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看・癇・喚 ・・・・・ おまけ

「陛下が可哀想。 浩大が死んじゃう!」 とのコメが多く(笑)、つい書いてみました。 
コメありがとう御座います!! そして、どんだけ「おまけ」好きなんだ、私!




では、どうぞ。







 







「陛下、次の書簡には印璽もお忘れなく。 農地改革に関して大臣より新たな懸案が届いておりますので至急目を通して頂き、禁軍統括将軍との会見がその後ありますので衣装をお着替え頂き、会見後は」
「李順。 私の昼休みはどうなった?」
「御座いません。 その会見後は城下商工会会長との謁見が」
「李順。 休憩時間の確保も願いたいのだが」
「御座いません。 その謁見後は柳大臣がお時間を取って欲しいとのことで」
「李順・・・・・・」

陛下側近は眼鏡を持ち上げ、溜息を漏らす。 卓上で筆を走らせる陛下を一瞥し、山と詰まれた書簡を眺める。 眉間の皺を揉み解し、もう一度大仰な溜息を漏らすと舌打ちが聞こえた。 
それを聞かなかったこととし、署名が済んだ書簡を取り分け、自分の仕事を静かに始める。

「李順、確かに午前中の政務が滞ったのは悪いと思うが、浩大が心配だったんだ。 手駒を大切にするのも上としての役目であろう」

顔を上げずに筆を走らせながら陛下が言うと、李順の 「はっ」 と鼻で笑う声が聞こえる。
印璽を押した書簡を差し出すと、側近は内容確認後、別箱へ仕分けし陛下に向き直った。

「午前中の政務が滞ったのを承知でしたら、休息時間がなくなるのは理解出来ますでしょうね? 浩大が心配だったという取って付けたような理由も結構ですが、バイト娘が作る菓子に執着されていたのは、一体どういうことなのでしょうか」
「だってぇ、ゆーりんってば、浩大にばかりご飯作ってさ~。 今日なんて焼き菓子作っていたし、その前は肉饅頭作って、甲斐甲斐しく世話してるし・・・・・・・」
「浩大が風邪をこじらせ、高熱が続いていたからでしょう? 第一、それを許可されたのは一体、何処のどなた様でしょうかね」

愚痴愚痴言う陛下に、ずばりと理由を突きつける。 
結局はバイト娘の作る 『えさ』 が目当てなのだと判っているから、それが情けなくて青筋が浮かぶ。

「浩大は部屋を移動し、夕鈴殿は通常妃バイトに戻って貰います。 ですから陛下もご自身の仕事に戻って下さい。 この山を崩さないと徹夜になりますよ?」
「会見や謁見だと夕鈴に会う時間がなくなる・・・・・・」
「午前中、一緒に居たではありませんか」
「浩大の世話ばかりして、僕のことは見向きもしなかった・・・・」

・・・・・・ああ言えばこう言う。 
李順は全身から力が抜ける思いがしたが、このやる気のなさを払拭させないと、この後の政務に支障が出る。 踵を返して執務室から出ると、後宮立ち入り禁止区域で片付けをしているはずのバイト小娘を探しに足を向けた。




「夕鈴殿! 手が空くのは後どのくらいですか?」
「あ、李順さん。 もうすぐ終わります。 掛け布等は洗濯に出しますし、食器は片付け終わりましたので、残りは床掃除くらいです。 あの、何かお急ぎですか?」
「では掃除は後回しにして、至急厨房に行き、早急に『えさ』を作って陛下の前にぶら下げ・・・・ いえ、菓子を作って来て下さい。 貴女が浩大の分だけを作るので、面倒なことに陛下がいじけてます。 あのままでは政務が滞って絞め殺し・・・・ いえ、私が困りますので」

突然やって来た上司に至急菓子を作れと言われ、それも陛下用と言われ、夕鈴は瞬時思考が真っ白になったが確かに思い返すと陛下は浩大の食事や菓子に異常なほど執着していた。 
バイトが陛下の大事な隠密に何を作ったのか知りたいということか? 

「あの、菓子だけ・・・・ で、宜しいのですか?」
「ええ、先ほど陛下が騒いでいた焼き菓子で充分 『えさ』 になります」
「・・・・?  わ、わかりました。 出来ましたらお届けしますか、執務室に」

わざとらしく先触れをしてから届けに来るようにと告げ、李順は去って行った。
激しく疲労している様子の李順を見送り、夕鈴は首を傾げた。

「浩大に何を食べさせたか検証したいのかしら? それに餌って、菓子のこと?」

不思議には思ったが、上司の指示通りに厨房で早速作ることにした。 焼き菓子の他、肉饅頭を作り、侍女に伝えて執務室に伺う旨の先触れを出した。 すぐに許可が下り、二人の侍女に御盆を持たせて夕鈴が執務室に向かうと、山と詰まれた書簡の向こうから不機嫌な声が聞こえる。

「李順か? 柳との話し合いも終わったのに、次は何だ?」
「あ、あの・・・・。 お忙しいとは存じますが・・・・」
「夕鈴!」

ガタンという音と共に陛下の姿が見え、疲れ顔が現れる。 夕鈴は侍女から盆を受け取り執務室内の小卓へと運び、お茶の用意を始めた。 陛下が侍女へすぐに下がるよう伝え、扉が閉まると同時に小犬が出現し、疲れ顔は何処へやら満面の笑みを浮かべて近づいて来る。

「待っていたよ、夕鈴。 焼き菓子だけじゃなく肉饅頭も? 出来立てだね!」
「あの李順さんは? お持ちするよう言われましたが、陛下はまだ仕事中ですよね。 大丈夫ですか? 何か・・・・・ 言っていたような気がするのですが??」

でも熱々の肉饅頭は早く食べて貰いたいと、小卓に着いた陛下に 「どうぞ」 と勧めたその時、李順が書簡と共に部屋に入って来た。

「夕鈴殿、その蒸篭に急いで蓋をして下さい!」
「は、はいっ!!」

手を伸ばしてまさに掴む瞬間だった陛下の目の前で、蒸篭の蓋は閉じられる。 お預け状態となった狼は、ゆらりと椅子から立ち上がると怒気を孕んだ表情で突如現れた側近を睨み付けた。 
しかし________。

「午前中サボっていた分の書簡が御済になりましたら召し上がって下さい。 私だって食べずに動いているんですよ。 陛下が無用な心配をなさるから少しも捗りません!」
「午前中・・・・・サボっていた・・・・。 陛下? 今日は急ぎはないとおっしゃっていましたよね。 李順さんが怒って迎えに来たから、おかしいと思ったのですが・・・」
「ゆ・・・・・・ ぐ・・・・・」

側近と嫁の冷たい視線を受け、狼は耳と尻尾を畳みすごすごと執務卓へと移動し、大人しく筆を持った。 陛下の嫁は側近へ 「李順さん、冷めちゃう前に召し上がって下さい。」 と蒸篭の蓋を取り、にっこり笑い掛けながらお茶を差し出した。 
陛下が思わず立ち上がるが、嫁の冷たい視線に静かに座るしかない。 
「では、遠慮なく。」 と李順が食べ始めたのを横目で見ながら、陛下は口を噤んで書簡へと筆を走らせる。 今日に限って李順から夕鈴へ味についての文句はなく、本当に腹が空いていたのだろう、彼は静かに口へと運んでいた。 

黙々と仕事をしている陛下をチラッと見て、夕鈴は流石に少し胸を痛ませた。 
浩大はなかなか下がらない熱を慮り、安静のためにと医局に移動した。 
自分は看病続きでちゃんと妃バイトも出来なかった。 
陛下から許可を貰っていたとはいえバイトの立場で申し訳なかったなと思い、小声で李順に相談を持ち掛けてみる。 思ったよりすんなりと許可が下り、約束の焼き菓子をそっと李順に渡して静かに退室をした。



夜の帳が近づく時刻、あらかた書簡の山が片付いた陛下が背を伸ばしながら憔悴した顔を上げると、愛しい妻の姿はとっくに消え、黙々と仕事する側近と空っぽの蒸篭があるだけ。 

「李順・・・・・。 我が妃の手作り肉饅頭をまさか全部食べたのか?」
「冷める前に食べて欲しいと言われ、昼餉も抜きでしたので遠慮なく食べました。 陛下には焼き菓子を預かっております。 署名が終わったのでしたら明日の政務を考え早めにお戻り下さい。 どうせ夜間の看病をしていた彼女についていたのでしょう?」

決済済の書簡を持ち、さっさと部屋から消えていく側近に文句を言う暇も与えられず、焼き菓子の袋をそっと持ち、陛下は寒風吹きすさぶ回廊を寂しく戻ることになった。 
月に被さる厚い雲が今の自分のようだと、小犬は泣きたい気持ちで足を進ませる。 

「陛下、お疲れ様でした!」
「・・・・・夕鈴?」

自室に戻ると夕鈴が女官と共に夕餉の支度をしている様に、陛下は驚いた。 
何も言わずとも女官は下がっていき、二人きりになった部屋で夕鈴は陛下を椅子へと誘う。 
唖然としたまま椅子に腰掛けると、夕鈴が蒸篭の蓋を持ち上げた。 
そこには湯気と共に恋焦がれた肉饅頭が。 

「温かい内に召し上がって頂きたいと思いまして、遅い時間にはなりましたが夕餉を作らせて貰いました。 陛下は、お昼・・・・ 食べてないんですよね? 多少、自業自得とは思いますが、私も看病でバイトを休ん」
「夕鈴っ!!」

急に立ち上がった陛下に抱き締められ、台詞は途中で掻き消されてしまう。 
きゅうきゅう抱き締められ、腕の中でもがくも脱すること敵わず、夕鈴は顔を真っ赤に染めて膝から力が抜けてしまった。 崩れ落ちる寸前、陛下が抱き上げると 「な、な、な・・・・・」 と腕の中で夕鈴が戦慄いている。

「ごめん、嬉しくって! 夕鈴が夕餉を作ってくれるのが久し振りで、つい!」
「久し振りと言われてもそんなに厨房を貸し切ることは出来ません。 浩大の食事作りで何度も足を運んでましたしね。 それより冷めない内に召し上がって下さい。 お腹空いてますでしょう? まあ、仕事をサボっていた分は反省が必要ですけど!」

夕鈴が最後の言葉に力を入れると耳を下げた小犬は、それでも嬉しそうに蒸篭に手を伸ばす。 
笑顔を浮かべ食べ始めた陛下にお茶を淹れながら、夕鈴は小さく溜息を吐いた。

・・・・・そんなに肉饅頭が食べたかったのね。 確かに陛下は下町に行くと滅多に食べられないとばかりに手当たり次第に買っているし。 庶民料理が本当に好きなんだな。 

嬉しそうに箸を進める陛下に苦笑しながら、夕鈴は卓にお茶を置いた。

「夕鈴、お仕事頑張るから、また作ってね!」
「お仕事サボらずに、李順さんに迷惑掛けずに、真面目に政務に励まれるのでしたら、お作りさせて頂きますよ。 温かいだけの庶民料理で良ければですけど」  

にっこり笑って頷いた陛下に笑顔を返し、夕鈴も箸を持ち上げた。 
陛下は温かい夕餉に舌鼓を打ちながら、愛しい嫁が浩大の看病から開放されたことに満足しつつ、お腹も気持ちもほっこりと満足させていた。 

「あ、僕が風邪ひいたら夕鈴が看病してね。 ずっと傍にいて、粥とか作ってね」
「そう言わずに陛下は風邪に罹らないように、まずは手洗いと嗽をして下さい。 まずは予防が肝心ですよ? 政務が滞ると後で苦労するのは陛下なのですから」
「うん。 でも、それでも風邪をひいたら看病してくれる? 果実のすり下ろしとか水菓子とかを作って看病してくれるって約束して?」

お願いを繰り返すと困った顔で夕鈴が頷いてくれた。 

よし、今晩は窓を開けて寝よう!
風邪をひいて二人きりで看病をして貰おう!! 体を拭いて貰って、ぽんぽんして貰おう!

違った方向で頑張る決意を固めた陛下だが、夜間警護の兵が窓を閉め、女官が湿度調整に気を配り、みんなの努力によって彼はこの冬、風邪をひくことなく政務に励み続けることになった。 






FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:01:10 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-02-20 水 07:23:02 | | [編集]
Re: 報われたね~
makimacura様、おはよう御座います。コメありがとう御座います。肉饅頭しか・・・・そうなのです。判って頂けてうれしー!!ちょっと悲しいでしょ? 李順さんはなんか、そういう位置になってしまって。 困った、いい人なのに・・・・・。ごめんとしか・・・・。
2013-02-20 水 08:08:30 | URL | あお [編集]
良かったね
陛下、殺気は駄々漏れでしたが、我慢したかいがありましたね・やっと念願の肉饅頭が食べられましたねそれで気持ちが収まるならいくらでも・でも残念ながら風邪は引きませんでしたね仕事をしている侍女さんをうらむのはお門違いですからね・
2013-02-20 水 18:02:58 | URL | ともぞう [編集]
Re: 良かったね
ともぞう様、コメありがとう御座います。万が一風邪をひいたら、書簡を持った李順さんが看病してくれそうですね。それはそれは早急に回復しそうです。風邪はひかないほうが絶対いいですよね。 うん。
2013-02-20 水 18:35:11 | URL | あお [編集]
本音がミエカクレ…(^-^;
お仕事頑張ったご褒美にやっと食べれた手作り肉饅頭(笑)

李順さんの「えさ」発言!!
的を得て笑ってしまいました(^^)d

おまけ話ありがとうございましたm(__)m
手作り夕食、ホンワカ家族でほっこりしました\(^o^)/
2013-02-20 水 20:22:35 | URL | ダブルS [編集]
Re: 本音がミエカクレ…(^-^;
ダブルS様、コメありがとう御座います。やっと口にすることが出来た肉饅頭はとても美味しかったでしょうね。良かったね、陛下。浩大も一安心だ。(たぶん) 李順さんがあまりにも非常との意見が多く、次は格好良い李順さんを考えようか思案中です。・・・・が思い浮かばない・・・・。(汗)
2013-02-20 水 22:10:30 | URL | あお [編集]
突然すみません。毎日読ませて頂いております。この話のオチが好きすぎます。。
陛下の報われない努力、、素敵過ぎです。
2015-10-08 木 00:02:31 | URL | えみみみみ [編集]
Re: タイトルなし
えみみみみ様、コメントをありがとう御座います。李順との掛け合い、そして冷たくされても頑張る陛下。ちょうどインフルエンザも出始めております。温かく過ごし、風邪など召されませんよう、お気を付け下さい。
2015-10-08 木 17:23:45 | URL | あお [編集]
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