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錯視  7
今回、浩大がいい感じ。 李順さんは私の妄想通り。 (。・w・。 ) ププッ




では、どうぞ。










李順は小さく頷きながら、狼陛下唯一の妃への見舞いと称する献上品を前に目録作りに余念が無かった。 妃の容態が悪化したと噂が流れ、滞るのではないかと思われた献上品が何故か増え、またその内容が変化した。
各地から集められた健康食品や、各国でよく効くといわれる毒消し、どんな毒でも中和する薬茶などが贈られて来て、献上品が納められた部屋の中は独特の匂いで包まれ出した。 

「反物や宝飾など換金出来る物は換金しましょう。 怪しい毒消しは薬師に調べさせて必要に応じて保管します。 茶や健康食品も同様です。 宜しいですか、陛下」
「へぇ、面白いな。 あ、これなんか夕鈴が喜びそう。 綺麗だな」
「それは宝物庫行きですね。 どの大臣からでしょうか、素晴らしいものです」

献上品をひとつひとつ吟味し、値段に換算しながら口角を薄く上げている李順を見ると、妃の容態悪化の噂流出に人一倍喜んでいるのではないかと、思わず眇めた視線を送りたくなった。 
目録作りをしている李順の後ろに黒いしっぽがゆらゆら揺れているように見えてくる。 
黒くしなやかな鞭のようなしっぽ。 
先が尖っているそれは、遠い西の果ての国に居ると噂される、人心を惑わす悪の手先・・・・。

「一つくらい、痛い思いをした夕鈴にあげてもいいだろう。 妃への献上品なんだから」
「陛下。 夕鈴殿はバイト妃です。 第一、献上された品のいずれかを身に飾らせていたら、その者は厚遇されていると思い込み、余計な行動に奔る可能性があります。 彼らを抑制するにはいずれの品も使用しないことです。 食品に関しては・・・・ まあ、ある程度は致し方がない点もありますが、それは厨房へと運びます」

この時期には珍しい果物の詰め合わせなどは食べるしかないと、守銭奴も諦めたようだ。
献上品を一通り見回した後で 「直ぐに解るような、おかしな品はないですね」 と細めた視線を陛下に送ると小さな肯きが返ってくる。 
ただ、共に贈られてくる品に、陛下へ薦める妃の釣書き書が混ざっており、すでに現妃の復帰は無いと想定している者がいるということが明らかになった。 無いと思われていた妃献上話しに、李順は深い溜息を吐かざるを得なかった。
 
「・・・・・賢しい奴が跋扈する界だな」
「無いと思っていた妃献上話しが出て来ましたし、夕鈴殿を狙った件はそちらの方面と思って良いでしょうね。 陛下の唯一が無くなれば、次の話はし易いと。 それも多数の大臣から一斉にです。 これでは誰が言い出したのか解り難いですね」
「主たる者が他方へと声を掛けたのだろうな。 それに便乗した輩が多いことに驚いた。 まだ狼陛下の演技が足りぬということか。  ・・・・裏が無いか全て調べよ」
「御意」

大量の献上品が狸共の欲の塊に見え、ただ気分が悪くなるばかり。 妃献上と共に謀が無いかを探り、隠れた思惑を探し出す。 それが唯一の妃であり、バイト娘を守る要でもある。
二人が秘かに話し合っていると、浩大が姿を見せて場にそぐわぬ明るい声で報告を始めた。

「陛下、大臣らの動向調査がまとまりましたー。 いや~、結構面倒だったんだけどさ、やっぱり複数が関わっているよ。 新たな証拠は桐が持参する予定っす。 他の隠密から妃献上と平行して、何か動きが出たと報告が上がってるって?」
「ええ、やはり新任官叙位人事に関することでした。 裏を再度調べましたが前回同様、推挙された人物を従事させるわけにはいきません。 上手くはぐらかし続けますよ。 裏付けを明確に出来る間までで結構です。 重ねて妃献上調べもあり、面倒ですがね」
「あの一派か・・・・。 執拗な推挙だな。 然程力がないというのを理解していないのか、弱い犬ほどよく吠えるという馬鹿らしい図だな。 狼に敵うと思っているのか・・・・?」

場を震わせるような低い声がゆっくりと響き、暗黙の裡に次の行動を如何取るべきか示唆された。 李順が目録を片付けながら、「政務室での噂はどうですか?」 と尋ねる。
浩大がその問い掛けに、肩を竦めて苦笑した。

「いや~、お妃ちゃんが死に掛けているってさ。 それで次の妃候補は名家と噂される大臣の娘さんを娶る予定だーと実しやかに流れているよ。 それに対抗して大貴族の娘さんを献上しようと動き出す大臣がいたり・・・・・・・ まあー、忙しいこと! もしかしたら裏で賭けが始まるかもね~。 それとも始まってるかな~?」
「・・・・・賭けか。 懲りない輩ばかりだな」
「他にも叙位に関連している大臣がいないか、更に詳細に調べましょう」

ふと浩大が気付いたように、陛下に視線を向ける。

「侍女が演技して、侍医が足繁く通って、薬師が薬湯を作って・・・・。 でもお妃ちゃんがいない部屋ってどうよ? そろそろ、戻ってもいいんじゃない?」

李順が眼鏡を持ち上げ目配せすると、それに応えるように息を吐いた陛下が冷たく言い放つ。 

「・・・・薬湯に仕掛けられていた。 薬湯が必要ない妃に演技の延長で用意させていたが、調べると弱いながら毒が仕掛けられていた。 蛇毒に倒れた妃に、弱いながらも毒が入った薬湯など飲ませたらどうなるか解るだろう? だから、まだ駄目だ」
「それを運んだ侍女もすでに捕縛してます」

端的に言った李順の眼鏡が輝いた。












話し合いが終わり、浩大が後宮立入禁止区域に姿を見せると、掃除をしているはずの夕鈴が妃衣装を着てちょこんと座り、老師とお茶を飲んでいた。  

「あれ? 如何したの、お妃ちゃん。 妃衣装で部屋に戻るつもり?」
「今、侍医様に怪我の様子を診て貰っていたの。 もう大丈夫だって包帯も取れたところ。 浩大にも、色々迷惑掛けているみたいね」
「いんや~。 蛇に咬まれて大変だったのはお妃ちゃんじゃん。 もう少ししたら部屋に戻れるから、それまで待っててねー」
「もう少しで戻れるってことは、もう少しで蛇を湯殿に入れた人を、陛下の敵を捕まえることが出来るってこと? 誰なのか解ったってこと?」
「おお、良かったのぅ。 陛下とのいちゃいちゃ演技ももう少しで再開できるのぅ」
「いちゃいちゃは・・・・・ いいですけど」

にっぱりと微笑む浩大の表情に、夕鈴は緊張していた肩の力が緩み小さく息を吐いた。

「ほんとーに咬まれなくて良かったよ。 オレも湯殿にまでは入れないしさ、中に入って警護したら別の意味で殺され・・・・・。 まあ、これからは一人で入らないように!」
「うん。 そうね、湯殿は・・・・ 湯殿までは・・・・ 警護は・・・・・ 」
 
自分が素っ裸で、その横に浩大がいる。 
想像するのもおかしいと首を振るが、浮かんだ考えに蒼褪めていいのか、紅くなっていいのか解らなくなる。 兎に角、それなら侍女さんが傍にいる状態の湯浴みの方が多少慣れている。 場の雰囲気を変えようと咳払いをして、浩大を覗うと眉を上げて薄く嗤っているのが目に映った。

「あっれー、想像しちゃった? 見られて興奮するタイプ?」
「なっ! そうじゃなっ! 湯浴みを手伝われるのが慣れないだけよ。 背中とか足とか腕とか頭とか、手伝って貰わなくたって普通は一人で洗えるでしょう!? 絶対に警護なんか要らないからね! 湯疲れだって・・・・ これからは気を付けるし」
「それでも一人では駄目だって言われたんだろう? 普通の貴族子女は湯浴みの手伝いが当たり前なんだろうし、まあ~陛下の言う通りにしてやれよー。 心配掛けたんだから。 それに大体あんなに茹るほど、お妃ちゃんは何を悩んでいたのさ?」

浩大からの最後の言葉に、うぐっと詰まる。 思い出してしまった陛下の視線の先。
視線を下げて答えることが出来ずに口を結ぶと、頭にぽふんっと浩大の手が被さった。 

「いろいろ悩んでもいいけどさ、陛下が心配するし、オレもじいちゃんも皆が心配するから早く解決しなよな~。 何だっけ? あんずより梅酒はうまい? お、美味そう!」
「・・・・・案ずるより産むが易し・・・ ね。 そうね・・・・」

そうだ、プロ妃を目指す人間が何を考えているんだ。 
うじうじ悩む前に、陛下に簪のことを 『ずばっ!』 と聞いて 『そうかー!』 と納得出来たなら長湯にもならなかったし、蛇に咬まれることも無かったかも知れない。 いや、蛇は別か。 
・・・・・ううん。 さっさと湯浴みを済ませていれば咬まれることは無かった筈っ!

「もう、こうなったらズバッと聞いてみるわ。 浩大、そうね、そうなのよ、そうだった! プロ妃として悩んでないで余計なことは切り捨てて、しっかりと演技するべきなのよ! よしっ! 陛下に会ってアレはどういう事なのか、ズバっと」
「私に何をズバっと尋ねたいと?」


大穴を掘って自分を埋めたいーっ!!! 


背後から聞こえた声に、寸前までの決意は音を立てて崩れ、この場から逃げ出したくなる。
と同時に、浩大が漏らす嗤いに眩暈を起こすほどの怒りを感じた。 
きっと奴は気付いていたに違いないっ!
老師は狼陛下の声にさっさと退室して行き、笑い声だけを残して隠密も姿を消した。 
残ったのは決意表明を声高々に宣言した自分と、後宮立入禁止区域に突然現れた陛下だ。 

「ねえ、今なら二人きりだよ。 夕鈴、アレって何? 教えて?」
「あ、ああ、ああ、あ、ああ、アレ、ア、アレ・・・・ アレって言うのはですね・・・・」

もう動けない。 額にも背にも嫌な汗が浮かび、手は痺れ、唇は戦慄き、膝が震える。
小犬の声にも、和らいだ雰囲気を感じても、何の役にも立ちはしない。 
頭の中には “どうしよう!!” の嵐が吹き荒れ、針で突けば今にも弾けてしまいそうだ。 
近付いてくる足音に息が止まる。 組んだ両手に力が入る。 

「ゆーりんが長湯するほど悩んでいたのを、どうしても知りたい。 教えてくれる? ズバっと聞いてくれたら、僕もちゃんと答えるよ。 ね?」
「あ、あ、ああ、あのっ、陛下は~~~~~ じょ・・・・ 女装のご趣味はありますか?」
「・・・じょ ・・・・え?」





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:07:07 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
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2013-02-10 日 22:43:27 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 肋骨お大事にー!! 早速のコメント嬉しいです。 この回は登場人物多くて、楽しかったです。 楽しんで頂けて、楽しいと言って頂けてすごっく嬉しいです。 ありがとー!
マジにお大事にー!!
2013-02-10 日 23:55:33 | URL | あお [編集]
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2013-02-11 月 08:03:14 | | [編集]
ヒーローの特権(^^)
財政難だからって、妃への献上品を換金する李順さん、さすがです!

そして、毎回タイミングよく現れる陛下!
聞きたいことの切り出しが、まさかの女装趣味からとは…
本当に夕鈴は予想外ですね\(^o^)/
2013-02-11 月 08:55:49 | URL | ダブルS [編集]
Re: タイトルなし
羽梨様、コメありがとう御座います。 サイト早速拝見させて頂きました。リンクこちらこそ、お願い致します。楽しい話が多くて、、じっくり読んでニヤニヤしてます。 たくさんあるので、読むのが楽しみです。どうぞ、よろしくお願い致します。
2013-02-11 月 11:16:39 | URL | あお [編集]
Re: ヒーローの特権(^^)
ダブルS様、コメありがとう御座います。 私の頭の中では、氾家からの反物を夕鈴から奪い去った李順さんしか浮かびません。 守銭奴という言葉が浮上します。 陛下はいつでも夕鈴のお傍に・・・・。 そして李順さんが追い駆ける。 仕事をしろと。
2013-02-11 月 11:19:25 | URL | あお [編集]
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