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看・癇・喚  3

楽しく書けました。 浩大含め、サブキャラを動かすのは本当に楽しいです。 今回は短めの話しになりました。 次は誰を出そうかな?



では、どうぞ














夜間になると熱が上がり、思うようにならない身体に苛立ちを感じる。 
それでも、看病を続けてくれる夕鈴の前では笑顔を見せられるくらいにはなった。 
咽喉の痛みは継続しているが、粥の味がわかるほどには回復し、吐き気なども消失した。 ただ高熱の影響で関節の痛みが残り、その緩和のために貼る湿布で身体中が臭い。
しかし、それよりも陛下の視線が全身に突き刺さり、そっちの方が痛いと浩大は怯える。 
今日も、お妃ちゃんを送って来たまま、ずっと部屋に居座っている陛下の視線が音を立てて突き刺さり、身動きが取れないほど痛い。

一度部屋を換気した後、部屋を暖めたお妃ちゃんは熱い湯を用意し、清拭の準備を始める。 
汗を掻き気持ち悪い思いをしているから、身体を拭いてもらえるのは楽だし気持ちがいいのだが、それをお妃ちゃんの背後から見守る陛下の視線に身体が震えてしまう。 
お妃ちゃんが弟で慣れているから大丈夫、照れずに早く脱ぎなさいと言うと、陛下から醸し出されるオーラがどす黒く渦巻きながらオレに襲い来る。 
・・・・・・肌を晒すのがこんなに怖いと思ったことはない。 
服を脱ぐとさっと大判の布が掛けられ、その合間から熱い湯に浸して固く絞った布が潜り込む。 肌がさっぱりするのと同時に、その手際の良さに脱帽した。 
誰かに看病されるのもいいものだ、ありがたいと、陛下がいなきゃ素直に礼を言っただろう。 
しかし今は口数を最小限にしておいた方が懸命だ。 なんせ自分の命がかかっている。 

「浩大、次は足。 冷えちゃうから、さっさと拭くわね」
「足はいいよ~。 背中だけで大丈夫だから」
「愚痴愚痴言わずに身体を拭かせなさい。 終わったら別の服に着替えて、食事を摂って薬湯を飲む。 病人は言われた通りに看病されなさい。 ほら袖を通して、背中に布を入れるわよ。 あとで汗を掻いたら布を抜くから。 熱は・・・良かった。 少し下がってきたね」

てきぱきと動く彼女に、背後に立つ人物の視線が怖いから止めてくれと伝えたいが、口数少なくされるがままでいるのが一番いい。 部屋の入口に立つ陛下は薄い笑顔を貼り付けたまま、妃の動向を眺めている。 時折動く眉にオレの心臓がばくばく跳ねる。 
頼むから、そんなに近付かないでくれ! と祈るしか出来ない。

「風邪移るから、お妃ちゃん余り近付くなよ・・・・」
「手洗い、うがいをしてるから大丈夫よ。 もし罹ったら、直ぐに薬を飲むしね。 いいから、掛け布を掛けて休みましょう。 朝餉も全部食べれて良かったわ」

それも陛下の機嫌の悪さの原因の一つ。 
野菜粥やら果実のすり下ろし、肉饅頭や湯などなど、お妃ちゃんが用意するオレへの食事も気に喰わないのだろう。 厚意でしてくれているし、咽喉の痛みが酷かったので正直助かった部分も大きい。 陛下の分も作ってあげなよと言ってみたのだが、病人食と健常者の食事は違うし、陛下は粥よりすごく美味しいものを食べているから大丈夫だと、すっぱり切られた。 
部屋の入口で聞いている陛下が気配を消しているのを、オレは心臓が握りつぶされそうな思いで感じたが、何も言うことが出来ない。 いつもなら嗤って逃げるのだが、今は口を閉ざして体調の回復を大人しく待つのが一番だと理解している。

「陛下、浩大の熱もずい分下がってきましたが、念のために、もう暫くお休みさせて下さい。 政務室にも行けず、バイトの立場で申し訳ないと思ってはいますが。 本当にごめんなさい」
「夕鈴が謝ることはないよ。 夕鈴の看病で浩大もずいぶんと良くなっているようだし。 なあ浩大。 咳も落ち着き、後は熱が下がれば関節の痛みも良くなるだろうな」
「はい、ご尤もで・・・・・。」

ふうっと溜息を吐いて、夕鈴は困った顔を向ける。 

「もっと早くから自分の体調に気を付けて、薬を飲んでおけば拗らせずに済んだのに。 あ、口を開けて。 もっと大きくっ! ・・・・・まだ少し腫れているわね」

頼むから陛下がいる時に、顔を近づけないでくれー!! 
お妃ちゃんには見えないだろうが、あんたの背後から地獄の閻魔も真っ青の形相で睨み付けている陛下が立っているんだよー! 今にも佩いているものに手が伸びそうで超怖い!
死ぬ、死ぬ! オレ、抹殺されちゃう!!

咽喉の様子を看た夕鈴は 「まだ腫れているようだから、大根は角切りよりも擦ってから蜂蜜を掛けた方が飲み込みやすいでしょうね」 と、早速厨房に向かった。 
妃がいなくなった部屋では、冷たい視線を部下に投げ掛ける陛下と精神疲労でぐったりした隠密が互いを見合う。 しばらくの間沈黙が続いたが、先に静寂を破ったのは陛下の方だった。

「ここまで風邪を拗らせるとはな。 夕鈴がここ限定でいるから他の隠密を別の用事で使い続けることが出来ているが・・・・。 浩大、一刻も早く治すように」
「へーかぁ、もうお妃ちゃんに看病はいらないって言ってくれよー。 オレが何度言っても聞いてくれないんだよ。 確かに夜になると熱が上がるし、関節の痛みはあるけどさぁ~」

このままじゃ毎度訪れる陛下の熱視線で衰弱しそうだと浩大は肩を落とすも、陛下は舌打ちをして面白くなさそうに腕を組み直した。 どうみても拗ねた表情だ。

「仕方ないだろう。 ちゃんと看ますと宣言した以上、最後までやり通すと言って聞かないんだ。 癇に障るが・・・・頑張っている夕鈴を止めるのは難しい」
「あー・・・、お妃ちゃんには甘いよなぁ。 じゃあ、全部お妃ちゃんに任せて何度もここまで足を運ぶなよ。 そろそろ来るだろう?  頭が痛くなるんだよ・・・・・ほら、来たよ。 鬼より怖い側近様のご登場だ」

静かな後宮立入禁止区域の回廊に爆音が響き出した。
その音に陛下が肩を竦め、眉間に皺を寄せる。 間もなくやって来た人物が、部屋の扉を壊さんばかりに開き、白く輝く眼鏡を持ち上げ、口を開けて火炎を・・・・・ではなく、怒号を放った!

「陛下ーっ! またここですか! 如何してここですか! 全く何を考えているんですか! 政務を放り出して毎度毎度足を運び、浩大が心配なんですか、バイト娘が心配なんですか! 貴方が心配するのは今にも崩れそうな書簡の山でしょうがーっ!!」
「頼む・・・・へーか。 頭にひびくぅ・・・・」

掛け布を頭まで被って潜り込むも陛下側近の声が響きまくり、半泣き状態で浩大は呻く。
やっと引いた熱がぶり返しそうで、頭痛が悪化して、呻くたびに咽喉が痛む。

「李順、判ったよ。 直ぐに戻るから・・・・・。 浩大を休ませてやれ」
「陛下が足を運ぶたびに浩大も休めませんでしょう? 逆に迷惑ですよっ! 浩大とて治ったら報告するでしょうから、陛下は自身の為すべきことをしっかりとなさって下さい。 つまり、いいから、とっとと執務室へ戻って下さい!」  
「今、夕鈴が厨房から戻って来るから、顔を見たら戻るよ。」
「夕鈴殿は浩大の看病についているんです。 陛下は浩大の風邪が移らぬよう、ご自身の健康管理をしっかりとなさって下さい。 これ以上政務が滞っては困ります!」

李順が周宰相の部屋に突っ込むぞと脅かすと、渋々陛下は執務室へと戻ることにしたようだ。
陛下が側近に引きずられるように居なくなると、急に部屋の中に安寧が立ち込める。
ようやく静かになったと浩大は身体を伸ばし、痛む関節を解しながら目を閉じた。 
長年隠密家業に就いているが、ひどい風邪をひいたものだ。 
そして人に面倒を見てもらうという安らぎに、子供時分をふと思い出し、知らず口元が和らいでいるのを知る。 そうだ、久し振りなんだと思うと平和に近付くこの国のために、陛下のために尽くすのも悪くはないと思えた。 今は体を休めることを重要課題として、眠りに就こう。


そう思っていたのに・・・・・・・・・・・・・・・。



「何ですか? 何が駄目って言うんですか? どうして付いて来るの? 陛下は李順さんと一緒に執務室に行って下さいっ! お仕事一番ですよ!」
「駄目っていうか、ずるいよー! 何で浩大だけ? ねえ、ゆーりん!」
「浩大は具合が悪いからです! この間から何ですか? 看病が気に喰わないですか? いいからお戻り下さい、風邪が移ったら如何するんですか? 李順さんが呼んでますよ!」


あああああああ。 オレは早く治したいんです。 一刻も早く治したいんです。
頼むから静かに寝かせて下さい。 もしかして、これだから夜に熱が上がるんじゃねーの?


「この擦った大根は判るけど、こっちの焼き菓子は何で? ねえ、何で?」
「ああ、煩いです! 移ったら大変だから陛下は早く行って下さいっ!」
「陛下ぁっ!! 書簡の山が崩れますっ! いい加減にして下さい!」
「ほら呼んでます! 陛下は仕事、私は看病です。 ですから仕事して下さい!」
「その焼き菓子も病人用なの? 浩大の分だけなの? 夕鈴、どうして?」
「陛下ーっ!!!」


冬用の隠密服を作って貰うように予算申請をしよう。 きっと今なら李順さんも許可をするだろう。 他の隠密にもきっと喜ばれるだろうな。 
・・・・・ああ、頼みますから、いつまでもそこで喚かないで欲しい・・・・。 
頭に響いて頭痛が・・・・。 



その後李順と話し合い、浩大は侍官の姿で医局で二日過ごし、すっかり完治することとなる。
健康の大切さと初期治療の重要性を身に染みて理解した浩大は、その後異様に健康に気を遣うようになった・・・・・ らしい。





FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:01:10 | トラックバック(0) | コメント(10)
コメント
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2013-02-19 火 01:28:24 | | [編集]
健康第一
家内安全
無病息災
悪霊退散(笑)

浩大がいる部屋から陛下が出ていかなかったのは
夕鈴が気になるだけじゃなく、もしかして浩大の風邪が自分に感染ったら
夕鈴に看病してもらえるとか考えてたのかなw

あおさん、毎回楽しいお話ありがとうございます。
それから、遅くなりましたが

       ☆★ 祝 1周年 ★☆

これからも陛下と夕鈴のいろんな
お話期待してます♪
2013-02-19 火 03:40:14 | URL | rita [編集]
浩大首がつながってて良かったね風邪がなかなか治らなかったのはきっと陛下のせいだと思いますが、陛下はそれに気づくことはないでしょうね・
2013-02-19 火 06:27:08 | URL | ともぞう [編集]
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2013-02-19 火 07:39:12 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。自分も楽しく書けました。夕鈴が傷付くより、陛下が冷たく怒るより、素直に楽しかったですよ。 次は誰にしようか。 いや、決まっているのですけどね。(笑)
2013-02-19 火 20:05:23 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
rita様、コメありがとう御座います。悪霊退散(笑)、ナイスです。陛下、看病して貰えたらいいですねー(ぷぷ) 一周年に関してもありがとう御座います。のんびり楽しく更新していきますので、引き続き足を運んで貰えたら嬉しいです。
2013-02-19 火 20:10:00 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。ええ、陛下はそれに気付くことはないでしょう。もう夕鈴ばかりに気を取られていますから。道具と嫁なら、嫁を取る。(爆)
2013-02-19 火 20:13:11 | URL | あお [編集]
浩大の完治よりも
陛下は結局肉饅頭にはありつけなかったようで…(^-^;

まとわりつく仔犬陛下に「煩い」発言の夕鈴、本当に鬱陶しかったんでしょうね(笑)

夕鈴が関わると、もれなく陛下がついてきますね(#^.^#)
浩大、お疲れさまでした!
生きてて良かったです\(^o^)/
2013-02-19 火 20:13:38 | URL | ダブルS [編集]
Re: かん…いろいろ
makimacura様、コメありがとう御座います。「かん」もいっぱい意味がありますね。あまり深く考えなかったから、makimacura様のコメントに興味津々! 超面白いです。注釈もすごいです。うまい、うますぎる!座布団持ってこーい!です。 under も見て頂けて感謝です。あっちの陛下は放置でいいですから。(笑)
2013-02-19 火 20:15:59 | URL | あお [編集]
Re: 浩大の完治よりも
ダブルS様、コメありがとう御座います。陛下が可哀想のコメントが多くて、私ひとりで受けてます。浩大、生きてて良かったに涙が出るほどにやつきました。最後までご覧頂き、ありがとう御座います。
2013-02-19 火 21:00:52 | URL | あお [編集]
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