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遺却の追想  2
李順さん人気に冷や汗です。 出来ませんよ? そのままですよ?
急に優しい李順さんなんか出てきませんから!それでもいいという方は続きをご覧下さい。





では、どうぞ。













「・・・・何かの 『まじない』 かな? えっと・・・ 大丈夫かな、夕鈴。」
「問題は御座いません。」
「 ? ・・・・・侍女が外で君のことを心配しているんだけど。」
「心配は必要御座いません。」
「 ? ・・・・・夕鈴、まずは起きようか。」

床の上に横たわる夕鈴は手をお腹の上で組み、足を真っ直ぐに伸ばし、顔には竹簡を乗せて。
本当に何をしているのだろうかと僕は夕鈴の腕に手を伸ばす。 
首の後ろに手を回し、床から彼女を起こそうとしたのだが、そこでやっと異常に気付いた。
 
床から夕鈴の身体が離れない。
 
項に回した手に幾ら力を入れても夕鈴の身体は床から離れようとせず、まるで石のように硬く感じた。 何か奇怪しいと、顔に被せられていた竹簡に手を掛けると、それ自体は簡単に顔から外れ、横たわった夕鈴を見下ろすと瞼を閉じて穏やかな表情をしているのが判る。 
まるでただ眠っているかのようだ。 

「夕鈴、取りあえず身体を・・・・ 起こそうか?」
「このままで問題ありません」
「・・・・・汚れるし、寒いだろう?」
「汚れは気になりませんし、寒くはありません」
「・・・・・お腹空かない?」
「空いておりません」 

先ほどから端的な返答しかせず、身体を揺すっても目を閉じたまま、それでも夕鈴の穏やかな表情は崩れることが無い。 意味が判らず、ただ厭な考えが脳裏を過ぎるが、書庫入口には侍女と警護兵が待ち、自分が此処に足を運んだことを数人の官吏が見ている。  
急ぎ上着を脱いで夕鈴に掛けると、入口で待つ彼らへ幾つかの指示を伝えた。

「どうやら妃は貧血で返事も出来ずにいたようだ。 直ぐに動かさず、落ち着いたら私が妃を運ぶ。 警護兵は側近の李順にその旨報告するよう官吏に伝えろ。 侍女は急ぎ、妃のために掛け布を数枚持って来るように。 侍医は呼ぶな、妃が気にする。 終わったらお前達は後宮へ下がり、部屋を暖めて待つようにしろ。 暫くしたら戻る」
「御意。 では急いで掛け布を御持ちし、温かい御茶の用意も致します」
 
彼らが離れて行くのと同時に浩大が姿を見せ、戸惑った顔を向けて来た。 警護対象の夕鈴が戻らないと侍女が騒いでいるのを知って、急いで来たらしい。 
しつこい鼠を一匹追い払っていたと報告したあと、眉間に皺を寄せて問い掛ける。

「お妃ちゃん、どうしたって? 刺客に襲われた訳じゃないだろう?」
「・・・・・・・正直、何がなんだか解からん」
「わからんって?」
 
書庫の奥へと足を進める陛下の後に続き、指し示した場所にいる夕鈴に浩大は眉根を寄せた。 
薄汚れた埃臭い、日の当らない暗がりの寒々しい空間に横たわる彼女を見ても、何をしているのか意味が判らないと思わず目を擦ってしまう。 
陛下の上着を掛け、瞼を閉じた夕鈴は、ただ普通に眠っているのかと思われた。

「えっと、寝ている訳じゃない・・・・ のかな?」
「寝ておりません」

瞼を閉じた夕鈴から即答され、浩大は飛び上がるほど驚いてしまう。 返事があるとは思わなかったと呟き、そろそろと手を伸ばし夕鈴の脈をとったが問題なく安定していた。 安堵した浩大は顔を上げて周囲を見回した。 暗がりの中、書庫内に何かが転がっている様子はない。

「何かが頭に当たって引っ繰り返り、気を失っていたって訳じゃなく?」
「私が来た時にはこういう状態だった。 それより問題は身体が床から離れない状態ということだ。 何が遭ったのか全く判らないが、いくら力を入れても離れないんだ」

そんな馬鹿なと浩大が夕鈴の肩を持ち上げようとするが、びくとも動かない。 
彼女が身体に力を入れている訳ではなく、まるで床に縫い付けられた状態のようだった。 
触れる肌は柔らかいのに身体自体はびくとも動かず、信じられないと思わず漏らした。 
指で夕鈴の腕や腹を突いていると背後から金属音が聞こえ、浩大は諸手を挙げて降参する。

「んー、何かの呪いか? 陛下、この書庫って何か呪術系の本とかあるんじゃね?」
「そういう類は老師が管轄する後宮立入禁止区域に移動させている。 官吏が目にして悪用されたら不味いからな。 夕鈴の顔に乗っていた竹簡には何も書かれていないし、全く意味が解からない。 書庫を管轄している者に後日問うにしても、夕鈴がこの状態では今すぐには呼び出す訳にもいかない」

二人が困惑している横で、夕鈴は穏やかに目を閉じ微動だにせず大人しく横たわり続けていた。
扉の外から声が掛かり、侍女が持参した掛け布と容態が悪いといった妃のために用意した軽食と温かいお茶を受け取る。 少し二人で過ごしてから部屋へ連れ帰ると伝えると、侍女は拱手して後宮へと戻って行った。 まずはひと休憩と、浩大が軽食に手を出す。

「夕鈴、掛け布を掛けるね。 本当に寒くない?」
「寒くはありません」
「本当に何処か痛いところない?」
「御座いません」

声は夕鈴なのだが、言い回しが違う。 いつもの態度ではないし、どう見ても奇怪しい。
この場から離れがたく、どうしたものかと思案していると李順が何事かと眉間に皺を寄せて飛んで来た。 政務室に顔を出し官吏から陛下の行き先を聞いて走ってきたらしい。 
李順は書庫の奥の三人に向かって、荒い息のまま叫んだ。

「バイト娘が何をしたんですか? 貧血と聞きましたが、早く移動させて陛下は政務にお戻り下さいっ! 夕鈴殿も、いつまでも寝ていると借金返済が出来ませんよ!!」
「あー・・・・。 李順、実は問題が発生したんだよ」
「何ですと!?」

二人に振り向いた李順の顔は恐ろしい形相だった。 地獄の鄷都大帝も裾を持ち上げ蒼白で逃げ出すのではないかと思われるほどだ。 対して夕鈴は穏やかに横たわっており、いつもは怯える李順の怒声にも動揺することなく瞼を閉じたままで、それが更に異常さを物語っている。

「夕鈴の身体が何故か床から離れない。 見つけた時からこの状態で、侍女には体調が戻り次第、部屋に連れ帰ると伝えている。 だが今晩中に夕鈴を床から動かせないようなら、この書庫を立ち入り禁止として対策を考えねばならない。 自分で起きてくれるのが一番いいんだがな。  ・・・・李順、この竹簡に覚えはないか?」

バイト娘の異常性を説明され、差し出された竹簡を受け取った李順は薄暗がりで横たわる夕鈴に視線を向けた。 そこには幸せそうに眠る夕鈴が横たわっていて、如何してこうなったのかは判らないが、陛下に政務を放り出させた彼女に無性に苛立ちを感じる。 
試しに李順が辛辣に叱責して起き上がるように言い放つも 「このままで結構です。」 と返答があるのみで、目を開くこともない。 李順が肩を揺すっても、やはり起き上がることはない。 
上司命令を悉く無視するバイト娘は一旦おいて、李順は眉根を寄せて受け取った竹簡を見るが、ただ古いだけの竹簡で、そこには何も記されていない。 

「竹簡と言っても・・・・ 何も書かれていませんね。 此処にある竹簡にしては奇怪しい。 過去の行事類が書かれていたはずですが、私には詳細が判りません。 周宰相か老師に問うのが一番かも知れませんが、これだけでは彼らも詳細までは判らないと思います」
「浩大、老師に至急内容を思い出すよう伝えよ。 竹簡の外側で判断出来るか判らないがやれと言え。 李順、急ぎの書簡は此処へ持て」
「そんな事をしたら何があったのかと、周囲が動揺します。 私が夕鈴殿に付いておりますから陛下は執務室にお戻り下さい。 政務が溜まっております」
 
竹簡を持ち老師の許に行こうとした浩大と、陛下が大きく目を見開き、李順を見る。
眼鏡を持ち上げ 「仕方が無いでしょう?」 と肩を竦めるが、陛下は眉間に皺を寄せて納得しない。 李順は大仰な溜息を吐き、愚図る陛下に説明をする。

「執務室には至急を要する書簡が届いております。 数日後には豪商らとの話し合いがあり、視察にも行かれる予定です。 その準備が滞っておりますので、至急執務室へ。 ですから、バイト娘に付き添うのは私がしますよ」
「ええー? それってここで夕鈴と李順がふたりきりってこと? 僕、それは厭だな」

陛下が口を尖らせてあからさまに文句を言うから、李順は激しく睨み付けた。

「それが厭でしたら、早急に仕事を終わらせて下さいっ!! 余計な心配は無用です! 私が 『これ』 に何かするとでもお思いですか? それこそ馬鹿らしい。 バイトの上司として監視することは私の仕事の一環でもあります」

李順の苛立った声に、浩大が背を震わせ腹に手を当てて笑いを堪えている。 
涙目で 「陛下は早々に仕事済ませて交代するしかないね」 と告げると、竹簡を老師に見せるため姿を消した。 李順が陛下に向き直り、静かに眼鏡を持ち上げる。 
肩から力を落とした陛下は夕鈴に掛け布をしっかりと掛け直し、頬と髪を撫でた。

「夕鈴、直ぐに戻るからね。 起きられるなら起きるんだよ。 李順に苛められたら後でちゃんと教えてね。 本当に寒くない? お腹空かない?」
「問題ありません」

端的な返事は変わりなく、陛下はもう一度夕鈴の髪を梳いて立ち上がった。 李順に鋭い視線で追い立てられ、急いで仕事を終わらせようと執務室に足早に向かって行く。 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:10:12 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-02-23 土 08:34:39 | | [編集]
眠り姫…?
意識があるので、定番の「王子のキス」で目覚める展開はないですね( ´△`)残念(笑)

ご飯の心配はなさそうですが、移動が出来ない大問題!!

頼りは老師の記憶でしょうか?
竹簡の内容は何でしょうかね~?

頭の痛い事が起こっておりますが、李順さんに安息の日々は訪れるのでしょうか!?


2013-02-23 土 09:14:45 | URL | ダブルS [編集]
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2013-02-23 土 20:05:38 | | [編集]
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2013-02-23 土 21:03:10 | | [編集]
Re: いやいや…
makimacura様、コメありがとう御座います。李順さんって甘くするのは無理で、いつも通りだといつもと同じにしか動いてくれない。困ってます。(笑) とほほです。 陛下を絡ませるのは楽しいのですけどねー。
2013-02-24 日 21:34:14 | URL | あお [編集]
Re: 眠り姫…?
ダブルS様、コメありがとう御座います。「王子のキス」というか、「陛下のキス」 うきゃあああああ。ネタばれになるから言わないけど、萌えてます。うううううう。うん。来月楽しみー!ご飯の問題も大丈夫。ははははは。李順が上手く動かせないことにあわわ状態ですけど。
2013-02-24 日 21:36:29 | URL | あお [編集]
Re: すみません!!
makimacura様、コメありがとう御座います。激しく同意です。本誌をご覧になってない方もおりますので、ネタばれはしませんが、ううううううう。萌えますよねー。コミックではこめかみちゅーですしね~。陛下の暴走ばっちこい!!
2013-02-24 日 21:38:37 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。陛下の心配は無用でしょうけどね。李順さんは女性相手するのは裏を探る時くらい??(笑)彼の甘い想像が難しい・・・・・。いや、「S」 だから上手くいけば・・・・。ほう、ふむふむ・・・・。でも、ここでは。ああ、妄想が走り出しそうで危ないです。(爆)
2013-02-24 日 21:41:02 | URL | あお [編集]
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