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仲良きことは  1

「もしもシリーズ」でーす。 二次創作の成婚後の話しになりますので、御了承下さい。 でれでれ狼といちゃいちゃ兎の甘い話です。 バカップル話なので半目でお読み下さい。




では、どうぞ













「まあ、陛下は今日も素敵なお召し物で御座いますわね」
「え? ・・・・・ええ、そうね」

政務室に程近い回廊で陛下が官吏と話している姿が見え、御付の侍女が夕鈴に語り掛けた。 
黒と見まごう濃紺地に銀糸で刺繍が施されているだけの一見簡素にも見える、だけどそれが素晴らしく似合う陛下を見掛けて、侍女らは頬を染めている。 離れて見るぶんには怖さが無いと、侍女や女官は声を潜めて陛下の見目の壮麗さと王としての威厳を褒め称える。

そこへ水月が書簡を持って近寄って来て、何か話を始めた。
出仕している内に多少は狼陛下に慣れたのか、時折ではあるが傍で政務に関しての話をしているのを見掛けるようになった。 やや顔が蒼褪めて見えるのは致し方がないのだろうが、引き篭もりの時と比べるとかなりの進歩だと思う。 水月が来たことにより、侍女らから小さな悲鳴が上がり、見つめる視線が更に輝く。
他にも武官や文官などにも彼女らの目が輝くことがあるが、やはり陛下や水月さんは際立っており、目が奪われるという言葉が良く理解出来る。

その陛下の視線が、回廊越しに此方に向けられる。
片手が挙がり、此方に振られ、私はその手にそっと袖を上げて応えた。 背後の侍女が小さくも嬉しそうな声を上げる。 陛下が妃に向ける仕草が寵愛を示していると、それが后御付の侍女には嬉しいのだと判る。 以前の私なら 『バイトに過剰な演技でっ!』 と頬を染め、落ちつかない気持ちを持て余していただろう。

しかし今はバイト妃ではなく、彼の唯一の后という立場。
素直に嬉しく思い、その手に応えることが嬉しい。 
暫く王宮に詰めている陛下とは三日ほどお会いしていない。 以前からこういうことがあったので、政務ならば仕方が無いと思うのだが、その後に訪れる濃厚な陛下の求めには未だ中々慣れることが出来ない。 思い出すだけで頬だけでなく全身が赤く染まるのが解る。
深く息を吐き、邪な考えを頭から追い払い、ゆっくりと顔を上げて書庫へと向う。 
正妃になっても陛下が許してくれたから、書庫での片付けや後宮立入禁止区域・・・・、今は老師だけが居る後宮の歴史部屋での掃除をさせて貰うことが出来ている。 
御子が出来れば今のような自由はなくなるだろう。 
だから今の内は正妃の勉強を続けながら、掃除や片付けをすることを甘受させて貰っている。
目の端に怜悧な表情を浮かべた愛しい人を捕らえ、染まっているだろう頬を押さえて私は書庫へと向った。



水月が持ってきた書簡に目を通し、指示を出し終えると回廊の向こうに夕鈴が見えた。
侍女を伴い、たぶん書庫へ行くのだろう。 
正妃教育の合間を縫って以前のように片付けや掃除をしたがる君を閉じ込めることが出来ない僕は、渋々了承せざるを得なかった。 一気に正妃教育の勉強を押し込んで知恵熱を出した君は、それでも正妃の務めですからと可哀想なほど頑張って・・・・、痩せてしまった。 
貴族子女としての教育も振舞いも知らない君が必死に勉強するのは僕のためだ。 それがわかるだけに、その姿は僕を苦しめた。  君らしい君が欲しかった。 
だけど僕のために努力する君も君らしく、それだけに切ないと思った。 
君の逃げ場を、君らしく居られる場所を作るのは夫である僕の仕事だと、バイト妃の時同様、掃除や書庫での片づけを許可することにした。
本当は許可などしたくはなかった。
后となり、日に日に綺麗になっていく君を誰の目にも触れさせたくないと、僕だけが知る君でいて欲しいと願うのだが、それは君の足を縛り付けるのと同じことだと気付いた時、僕は自戒した。
愛しいだけに縛り付けることが出来ない。 なのに縛り付けたい。
その欲求が昂ると執拗なほどに君を求めてしまう。 泣き叫んでも、許しを請うても、気を失っても君を離せないと、昂るほどに酷くしてしまう僕を最終的に君は優しく許容してくれる。 
ゆっくりと回廊を歩く君の姿を追い掛けながら、身の裡の熱を閉じ込める。



書庫でいつもの片付けを始めると、よく話す官吏が書簡を山と積んでやってきた。

「あ、御后様。 今日は政務室には行かれないのですか?」
「はい、忙しいと伺っておりますので、此方での整理が終わりましたら後宮に戻る予定です。 ・・・・それにしても沢山の書簡ですね。 全部こちらの書庫ですか?」
「別の書庫へと運ぶ物も御座います。 こちらの書庫分はお願いしても良いでしょうか? 御后様にお願いするのは恐縮ですが・・・・」

いいえと首を振り、早速書簡を仕分けるのを手伝い始めた。 次から次へと焦燥した官吏が書庫にやって来て、夕鈴を見ると慌てて拱手して書簡を探し始める。 夕鈴はふと思い出して懐から小袋を出し、食べて欲しいと甘い菓子を差し出すと 「い、頂けませんっ!」 と官吏は驚愕した面持ちで手を振った。

「甘いものを摂ると頭の働きが良くなるのですって。 それに疲労回復にもいいんです」

だから食べなさいと差し出すと官吏は恐縮しながら受け取り出した。 
「皆様も、どうぞ」 と菓子を差し出し、その場にいる官吏へと手渡して行く。 余程疲れていたのだろう、中には涙を滲ませて何度も頭を下げながら書庫から出て行く官吏もいたほどだ。 

「御后様がお優しいと、政務に励む力が出てきます」
「あら、ありがとう御座います。 でも貴方と最初に話すきっかけとなったあの時は、急に怒鳴り出す下っ端妃に、とても驚いたでしょう?」

バイト時代、甕に書簡を隠そうとしていた官吏を偶然夕鈴が見つけ、正座をさせて長時間にわたり叱責したことを話すと官吏は照れくさそうに頬を掻いた。 夕鈴はその後で李順に更に長時間にわたって叱責を受けたことを官吏は知らない。 当時はただのバイトだったのだから、上司である李順に叱責を受けても仕方が無いと承知している。 
今だからこんな風に笑って話が出来ることに感謝さえしてしまう。

「毎年のことですが、周期決算が済みましたらこの忙しさもすぐに落ち着くと思います。 御寂しいと感じるのも、後少しで御座いますよ。 御后様」
「さみし・・・・ は、はい。 ありがとう御座います・・・・」

官吏の何気ない気遣いの言葉に頬が染まってしまう。 
政務に携わるにはまだまだ勉強不足な私は、陛下の役に立てず片付けくらいしか出来ない。 李順さんのように何か出来たらいいとは思うけど、字も綺麗とは言えないから老師の元で手習いを続ける日々が続けている。
全てに目を通し全てを把握しようとする陛下は、私が想像する以上に忙しい毎日を送っている。 
何一つ、手伝うことの出来ない自分が歯痒いのだが、そのための努力だけで疲れ果ている内は駄目だと判る。 もっと今以上に頑張らないと、あの人の傍に立つことは出来ない。 

執務室で筆を走らせる陛下や、他国との折衝をしている陛下、大臣らと話し合いをする陛下。
冷酷な表情で激を飛ばす怒声や、冷ややかな笑みで指示を繰り出す姿。 
臣下に冷酷非情な陛下を演じ続けながら、孤高の王として立ち、政務をこなす陛下。
 
その陛下の役に立ちたいと考えていると、久し振りに見掛けた先ほどの陛下の姿を思い出し、やっぱり格好良いなと夕鈴は頬をぽっと染めた。
夫の姿に頬を染める妻ってどうなんだろう。 
未だに傍に腰掛けられるだけで鼓動は跳ねるし、視線が彷徨っちゃうし、手にはいっぱい汗が滲み出るし、耳元で囁かれたり、頬を撫でられるだけでわたわたしてしまう。 
私の何処がいいのか未だに悩むけど、私に癒されると、私だけを求めてくれるのは嬉しい。
あの人の胸に顔を埋めていいのは自分だけっていうのは嬉し・・・・・。

そこまで考えて夕鈴は頭から湯気が出るほど頬を真っ赤に染めた。

何でっ・・・! 何でこんな昼間に陛下の胸を思い出す・・・って、余計に恥ずかしくなるから考えちゃ駄目っ! 駄目駄目駄目っ! 思い出さないっ、仕事中でしょう、今はっ!
背後には官吏も居るというのに、何でそんなことを思い出すのっ! 
間違えて書簡を入れたら後で大変な迷惑になるというのにっ! 
ここは落ち着いて・・・・・・。 し、深呼吸よ、深呼吸っ!! 


「・・・・そのような異常行動をされるなら、後宮に戻り二度と出てこないようにお願い申し上げよう。 もう何度貴女に伝えたら理解してくれるのか、頭が痛い」
「ほ、方淵殿! あ・・・ご、ごめんなさい。 今のは・・・今のは私が悪いです・・・」
「・・・・・えっ?」

いつの間に背後に居たのだろう。 皆が忙しく書簡を片付けてるその横で、両手を広げて深呼吸し始めた自分に、いつもの辛辣な柳方淵の言葉。 でも何を考えていたかを思い出すと恥ずかしくて素直に謝るしか出来ない。 自分の考えが知れたらと思うだけで余計に顔が紅く染まるのを止めることが出来ないくらいだった。
 
あまりの恥ずかしさに頭皮から首までを深紅に染め上げた夕鈴が涙目で深々と頭を下げると、眉間に深く皺を寄せた方淵が驚いて一歩下った。 

「具合が・・・ もしも具合が悪いなら、直ぐにでも戻るべきと思うのだが」
「い、いいえ、大丈夫です。 ちゃんと仕事をしますので、お気遣いなくっ!」

頬を押えると熱いのがわかる。 
自分が何を考えていたのかなんて周囲の誰にも解らないだろうに、恥ずかしくて居た堪れない。 方淵の視線を背に書簡片付けをするのが少し辛いほどだった。
一生懸命書簡を書庫へ片付けていると、やはり忙しい時期なのだろう。 次から次へと書簡が届けられ、片付けと別書庫への書簡分けを行なっている内にようやく気持ちが落ち着いてきた。 
忙しそうに官吏が出入りし、持って来た菓子が無くなるまで渡し、ひと段落して夕鈴は書庫から出ることにした。 丁度書簡を持った水月が顔を出し、穏やかに拱手し挨拶をする。

「今日もお手伝い頂き嬉しく思います。 御后様もお疲れでしょう」
「いえ、これくらいしか出来ませんので・・・・。 あの、水月さん、先ほど陛下とお話をされていましたね。 やっぱり忙しいのは未だ続きそうですか?」
「そうですね。 それでも数日で落ち着くと思いますが。 ・・・・御寂しいですか?」
「えっ!? あ、いえ、あ、 ・・・・・はぃ・・・・」

直球に問い掛けられると激しく動揺してしまう。 寂しい・・・・。 そうなんだと理解する。
政務だから仕方が無いと判っているはずなのに、心は正直に寂しいと訴えてくる。 
后がそんな愚痴みたいなことを仕事中の臣下に言っていいのだろうか。 本来なら後宮で大人しく待つべき身だというのに、陛下恋しさに此処まで足を運び、臣下に心配されるなんてっ!
これで后じゃ、李順さんがいつまでも嘆息するのは仕方ないだろう。

「あ、あの・・・ 私、後宮に下がります。 水月さんも倒れないように頑張って下さい」

恥ずかしくてどうしようもない。 忙しい時こそ、后は大人しく後宮に籠もるべきだ。 
方淵が言うことは間違いじゃない。 あの変な視線もそれを言いたかったのだろう。 
水月に頭を下げて、急いで後宮に戻ることにした。 明日は老師のところで掃除をしよう。 忙しい陛下の邪魔にならないよう、后教育を済ませたら、大人しく掃除に精を出そうっ!






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 02:01:01 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
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2013-02-12 火 10:32:09 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。 インフルまだまだですよね。 頑張って治して下さい。次は花粉がやって来ます。そうなんです。次はそれがやって来る~! 甘い話ですが、こんなんで癒しになる? 無理はせずにゆっくりお休みしてくださいね。
2013-02-12 火 17:33:56 | URL | あお [編集]
方淵が優しい(笑)
新しいお話が読めるのは嬉しいのですが、最近気温が安定しないので、体にお気をつけてお過ごしください。

この後の甘い陛下&夕鈴の展開が楽しみです(///ω///)

そして、気付いた!!夕鈴は水月さんには素直だ!
2013-02-12 火 20:43:24 | URL | ダブルS [編集]
Re: 方淵が優しい(笑)
ダブルS様、コメありがとう御座います。 方淵が優しい。水月に優しい。 だから陛下が焼きもちを妬くんです。 ほほほほほ。 弄るのが楽しくって仕方がありません。 水月さんは基本突込みが違う方向だからかも知れません。 
2013-02-12 火 21:16:53 | URL | あお [編集]
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