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殷紅彩  1

バイト夕鈴のお話です。 オリジナルキャラの桐が出てきます。ご了承下さい。
underへの拍手ありがとう御座います。披露宴などへのリクエストがあり、思わず妄想が・・・・。 それもかなり酷いものが浮かびそうで怖いです!(爆)
まあ、時間があれば。 ほほほ。 新しい話もお気に召して頂けると嬉しいです。




では、どうぞ。













左前腕につけられた傷は、だんだんと薄くなって来た。
あと数日ですっかり消えるだろう傷を撫でて、そっと袖を下ろす。 普段は見えない場所。
掃除をしている時に袖を捲くれば、いやでも目にするが普段は気にもならない。
引き攣りもなくなり、時間の経過と共に消えていく傷。
それは、いつか此処から消えていく自分のようで、少しだけ切なさが滲むように感じた。



繰り返される刺客からの襲撃。 
それは忘れた頃に王宮や後宮に現れ、その殆どは知らぬ間に浩大ら隠密に捕縛され、また撃退されている。 その中でも巧妙に入り込んだ刺客から、卑劣な手で傷付けられたことが最近あった。 未だ 『囮』 として狙われることがある事実。 
こんな妃では旨味が無いと感じているのか、推挙したい貴族息女がいるのか、陛下のために違う方向に動く輩は絶えることがない。
だけど、『囮』 としてでも此処に居られるならと思う自分がいて、その考えに蒼褪めた。
何を馬鹿なことをと考えたが、その浮かんだ考えに変に動揺する自分が確かに居て、自己嫌悪に穴を掘って自分を埋めたくなる。

いつか来る安定した御世。
陛下が治める安定した御世のためにも、後宮には沢山の妃が来るだろう。 
強固な後ろ盾を持ち、出自正しく、見目麗しい女性が犇めく想像に胸が苦しくなる。 内政が落ち着き、財政難が無くなれば、いつか李順さんが言っていたように素晴らしい家柄と教養を兼ね備えた貴族息女から、正妃を娶ることは絶対なのだと判っているはずなのに。

その時、私は・・・・・ 借金背負ったバイト妃は何処にいるのか。 
借金が綺麗に完済出来ていればいいけど、完済出来ていなければ掃除婦として働くしかないのだろうか。 妃は一人でいいと周囲に話しているのだから、ただ一人の正妃が決まれば、出自不明の下っ端妃は必要無くなるはず。
もし、あの方が正妃に決まるなら、私は何処に行けばいいのだろう。
要らないものはどう処分されるのだろうか。
それとも正妃のために 『囮』 として過ごすという道もあるのだろうか。
・・・・・・・それすら望む愚かな自分に、嫌悪感が走る。




新たに同盟を結んだ宗広国より訪れた使節団が今白陽国に訪れている。 彼らが持ち込んだ書簡には婚姻に関しての書簡も含まれていると、官吏たちの噂話が耳に届く。 
皇女の年は十六と夕鈴よりひとつ下で、巻物に描かれた写し絵には優美な面差しと華奢な体躯が描かれており、様々な楽を嗜み、歌声は伶倫神に愛された姫と言われるほどだという噂が真しやかに付随され流れていた。 宗広国国王が第五子ながら母親が正妃に継ぐ地位を持ち、今後を考えると白陽国には過ぎたる程の婚姻話という。
官吏にまで皇女の話が浸透しているということは、それだけ信憑性があり、またそれを広めようとする動きがあるということだ。 それが宗広国と繋がりのある大臣からであるのか、宗広国からの密偵によるものなのかは判らないが、話は侍女の耳にも届き、最近は要らぬ気遣いや心配ばかりをさせている。

物言いたげな、それでいて気遣う侍女達の優しさに正直夕鈴は困り果てていた。
元々自分はバイトで、庶民で、いつか消え去るべき立場の人間だ。
本物が来て陛下がそれを望むのならば邪魔になる、ただの庶民なのだ。 

ただ問題は借金。 借金返済が終わらなければ青慎の学費や生活費に大打撃がくる。 
それだけは避けたい、絶対に。 
姉の器物破損という過ちによる借金苦で青慎に迷惑をかける訳にはいかない! 
・・・・・そう考えると、残りの借金総額を李順さんに聞いてみた方がいいのかなと考える。
いやいや、噂話を耳にしただけのバイトが余計なこと考えてと、怒られそうだ。 
「辞めたいんですか?」 と言われたらどうしよう。 バイト立場としては黙って、上司から指示が来るまで、いつも通りに過ごしていた方が無難なのだろうか。


「はあ。 こういうのって性に合わない。 はっきりして欲しい・・・・」

胃が痛くなりそうだと、小さく呟きながらお腹を擦った。 
こういう時にいつも突っ込みを入れる老師でさえ何故か姿が見えず、それが楽だと思う反面、何故居ないのかが気になった。 宗広国から使節団が来るとの話が浮上してから、他国や自国内からの間諜が多くなったと、浩大も日々忙しいらしい。 
最近、政務室から後宮へと戻る途中、私に襲い掛かった宦官が、何処の間諜であるかの取調べが続いていて面倒だと愚痴を言っていたのが最後に会った時。 
その際私が受けた左腕の傷に、浩大は酷く顔を顰め、矜持が傷付けられたように肩を震わせていた。 幸い大きな血管や筋に問題は無く、時間の経過と共に傷は消える程度で済み安堵はしたが、それから浩大はあまり姿を見せてくれなくなった。

「何をブツブツと言ってるんですか? それより夕刻ですから早く着替えて下さい」
「・・・・・はい、そうします」

浩大と交代するように、諜報員として活躍することが多いはずの桐さんが後宮内で私の警護に回り、眇めた視線で私を追い立てる。 

「何時までも余計なことを考えていると、刺客に襲われた時、とっさの対応が遅れます。 新たに傷を増やさぬようにして下さい。 鈍くさいと苛めますよ?」
「・・・・桐さん、厳しい。 けど正論過ぎて反論出来ない・・・・・」

元刺客の桐さんだからこそ、辛辣であり鋭い言葉だ。 
妃衣装に着替えて回廊を歩く時が一番気を付けなければならない。 宦官衣装でバイト妃に付き従い、何処から来るか判らない相手にぴりぴりした気配を張り巡らせている桐さんに、要らぬ心配までさせてはならない。

「あの、ちょっと侍女さんには聞けないので桐さんに教えて貰いたいのですが・・・・・。 普通後宮って妃がいっぱいですよね? それなのに下っ端妃と噂の私一人くらい放って置いても支障はないようにも思うのですが・・・・・ 最近、刺客多いですよね?」

掃除婦衣装を片付けながら尋ねてみると、桐さんは 「何を今さら」 という顔で肩を竦めた。

「陛下が “妃は一人でいい” とおっしゃっているからだろう。 つまり唯一であれば、あんたでなくてもいい訳だ。 ひとりで良いと言うなら出自不明の旨味のない妃よりも旨味を背負った妃の方が美味しい餌が零れるだろうと考える輩が多いと謂うこと。 同じ妃ならどちらが自分の 「利」 になるか熟慮した結果、排除する相手を決めたということだ。 ・・・・宗広国の使節団が来ている間、忙しさも緊張もまだ続くだろうし、刺客や間諜が落ち着く気配が未だみえない。 くれぐれも余計な事はしないように」
「はい、それは重々承知してます」
「承知しているだろうが、何かしでかしそうだと思われていると肝に銘じて下さい」
「・・・・・・・はい。」

陛下が妃は一人でいいと、唯一の妃で良いといったのは確かだ。 
たったひとりで良いと言うなら、陛下のためにも、白陽国のためにも大きな後ろ盾を持った王族や貴族の息女に来て貰った方が良い。 縁談の噂にあがっているのは大国の皇女だし、正妃にするなら最高だろう。 陛下に出会わずに下町で過ごしていたなら、大国との縁談を一庶民として目出度い話しが来たわねと、明玉と笑って話していただろう。 
臨時花嫁のバイトをしなかったら、そう考えていたはずだ。


でも、陛下に出会い、その御心を知り、何か役に立てるならとプロ妃を目指して日々努力していた私は、いつしか恋心を抱いてしまった。 知られてはいけないと、日々葛藤しながら努力している時に宗広国との縁談の話がきた。 いくら好きでも、バイトにはどうしようもないこと。 
いつものように考えすぎて胃が気持ち悪いと、肩を落として部屋へと戻ることにした私は庭園で佇む人影に気付き、目を眇めて足を止めた。 庭園に立ち入ることの出来る人は限られている。 
それも後宮内の庭園ならば尚更だ。
私はそれを前を歩く宦官姿の桐さんに小さく呟いた。 
桐さんは頷いて 「お妃さんはそのまま部屋へ。 余所見をせずに進むように」 と囁き、私の部屋近くで足早に離れて行った。 私は言い付けどおりに庭園を見ないようにして部屋に入り、そこでやっと緊張を解いて息を吐く。 
部屋に入ると直ぐに出迎えてくれるはずの侍女達の姿はなく、そこには見たことのない侍女が恭しく私を待っていて驚かされる。 彼女は私を見ると微笑を浮かべて静かに低頭した。

「お妃様、新しくお仕えすることになりました者で御座います。 宜しくお願いします」

侍女服に身を包んだ可憐な女性は夕鈴と同い年くらい見え、その穏やかな所作に夕鈴は急いで戸惑いを隠した。 きっと彼女も貴族子女なんだろうなと思うと畏まられるのも申し訳ない気持ちになるが、それでもバイト中なのだからとプロ妃らしく毅然として微笑んでみせた。

「夕鈴と言います。 よろしくお願いします。」







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 02:02:02 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
夕鈴宜しくお願いしますって・それは刺客ではないのかしら?
う~んドキドキしますね…どうなんだろう??
2013-03-07 木 06:36:51 | URL | ともぞう [編集]
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2013-03-07 木 12:28:08 | | [編集]
夕鈴怪我したの?さらっと書かれてましたけど陛下は大丈夫でしょうか?
2013-03-07 木 21:44:52 | URL | 秋 [編集]
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2013-03-07 木 22:17:04 | | [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。はい、その通りです。 まあこんな流れの話になります。 いちゃいちゃが掛けるのかしらと心配になります。 でも陛下には頑張って貰わなきゃね~。いろいろとー!
2013-03-07 木 23:38:40 | URL | あお [編集]
Re: 言葉に注意(笑)
ダブルS様、コメありがとう御座います。桐さんの口の悪さは・・・・ 李順さん並設定です。今回、ご飯3杯の台詞に爆笑させて貰いました。 カールを口いっぱい含んでいる時に読んだので、マジに危ないところでした。たいへんなことになるところでした。 あちらサイトもご覧頂き、感謝です!
2013-03-07 木 23:44:20 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
秋様、コメありがとう御座います。夕鈴の腕の怪我は大丈夫ということで、浩大が調べております。傷つけた犯人が見つかった時、陛下がキレルでしょう。 ちーん。
2013-03-07 木 23:51:25 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。桐さん、嫌われてなくて 「ほっ」 としてます。 へこみ夕鈴、結構好評で、ここまでうじうじでも大丈夫かと心配になるのですが、皆様から好物といって貰えて、こちらも 「ほっ」 としています。 あまり長くならないよう、上手く纏まってくれるといいなと思いながら発車ささせて降ります。
2013-03-07 木 23:57:29 | URL | あお [編集]
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