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錯視  8
錯視の題名を時々忘れそうになるー。(爆) 最後にちょいとだけオリジナル隠密の桐さんを出しています。 ご了承下さいませ。 今回もたくさんのコメありがとう御座います。 毎回癒されながら読ませて頂いております。 今回の一番楽しんで書いたのは 李順さんですね。 誰よりも時間が掛かりました。 でも 彼中心の話が思い浮かばない・・・・・。



では、どうぞ。






 






 
「えっと、僕・・・・ そんな趣味はない・・・ よ」
「では、彫金の趣味はありますか?  それか暗器をご自身で作る趣味とか」
「・・・・・ないよ」
「では、私の借金返済がいつまで続くのか、 実はご負担に思われてますか?」
「そんなこと思ってないよ? それが夕鈴の悩み? 女装とか彫金とか君の借金とかズバッと聞きたいことって、・・・・・それなの!?」

肩を掴まれ、ぐるりと回される。 でも顔を上げて陛下の目を見ることが出来ない。 
それ以上、本当の悩みを打ち明けるには勇気が足りない。 
ズバっと聞こうとしたのは 『簪』 のことなのに、ズバっと聞けずに逆に自分を追い込むばかり。 

「長湯して倒れるほど悩んだことが僕の女装?  え、どういうことなの?」
「そ・・・ それは・・・・。 へ、陛下がアレばかりを見ているから・・・・ もしかしてそういう方向もありなのではないかしらー・・・・と考えて。 考えたかったというか」
「僕の女装を考えたかった? アレばかり見ているって?」

あああ、伝わらない。 伝わる訳が無いっ! 
俯いて目をぎゅっと閉じていると、陛下の手が伸びて頬をなぞり出す。 そのまま顎に伸びた手が強く持ち上げるから、陛下に顰めた顔を見せることになる。
陛下の手を振り払おうにも取り外そうにも力の差は歴然で、もう泣きたくなった。

「ねえ、アレって何? そんな顔して・・・・どうしても僕には言えない? 聞けない?」

泣きそうな顔がどれだけ変顔なんだと、夕鈴は見られないように陛下の胸に飛び込んだ。 
少し驚いたように陛下の身体が揺れたが、直ぐに腕が背に回り気遣うように髪を梳き出した。 
瞑った眦から涙が滲みそうだけど、言うなら早い方がいい。
うだうだ悩んで、同じことの繰り返しだけは避けたい。 いや、避けなきゃいけない。

「へ・・・ 陛下は誰か、簪を差し上げたい女性の方がいらっしゃるのでしょうか」
「? いないよ」

即答だ。 胸が痛いのを堪えて、無理やり唾を飲み込む。

「侍女さんを避けて私の頭を見てましたよね。 簪か飾花を見ていたと思うんですけど、誰かに御贈りなさる参考にされているのではと思い。 でも私如きが意見を言うのは差し控えた方がいいのかなって。 でも、女官さんには聞きにくいのかな~・・・って。 お役に立つには如何し」
「ちょっと待って! 簪って何? 僕、意味が解らないんだけど?」

頭上から聞こえる戸惑いの声。  ああ、陛下はなんて演技が上手いのだろう。 バイトに演技をしてでも隠さなければならない女性なのかしら。 いや一介のバイトに伝えるはずも無い。 ではプロ妃として、借金背負って世話になっている私は陛下のためにどうすればいいんだろう。

「お手伝いしますっ! 李順さんには絶対に喋りません。 どうぞ私を陛下のお役に立たせて下さい。 お役立ちプロ妃として誰にも秘密にしますから、簪だろうが、宝」
「黙って!」

喋っている最中に思い切り抱き締められた。 顔を押し付けられ息が途切れ苦しいと、陛下の身体から離れようとするが、頭ごと背が撓るほど抱きかかえられて抗うことも出来ない。 どうにか顔を横に向けて息を吐くと、頭にことんっと熱が重なる。 

「少し黙って・・・。 今、整理をするから、黙ってて」
「・・・・・・」

「手伝いたい」 と伝えた言葉と裏腹に、離して欲しい、逃げ出したい、聞きたくないと身体が悲鳴を上げる。 震える唇を強く噛んで、私は陛下の腕の中で抗っていた。 
私の協力が必要ないなら、私の話が聞きたくないというなら逃がして欲しい。 私の悩みなんて陛下にとっては余計なことなら、放り出して欲しい。
誰もその心にいないと、バイト妃も存外だと言われたような気になり、即答の 「いないよ」 に嗚咽が漏れそうになる。 そんな立場になりえるはずも無いというのに、甘い演技の言葉にいつの間に絡め取られていたのだろう。 勘違いしてはいけないと、あれほど繰り返し思っていたはずなのに。 立場を理解出来ない小娘など、もう放り出して欲しい。
 
それなのに抱き締める腕は強く、頭に触れる陛下の熱は冷めることなく私を酩酊させる。 ただのバイトとしての立場を逸脱して心配を掛ける私を強く、勘違いするほどに甘く束縛する。

「うん・・・・。 夕鈴の頭を見ていたのを思い出した。 でもそれが夕鈴をここまで悩ませていたなんて思いもしなかった。 ・・・・ごめんね」
 
頭上から掠れた声が耳に届く。 ・・・・・謝られてしまった。 
頭を見ていたと言う陛下の言葉に、やっぱりそうだったんだと膝から力が抜ける。 
 
「でも簪を見ていたんじゃないんだ」
「・・・・・へ?」
  

 






李順が薄い笑みを浮かべながら畳まれた書類を持ち、執務室に入って来た。 
そのまま棚へと近付き、頷く様を眺めていた陛下は嘆息を漏らして声を掛けた。

「裏はついたのか?」
「ええ、証拠は全て揃いました。 妃殺害未遂が二件、湯番殺害が一件、叙位に関して推挙されている者の不正なども見つかりました。 主犯格の大臣は二名、高官二名。 妃重篤の噂と緩めた警戒が功を奏したようで、呆気無いほどですね。 拍子抜けです」
「陛下、これが証拠です。 無味無臭の薬と運んだ侍女の証言。 それと科挙の個室に忘れ置かれた食器です。 裏に不正行為の証拠が書かれております。 ・・・・馬鹿ですね。 証拠を残すとはただの馬鹿、大馬鹿です。 これでは親の苦労も偲ばれます」

桐が新任叙位を退かれた官吏の科挙に関しての不正行為を示す。 
卓に置かれた証拠物件は、一見ただの筆だが細工がされており、中には細紙に古文辞類纂が苦手だったのだろうと思われる、幾つかの節が書かれ残っていた。 
それを自ら用意したのか親心からかは不明だが、発覚すれば死刑に相当する重罪となるのは白陽国においても、他国においても至極当たり前のこと。 
更に不正合格したその者を叙位させろと妃暗殺まで持ち出し、妃献上までを行なうとは王宮においてあっては為らないことであり、重大な反逆罪だ。 李順は加担した輩を含めて、刑罰の早急な措置を考えながら、取り上げる予定となる彼らの財の計算に余念が無い。

「毒蛇に咬まれず、更に囮としても良い動きをしてくれたので、夕鈴殿は後宮に戻っても良いでしょう。 緘口令に関し、侍女たちの口の堅さも立証出来ましたし。 あとは官吏らが行なったという賭けですが、まあ、これは放置してもいいでしょう。 多方面の締め付けが強すぎると、抜け道が更に難解で複雑化されるでしょうからね。」

陛下は、淡々と語る側近が実はそれら大臣から献金までも受け取っているのを知っている。
側近は 「差し出すものは貰います。 どの様な意図があろうとも献金は献金ですからね。」 としれっと、いつもの表情で語っていた。 
金は金だ、毟り取れるものは全て取る!と、見えないはずの尾を振り回している。

「あー・・・・。  夕鈴は部屋に戻るよう伝えよう。 侍女らに褒美を与えるようにして、薬師には献上品の品の検分が終わったか問え。 問題がないようなら献上品の茶は妃の部屋へ運ぶように伝えておけ。  ・・・・・李順、ご苦労」
「一気に片付いて良かったです。 もちろん、妃献上の件も片付けておりますので」
 
あとはサッサと書簡の山を削れと目で訴え、優秀な側近は執務室から退室して行った。 
残された桐が肩を竦めて陛下に視線を移し 「流石ですね。」 と一言漏らすと、眇めた視線が返って来た。 その視線に思わず桐は苦笑する。

「お妃さんには部屋に戻るよう伝えて来ます。 万事片付いたと報告しますが、陛下から何かありましたら彼女に伝えて来ますよ。 ありますか?」
「・・・・・夜に行くと伝えてくれ。 この山がいつ崩れるか解らないがな」
「御意。 側近殿が解放してくれたら部屋に渡ると伝えておきます」

さらりと言葉を残して桐が去って行く。 執務室に一人残された陛下は目の前の書簡の山よりも、今回の事後処理よりも、夕鈴からやっと聞き出せた 『悩み』 の原因を思い出し、眉間に皺を寄せて嘆息した。


いつも同じ髪型でいることが多い夕鈴。 
どうやってあの形にしているのか、ふと不思議に思った。 簡単に落ちない花飾りを一体どう挿しているのか、簪はどうして落ちないのか、ふと不思議に思っただけ。

そもそもの原因は浩大と不定期の酒盛りをしていた時の話だ。
他国で諜報活動をしていた浩大が女装した間諜に遭った話を持ち出し、何処で必要なんだと思うほどの化粧スキルを持つ李順の話しに流れ、女性の髪形の話しになった。
 
その時、初めて会った時から夕鈴はあの髪型で、下町でも同じ髪型で、後宮では侍女にあの髪型に簪などの支度を整えて貰っているんだなと何とはなしに思い描いた。 女人の髪型や衣装に関心が無いが、こと夕鈴に関してはどんな小さなことでも何でも知りたい。
そう考えている時に偶然夕鈴に回廊で会い、細い紐で上手く結び、その上から飾りを被せているのかと疑問はその場で解決する。 知りたいと思ったことが解り、満足した。
それからは兎の耳のような髪型を見て、それが揺れるたびに可愛いなと目が奪われた。

まさか、僕のその視線に夕鈴が湯疲れしてしまうほど悩んでいたなんて思いもせずに。
簪注視疑惑は解決したが、何故そこまで悩むのか尋ねた時の夕鈴の涙目が忘れられない。
一瞬きょとんとし、次第に真っ赤な顔になると全身を震わせながら奇声を発して立ち入り禁止区域の奥へと逃げ出して行った夕鈴。 あまりの素早さに追うことも出来ずに立ち竦んでいたら、鬼の形相の側近が僕を捕まえに来た。 

・・・・他の女性に簪を贈るため夕鈴の簪を参考にする。 僕はそんな男に思われていたのか。 
君だけがいいと、君だけが私の妃だと繰り返し伝えているのに。 
つい手が出そうになるのを必至で堪えているのに、それは全て演技だと思い込んでいる。
今は・・・・。 何も伝えることが出来ないが、君を逃がす気がないのだと知って貰いたい。


どうしたら、あの兎を捕獲出来るのかな。 
全く君は、大臣や高官らを捕縛するより難しい。 


山と積まれた書簡を前に、僕は深い溜息を吐くばかり。 
溜息と共に献上品の中に簪があったことを思い出す。 明るい彼女の髪色に合う簪があったはずだと頷くと、がめつい李順の目を盗み出す算段を静かに考え出した。 
執務室に戻って来た側近は、陛下の熟考内容を未だ知らない。






FIN


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 19:08:08 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-02-11 月 21:42:00 | | [編集]
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2013-02-11 月 21:47:02 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 ストーカーに爆笑です。 家の中で私、思い切り変な人です。(爆) ああ、李順との嫁姑バトルで焼きもち妬く陛下も楽しそうですね。面白がるのは浩大かな? 姑衷心の話が思いつけばいいのですが、どうも上手く妄想出来ない。 他の方のサイトで楽しませて貰うばかりです。 次は甘くなる予定ですので、またお時間ありましたらお越し下さいませ。
2013-02-11 月 23:13:26 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
こうやどうふ様、コメありがとう御座います。 ぶれない李順さん。たまにはいい役を回したいのですが、私の中の彼は守銭奴で、真面目。方淵と同じ位置です。 ただ方淵は若い分、いじりがいがあるというか(笑) オリジナルキャラの桐は、楽しく使わせて頂いてます。 怒る方が今のところいないので、嬉しいです。
2013-02-11 月 23:16:40 | URL | あお [編集]
謎はすべて解けました!
お疲れ様でした\(^o^)/
簪ではなく、髪形…
確かに、女性の髪形は謎ですね~
同じ女性だが、分からない時があります(笑)

隠密桐さん!久々登場ありがとうございます!!
そして、献上品から簪を掠め取れるのか、陛下!
李順さんは、目録一回見たら覚えるという、特殊?能力があれば良いと、勝手な妄想しております(^-^;

楽しいお時間ありがとうございましたm(__)m
長文、失礼いたしました!!

2013-02-11 月 23:39:49 | URL | ダブルS [編集]
Re: 謎はすべて解けました!
ダブルS様、コメありがとう御座います。 正直最後まで、こんなオチでいいのかと怯えていましたが、今のところ怒る方がいなくてほっとしてます。 今週はばれんたいんでーもあるので、あちこちのサイトで甘い話で盛り上がるでしょうね。 遊びに行くのが楽しみです。 わーい! こっちも甘すぎる話をどっこいしょと載せる予定です。 甘すぎてあんだーに行きそうですが。 そんな時間があるのか不明。(汗)
2013-02-12 火 00:23:28 | URL | あお [編集]
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