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錯視  5

パラレルの続きは?と、今更びっくりの問い合わせがあり、つい妄想が迸り、こちらが滞っておりました。 ただ、パラレルなのでお好みががっちり分かれると思います。  ・・・・・現代パラレル版のあっちの二人ですしねぇ。 どうなんでしょうか。 載せていいのかマジ思案中。 う~ん。
 



では、どうぞ。














夕鈴が目を覚ますと心配げな侍女が早速薬湯と口直しの果実水を差し出してきた。
寝台の上で起き上がると眩暈がして、自分が逆上せにより湯疲れに陥ったこと、蛇に咬まれたことを思い出し、腕を見ると真白い包帯が巻かれているのに気付く。 
気分不快は幾分か消えていたが、頭痛が残る頭を押えると侍女が薬湯を差し出して来た。 
すでに侍医の診察もされていたと聞き、夕鈴は肩を竦めて素直に薬湯を口にする。

「幸いにも毒牙で咬まれてはいなかったと伺っております。 湯殿で倒れているところを目にした時は本当に驚きました。 今後、お一人での入浴はお止め下さいませ」
「う・・・・。 それは、本当にご迷惑をお掛けしました」

夕鈴が薬湯を飲み、果実水を受け取りながら項垂れると、侍女は安堵の息を漏らして、知りうる詳細を教えてくれた。 蛇は直ぐに捕まえ、他の誰にも危害を加えることがなかったこと。 
妃殺害未遂の首謀者は不明とのこと。  心配そうな顔で陛下がお見舞いに来たこと。

「陛下はとても御心配されておりました。 次は侍医のご診察の時に来られるとのこと承っております。 診察結果がお知りになりたいのでしょうね」
「そうですか。 でも、陛下は無理をせずに御政務に励まれるようにと伝言をお伝え願えますか? もう私は大丈夫ですから政務中にわざわざ足を運ばずとも結構ですと」
「わかりました。 では、お妃様はもう暫くお休み下さいませ」

侍女が天蓋を被い、夕鈴がゆっくり休めるようにと整えた後、退室して行った。
静かになった寝所だが一晩ぐっすり眠ったこともあり、身体を横たえても眠気は訪れず、夕鈴は何故蛇が湯殿に入ってきたのかを考えることにした。 
陛下唯一の下っ端妃を疎ましく思っている大臣や高官がいるのは知っている。 何度も襲われた過去があるし、中傷文が回ったこともある。 今回もその類だろうと思うと、それ以上は考えることが出来なくなった。 この件に関しては陛下や李順さんや浩大が動くだろうし、ただのバイト妃としてはこれ以上何も口出しすることは出来ない。
 
そう思うと、そこで考えは中断し・・・・・・・・・・。

簪を注視していた陛下を思い出す。 
どうしてもあの視線を頭から取り去ることが出来ず、自分の知らないところで、自分の知らない女性に渡す姿が脳裏に浮かぶ。 本当はもうバイト妃は要らないのに、借金がある私を追い出すことが出来ずに居るのかもしれない。 こんな風に妃が狙われる事件が起きるから、新たな妃を呼ぶことが出来ずにいるのかも知れない。 そう考えると、鼻の奥がつんと熱くなる。 
考えても仕方が無いと思えば思うほど、陛下の視線の先を想像してしまう。

「・・・・・・・っ」

掛け布を頭から覆い、夕鈴は強く目を瞑った。
こういう時は寝てしまうに限る。 眠たくなくても寝なきゃ駄目だ。 目が冴えていようが、心臓がドキドキしていようが、余計なことを考えるくらいなら寝た方がいい。
プロ妃を目指す人間が何を鬱々と考えているんだ。 考えても仕方が無いことを!

それなのに。

「夕鈴、目が覚めたって聞いたけど大丈夫? 気持ち悪さは消えた?」
「っ!」

天蓋越しに心配げな声が聞こえた。 誰何しなくとも妃の部屋に無断で入り、名を口に出来る人物は一人しかいない。 伝言を伝えたばかりなのに、何故この時間に来れたのか恥ずかしくも嬉しくなってしまう。 そして今まで頭に浮かんでいた陛下の視線を思い出し、このまま寝たふりをしようかと逡巡したが、細く息を吐き、夕鈴は掛け布から顔を出した。

「・・・・陛下、ご心配掛けました。 もうすっかり良くなりました」

夕鈴が答えると、天蓋が取り払われ、柔らかな笑みを浮かべた陛下が顔を覗かせた。 夕鈴が身体を起こすと、陛下は直ぐに肩へと上着を掛け、あっという間に膝上に抱え上げた。 
いきなり抱き上げられ、横抱きの状態でぎゅうぎゅう抱き締める陛下に苦しいと文句を言おうと口を開いた時、侍女が恭しく寝所の卓へとお茶と菓子を運んで来た。

「陛下、お妃様。 あと半刻ほどで侍医が参ります」
「わかった、来たら声を掛けるよう伝えよ。 それまでは私が看ているから。」

陛下の優しげな態度に、満面の笑みを浮かべて 『良かったですね』 と目で伝える侍女に、頬を染めて夕鈴は小さく頷くしか出来ない。 
侍女が退室したあと、ようやく夕鈴を開放し茶杯を渡してくれたので素直に受け取ると、冷ややかな笑みを浮かべた陛下に注視された。 その表情に目を瞠り思わず茶杯を強く握り締めると、途端に小犬の表情で問い掛けられた。

「夕鈴、腕の痛みはどう? まだ痛む?」
「い、いえ。 大丈夫です。 そういえば、あの蛇は水田などでよく見かける蛇ですけど、私よく平気でしたね。 確かあれは・・・・ 毒蛇だと思ったのですが」
 
腕の包帯を見て、今更ながら少し蒼褪めてしまう。 下町で医家に運ばれる人を見たことがあるし、大きな蛙が飲み込まれているのを見たこともある。 絶対に近寄るなと、手を出すなと周囲の大人から何度も聞かされている種類の蛇だ。 

「夕鈴が長湯で逆上せて、下手に刺激をせずに動かなかったのが良かったらしいよ。 下手に抵抗して暴れていたら、深く咬まれて危ない状態に陥っていたかもしれない。 今後一人で入浴しては駄目だからね。 何処に行くにも必ず侍女を付き従えること!」
「う・・・・。 でも、今回の首謀者が捕まったら、また一人で入ってもいいいですか?」
「お勧めは出来ないな。 いつ何処で何があるか判らないから。 湯殿で同じようなことが無いとは限らないし、今回のことを教訓にした方がいいだろうね」
 
それもバイトの仕事の内だと言われると、反論は出来なかった。 
その後寝所に姿を見せた侍医が診察中、陛下は無言のまま真剣な顔で様子を見続け、その視線に自分はどれだけ心配を掛けたのだろうと申し訳なさでいっぱいになった。 
ふと侍医を見ると顔色がいやに悪いように見えた。 手も震えていて、変な汗を滲ませている。

「お妃様の容態は問題御座いませんね。 腕の咬み跡が消えましたら、通常の生活にお戻り下さっても差し支え御座いません。 お大事になさって下さい」
「あの・・・ お加減が悪いように見えますが大丈夫ですか? もしや流行の風邪にでも罹ったのでしょうか。 汗もこのように・・・・」

夕鈴が手布で額に浮かんだ汗を拭き取ると、慌てて侍医が立ち上がり、拱手もそこそこに逃げるように寝所から遁走した。 驚いて何事かと、侍医の去って行った姿を見送っていると、陛下が寝台に腰掛け、夕鈴が手に持っていた手布を放り投げた。

「診察も終わったし、夕鈴に聞きたいことと、お願いがあるんだけどいいかな?」
「手布が・・・・。  ?  私に聞きたいことと、お願いですか」
 
床に捨てられた手布に戸惑いながら陛下を見ると、狼陛下が嫣然とした笑みを浮かべている。 
侍医が去り、今は二人きりの寝所で何故狼陛下の演技をしているの? と不思議に思ったが、問い掛けられた内容も気になり先を促した。

「まず聞きたいことは、最近何に悩んでいるのかなと思ってね。 長湯するほど君が何に憂いていたのか、正直に話して欲しい。 我が妃の憂いは私の憂いでもあるからな」
「そっ・・・! 何も悩んではいないです。 長湯でご迷惑をお掛けしたのは本当に悪いと思っておりますが、 な・・・・ 悩みは・・・・ 借金返済のことくらいで、他には何も・・・・」
「夕鈴、正直に言うんだ」

陛下の手が肩に置かれたと思ったら低い声が耳元で響き、全身が粟立つ感触に涙が滲みそうになる。 狼陛下でにじり寄るなんて、この声で咎めるなんて卑怯だと、全身から力が抜けそうになるのを叱咤して、夕鈴は陛下の胸を強く押し出し、睨み付けながら反論した。
 
「しょ・・・ 正直にって、それは陛下に関係の無いことです! 絶対に言いませんからねっ! それよりお願いは何ですか? 妃が狙われたことですか? 囮ですか? 何でもしますから、遠慮なくおっしゃって下さいっ! さあ、どうぞっ!!」
「ゆうりん・・・・」

狼でも駄目かと、今度は小犬目線で涙目の妃を見つめた陛下は、肩を落として呟いた。 態度の急変にぎょっとなった夕鈴は慌てて、勢いを失速させる。

「あ、あの。 お願いって、その・・・・ 襲われた件ですよね。 私に出来ることでしたら本当に何でもしますので、 あの・・・・・ ごめんなさいぃぃっ!」
「ううん、ゆーりんが悩んでいることに力になれないのが辛いんだ。 相談したくなったら何時でも話してね。 僕、協力するから。 それとお願いの件は李順から出た話しなんだけど、皆にも協力してもらって・・・・・」
「・・・・・・・・が、頑張ります!」










「妃の容態が変わったと?」

夜半過ぎ、男の邸の一室で数人が顔を寄せ合いながら、昼間集まった情報を話し合っていた。
目覚めぬままの妃の容態が変わり、侍医が後宮へと急ぎ走っていったのを確認したことで今後の展開を如何するか話し合うことにした。 侍女が医官や薬師を呼びに慌しく足を運ぶのも目にしており、その表情に妃の容態は悪い方への変化とみて、思わずほくそ笑んだ。
 
「畳み掛けるように寵妃には特別な贈り物をさせて頂こうか。 他の大臣にも見舞いと称してそれぞれ贈るよう進言しよう。 今度は何を贈らせて貰えば悦んで頂けようか」
「あれの毒は遅ければ二日後から症状が出る場合もあるが、湯浴み中でしたので巡りが速かったのかもしれません。 結果、血清処置が間に合わなかったのでしょう」
「兎も角、次は失意の王へ献上する妃と平行して、改めて手を回した輩を叙位して頂けるよう推し薦めねばなぁ。 地固めを繰り返し、裏も表も上手く囲って・・・・・」
 
それではと話を終えた数人が立ち上がると、ふと一人が懐から小瓶を取り出した。

「無味無臭の薬だ。 後宮に配した手下に渡すことするが、何か上手い方法はないか。」
「食事などは毒見がいるが、聞いたところによると薬湯は医局から運んでいるそうだ。 そこに上手く仕込めぬか調べてみよう。 上手くいけば止めがさせるやも知れぬ」

頷いた人物は小瓶を懐に戻し 「方法が分かり次第、連絡を」 と邸を辞した。 邸の主は薄く笑みを浮かべて、雲に覆われた闇夜に顔を向け、小声で呪詛を呟いた。

「あやつらばかりが旨い汁を吸うのもあと少しだ」
「妃献上と叙位推挙に関する書簡を御用意致しておきましょう。 何事も早い方が他者を出し抜くには宜しいと思われますし。 陛下側近は裏金には厳しい人物ですが、献金や献上品には特に苦言はないと報告を受けております。 立ち回りには充分気を付けつつ、表面上は現状通りに政務にお励み下さいませ」

その言葉に邸の主人は静かに頷き、乾いた嗤いを漏らした。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:15:15 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-02-08 金 08:32:37 | | [編集]
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2013-02-08 金 13:10:54 | | [編集]
早く次がよみたいですー
いつも、楽しくよんでます。
ワクワクしてます*\(^o^)/*
2013-02-08 金 17:32:17 | URL | ゆうこまま [編集]
Re: 侍医が…
makimacura様、コメありがとう御座います。 侍医が遁走するほど恐ろしかったのでしょう。陛下の視線が・・・・。 まあ、夕鈴の悩みは大したことないでしょう。(爆) 裏で動く方々を動かすのが大変です。 上手く動いてくれるやら。 とほほほ。
2013-02-08 金 19:14:43 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。日々謝っている旦那様、かわぅいいですね。
≧(´▽`)≦ 侍医に対してのコメが多く、そこかー!とこちらこそ笑わせて頂かせて貰ってます。 今度女性侍医が増えると、夕鈴が焼きもち妬くかも。 そして官吏がちょっとした事で医局に通ったり。 ぷぷー。 
2013-02-08 金 19:18:13 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ゆうこまま様、コメありがとう御座います。 いつも楽しくとのこと、感謝感激です。 本当にありがとう御座います。 のんびり更新ですが、またお越し下さいませ。
2013-02-08 金 19:19:16 | URL | あお [編集]
元気だけど元気じゃない…
夕鈴、ぶちまければいいじゃないか!陛下は笑って受け止めてくれるよ、多分?(陛下が何を思って簪見てたかは、分かんないけど)
早くいつもの陛下&夕鈴に戻りますよう!!

だが、今は水面下で善からぬ事を考えてるお馬鹿さん達の捕縛ですね!
李順さんの考えや、如何に!?

次回も楽しみです(^o^)v
2013-02-08 金 20:29:18 | URL | ダブルS [編集]
Re: 元気だけど元気じゃない…
ダブルS様、コメありがとう御座います。 陛下は受け止めてくれるけど、李順さんはドウでしょうか。(怖いっ!!) 妄想が瞑想して、どうも脱線しがちです。 次回は少しいちゃいちゃさせましょう。
2013-02-09 土 00:25:13 | URL | あお [編集]
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