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夢の底から底  3
いつも後半で頭が痛くなりますが、今回は酷かった。(笑うしかない) 妄想と、手の動きがリンクしてくれなくって困ってしまう。


では、どうぞ














夜も随分更けていた為、やはり夕鈴は寝台で丸くなって寝ていた。 寝台近くで揺らめく常夜灯が微かに夕鈴の顔を映す。 まだ熱が時折出ると聞いていたので御簾を上げ寝台に腰掛けて頬に触れると、いつもより確かに熱いと感じ胸が痛む。

妃として、囮として、時折掃除婦としても彼女は誠心誠意頑張っている。
今は彼女が王宮に居ないだけで、僕の気持ちが荒れてしまうくらいだ。
精一杯彼女は彼女の仕事をしているのに。
『狼陛下』 に恐がりながらも、陛下の為と 『妃』 を勤めてくれている。

『罰は私に・・・』

そんな事を君にする訳ないのに・・・。 君が謝る必要もない。
逆に 「大変な目に遭ったから危険手当は倍額で」 と言ってもいいくらいだ。
(言うのはいいけど、李順が許すかどうかは不明だが・・・)
どう言えば君の心に届くだろう。 君ばかり体も心も傷ついて・・・・。

「・・・ん・・」

眉間に皺を寄せて苦しそうな声が聞こえた。 熱の為か掛けていた毛布を肌蹴てしまう。 
毛布を夕鈴に被せようとすると、夕鈴の手が伸びてきた。 
その手に自分の手を重ねると、 「・・・へいか」 と小さい呟きが漏れ聞こえてくる。

それだけで。

その言葉だけで黎翔の心は久し振りに安堵に包まれたような気持ちになり、どんな夢を見ているのか判らないが、そっと握る手に力が入りそうだった。 寝ている夕鈴を起こさないように離れようとしたが、握っていた手に夕鈴の指が絡みついてくる。 意識のない夕鈴の仕草に嬉しくなり、その指に唇を寄せた。 手の傷に触れないように全ての指に唇を寄せていると夕鈴の身体がぴくりと動く。

『起こしてしまったか?』

そっと顔を覗くと夕鈴の寝顔は柔らかに微笑んでいるように見えた。 久し振りに見る夕鈴の笑顔に黎翔の胸は締め付けられる。 この場から離れることが出来ない自分を知り、握り合った手はそのままに夕鈴の横に体を滑らせ、起こさないように彼女の頭の下へそっと腕を入れた。

熱が出ているのか夕鈴の身体は熱いほどで、黎翔の心を切なくも温める。 
朝目覚めた時、彼女はどんな表情を見せてくれるか。 先刻までの暗い想像が霞み、慌てながら騒ぎ立て余計に熱が上がる夕鈴が想像出来る。 小犬陛下で謝れば添い寝したことは許してくれそうだ。
(・・・許してくれると思う自信は一体どこから?)
腕枕をしながら髪を撫で、黎翔自身も久方振りの安息を取る。


※ ※ ※   


明るい陽差しの中、夕鈴は久し振りに良い夢が見られたと目を覚ます。 
ゆっくり身体を起こすが頭痛はなく、昨夜はぐっすりと深く眠れたように思えた。 体調も良くなって来たんだと思い、背伸びをしようとしたら腰を掴まれて布団の中に引き戻されてしまった。

「え? なっ・・?」
「ゆーりん、もう少し布団の中で休んでいよう・・・」

振り向くと近距離に、ここにいるはずのない陛下の顔がある。

「な、な、なん、何で陛下がここに!?」

驚いて離れようとしても、がっちりと腰を掴まれて少しも動けない。 陛下の腕に夕鈴の頭が乗っていると気付き、眠気は完全に覚めた。 ついでに全身に汗が噴き出て、鳥肌が立つ。 

「な、な、な、なんで陛下がいるの? ど、どう、どうして?」
「ん~、仕事終わりがすごっく遅くてね。 だけど夕鈴が気になって、見に来たんだよ。 そしたらゆーりん、僕の袖を握ってね、あんまりにも可愛くて、僕も眠かったから一緒に寝ちゃったんだ~」
「ねちゃっ・・・ったって・・・」

やはり夕鈴は真っ赤な顔で、口をパクパクさせている。 うん、僕の奥さんはすごく可愛い。  恥じらっている顔も、怒っている顔も、もちろん笑顔もすごく可愛くて、離れがたいと思ってしまう。

「えっと、駄目だった?」

作戦通りに思い切り小犬モードで夕鈴を見上げると、眼をぐるぐるさせた後、彼女は諦めたように  「・・・駄目って訳じゃ・・・」 と呟いた。 嬉しくなって夕鈴の腰をぎゅっと掴むと 「やっ・・・」 と体を震わせる。

「あれ? やっぱり駄目? それとも嫌?」

腰をそれでも離さず夕鈴に問い掛けると、夕鈴の身体が大きく震えるのが伝わって来る。

「嫌っていうか、あの、腰は・・・。 それに私・・・」

掛け布で顔を隠しながら掠れた声が聞こえて来た。 優しく抱き締めようと動くと同時に胸を押し出され、あっと言う間に夕鈴は寝台の端に逃げ込む。 そして掛け布を握り締めて夕鈴はボロボロと泣き出した。

「ええ? そんなに嫌だったの?」

驚いて起き上がると、夕鈴は泣きながら頭を横に振った。

「だって! 私また陛下に何かしちゃうかも知れないじゃない! 危ないじゃない! どうして! ・・・どう・・。 私・・・私を信用しないで下さい!」
「信用するよっ!」

陛下の即答の大きな声に、一瞬で涙も止まるほど夕鈴は驚いた。
陛下は寝台の上を滑るように夕鈴に近付き、強く抱き締めてくる。

「私は君を信用している。 君が何を言っても、何をしても私のためにならないことは無いから。 君の言動全てを信用しているんだ。 それを・・・・わかってくれ」

夕鈴は瞳を大きく見開き、じっと陛下の声を聞いた。 今意識が薄れたらどうしようと思うが、目が陛下から離れられない。 あんなことを起こした私を信用しているって・・・。 全てを信用しているって・・・。
私、どうしよう・・・・すごく・・・嬉しい。

「へ・・陛下、あの、あの・・・・うっ」

抱き締めた夕鈴の体は細かく震えていた。 背を擦りながら黎翔は夕鈴の頭に唇を近付ける。 その時、大音量の泣き声が黎翔の胸の中から響き出した。

うぁああああああああん。ああああっ。 え、えぐ、へ、へい、ああああああん
「ゆ、夕鈴? 落ち着いて!」
あああああん、ぐ、げほっ、げほっ!

咽込み出した夕鈴は涙と咳とで凄い顔になっていた。
袖口で顔中を覆いながら、それでも泣き続けてまた咽込む。

ああああん、うあ、ご、ごほっ!ぐ、あああああん

盛大に続く泣き声に、どうしていいのか・・・。 ここまで泣かれたことは無かったなと思い、全く頭が働かない黎翔は夕鈴の背をただ黙って撫で続けるしかない。
早朝から妃を泣かせてしまったことと、侍女がそろそろ妃を起こしにやって来る時間に溜息が出る。 しかし、どれだけ彼女は不安だったのだろう。 僕が信用していると言った台詞にやっと安心したのか、全ての気が抜けたのだろうな。 侍女は待たせたらいい。 夕鈴が泣きたいだけ泣いたその後に、もう一度目を見て伝えよう。

僕が君をどれだけ信頼しているか。
君がどれだけ自分を知らないか、その君にどれだけ僕が救われているか。

背を擦り優しく包み込むように抱いていると、いつの間にか夕鈴は泣き止んでいた。 盛大に泣いたので、起きたばかりだが疲れて寝てしまったのかと顔を覗くと・・・・。
真っ赤な顔でくたんと脱力していた。 額に手を当てるとかなり熱い!

「おはよう御座います、お妃さま。 先程大きな御声が・・・」
「至急、侍医をここへ呼べ!」

侍女の声に陛下はすぐ反応し、指示を出す。 侍女はまさか陛下がいるとは思わず驚くが、妃に何かあったと知り拝礼もせずに急ぎ侍医を呼びに走り出した。 他の侍女らも水桶の用意や冷水の用意などで走り出した。 夕鈴の自室は、あっと言う間に大騒ぎになってしまう。

「ああ、いつものパターンだ・・・」

また面会謝絶になるだろうなと昏い溜息が漏れる。 
『勝手にバイトの部屋に泊まらないで下さい!』 と李順に文句を言われるだろう。 山のような仕事を李順から贈られるのは容易に想像出来る。
それならば。
高熱でぐったりしている夕鈴の首筋に唇を寄せる。

「しばらく逢えないだろうから、お見舞いの印を残しておくね、夕鈴」

早く元気になって、印に気が付いてね。
その時の君の顔が見たい。





FIN


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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:46:34 | トラックバック(0) | コメント(0)
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