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ユーリ  2

「パラレル」カテゴリの 「泡沫人の羽衣」の黎翔Xユーリです。 
オリジナルキャラ・ユーリ目線多し。  ※「泡沫人の羽衣」後半に出てくるキャラです。
宜しければお付き合い下さい。 陛下とは全く違う、こちらもオリキャラ黎翔さんです。




では、どうぞ。







 






「はい、ユーリ」

それなのに、差し出した手に渡されたのはホットチョコレートのカップ。 
眉間に皺を寄せて黎翔を見ると 「熱いから気をつけてね。」 と微笑まれた。 
零さないようにカップをテーブルに置き、笑顔を貼り付けたまま黎翔に文句を言おうとした瞬間、私のお腹は非情にも苦情申し立てを始めた。 
空腹の上、目の前には美味しそうな食事、更に先程持たされたホットチョコレートの甘い香りに警報が鳴り響いた。 慌ててお腹を押さえつけるも、隣に座った人物には丸聞こえだ。 
思わず涙目になると、サンドイッチが口元に寄せられる。
黎翔を見るとすごく嬉しそうな笑顔を浮かべているから、半泣きの顔で思い切り噛み付いた。
笑い声が聞こえたが、それを無視してサンドイッチを頬張り、そしてその美味しさに目を瞠る。

「・・・んんっ! おいひぃっ! これ、おいひぃでふ」
「私も未だだから一緒に食べようと思って。 騙したのは悪かったけど、レストランよりマシだろう? それに暫く会えなかったからユーリの顔が見たくて。 直接お土産も渡したかったから、君の上司から電話を貰えて良かったよ。 はい」

黎翔の嬉しそうな声色に、膝に置かれたお土産に、口いっぱいに入った食べ物に、何も言えなくなる。 それに私も会いたかった。 休みが合わなくて約一週間、黎翔のイギリス出張で約二週間、殺人的な忙しさで二週間近く、色々合わせると一月以上、顔を見ることはなかった。 
それでも毎日電話やメールがあるから、寂しいと文句は言えない。
大企業の会長である黎翔がこの界隈では誰よりも忙しいというのは承知しているから、文句も甘えも言ってはいけない。 側近である李順さんにも言われたし、その前に関連会社に勤めているから状況は似たようなものだ。 毎日掛かってくる電話でさえ時には二分で終わる。

「・・・・会長も見てないで召し上がって下さい。 お土産ありがとう! 開けていい?」

ユーリの問い掛けに嬉しそうな顔を見せ、手を差し出した黎翔。 
その手に誘われ、袋を開けると細長い箱が出て来た。 丁寧に包まれた包装を取ると、その箱には誰もが知るブランドの名前が。 そのブランド名を目にして箱に手を掛けたまま身体が固まる。 ユーリが眩暈を感じて目を瞑ると、隣の人物は箱に掛けた手に手を重ねて来た。

「ユーリが困るような物じゃないけど、普段から身につけていて欲しいなと思って選んだ品だ。 気に入らないなら取り替えるから、まず見て欲しいな」
「・・・・・・・・・・はい」

箱を開ける前から印字された文字に寒気がする。 そして想像通り・・・・。 
まあ、なんて高そうなブレスレットでしょう。 ここに付いているのはダイヤモンドかしら。 
出張土産でカルティエのダイヤ付きブレスレットって驚いちゃうわ~。
・・・・・たった二週間の出張でこのお土産って、固定観念の違いに眩暈がしてしまう。 
 
「あ・・・ りがとう御座います。 この素晴らしいブレスレットを普段から身につけていて欲しいと・・・? 会長・・・・・ 手が震えて仕事になりそうもありませんわ」
「そう? ネックレスはお母様からの形見をしているでしょう? ピアスやイヤリングは嫌いって言っていたし、でもユーリに何かお土産をと思って。 気に入らない?」

声色が少し変わり、振り向くと幻の耳を下げた黎翔が私をじっと見つめていた。 
何故か 『きゅーん』 と幻聴まで聞こえてくる。 でも私だって困った顔になってしまうのは仕方が無い。 そして黙っているのも私の性分では無理だ。
 
「会長、お気持ちはすごく嬉しいです。 こんなに綺麗なお土産を貰えてすごく嬉しい。 でもね・・・・・・ 出張土産にしては・・・・ とても高すぎる御品だと思うのよ」
「そんな事を言ったら、ユーリのネックレスだって高いよ?」
「う・・・・っ!」

浩大さんから聞いてしまったネックレスの由来。 驚いたけど、ピンクダイヤの鑑定書と発信機を装着した痕を見せられ、納得せざるを得なかった。 自分のルーツを知り、出会うべくして出会ったということと、あれだけ気を病んでいた見えない相手が自分の祖先であることに、私は脱力して熱まで出したのだ。

「大丈夫、気にしないで。 そのネックレスよりはずっとお手頃だから」
「う・・・・っ!」

でも高い、絶対高いっ! 値段を知りたいけど、ここで聞くのは間違っている。 
・・・・後でこっそり調べよう。 そう思いながら箱から出して左手首に巻きつけようとすると、黎翔が手を伸ばし長さを調節して着けてくれた。 少し動かすだけで七つのダイヤが輝き、繊細な煌めきを見せる。 その輝きに思わず溜息を吐くと、頬に口付けされた。

「着けてくれてありがとう。 あと、早く食べなきゃ時間が無くなるよ」
「そう・・・ そうね。 食べて仕事に戻らなきゃっ! 会長はお時間大丈夫なの? ウォルに電話したくらいだから本当はすごく忙しいのでしょう?」

頬を押さえて真っ赤な顔を向けると、満面の笑みを浮かべた黎翔が両手を伸ばして私の頬を包み込み、顔中にキスを降らせながら、何故か私をソファに押し倒した。

「時間は上手く作るものだよ。 君が丁度来ると判り上手く調整してある。 それより聞きたいことがいっぱいあるんだが、正直に答えて欲しい」

食べるのは如何したんだと目を剥くと、近距離で妖艶な笑みが零れた。 
更に耳元に寄せられた唇からは低い声。 その声がいつもと違って甘くは無いのに気付いた。 
久し振りだからそう感じるのかと耳朶に感じる吐息に肩を竦ませると、今度ははっきりと冷気が含まれた声が囁かれる。

「君の会社に居る几鍔という男と、二人きりでデートをしたという報告が来ている。 他にもここからの帰りに見知らぬ男に襲われたとも。 古武術指導の帰りには経倬という男に絡まれたと。 あと、青慎って? 最近、この若い男とよく帰っていると聞くが」
「なっ! 何よ、それ! どういうこと?」

いきなりの言葉にユーリが驚き、黎翔の肩を強く叩いて睨み付けた。 すんなりとユーリから離れた黎翔は微笑んでいるが・・・・ 目は笑っていない。 
ユーリはその表情に瞬時唖然としたが、直ぐに眇める視線を向けて怒りを露わにした。

「調べていたって言うの? ・・・・ここ一ヶ月の間、私の周囲を?」
「ユーリの警護をしている者から報告が上がったんだ。 で、デートって何? 今言った、数人の男性についても説明をして欲しいな、ユーリ」

その言葉に黎翔を睨み付けながら勢いよく立ち上がった。 直ぐに腕を掴まれたが、手刀で打ち払い、踵を返して書類ケースを持つ。 そのまま扉まで行くが、寸前で黎翔が立ち塞がった。

「調べていたなら内容もご存知でしょう!? いちいち私が弁明することではないわ!」
「調べていたんじゃない、警護の者からの報告だ。 私と付き合うと余計なことに巻き込まれることがある。 中には危険な輩もいるから、君の安全のためにと」
「その警護からの報告で私を疑っていると言うことでしょう? 一体どんな説明をお望みなのかしら? ・・・・・・今、私は仕事中なんです。 会長がお聞きになりたいことはプライベートなことですので、それに関しては改めて時間を割いて頂けますでしょうか!」

ユーリが怒りに声を震わせているのを感じ、黎翔は眉間に皺を寄せた。 
そして視線を彷徨わせ溜息を吐き、ユーリに謝罪の言葉を呟いた。

「・・・・悪かった。 今のは私が悪い。 度が過ぎた焼きもちだ。 許して欲しい。 言い方も聞き方も間違っていた。 きちんと話すから座って貰えないだろうか」
 
諸手を挙げて切なげな表情を見せる黎翔を見上げ、ユーリは肩から力を抜いた。 
彼から視線を外し、言われた通りにソファに移動し浅く腰掛ける。 
その隣に少し間を空けて黎翔が腰掛け、視線を落としてユーリに語り出した。
 
「人事異動が終わった頃から、毎年のことだが会社や私個人に脅迫文やメールが届く。 それに関連して私を含めた役員周囲の警護が強化される。 万が一、君に危険が及ぶ可能性を考えると警護を配した方がいいだろうと思ったんだ。 君に連絡しなかったのは悪かった」
「・・・・うん」
「会えない間、メールや電話で話していても君は襲われたことは言ってくれなかった。 二週間の出張中のことだ。 心配を掛けないようにしようとしたか、忘れていたかのどちらかだろう? 報告を受けた時は・・・・・ 心臓が止まるかと思った」

そっと伸びて来た手に肩を掴まれ、ユーリは唇を噛んだ。 確かに毎日の電話やメールで日々の報告や他愛無い話をしていたが、襲われたことに関してはすっかり忘れていた。 正直、初めてではないし、その後の几鍔との約束で頭から消えていたからだ。

「えっと・・・・ それに関してはごめんなさい。 襲われたって言ってもすぐ対処出来たし、逆に遣り過ぎた感があって忘れたかったの。 それで落ち込んだ私を元気つけようと会社の先輩が彼のセスナに乗せてくれることになって。 本当にすっかり忘れていた・・・・」
「先輩って、几鍔っていう人? 何故彼と二人きりでセスナに?」

問い詰める声が少し荒くなったように感じ、片眉を持ち上げてユーリがじっと見つめると、視線を逸らすことなく黎翔は手を差し出した。 先を促しているのだろう。

「・・・・・彼はバイト時代から何かと世話になっている人で、セスナにだって私が落ち込んでいるから乗せてくれただけ。 以前にも乗ったことがあるし、私以外にも乗せて貰った人がいるわ。 几鍔は親切で誘ってくれただけ。 それに関して私を疑わないで」
「疑ってはいない。 ただの焼きもちだ。 だから教えて、経倬と青慎って誰?」

大会社の会長が小娘の周囲に焼きもちだ? 名前まですんなり出るとは、何処まで調べたんだと呆れて力が抜けてしまう。 妬かれて嬉しい気持ちもあるが、そこまでするなら自分だって如何にかしなさいよと声を大にして言いたい。 
幾ら本人が否定しても議員の娘との縁談や、女社長との婚約話が取り沙汰されているし、綺麗な女優との熱愛報道も報道されている。 そんな有名人が一庶民で、関連会社の下っ端社員と付き合っているなんて、誰も思いもしないでしょうね。 

それに彼がいつまで私に熱を上げているのか、正直怖い。
自分の何処がいいのか未だに判らない。 何が楽しくて忙しい中電話やメール、ましてやこんな風に仕事を割いてまで会おうとするのか。 考え方も育ちも住む環境もまるで違う。 
私の怖いと思うこの気持ちは、彼にはきっと想像も出来ないだろう。 
砂上に立っているようで、周囲から小さな波が絶えず迫り、その内に崩れて流されてしまうのではないかと嫌な考えに何度襲われたことか。 素直に彼の胸に飛び込めない。 
もどかしくて苦しくて、でも離れたくない。 まるで生殺与奪権を握られているような気がすると言ったら、黎翔はどんな顔をするかしら。

「・・・・経倬は道場の跡取り息子だけど、ただの女好きなだけ。 相手にもしてないから気にしないで。 上手くかわしているし、すごく弱いから。 青慎は大学時代の後輩。 今、うちの会社にバイトに来ていて、私が担当して教えているの。 家が近いから彼の護衛代わりに一緒に帰ることが多いのよ。  ・・・・会長、手は痛くない?」

私の説明に納得したのか小さく頷いて、黎翔は最後の問い掛けに手首を見下ろした。 
少し赤くなったかも知れない。 手を伸ばして腫れが無いことを確認する。 
会長の身になんてことをしたんだろう。 古武術をこんな事のために習った訳じゃない。

「ごめんなさい。 腫れてはいないけど冷やした方がいいかも知れない」

自己嫌悪に激しく落ち込みそう。 出来るだけ考えないようにしている悪い考えにまた深く囚われてしまう。 軽く首を振り、目線をテーブルへと移す。

「お腹が空いたから頂きます。 ここでちゃんと食べておかないと後で倒れるかも」
「ユーリ、ごめん。 君が怒るのも呆れるのも判る。 本当に馬鹿なことをしたと思う。 時間が取れず、傍に居ることも出来ない癖に言うことじゃないけど心配だったんだ。 痛みは無いから大丈夫。 ・・・・・だからそんな顔しないで欲しい」

そんな風に言わないで。 すごく愛されている気になるじゃない。 
貴方から焼きもちを妬かれて、束縛されて、甘えて欲しいと言われると、全身から力が抜けてぐずぐずに蕩けてしまいそう。 甘く囁かれるたび、全身で縋り付きそうになる自分が怖くなる。 そんな弱い自分に気付かれたくない。

手を伸ばして黎翔の脇から背へとしがみ付き、胸に顔を埋める。 
今の顔は見せられない。 きっと酷く醜い表情をしている。 
今の自分は仕事にも恋愛にも自信が持てず、黎翔の隣で背伸びをしている子供だ。 早く自分の足で自信を持って立ち、いつか離れる時が来ても 『いい恋愛をした』 と笑っていえる自分になりたい。 

「・・・・会長は私の何処がいいんでしょうかね・・・・。 本当に判らない」
「君に翻弄される自分が好きなんだ。 元気な兎が思うようにならないと追い駆けるのが楽しい変な奴なんだよ。 ユーリは飾らないし、直ぐ怒るし、落ち込むし、怖いし。 そこが丸ごと愛しいんだ。 ・・・・・ああ、離れられると思わないでね。 君に関しては狭量だし、融通が効かないんだ。 そこは諦めて欲しいな。」

擽るような甘い言葉が上手いなと苦笑してしまう。 恋愛上手な大人の男性。 
深い溜息を吐いて私は彼の胸から離れた。 笑顔を浮かべてテーブルに手を伸ばし、遠慮なく私は大きな口を開けてサンドイッチを頬張る。 怖くても悩んでも、結局は彼のことが好きなんだから仕方ない。 一緒に居られるのが嬉しくて、楽しいのだから仕方ない。  

「んんっ。 あと、お土産は20$以内でお願いします。 お返しに困りますからね」
「えー、それは・・・・ 探すのが逆に難しいかも。 そこまで時間ないし」
「時間がない時はお土産なしです。 それに仕事で行かれているんですから基本お土産はいりませんよ。 次は受け取りませんからね。 お願いします」
「ユーリは厳しい。 そこが好きだけど、ちょっと残念。 じゃあ、今度二人の休みが重なる時に受け取って貰えるようなものを用意するよ。 楽しみにしててね」


次に会えるのは何時になるのかしらと、私は笑って頷いた。 





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 10:02:02 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
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2013-02-15 金 20:15:34 | | [編集]
Re: パラレルだろうと!!
ダブルS様、コメありがとう御座います。問い合わせを頂き、つい妄想は走ってしまったのですが、白陽国に関係ない話なので、ほんとーにアップするのを悩みました・・・・が、煩悩が勝ちましたー。 そして自己満足。 楽しかったです。 ダブルS様にそう言って頂けて、すごく嬉しいです。こちらこそ、ありがとう御座います。
2013-02-15 金 20:56:06 | URL | あお [編集]
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