることなく、自己を満足させることが出来るか!(爆)
あ、妄想なので苦情は申し立てないで下さいね。 お願いします。





では、どうぞ。













「君を奏でるって・・・・ 意味わからない?」
「え? はい、一緒に歌うってことですか、それとも演奏ですか? そんな高尚な趣味に御付き合いしたことがないので意味が判らずに居たんですが、あの・・・・ 違います?」

少し涙目できょとんとした顔の夕鈴を見て、僕は力が抜けた。 どんな風に説明をしたらいいのか視線を彷徨わせると、逆に夕鈴は答えを待つ生徒のようにじっと僕の顔を見上げ続ける。 

「えっと・・・・ うん。 そういう意味だよ。 夕鈴の声を奏でるようにって・・・・ 意味で他に意味なんか・・・・。 ゆーりんは歌好き? そういえば僕聞いたことがないな」
「鼻歌くらいしか出来ませんから水月さんの素晴らしい演奏と一緒になんて絶対無理。 あの、それと膝上に座らせるのは恥ずかしいので演技が必要ない時はやめて下さい。 抱き上げるのも膝上抱っこも演技の時は我慢しますけど、今は必要ないですよね?」

狼度が思わず下っていたのだろう。 夕鈴は涙目で僕を睨み上げると、手を放せと腰に回った腕を引き剥がそうとする。 それでも未だ聞きたいとことがある僕は腕を離すことなく問い詰めた。

「今は水月にされたことを検証中。 膝上抱っこは演技の練習だと思ってね。 それより水月の膝の上に座った後、恋人役は何て言って縁談阻止をしようとするのか教えて欲しいな。 夕鈴、どんな風に水月に言ったの?」
「・・・・っ!! そ、それは・・・・ 言えない・・・ 言えません・・・・!」

質問に対して、途端に真っ赤な顔で視線を彷徨わす夕鈴を見て、僕は狼の立場を取り戻す。 
本当に毎回君には翻弄されてしまうなと、小さく苦笑した。

「言えなかったのか? 確か侍女からの報告だと・・・・」
「い、言える訳無いじゃないですかっ! そ、そんなこと・・・ 無理ですっ!」
 
膝上で激しく震えだした夕鈴を見て納得する。 確かに夕鈴にはちょっと難しい台詞だろう。
それも膝上で相手を見つめながら____。
『早く邸に戻って私の震える身体を温めて・・・・。 早く貴方と二人きりになりたいの・・・』

氾紅珠がしたためた、貴族女性の間で流行しているというあの書簡。 夕鈴が激しく拒否反応を示したため少ししか目を通せなかったが、数々の激甘のラブロマンスが書かれていたのを思い出す。 十四歳の氾家息女が普段どんな妄想をしてるのか考えるのも恐ろしい。 

夕鈴は膝上で恋人役が言うはずの台詞を思い出し、恥ずかしくて身体が戦慄いた。 膝の上で水月を見つめながら 『身体を温めて』 とか 『二人きりになりたい』 なんてあの場で言える訳が無い。 お尻が痛いだって恥ずかしくて、言うのにどれだけ気合を入れたことかっ!
恋人どころか、誰かと付き合ったことさえないのにっ!
陛下への恋心だって最近自覚したばかりだというのに、そんな高等テクニック使えるかっ!
考えている内に、ここまで追い詰められることに段々腹が立って来た・・・・・・。

「あとは庭をお見合い相手の方と歩いていただけで、陛下が怪しむような演技はありませんので御安心を。 どんな事を侍女から聞いたのか解りませんが、縁談阻止の為に協力しただけです。 手だって陛下みたいにそんな・・・・ いやらしくなかったですっ!!」
「いやらっ・・・・!?」

勢いよく怒り出した夕鈴は涙目で僕を睨ねつけた。 夕鈴の台詞に思わず腕から力が抜けると、囲いから逃げ出した兎は足を踏ん張りながら溢れそうな涙を堪えて僕を見つめる。

「膝上に座った時だって腰とかお腹とか触ってませんでしたし、陛下みたいに耳元で囁いたりしませんでした。 女性の扱いに慣れている陛下と違って水月さんは紳士的でしたっ!」
「ぼ、僕だって慣れてなんかいないよ! ゆーりん!」
「・・・・そうですね。  陛下は演技が上手なだけですよね。 春の宴でそれは充分承知しております。 ええ、わかっております。 ただ、その上手な演技を他の方が居ない場所でなさる必要が、何処にあるのかが解りませんっ! 演技を見る人がいないのに、そんなに意地悪する必要が何処にあるのでしょうかっ!!」

言っている内に興奮状態となった夕鈴は、陛下を激しく睨みつけると、ふんっと鼻息荒く、踵を返して寝所を出て行った。 妃の寝所で、それも寝台の上に一人残された陛下は熱の消えてしまった膝に寂しく手を下ろし、大きな深い溜息を吐いた。

そして余り時間を空けずに妃寝所窓の外から、元気な隠密の飄々とした声が掛かる。

「陛下ー。 李順さんが陛下のことを探してますよー。   あっれ~? お妃ちゃんが居ないのに寝所で一人で何やってるのさ。 居ないなら探して警護に付かな」
「・・・浩大。  そもそも原因は・・・・・・ お前なんだよな」

陽炎のように立ち上がった陛下は音も立てずに浩大に近寄ると、冷気を漂わせながら怒気を孕んだ声で睨み付けた。 浩大が一体何があったのだと驚いて陛下を見ると、冷酷非情な表情で睨まれているのが解り血の気が引いた。 

「ちょっ! 何の原因っすか? いきなりそんなこと言われても何が何だかっ??」
「そうだ、お前がゆーりんに下っ端侍官の衣装を着せて宴に連れ出したのが原因だ! あれから夕鈴に変な印象を持たれるようになったんだからな。 お前はどう、責任を取るんだ?  ・・・・・・返答次第では佩いている物に手が伸びそうになるが?」

今にも斬り付けそうな鋭い目つきで脅され浩大は正直戸惑ったが、言われた台詞の内容に妃が関わった縁談を重ねると、陛下が何らかの行動を起こして、結果、妃の寝所に独りで取り残されたのだろうことが理解出来た。

「・・・その時の原因は確かにオレだけどさ、余計な情報を入れてお妃ちゃんを追い詰めたのは陛下だよね~。  責任って、水月坊ちゃんの咽喉笛でも切り裂いてこようかぁ? 誰の仕業かすーぐにばれて、お妃ちゃんに嫌われるのは誰なんだろうねー」
「・・・・・お前は本当に口が減らないな」
「ま、付き合い長いですからね~。 責任はご自身でお取りになることを勧めますよ」

報告はしたからねと、浩大は姿を消す。 がっかりと肩を落とした陛下は、寝台に戻り腰掛けると、深い溜息を吐いた。 

夕鈴に僕の悋気は通じないし、怒り出すと小犬も狼陛下も通用しない。 
水月が触れた場所全ての跡を拭いたくて指を絡めても、腰に腕を回しても、君は後ろ足を蹴り上げて逃げ出していく。 止めは 『女性の扱いに慣れている陛下』 だ。
水月が出仕し姿を見せたら今までになく冷酷な表情で見てしまうだろうが、彼女との約束があるから睨みつける訳にはいかない。 李順が怪しむことのないよう、極力奴を視界に入れずに大量の仕事を回してやろう。 しかし、嫌がらせで多量の仕事を与えて、奴が怯えて早退したり休んだりすると、きっと夕鈴は僕を睨みつけ、口も聞いてくれなくなる可能性がある。 
気付かれないように奴に大量の仕事を回すには如何したらいいか。
そんな時に実家で何かあったらそのまま退宮し、バイトを辞めて幼馴染君からお金を借りて借金返済をしてしまうかも知れない・・・・。 

そんなことを考えていると、鳩尾にふと不快感を感じた。

「・・・・・・?」

鈍い痛みを鳩尾辺りに感じる。 この痛みは何だろう? 
それよりも夕鈴を追い駆けて誤解を解き、早めに謝った方がいいだろうか。  
ああ、李順が呼んでるって? 全く、煩い奴だ。 
それよりも夕鈴を・・・・・ 何だろう、下から締め付けられるような鈍い・・・・ 。


一刻後、もう陛下は居ないだろうと夕鈴が冷えた頭で寝所を覗くと、寝台で横になっている人影に驚いた。 もしかして寝ているのかしらと静かに近寄ると、そこには額にうっすらと汗を浮かばせ、蒼褪めた表情で胃部を押える人が。

「え? ちょっ、陛下っ!? なっ、如何したのっ!」
「ゆーりん・・・・・ お腹  いたい・・・・」   
 

過去に行なった内乱制圧や粛清、蟲のように湧いてくる臣下の不正や企み、国を動かす立場であるはずの輩による様々な嫌がらせの中傷文、相手を陥れようとする馬鹿らしい数々の陰謀、狸どもの昏い思惑が跋扈する王宮での政務、未決済の書簡の山・・・・・。 
それら全てを冷酷非情な王として、類稀なる精神力と鋼の身体で乗り越えて来た・・・・・ はずの陛下は、嫁の涙と謗り、実家に帰るという幻の脅しに耐えられず・・・・・・。

 





「はい、あーーんっ!」
「熱くないですか? 白湯もありますから言って下さいね、陛下」

夕鈴手作りの野菜粥を食べさせて貰いつつ、陛下は山と積まれた書簡に筆を走らせる。 
傍らには李順が幾度目かの大仰な溜息を吐きながら眇めた視線を落とすが、今の陛下には届かない。 陛下は幸せそうな顔で目の前の匙に口を大きく開き、次を催促する。

「陛下、食べ終わりましたら薬湯をお飲み下さいね」
「あれ苦いし、もう痛みもないから大丈夫だよー」
「そう言うと思って甘い菓子を作りました。 薬湯のあと口直しに召し上がって下さい」
「ゆーりんがそう言うなら我慢するね。 はい、次頂戴」

ただの胃痛か流行中の感冒か不明のため、執務室で仕事をしながら陛下はどっぷりと夕鈴に甘えた。 薬湯嫌いの陛下のために、溜まりに溜まった書簡を片付けたいために、苦肉の策として李順は夕鈴に新たな仕事を任命した。 陛下が薬湯を飲むように、妃として役に立てと。 
必至に考えた夕鈴の案に李順は呆れたが、更に呆れたのが陛下の態度だった。 
それでも政務が滞ることがないなら、側近として文句はない。 ただ厨房を貸し切るのが面倒なだけ。 あと少しで回復するだろうから、それまでの辛抱と李順は冷たい視線を陛下に投げるだけで嘆息し、膳を下げつつ次の書簡を受け取りに宰相の下へと向った。

「ゆーりん、お腹痛いから温めて欲しいなー。 いい?」
「・・・・・薬湯を飲んだばかりなのに、それって必要ですか?」

大きくしっぽを振る小犬の膝上に緊張しながら腰掛け、脇の下に腕を回して身体を密着させる。

寝台で倒れている陛下を見た時、すごく慌てていたんだと思う。 陛下が少し休めば大丈夫と蒼褪めた顔で言うから、自分に出来ることはないかと、役に立ちたいと・・・・ 言ってしまった。 
何でそんな事を言ったんだろう。 蒼褪めた陛下が約束だよと言うから力強く頷いてしまったが、まさかこんな事を頼まれるとは思ってもいなかった。 思いもしないだろう、普通っ!!

「温かいよ、夕鈴。 薬湯もちゃんと飲むから、毎日ずっとこうしてね」
「・・・・一日一回の約束ですよ・・・。 それよりも本当にこれで仕事になりますか??」
「うん、すごっく捗るよ。 温かくて気持ちいいからね~!」

他人の御家事情には、特に貴族の縁談には絶対に関わるべきではないと勉強をさせて貰った。
水月さんは出仕されているようだけど、あれから顔を見ていない。 休みなく政務室でお仕事していると浩大から報告されたが、少し痩せたようにも見えるよと言っていた。 
まあ、陛下に知られていると知っている水月さんが元気に出仕することはないだろう。 
紅珠からの手紙に氾家は水月さんの全ての縁談を一旦白紙に戻したと書かれていた。 
縁談相手には悪いが、水月さんにとっては良かった結果になったと夕鈴もほっとした。 
お妃様には大変な迷惑を掛けてしまったが、縁談阻止は上手くいったと最後に書いてあった。 
自分が関わったことで二人に叱責が行くのではないかという懸念は解消されたのだから、陛下の体調が良くなるまで食事を作ることくらい、お安いものだ。 でも・・・・・。

「抱っこや膝上は・・・・ 基本・・・・ 演技中だけですからね!」
「うん。 でも今はちゃんと抱きついていてね。 約束だものね、ゆーりん」

『約束』  そう言われると逆らうことが出来ない。 李順さんが戻るまで、たぶん半刻くらいだろう。 戻って来たら離れなさいとすぐに言ってくれるから、それまで耐えるしかない。 
・・・・・一体何の災難なのだろうと、小さく溜息を吐き、夕鈴は唇を噛み締める。




恐れていた陛下からの叱責もないまま、兄水月が出仕を再開し、蒼褪めていはいるが日々早退もなく過ごしていることを知った紅珠の心の中で、尊敬するお妃様の 『崇拝モード』 が更にアップしたことを、この時の夕鈴は未だ知らない。 
新たな物語の巻物が巷の貴族子女に出回るのも近いだろう。




最終的に 災難にあったのは誰だったのか・・・・・・






FIN 




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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:55:03 | トラックバック(0) | コメント(10)
コメント
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2013-01-31 木 01:02:10 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。 いや~、途中まで狼で話を書いていたんですが、「これぢゃあ終わらない!」ということに気付き、路線変更したらこんなんなりましたー! 笑ってくれてありがとうデス!
2013-01-31 木 01:15:16 | URL | あお [編集]
うわぁぁぁ(^○^)
さすが、あお様です!!

次回作も楽しみにしてますね!
2013-01-31 木 02:01:50 | URL | 陽向 [編集]
Re: タイトルなし
陽向様、コメありがとう御座います。次回作、はい、頑張ります。 またお付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-01-31 木 09:02:10 | URL | あお [編集]
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2013-01-31 木 17:09:16 | | [編集]
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2013-01-31 木 19:22:26 | | [編集]
惚れた方が負けですかね(^o^)v
冷酷非情…は一体何処へ(笑)
夕鈴にとことん甘い陛下(///ω///)♪
しかし、夕鈴の事考えてすぎて倒れるって!
夕鈴に関して精神面弱い…ヘタレな陛下も好きですよ!!
だが、倒れたおかげ?で夕鈴とのイチャ甘看病(///ω///)
倒れてもただでは起きない陛下、さすがです♪

最終的に一番災難は夕鈴ですかね…

楽しいお話ありがとうございましたm(__)m
次回作も楽しみに待ってます!!

2013-01-31 木 19:52:28 | URL | ダブルS [編集]
Re: 誰って…
makimacura様、コメありがとう御座います。そうかー、浩大かー。たしかに陛下の執拗さはすごいですからねー。陛下の部下をしているのも大変だ。(笑)
2013-01-31 木 20:00:51 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。陛下の体調不良はやりすぎちゃったかな感がありますが、まあ妄想作品なので、ご勘弁を。(笑)夕鈴を翻弄するのに、狼も小犬も出し切った陛下を書くのは楽しかったです。次も宜しくお付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-01-31 木 20:07:35 | URL | あお [編集]
Re: 惚れた方が負けですかね(^o^)v
ダブルS様、コメありがとう御座います。冷酷非情は何処にいったのでしょうか(遠い目・・・・) 国政に携わる陛下は先を考えて倒れています。(嘘です) いちゃいちゃさせて看病させて、ウハウハ? また次回もお付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-01-31 木 20:11:00 | URL | あお [編集]
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