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看・癇・喚  2

陛下の「肉饅頭」への執着心はどうなるのか! 怒り出した兎に敵わない狼はこのあと如何するのか! との問い合わせに(コメントとも言う:笑) ニヤリとしております。



では、どうぞ。













僕の私室に通された夕鈴は、自ら身体を寄せて耳打ちしたいと顔を近づけた。 
突然夕鈴が擦り寄って来て、小犬は胸を打たれたかのように鼓動を跳ねさせて頬を染め、いそいそと身を屈める。 愛しい嫁へと首を傾け耳を差し出し、何を囁かれるのかなと、僕にも肉饅頭を差し入れてくれると言うのかなとドキドキした。
 _____しかし。

「浩大の様子はどうでした? 酷くなっていませんでしたか?」

その言葉に思わず僕の身体が固まる。 
呆けた僕に繰り返し夕鈴が 「陛下?」 と問い掛けるから、仕方なく小さく頷く。

「・・・・・昨夜姿を見せたが赤い顔で咳き込んでいた。 やはり風邪だろう。 休むようには伝えておいたが、その後は姿を見てないので判らない」
「そう・・・・ ですか。 薬湯を飲ませたのに、結局外にいたんじゃ治らないわよね」

溜息を吐く夕鈴に 「薬湯を飲むと、眠くなるから飲まなかったそうだよ」 と告げると、がっかりと肩を落とした。 仕事優先になるのは隠密の世界では至極当たり前のことだが、ひどく心配している夕鈴には通用しない。 

「それじゃ、治らないです。 酷くなるばかりですよ・・・・」

悲しげな顔で奴の心配をする夕鈴に、正直面白くないと悋気を感じたが、確かに浩大の風邪の症状は芳しくなかった。 休むようには伝えたが、浩大は侍医に診てもらうことはしないだろうと思える。 自分で調合した丸薬を飲みながら、時間を掛けて治すことになるだろう。
しかし、いつまでも夕鈴が浩大の心配ばかりするのが厭だと、陛下は考えた。

「奴は侍医に診せるつもりはないだろうから、早急に捕獲し、縛り付けてでも診察を受けさせる! 他の隠密を至急揃わせ、足りないようなら禁軍を動かしてでも・・・・」
「へ、陛下!? 捕獲って、病人を如何なさるおつもりですか? それでは余計に悪化しちゃいますよ!  んん・・・・・んっ! あの、私に策があるのですが、実行しても宜しいでしょうか?」

首を傾げ、にっこりと可愛らしく微笑む夕鈴に、陛下はそれが何かも知らずに直ぐ頷いた。










「浩大ー! こぉーだぁーいぃー。 おいでー。 熱々の饅頭と美味しい湯だよー」
 
後宮立入禁止区域で夕鈴は昨日と同じように窓から身を乗り出して、外にいるだろう浩大に声を掛け続けた。 老師が横目で焜炉上の蒸篭を何度も盗み見るが、もちろん手を出したら大変なことになるのは判っているので、見るだけだ。 

「浩大ー! おいでー。 美味しい庶民味の熱々饅頭だよー!」
「娘・・・、それでは犬猫を呼ぶようじゃぞ。 もっと違う呼び方はないのか?」
「だって、来てくれるか判らないじゃない。 こうして呼んでいたら恥ずかしくて飛んで来るんじゃないかと思って。 何事も試してみなきゃ駄目ですよ。 浩大ー!!」

夕鈴が窓から大声にならないよう、気を付けながら呼び続けると、背後から掠れた声で返事が聞こえた。 振り向くと隠密姿で背後の窓枠にしがみ付く浩大がいる。

「浩大っ! またそんな姿で・・・。 あのね、熱々の饅頭をまた作ったから食べて欲しい。 それからちゃんと眠って。 無理に侍医に診て貰わなくてもいいから」
「げほ・・・・。 悪い、ね。 お妃ちゃ・・・・ けほ・・・」
「ほら、いいから。 野菜いっぱいの湯も食べて。 私はこのままここで掃除するから、浩大は安心してしっかり休むのよ? ・・・・ね?」
「うん・・・・。 饅頭熱々・・・ 嬉し・・・ げほっ」

老師にも湯をよそい、三人で食べ始めることにした。 熱々の饅頭を三つも食べた浩大はお茶を飲みながら、真っ赤な顔で 「ちょい味が判んないけど、旨かったよ」 と苦しそうな笑顔を見せてくれた。 咽喉を押さえているから、痛みがあるのだろうと判る。

「熱で味覚がおかしくなっているからよ。 陛下も心配していたんだから」
「はは・・・ げほ。 へーかの心配は他のことだろうと思うけど、確かにこの状況はヤバイかも知んないな。 それにしても風邪なんて久し振りでオレも驚いた」
 
夕鈴が無言で薬湯を出すと、渋々口に含んだ。 夕鈴がじっと見つめる中、浩大は視線を逸らして暫く黙り込むが、やがて仕方が無いとばかりに口の中のものを飲み込んだ。

「・・・・昨日は折角の薬湯を飲まなかったそうね。 しっかり見ていたつもりだったけど勿体無いでしょう! 風邪を早く治そうと作って貰ったのに、本当に勿体無い!」
「勿体無いと繰り返し・・・・。 怒るところはそこではないじゃろう」

老師の突込みにも笑う元気がない浩大は、突然の寒気に身を震わせ、肩を落とした。

「あー、本当に休むしかないか・・・・」
「ええ。 ここでゆっくり看病されなさい」

今何を言われたんだと顔を向けると、浩大の額を夕鈴の手が押さえつける。
昨日と変わらない、もしかするとそれ以上の高熱を感じた夕鈴は、直ぐに浩大を引き摺って隣部屋に用意しておいた寝台へと横に転がした。 転がされた浩大は思うように身体が動かないことに漸く気付き、目を見開いて夕鈴を見上げる。

「悪いと思うけど今回は言うことを聞いて貰うからね! ちゃんと治るまで看病するから。 浩大の自己管理なんて 私、信用出来ないからね。 大丈夫、陛下にはちゃんと許可を貰っているから! あんたは治るまで大人しく寝ていること!!」
「オレ・・・・ 死ぬの決定?」
「死ぬって・・・ 違うでしょ? 風邪くらい大丈夫だって思いなさいよ。 気力が大事よ! 完治するまでちゃんと看るから、弟や父さんで慣れているから安心してよ」
「ああ・・・・ 殺されるのか・・・・」

何やら不吉なことを言われ、夕鈴はカチンと来たが、ともあれ仕込んでおいた薬が効いてきたようで、浩大は目を閉じると静かな寝息を立てて眠り始めた。 もう一度額を触るがやはり熱い。 水に浸した手布を絞り額に乗せると、眉間の皺が深まり小さく息を吐くのが判り、夕鈴は掛け布をもう一枚余分に掛けて、静かに部屋を出た。

「老師、今の内に夕餉の粥と薬湯を用意して来ます。 浩大の様子を看ていて貰えます?」
「おお、いいぞ。 奴もあそこまで弱っているところを見るのは初めてじゃ。 しっかり休ませることにしよう。 ・・・・・・陛下が妬くと被害は拡大しそうじゃが・・・・」

何か言ったかと問うと、老師は首を激しく振り、早く作って来いと夕鈴を追い出した。 
熱々の饅頭に風邪薬を混ぜ、万が一薬湯を飲まないことを想定していたが、上手くいったと夕鈴は安堵した。 両方飲むことも考え、侍医に一回分を二つに分けてもらったが、如何にか薬は飲んで貰えたようだ。 
これから汗を掻くだろうから、着替えと湯の用意と湯冷ましの用意もしなきゃならない。
忙しくなるわと夕鈴は早足で厨房へと急いだ。

二刻も過ぎると、夕鈴が思っていたとおり浩大は汗を掻き出し、丁寧に何度も拭くこととなる。 深く眠っている浩大は時折何かを呟くが、意味のないことだろうと夕鈴は聞き流していた。 
ただ老師がその意味を受け取り、夕鈴がいない隙に 「狼に殺される・・・・」 と呟く浩大の耳元で 「眼鏡小僧に止めさせるから、安心して養生せい・・・」 と繰り返す。

・・・・・・・浩大の夢の中では、地獄の獄卒かと見紛う陛下が冷ややかな笑みを浮かべて、小刀を万と投げ付けて来ていた。


夕鈴が思ったとおり、風邪を拗らせたのだろう浩大の熱は容易には下がらず、咽喉の痛みや腫れもあり、夕餉にと作った粥を流し込むように食べると薬湯を飲み、朦朧としたまま再び褥に倒れ込むように眠りに就く。 その様子を見て夜間が心配になった夕鈴は、侍女を伴い陛下の部屋に渡ると、無理やり陛下の許可を取って立ち入り禁止区域の浩大の看病を夜通し行なうことにした。 陛下の部屋に泊まることにして、翌朝侍女の迎えが来るまでの間だけと。
 


その晩は薬が効いたのか深く眠ったままの浩大だったが、朝方ふと目を覚まし、思わず叫び声を上げそうになるほど驚いた。 
浩大が眠る寝台に頭を乗せた夕鈴が寝息を立てていたのだから。

「・・・・・っ!! お妃ちゃ・・・・・」
「声を立てるな、浩大。 ・・・お前の熱が心配だからと、懇願するから仕方なく了承したんだ。 さっきまで何度も額の手布を取り替えていたぞ。 まだ寝付いてからそれほど経っていないだろうから、そのまま寝かせてやれ。 移動させると起きるだろう」

暗闇の中、壁に凭れた陛下は面白くなさそうに溜息を吐いている。
風邪のせいとはいえ、部屋に陛下がいることも気付かず寝ていた自分にも驚いて、慌てて口を塞ぐが未だ咽喉の痛みが引かない。 強張る身体を如何にか伸ばし、寝台近くの卓から白湯を注いで飲み込むと咽そうになり、押さえ込もうとして余計に激しく咽込んだ。

「・・・・浩大、起きたの? 未だ寝てなきゃ駄目だよ。 ほら、ちゃんと掛け布を掛けて。 あとで果実を摩り下ろしてあげる。 大根の角切りに蜂蜜掛けたのも持ってくるね」

目を覚ました夕鈴はそう言って、目を擦りながら浩大に掛け布を掛けると額に触れ熱を測り、手布を冷たいものに取り替える。 そして、ぽんぽんっと掛け布を叩くと、ゆっくりと寝台に頭を乗せて再び眠りに就いた。

「浩大、一刻も早く治すように・・・・・」

全く気付かれなかった陛下は低い声で呟くように囁くと、夕鈴を起こさないように彼女の肩に掛け布を重ねて、静かに場を離れて行った。 離れる直前、浩大を捉えた視線は鋭く殺気を孕んでいるように感じ、違う寒気に襲われる。 
浩大は激しい眩暈を覚え、しっかり薬を飲みますから早く治して下さいと強く祈った。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:05 | トラックバック(0) | コメント(12)
コメント
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2013-02-18 月 00:57:49 | | [編集]
浩大って…殉職?ならともかく、夕鈴に看病されていたために死ぬなんてことがないよう、早く風邪を治して陛下の攻撃に備えてねいくらなんでもそれじゃあ優秀な隠密の名が廃るってものよ頑張れ浩大・陛下以外はみんな同情してくれるはずっ
2013-02-18 月 07:22:07 | URL | ともぞう [編集]
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2013-02-18 月 09:26:44 | | [編集]
カウントダウンスタート!?
甲斐甲斐しく看病する夕鈴ですが、気が気ではない浩大…(^-^;

果たして、浩大の運命やいかに?
そして、陛下は夕鈴から肉饅頭を貰えるのか!?
2013-02-18 月 11:53:53 | URL | ダブルS [編集]
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2013-02-18 月 15:25:54 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。ワクワクして頂き、嬉しいです。 陛下の焼きもちは行き場がありません。相手は病人ですからね。 病人相手に動くと兎が・・・・・・・・。 天然兎は凶暴です。
2013-02-18 月 16:47:57 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、何気にお気づきありがとう御座います。 ほほほほほほほ。
2013-02-18 月 16:49:24 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。 うん、これで死んでも殉職にはならないっすよね。(笑) そうなんですよね、浩大は優秀な隠密なんですよね。でも、陛下には敵うのか・・・・。 う~ん・・・・・。
2013-02-18 月 16:52:26 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。お褒め頂きありがとう御座います。体型だけはド〇えもんに近付きつつあります。 すいません、この後、すごくないんです。underに妄想が働き、そっちに手が掛かるため、ショートコントで終わらせるつもりなんです。 ただ単純に私が楽しみたかったんです。
2013-02-18 月 16:56:30 | URL | あお [編集]
Re: カウントダウンスタート!?
ダブルS様、コメありがとう御座います。余りしつこいと逆に塩撒かれちゃいますよね。 肉饅頭食べたいと、昼間つい二個も食べたから、夕食作るのが・・・・ 面倒だ。 自分が満足すると、面倒になりますよねー。
2013-02-18 月 16:59:06 | URL | あお [編集]
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2013-02-18 月 22:45:50 | | [編集]
Re: タイトルなし
幻想民族様、お久しぶりです。そしてコメありがとう御座います。そうですね、陛下が風邪ひいたら李順さんが怒りながら看病しそうです。 ありがた迷惑になりそうですね。 SS贈ってくれるんですか?楽しみに待っておりますね。なかなか時間が取れずにじっくり見に行けずすいません。時間をうまく作らなきゃ! 今後の課題です。
2013-02-18 月 23:18:36 | URL | あお [編集]
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