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錯視  1

水難の相は本当に楽しく書けました。 今度は夕鈴が違った意味で翻弄される妄想です。
お時間のある方は、またお付き合い下さいませ。
ちょっとしたことで久し振りに化粧してお出掛けして来ました。 ヒールを履くのは卒業式まで無いと思っていたけど、仕方が無い。 普段履き慣れていないから足が痛くなるんですよ。 

では、どうぞ。







 





「ちょっとだけ動かないでね」
「・・・・・・・・はい」

回廊で会った陛下は私を手招きして、政務室近くの一室へと誘った。
侍女を置き去りに言われた通り、差し出された手を取り一室に入ると壁に押しやられて、いきなりそう言われた。 陛下の両手が壁に押し付けられ、陛下と壁の間に立ち竦む私は何が何だか分からない状態で言われるがまま動かずにいるしか無い。

「・・・・ふぅん。 ・・・・か」
「・・・????」

何か内緒の話なのかと思っていたが、陛下は私の髪に飾られた簪に注視しているようでブツブツ言っている。 頭を注視されているので動けずに問い掛けた。 

「あの、外しましょうか?」
「いい・・・・・。 うん、分かった。 夕鈴、ありがとう」

両手の囲いから開放される寸前まで、何かされるのかと身構えてしまったが、陛下はするりと離れると小犬の微笑みを残して扉を開けた。 侍女に一瞥を送ると私の手を取り、今度は妖艶な微笑みで 「夜に行くから」 と告げ政務室へと向かって行った。
二人きりで何をされていたのだろうと、背後の侍女からいつも以上に期待を込めた微笑がちょっと恐かったけど、本当に陛下は何をされたのだろう? 
部屋に戻り簪を外して見るも、普段使いの普通の簪で別に変なところは無い。
特別に高額な物でもないし、妃が付けるには安物すぎる訳でも無い。 あの時だって簪の低級さに気付いたのは李順さんで、どれだけの範囲で目利きなんだと驚きを隠せなかった。 
離宮で施された髪も化粧もどれだけのスキルがあるのだと心底驚いた。

しかし、陛下は簪を見ていただけ。
何だろう。  何をされたかったのだろうか。
もしかして・・・・・・ 誰か女性に贈るための下調べ・・・・ とか?
財政難の折、商人を呼び付けることが出来ず、下町で買うつもりで下調べに来たとか・・・・?
でも、誰に・・・・・?

いやいや、そうと決まった訳じゃない。  ______けど。


ご自身で作る。 いや、李順さんがそんな時間が有るなら政務を推進めるだろうな。
ご自身に飾る。 へ? いや、何で? ・・・・・女装? ・・・・・・・・・却下。
ご自身の身を守る。 小刀を浩大に投げ付けるを見た事があるから、それで事足りるだろう。
ご自身の・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

思いつかずにモヤモヤしてしまう。 思い付く事といったらやっぱり女性絡みだ。 
誰か、女性に贈るのかな。
男女の機微に疎い私が想像出来ることは高が知れているが、ぽんっと頭に浮かんだのは、春の宴の時に素敵な舞姫と懇意になっていて、その方に渡すための下調べをしていた・・・・とか。 
徐克右さんに言ったように下町に情報を集める本当の 『耳』 役の女性がいて、その人に贈るため・・・ とか。 陛下付きの女官さんに贈る・・・・ とか。 
女官さんは皆綺麗だし、貴族の娘さんだから、陛下が御手を出しても問題はないし・・・・。
国王だもの、後宮に沢山の女性を侍らせることが出来る、いや、侍らせることを切望されている人だもの。 誰に何を送ろうと、文句を言われるはずも無く。
言うとしたら李順さんかな? 国にとって 『利』 を齎す女性を選べと。
陛下も大変だ。 好きに女性にモノを贈ることも容易じゃない。

そこまで考えて小さく首を振り、夕鈴は簪を鏡台に置くと深い溜め息を吐いた。 




それから陛下が政務室や書庫などにいる時、夕鈴の顔ではなく髪飾りや簪に注目していることに気付く。 夜、陛下が夕鈴の自室に来る時分には湯浴みが終わり、髪は大抵下ろしている事が多いため、陛下はいつも通りに目を見て話しをしてくれる。 
直接聞けば良かったのだが時間が経てば経つほど聞きにくくなる。 政務室で問うことは出来ず、時間の経過と共に聞くことに躊躇いが増し、ただただ気になるだけ。 

掃除中に思い出してしまい、溜め息を零したところを浩大が突付いてくる。

「お妃ちゃ~ん。 お悩みですか~?」
「悩み・・・ じゃないな。 余計なことを勝手に考えているだけだから気にしないで。 きっと大した事ではないのよ。 私には全く関係の無いことでしょうしね」
「何じゃ、お前さん。 陛下とケンカでもしたのか?」
「ケンカなんかじゃありませんよ。 ・・・・そうではないんです」 

浩大がニヤニヤしながら夕鈴を見て何か言いたげな顔をする。 夕鈴が気付いて眉を寄せると、浩大は両腕を頭の後ろに組むと声を上げて笑い出した。

「お妃ちゃんは気にすることないじゃん! 陛下はケンカなんかしているつもりは無いだろう? お妃ちゃんが一方的に考え過ぎてるだけだろう?」
「だからケンカじゃないって言ってるでしょう」
「では、どういう事なのか話してみればいいじゃろう?」

暫し悩んだが、老師のキラキラした興味津々の顔を見ている内に力が抜けてきて、夕鈴は嘆息したあと掃除に戻ることにした。 老師が 「何じゃ! 年の功を馬鹿にしたらイカンっ!」 と文句を言うが背を向けて床磨きに集中することにした。 
確かに浩大の言う通り、自分が考え過ぎているのかも知れない。 
それに陛下が誰に簪や宝飾を贈っても、バイト妃には関係のないことだ。 気付かない振りをして、いつも通りに 『臨時花嫁』 を演じるだけだ。
考えに夢中になり同じ場所ばかりを磨き続けて、結果、他の場所より異様に輝く床になったことを夕鈴は知らない。 浩大が眇めた視線を投げ掛けたあと、王宮方向に視線を移した。







「なあ、お妃ちゃんと何かあった?」
 
夜半を過ぎ、寒々しい空間に姿を現した隠密は、陛下に突然問いを投げ掛ける。 その問いに陛下は山と積まれた書簡に嘆息しながら眉間に皺を寄せた。 

「夕鈴に何かあったのか?」
「その原因がへーかにあるだろうから聞いているんだよね~。 心当たりはないんすか?」
「・・・・・・特に心当たりはないが。 夕鈴に何があったんだ?」

懐から菓子を取り出し頬張りながら、浩大が首を傾げた。 

「う~ん、言っていいのか? ケンカじゃないと言っていたし、悩みじゃなくって大した事ではないって言っていたんだよね。 でもあれは思い詰めているように見えてさ」
「・・・・・夕鈴が思い詰めて。 家出・・・・ まではしないよな」
「あー、其処までではないと思いますけどね。 陛下に心当たりがないなら、やっぱりお妃ちゃんの考え過ぎなんだろう。 一応そう言っておいたし、少し様子みるっす」

訝しげな表情の陛下を置き去りに、浩大はいつもの夜間警備に就くことにする。 
明日にもまた夕鈴の様子をみながら、何を考え過ぎているのか調べてみようと考える。 陛下に心当たりがないようだが、彼女が気にするようなことをきっと仕出かしたに違いないと、双方の動きを見守ることにした。

片や陛下は浩大が去ってから書簡の山を前に、暫らく考え込んでいた。 李順が周宰相から受け取った書簡の山を卓に置き、陛下の様子に気付くと、如何したのかと問うてきた。

「・・・・夕鈴の様子が少し変だって浩大から報告があってね」
「夕鈴殿がおかしいのは何時ものことです。 それより何処まで署名捺印は済みましたか。 数人の大臣から新たな地方での税率に関して申請がありましたよね、早急に返答を。 それと小麦の作高について大臣より報告が来ております。 早速目を通して頂き署名を。 ・・・・・陛下、書簡の山が崩れる前に早急に願います。 大体ですね・・・・ 」

陛下の台詞をさらりとかわして仕事の話を続ける側近に眇めた視線を投げ掛けるも、嘆息して睨み付けられる。 この後に続く台詞は熟知しているので、陛下は視線を下げて書簡に落す。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:30:30 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
はてさて(^^)
素直に考えれば、夕鈴に贈り物だろうと思うが、陛下の考えはいかに!?

しかし、陛下の女装…
さぞかし美人だろうが、身長と体格ですぐばれそうですね(笑)

2013-02-02 土 07:28:13 | URL | ダブルS [編集]
Re: はてさて(^^)
ダブルS様、コメありがとう御座います。体格でばれる、確かにそうですよね。当時、それほど大きな女性はいないでしょうから。しかし、見栄えがするほど綺麗でしょうね。陛下のお母様がすごく綺麗な舞姫ということもあり、それは確か。 ちょい見てみたいかも。
2013-02-02 土 14:01:01 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-02-03 日 01:13:51 | | [編集]
Re: 誰の…?
makimacura様、コメありがとう御座います。 まあ夕鈴の「錯視」でしょうね。笑っちゃうほど考え過ぎる夕鈴をどーんと投入です。 そこまで浸るなよと突っ込みを入れて頂けると嬉しいです。
2013-02-03 日 01:27:03 | URL | あお [編集]
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