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錯視  4
陛下の最後の呟きに拍手喝采を頂き、嬉しくって小躍りしております。 やっほー!
雪兎様、正解です。 ヤマカガシー! 



では、どうぞ。













夕鈴の自室に姿を見せると、侍女らが拱手して安堵の表情を浮かべていた。 
寝所に入ると侍医が付き添い、脈を計っているのが判る。 侍医は陛下の訪れに気付くと恭しく拱手し、心配されている妃の容態の説明を始めた。 

「陛下、お妃様の容態は安定しております。 毒蛇に咬まれていないとは思いまするが、念のため血清処置を施しております。 現状の主たる原因は湯疲れと、咬まれたことによる 精神的動揺が大きいと思われます。 今しばらくは安静にされ、充分に水分をお摂り頂くことが必要です。 薬湯を用意しますので、後程お届けにあがります」
「・・・・・解った」

妃を心配されているにしては自分に向けられる視線が恐ろしいほど冷酷だと侍医は感じたが、敢えて触れずに退室することにした。 拱手し低頭すると、頭上から小さな呟きが耳に届いた。 
一瞬何のことかと耳を疑ったが、冷酷な陛下の様子とその言葉の意味を理解した途端に顔を上げることが難しくなり、侍医は床を舐めるように震える足を運び部屋を辞した。 
_____侍医の耳に響いた冷たい声。

 

・・・・・見たな・・・・・・・



見たといっても診察の一環で、これが仕事なのだから解って下さいとは口が裂けても言えない声色だった。 次の診察時には武官を五人以上つけて赴かなければ、とてもじゃないが手が震えて診察が侭ならないかも知れないと侍医は心の中で呟いた。



寝台に腰掛けて夕鈴を見下ろすと、穏やかな寝息で深く眠っているのが解る。
一体どうして湯疲れするほど長湯をしたのか。 
一時、何かに悩んでいる風だと浩大から報告が来たが、自分が見る分には変わりないように見えた。 いつものように政務室で見つめると真っ赤になるし、夜は楽しげに掃除の報告などをしてくれる。 方淵とも黙したままでの睨み合いを展開し、侍女たちからの視線も別段いつもと変わらないように見えたのだが。
実家がある下町で何かあったと手紙でも来たのだろうか。
いや、それなら李順から報告があるはずだ。 夕鈴が下町に行くというなら必ず浩大を警護に就かせるから私にも直ぐわかる。 他に考えられることはいずれかの大臣からまた妃献上の話でも挙がり、それを耳にしたか。 中傷文でも目にしたか。 どちらも幾度か体験しているから、逆に口に出さずに溜め込んでいるのかも知れない。

・・・・・君は他人が背負うべき悩みまでを背負おうとするからな。
甘えて欲しいと、悩まずに頼って欲しいと思うのに、頑張る君も君らしくて。

でも体調を崩すほどなら相談して欲しい。 ましてや君が傷付くのは論外だ。
幸いにも毒牙からは逃れることが出来たが、君を害するものをこのまま放置する訳にはいかない。 愚かな輩を早急に探し出し、己が私の大切な者に何をしたのかをその身に知らしめないとならない。 時間の経過と共に怒気を抑えるのが困難になる。 押さえが効かなくなった時・・・・・ 優しい君は僕を見て顔を曇らせるだろう。

君が怖がる僕の一面。 

だからこそ君が後宮で深く眠っている内に片付けなければと瞼を閉じる夕鈴を見つめ続けた。
  






「へーか、足掛かりが掴めましたよ。 ちょっと証拠が無いから、そこが難点かなー。 人事の方も手掛かりが消えたって報告が挙がってるだろう? 上手いことやるよな。 ここまでの調べで複数人数いるってことは確かだよ」
「急に休みを申請した官吏も大臣も居りませんし、人の動きは一見変化が見られませんね。 多少の増減はありますが、この時期としては通常範囲内ですし把握はしてます」

やはり湯番を推挙した人物は証拠を隠滅し、今は大人しく真面目な顔をして王宮に出入りしているらしい。 王都周辺の大規模な灌漑工事の件で政務室には他部署からの応援官吏が出入りしているが、基本大臣の顔ぶれは変わりない。 
水面下ではどの様な思惑を呈しているか、暴いた後でゆっくり伺うしかないと嘯くしかない。

「最近、妃献上の件を影で申し出ている輩はいるか?」
「・・・・私の耳には届いておりませんね。 密偵からの報告もありませんが、妃献上の件が今回のことに関係していると? もしそうなら久し振りの動きですが」

李順の密偵は各部署にそれとなく配置され、大臣らの動きを逐一報告している。 更に密偵を探る 『耳』 も置き、徹底して疑いと篩いを掛けている。 
李順がいうのだから献上の件は無いだろうとわかる。

「夕鈴が何に悩んで長湯したのかなと思ってな」
「・・・・・バイトの悩みは借金のことでしょう。 それより陛下唯一の妃への暴挙に関して詰めた話を行ないましょう。 今考えられるのは新任官叙位人事に関することか、灌漑工事に関しての裏金問題ですね」

陛下の脳裏に浮かんだのもその二点だ。 他にも確かに問題はあるが妃を狙うには無理がある。 新任官叙位に関して、某大臣より推挙された者の裏に王宮に関わらせたくない一派が絡んでいるとの調査結果が上がり、陛下が押し留めた経緯がある。 灌漑工事に関して横行している裏献金に高官二名を捕縛した。 その件で高官の親である有力貴族から苦情が来ている。
  
「いずれも陛下唯一に仇なそうとするには充分な理由がありますが、もう少し詰めます。 八つ当たりで狙われるには、湯殿での毒蛇は・・・・ 考えが厭らしいですね。 夕鈴殿が抵抗せず大事に至らないことに、本当に安堵しました」

李順が苦言を漏らす様を見て、その視線の暗さに陛下ですら思わず卓の書簡に目を移した。
周宰相とタッグを組むとその有能さは何倍にも乗され、国王といえど容赦なく倒れる寸前まで仕事を押し付けてくる。 敵にしたら恐ろしい人物の一人だ。 しかし李順がそこまで夕鈴を心配しているとは意外だった。 思わず顔を上げて彼に視線を向けると。
  
「まだ借金が残っている状況で、万が一があったら誰が返済すると言うんですか!」

思わず持っていた筆が折れる。 その音に眼鏡を持ち上げた李順が睨みを利かせ、浩大がけらけらと腹を抱えて笑い出した。

「陛下がお使いの筆は質の良いものばかりで御座います。 力加減をお間違いないようにお願い申し上げます。 書簡に墨は飛んでおりませんか?」
「全く・・・・。 お前が心配するのはそこか・・・? それに側近といえど、我が妃を愚弄するのを私が許すと思うのか?」
「流石、李順さんだよねー! もう、最高っす!」 

陛下が席からゆらりと立ち上がると、李順は大仰な溜息を吐き肩を竦める。 
いつものように 「彼女はバイト妃ですよ。」 と伝えるも、陛下の殺気は納まらず、如何したものかと李順が手元の書簡に目を落とし、ふと思い至る。

「陛下。 どちらが何を企んでいるか、手っ取り早く探し出すことが先決です。 夕鈴殿にこれ以上被害が及ばぬようにする為にも、陛下に是非ご協力を願います」
「・・・・・話せ」










「・・・・あの妃が目覚めぬと?」
「はい、即死に至らぬ蛇毒ですが、あの種の毒は体内のあらゆる箇所より出血させ、次第に死に至らしめる作用を持ちます。 ただ血清の用意はあるでしょうし、今回はただの脅し。 関わった者は既に消しており証拠は何もありません。 改めて策を講じ、今の妃を後宮より追い出し、綺麗な状態で後宮を明け渡して頂き、陛下には新たな妃を献上差し上げましょう。 我らの希望を叶える妃を」
 
深く御辞儀をする下僕に満足げな笑みを浮かべ、杯を持ち上げる。 一口含み、乾いた嗤いを漏らした後、ゆっくりと雲に隠れゆく月を眺めた。

「出自不明の妃なぞ、旨みの無い輩には早々に退宮して貰わねばな。 何か裏があるかと調べていたが、氾家、柳家の子息らと懇意になるとはな・・・・・。 出来るだけ早めに退宮して貰わねば、王宮は全てあやつらの思惑通りに動くようになってしまうだろう」
「隙を突き、幾度か妃が狙われれば、叙位に関して御考えを修正出来るようになりましょう。 その後、後宮へと滑らかに大臣の推挙する者がお入りになれるよう尽力致します」
「氾家は兎も角、柳家に劣るわけにはいかない。 格式だけなら我が家の方が上なのだから。 その為にも旨みの無い妃なぞ消えた方がいい・・・・。 綺麗ごとを言っている暇もないだろう。 次の手を早めに打つようにしろ。 多少穢れのある後宮でも文句は言わぬ」
「御意・・・・」






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 10:30:55 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
生きてる人間が一番恐い(´д`|||)
ちょっとした、ホラーテイスト!!
侍医さん悪くないよ…(笑)
不眠症にならなければいいけど。

そして、李順さんも恐ろしい…
目を覚まして、元気に働かないと、借金の肩代わりが、弟君にいきそうな?(いや、いかないかな?)

早く元気に動く夕鈴が見たいです!!
目を覚まして、陛下を安心させてあげてください!
2013-02-07 木 16:08:05 | URL | ダブルS [編集]
Re: 生きてる人間が一番恐い(´д`|||)
ダブルS様、コメありがとう御座います。ホラーですか(爆) 李順さんなら言ってくれそうな台詞をチョイス。 ちょっと滞っておりましたが、ここからサクサク行ける・・・・・予定です。余計に妄想に道を外れてました。困ったものです。
2013-02-07 木 18:20:47 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-02-07 木 23:49:48 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 って、大丈夫ですかー!!! 吃驚しました。 えっと、お大事にして下さいね。 旦那様も驚いたでしょうね。 肋骨・・・・うわ。 骨折れた経験が無いのですが、すごっく痛いですよね。息が止まりそうなくらいに・・・。 本当にお大事にして下さいませ。
今回水分補給は甘さもなく、スルーでした。(笑) 目下、陛下の怒りは侍医に向っております。 侍医がいま災難の嵐に翻弄されております。 頑張れ、侍医!
2013-02-08 金 00:00:24 | URL | あお [編集]
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