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錯視  3

痛い夕鈴に対して、誰が素っ裸の彼女を助けるのかのコメントが多くてにやにやしてます。 
すいません。 そして大半の予想通りです。 はい。



では、どうぞ。

















「お妃様、お湯から上がられましたら陛下側近の李順様が至急お伝えしたい事があると、お呼びで御座います。 あと、陛下が自室に御出で下さいとのことで・・・・ お妃様?」

呼び出しがあるため、湯上りの夜着ではなく妃衣装を用意したため妃付きの侍女が二人、脱衣室へと足を運び、妃がいる湯殿へと声を掛ける。 
しかし、いつも声を掛けるとすぐに返答を返す妃から一言もなく、その上静まり返っている湯殿の様子に、もしや寝てしまっているのではと懸念した侍女が足を踏み入れ、湯煙の中うつ伏せに倒れている姿を見て、悲鳴を上げた。

一人は直ぐに湯殿を出て、近くに配されている警護兵に伝え、そのまま侍医を呼びに走る。
残った侍女は震える声で妃を呼び続け、大布で上体を包み込んだ。 そして濡れた髪に覆われた腕を見て悲痛な叫びを上げ、息を呑んでから巻かれていた手布を強く締め付けた。 直ぐに窓を開け、湯煙を追い出すと共に湯殿の気温を下げて、妃を襲撃したであろうモノの気配に怯える。 周囲を見回しながら、それでも妃から離れないように涙を滲ませながら耐え続け、侍医の到着と共に掠れた声で報告した。

「お、お妃様の腕に・・・・ 腕が赤く腫れ上がっておりますっ! もしや蛇毒では?」
「この時期に毒蛇と!? 揺り動かしてはいないだろうな?」
「は、はい。 腕に巻かれていた布を強く結んだだけですっ!」 

侍医を呼びに行っていた侍女も戻り、指示を受けながら湯殿から妃の身体を引き摺り上げた。
女性二人でも意識を失った人間を湯船から引き上げるのは普通大変な労力を要するが、妃の容態に気が急いていた二人はそれどころではなかった。 妃を引き上げると直ぐに大布で身体を包み込み、侍医の指示に従って涙を浮かべながら動き始め、腕に巻かれた布を緩め、毒を含んだ血を流し、そしてまたきつく縛り上げる。 その間医官が傷口から血を吸い出し、繰り返し水で洗い流し続けた。 

警護兵より事情を聞いた陛下が側近らと共に湯殿に駆けつけた時、意識を失った妃を板に乗せて部屋へと運ぶところだった。 その頬はいつもより紅く、しかし額は蒼褪めており、意識がない夕鈴を前に陛下は隠すことなく殺気を含む怒声を張り上げた。 

「・・・・・何があったか報告をしろっ!」

侍女が知っていることを震える声で必至に説明すると、警護兵が 「見つけました!」 と一匹の蛇を差し出した。 短い悲鳴をあげ侍女が顔を背ける。 両手を広げた長さに足りないほどの体長の特徴的な柄の毒蛇であることがわかり、急ぎ医官が血清を用意すると医局へ走って行った。 
それがこの時期、何故後宮の湯殿に。 何があったかが理解出来、それが何を意味するか、陛下は頭部に刀が突き刺さったモノを一瞥し、場に残された医官に問うた。

「これの血清は充分用意してあるか。」
「はい、様々な蛇毒に対応出来るよう用意しております。 咬み跡を拝見させて頂きましたが、幸いにも奥歯で咬まれた様子はないと思われます。 今後の容態を拝見し慎重に対応させて頂きます。 後、お妃様は嘔吐されておりますので関連性も調べ、侍医と話し合い、ご報告致します。」
 
陛下は医官に頷き、直ぐに妃の元へ赴くよう指示をした後、周囲に射るような視線を巡らす。 

「・・・・・付いているはずの湯番は何処だ。」
「侍女が湯番よりお妃様の衣装をお持ちするようにと伝えられ、用意して此方に来た時には姿が無かったと聞いておりますが、その者が蛇を?」
「それが判らないから、まず捜索をしろ」
「只今、誠意捜索中で御座います。 時期報告が挙がると思われます」 

そこへ周囲を捜索していた警護兵が駆け寄ると陛下の前で膝をつき拱手する。

「後宮侍従していると思われる人物が倒れておりました。 衣服より湯番と思われますが」

報告を受け、直ぐに陛下は警護兵と共に既に息絶えた湯番の姿を確認した。 首があらぬ方向へと曲がり、大きく見開いた目は虚無を見つめていた。 警護兵が周囲を捜索したが、他に怪しいと思われる人物は居らず、武器などの証拠品も見当たらないと報告が挙がる。 

「この者を王宮に推挙した人物を洗い出せ。 ・・・・まあ、無駄とは思うがな」
「は、御意っ!」

数人の警護兵が人事を任されている部署へ赴き、早急に調べるよう陛下からの指示を伝えに向った。 しかし湯番が死んでいる時点で既に手は回り、名前さえも削除されているだろうと李順は陛下に溜息を零す。 少し蒼褪めた表情で李順は首を振り、怯え震える侍女らに緘口令を布き、部屋で待機するよう指示をした。 

「夕鈴殿のことは侍医に任せ、陛下はお早く執務室にお戻りになられるよう願います。」

診察結果を早急に報告するよう侍医に伝えてきますと、李順は場を離れて行った。 側近を見送った後、場に残った警護兵に念のため引き続き周囲捜索を命じて陛下は湯殿へ足を運ぶ。


無人の湯殿は侍女が窓を開けたため、湯煙が湯面に立ち込めるだけで静かだった。 
妃の容態を鑑みた侍女が窓を開けるまでは、全ての窓が閉じられていたと聞く。 この湯殿は高窓しかない為、外からの侵入はかなり難しいと考えられる。 
捕縛した蛇は元より人里に姿を見ることもあり、水田などでの被害報告も多く聞いている。 
しかしこの種は全般的に攻撃性は低く、威嚇行動を繰り返し、それでも怯まない相手に牙を向けることが多い。 中には攻撃的なものもいるだろうが、人が居る場所へと望んで来るような類のものではない。
考えられるのは作為的な、殺意あるものとして放り込まれたという事だ。
狼陛下唯一の妃に対し、未だよからぬ考えを持つ輩がいるということか。 最近は姿を潜めただけで、裏では未だ蠢いていただけと。 しかし、何故時期に? そこに意図はあるのか。

深く思慮に沈んでいると、場にそぐわぬ明るい声が聞こえてきた。

「陛下、お妃ちゃんは無事だってよ。 一応血清処置はしたけど、牙の状態から毒のある奥歯での咬み跡は見られないって。 お妃ちゃん、たぶん驚いて抵抗しなかったようで、毒腺のある部分の擦り付けもないし、倒れたのは侍医の診察だと湯あたりらしいよ」
「湯あたり?」
 
浩大が頷くのを見て、嘔吐はそのせいかと少し安堵出来た。

「長湯して出ようとしたところを咬まれたんじゃないかって。 下手に動かずに居たから深く咬まれることがなかったのだろうってさ。 貴族息女なら驚いて深く咬まれていたんじゃないか? ・・・・あれって本当なら大人しい種類の奴だろう」
「殺してしまったから詳細は判らないが、確かに自ら攻撃するのは少ない種だ」

小さく頷く浩大は眇めた視線で周囲を見回し、陛下を見上げた。 その目には次の指示は何だと訴えているようだ。 黙した視線に頷き返し、陛下は怒りを抑えた掠れ声で命を下す。 

「最近の大臣らの動向をまとめ調べ、あとで報告しろ」
「了解っす。 しっかし、湯殿じゃオレも付く訳には行かないしな~。 まあでも危険があるなら警護も仕方がな・・・・・・・・   っと、嘘ですよ! おっかないな~」
「私も知らない夕鈴の肌をお前が知る必要は無い」

少し拗ねた感が声に含まれているのを浩大は聞き逃すはずも無く、ケタケタと嗤いながら走り去って行った。 浩大の言葉の端々に自分が警護についているのに、という自責の念が混ざっていることは判る。 しかし場所が場所だけに難しいところだ。
自分だってそこには立ち入ることが出来ない。


「・・・・侍医と医官は見たんだよな」

小さく呟いた声色は他の者が耳にした途端に血も凍るような低いものだった。 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:10:10 | トラックバック(0) | コメント(12)
コメント
続きまってました
まさかの湯あたり、(; ̄ェ ̄)
長湯すぎだよ夕鈴(°_°)
2013-02-04 月 23:31:16 | URL | 秋 [編集]
Re: タイトルなし
秋様、コメありがとう御座います。 お粗末でごめんなさい(笑) でも長湯は危険。温度差で倒れるケースが多いのがこの時期ですしね。倒れて当たり所が悪ければ大変です。 でも私は長湯派です。 本読んじゃいます。
2013-02-04 月 23:45:36 | URL | あお [編集]
驚きです・
まさか湯あたりだったとは驚きました・お風呂場での考え事は危険ですよね気付けば長湯になってしまいますから・ひとまずは安心ですが、さてどうなる?そして夕鈴の心配事は続きを待ちます・
2013-02-05 火 06:09:13 | URL | ともぞう [編集]
Re: 驚きです・
ともぞう様、コメありがとう御座います。そうそう、湯中り。 蛇中心の今回ですが、気になるのは簪でございます。 夕鈴の悩み解決となるのか、まだ何にも考えておりません。(爆)
2013-02-05 火 07:22:49 | URL | あお [編集]
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2013-02-05 火 10:47:10 | | [編集]
人命救助です!
モヤモヤ&悶々(笑)
お互い、言いたいことがはっきり言えない…
そんな関係が今回の夕鈴湯中り状況+毒蛇!!

ヤキモキしますが、そんな状況で悶える人達見るのが好きなのです!!

早く簪の謎が解けるといいですが、まずは刺客捕縛ですね!

2013-02-05 火 12:19:48 | URL | ダブルS [編集]
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2013-02-05 火 12:28:06 | | [編集]
Re: タイトルなし
羽梨様、コメありがとう御座います。 逆上せると結構きついですよね。 気持ち悪いし、折角気持ちよくお風呂に入ったはずなのに、最悪な気分になる。 侍医さんピンチ。どうなる侍医さん。頑張れジイサン。 あ。
2013-02-06 水 07:45:53 | URL | あお [編集]
Re: 人命救助です!
ダブルS様、コメありがとう御座います。 悶々夕鈴って書くのうっとうしい。(爆) そんな中、雪が降ってます。 湯煙の中、逆上せた夕鈴に蛇です。 都心は積もるかもと交通機関の心配がされてます。 陛下は焼きもち妬いてます。 私は朝からコメント返信してます。
2013-02-06 水 07:48:07 | URL | あお [編集]
Re: ワクワク要素いっぱい~!!
makimacura様、コメありがとう御座います。 蛇の毒では可哀想過ぎたので、真っ裸で湯疲れにしました。 陛下の嫉妬というか、それは無いだろう、仕方ないじゃん状態ですが、こっちは少し引き摺ります(笑) 少しかな? ここは陛下を苛めましょう。
2013-02-06 水 07:50:27 | URL | あお [編集]
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2013-02-06 水 20:17:04 | | [編集]
Re: こんにちは。
瀬津音様、コメありがとう御座います。 お久し振りで御座います。 あちらでは何時も楽しませて頂いておりますが、こちらに足を運んで頂き感謝感激です。 新しいお話も楽しみにしておりますので、瀬津音様も体力に気をつけて頑張って下さいませ。
2013-02-07 木 14:00:13 | URL | あお [編集]
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