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殷紅彩  2
うちの愛犬、9歳の誕生日。おめでとー! 
今回の話に出てくるオリキャラ桐、意外と好評で嬉しいです。わーい。性格的には動ける李順さんな感じですが、まあ、陛下に聞かれたら危ない台詞がぽんぽん・・・。
今回はその桐さんは出てきません。ははは。


では、どうぞ。













新しい侍女だと自己紹介を済ませた彼女はお茶を淹れ始めながら、鈴を転がすような声で話し掛けてきたので、初めての侍女さんにドキドキしながらも、妃らしく悠然と腰掛けた。 
ボロが出ないよう心の中に鬼上司である李順さんを思い浮かべ、背筋を伸ばす。

「お妃様は後宮管理人の老師様の許でお話しをされに行かれていると伺いましたので、すぐにこちらでお会い出来るとは思いませんでしたわ」 

彼女は来たばかりで緊張しているのか、お茶を淹れる所作は少したどたどしく見え、余り注視するのも悪いかしらと視線を卓へと移して返事をする。

「ええ、未だ慣れないことが多く老師様の許で教えを請うておりました」
「お妃様は陛下のために日々ご自身を高める努力を厭わないので御座いますね。 陛下への愛情の深さに、侍女として私も嬉しく思いますわ」
「・・・・妃として、陛下のために出来ることを模索することも大事なことと思っておりますので。 ほっ、ほほほほ・・・・・。 」

初めて会う人に 『陛下への愛情の深さ』 とか言われて、夕鈴は真っ赤になるが、ここはプロ妃としての踏ん張りどころだと袖の陰で握り拳を作る。 新人さんの前では気が抜けないわと、プロ妃として意識を引き締め直していた時、ふと、いつもの侍女がいつまでも戻って来ないことに訝しさを感じ始めた。 新人の侍女を一人置いて行くなんて何かあったのかしらと彼女に尋ねると、彼女は可愛らしい笑みを浮かべて答えてくれた。

「宗広国からいらっしゃる使者様の部屋へ飾る御花を活けに離れております。 新人で御不自由を感じるかも知れませんがどうぞ御容赦願います。 短い間で御座いますので」
「い、いいえっ! 大丈夫です。 特にこれからの時間、予定は御座いませんので!」

来たばかりの人に気を遣わせてしまったと夕鈴は慌ててしまう。
部屋に戻ってからは夕餉を摂って入浴するだけで、不自由も何もない。 逆に申し訳ない気持ちになりながら、夕鈴は差し出されたお茶に手を伸ばした。 夕刻はまだ肌寒い時期、温かい茶杯を両手で持つとそれだけで掃除の疲れも薄れていくようで、心が和む。
ほっこりと癒される自分に対し、陛下は政務に忙殺されているだろうと考えると少し申し訳ない気持ちになってしまった。 甘い香りの花茶を淹れて貰い、一人だけの後宮でのんびりと過ごす。 そう考えると申し訳ないという気持ちが湧き起こり、茶杯を持ったまま暫し考え込んでしまう。

「・・・・お妃様、花茶はお嫌いでしょうか?」
「いえ、香りを楽しませて頂いております。 少し冷めてから、ゆっくりと味わいますわ」
「・・・・では、夕餉の支度をさせて頂きます。」

少し悲しげな表情を浮かべて侍女は下がって行った。 その姿を見送り、折角淹れてくれたのに、すぐに口を付けるべきだったかしらと夕鈴は申し訳なく思ったが、すぐに飲む気にはなれず、手の中で立ち上る湯気を見つめ続けた。
侍女一人にしても基本貴族息女が勤める王宮において、異邦人なのは自分だけ。
陛下のために自分を偽り、陛下の傍にいられるならと頑張ってきたけど、そろそろ終わりなのかも知れないと思うと胸が痛くて、苦しいほどの寂寥感に襲われる。 
陛下の御世が素晴らしいものになるなら何ら問題はないと、正式な正妃が来ることを慶ぶべきなのだろうが、夕鈴の心は正直に滂沱の涙を零す。

「・・・・・桐さん怪我してないかな? あの人影、やっぱり刺客だったのかしら」

小さく呟きながら茶杯を口に寄せた。 華やかな花茶の香りに口端が綻ぶ。 
下町では到底口に出来ない甘やかな香りに誘われ、嚥下した。 思ったよりも甘いお茶の味に目を瞠り、茉莉花ではないと判るのだが、では何の花茶だろうと首を傾げる。 二度と口に出来ない高級なお茶なら、せめて名前くらいは知っておきたいなと侍女の姿を追うように入り口を見上げた時、視界がぐにゃりと歪んで見えた。
おかしいなと思った時には何故か天井が見え、遅れて頭と背に痛みを感じる。

「あえ? ひくりかえた・・・・・? 舌かしひれ・・・・・・」

舌に違和感を感じ咽喉が痛いと思った。 何が起きたか判らないまま咽喉を押さえようとした時、異様に腕が重く感じ、同時に目の前が薄暗くなって来たのが判る。 
頭に浮かんだのは陛下に新たに迷惑を掛けてしまう自分。 そして、もう二度と会えないかも知れない自分が想像出来て蒼白になる。 こめかみに大きな脈動を感じ、耳鳴りが止まらない。 迫り上げるような吐き気がするが力が入らず、くぐもった声が漏れる。
急激な吐き気と眩暈に厭な予感が込み上げてくる。 
さっきの侍女が刺客だったのかしらと思い浮かぶが今更だ。 今回は駄目かなと詰まってきた息に感じ、苦しさに零れたのだろう涙が眦から流れるの最後に感じて、夕鈴は意識を手放した。





意識が戻ったと思った途端、身を裂かれるような激しい痛みと止まない耳鳴りに襲われた。 
耳の中では不協和音の楽器が掻き鳴らされ、嵐の海に投げ出されたように翻弄される。 寒気を催す暗闇と、目を覆うような眩しさが瞼の裏に繰り返され、眉間に皺が寄る。 焼け付くような咽喉の痛みと濁流に投げ出されたような眩暈。 
遠くから何か聞こえるが、頭に響く不協和音に遮られて意味が届かない。 
激しい痛みと恐ろしいほど揺れる頭を止めて欲しいと、必死に動かせるところを探した。

「意識が戻ったようだが、容態は?」 
「どうにか意識は・・・・。 早急に茶の成分を調べておりますが、まずは胃の洗浄を行い、御体から毒を抜いております。 嘔吐が治まり次第、薬湯を飲んで頂きますが、あとは体力次第。 飲んだ量は少ないと思いますが、今はなんとも申し上げられません」

口に何かを押し込まれ、酷く苦いものを流し込まれるのを感じた。 やめて欲しいと抗っていると、今度は身体を捻られ無理やり押し出されるのを何度も繰り返されている。 
何をされているのか判らないまま、助けて欲しいと何処か動かせるところを探し続けた。 
耳鳴りが止まらないから周りの音が聞こえず、自分の身体が強張っているのか、それとも痛みが激しくて動けないのかも理解出来ない。 頭の中を掻き回されているような激しい眩暈と、胃を搾られているような痛みに溺れて意識を手放したいのに沈み込めずにいる。 
苦しい。 痛い。 たすけて・・・・・・・・・・・

「妃の体調が戻るよう全力を尽くせ! 要り様の物があれば急ぎ用意させる。 私が望む言葉以外を漏らした時、己の首が何処にあるかをよく考えよ!」
「・・・・・御意」

探し続けた動ける先は、陛下の手の内にあった。 少しでもと必死に動かすと、冷たく柔らかいものが触れたのを感じた。 瞼は開かない、開けられない。

「夕鈴、大丈夫だから・・・・・・」

どんな薬よりもその言葉が嬉しい。 苦しいけど、痛いけど、陛下の声が耳に届いたことに安堵が広がる。 また狙われたのかと、激しい痛みに襲われながらも理解出来た。
・・・・・それならあの新しい侍女が刺客だったの? 刺客の侍女は捕まえることが出来たの? 
桐が追っていた庭に居た人影も刺客だったのかな? 
でも陛下が無事なら、囮として役に立てるならそれでもいいかと、でも危険手当は貰いたいとか、身体が受ける痛みとは違った方向に考えられるほど、陛下の声は心の安定剤になる。 
額に滲む汗を拭って貰い、腕を何度も擦られる。 

「大丈夫だから・・・・ 絶対・・・・」

ここで笑えたらいいのに。 こんなに心配してくれるのに、その声を和らげることも出来ない。
きっと顰め面で酷い顔をしているんだろうな。 でも大丈夫だから。

「陛下、宗広国からの使者が到着致しました。 謁見の間に急ぎお越し下さい」
「・・・・・わかった。 侍医、あとは頼むぞ」

李順さんの声が聞こえた。 そうか、宗広国からの使者が来たんだ。 
このまま謁見の間に行くなら陛下は正装されているのかしら。 御衣装、汚れなかったかな。 
私、床に引っくり返ったし、きっと吐いたはずなのに。 
治療が上手く施されたためか、陛下の声がしたことに安心したのか、何度も頭を撫でられている内に私はそのまま泥のように眠りに落ちた。





一口だけだったのも良かったのでしょうと、侍医は安堵の表情を浮かべている。
陛下からの叱責が余程恐ろしかったのだろうと、夕鈴は視線を逸らして曖昧な笑顔で返した。
いつも傍にいてくれる侍女さんが 「陛下も御安心なさるでしょうね」 と微笑んで食事の支度を始めてくれる。 今日からようやく普通の食事に戻り、薬湯もドロドロ状態から普通の薬湯となり、久し振りに昨夜は湯殿で足を伸ばして湯浴みすることが出来た。

「侍医様、薬湯はまだ飲まなければなりませんか?」

ドロドロの薬湯から普通になったとはいえ、薬湯は薬湯だ。 咽喉越しは良くないし、鼻から抜けるあの匂いはきつい。 決して美味しいものではない。 

「まだ念のため、しばらくお続け下さいませ」
「お妃様。 薬湯のあとは陛下からと、この時期にはとても貴重な珍しい果実が届いておりますので、お持ち致します。 ですので頑張って下さいませ」
「・・・・・・はい」

侍女さんにまでそう言われると、黙って薬湯を口にするしかない。 飲み終えると侍女は用意していた果実を綺麗に飾り付けした皿を卓へ置き、口直しのお茶を用意し始めた。
苦味が口いっぱいに広がり、急いで果実を口に含む。 いくつ食べても口の中の苦さが消えず、眉を寄せながら必死に飲み込んだ。 今度の薬湯もドロドロでないだけで、やっぱり苦い。 
それも今まで味わったことのないくらいに苦い。 甘いはずの果実の味が判らないほどだなんて、あとで果実の感想を聞かれても答えようがないわよ。
ま、味の感想を聞きに来る暇もないくらいに、陛下は忙しいと知っているけど。
 
陛下とはあれから顔を合わせていない。 王宮での政務と外交交渉が忙しいようで、時折窓から顔を見せてくれる浩大が、連日、両国で行う公共事業での工事負担金配分検討や、来期貿易に関してなど、外相大臣を交えての話しが続いていると教えてくれた。 夜は宴会を行い雅な舞や楽曲で持て成しているが、その度に皇女の話題が出て両国の大臣が盛り上がっているという。
今日もお茶を用意し終えた侍女さんが寝所から姿を消すと、いつものように浩大が窓からするりと入り込む。 私が腕に怪我をしてから見ていなかった浩大は、毒茶を飲んでからまた姿を見せてくれるようになった。 桐さんは毒の経路を調査しに回っているという。

「お妃ちゃん、昨日より顔色良くなったじゃんか。 良かったな!」
「・・・・地獄の責め苦かと思うほど、効き目がありそうな薬湯のお陰でしょうね・・・・・」

今日は春が近いためか外の陽気は穏やかで、ついでに刺客や間諜の姿もなく、穏やかな一日だったと世間話が始まった。 持て成しの場では、昨夜も遅くまで酒を交わしながら話が進んでいるが、皇女の話になると陛下の態度が一変して周囲が凍りついていると浩大は哂い出す。 

「まあ、へーかはそんな気が無いようで、黙って酒呑んでるけど機嫌が悪くて空気悪ぃの! なのに使節団は皇女との縁談を必死に訴えるから、温度差が激しくて、ひでぇ状態! あんなオッカナイ場所で接待役を担っている補佐官たちが可哀想だね~」
「・・・・・もしかして、その接待役って、柳方淵とか言う?」
「氾大臣が主で、氾水月もいるね。 他数人いるけど皆げっそり痩せて大変そうだよん」

夕鈴はその顔色などがなんとなく想像出来る気がしたが、敢えて想像は止めておいた。 
柳方淵の眉間の皺がどれだけ深くなろうが、接待役は代われない。 姿を見せれば彼のストレス解消とばかりに、どれだけ怒鳴られるのだろうか。 思わず乾いた哂いが零れてしまう。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:02:22 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
夕鈴快復して良かったです・見慣れない侍女さんには注意しないとね・李順さんのお妃教育がまた強化されそうですね

それにしても、水月さん帰ることもできず、陛下の冷気にふれお気の毒です倒れないで耐えている様子を想像すると可笑しくて

続きを楽しみにしています・
2013-03-08 金 06:31:04 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。 夕鈴には頑張って貰いつつ、揺れる乙女心満載で悩んで欲しいと思っています。これが王道? もちろん桐さんにも出て貰おうかと・・・・。 好評で嬉しいの! えへ。
2013-03-08 金 19:59:19 | URL | あお [編集]
侍女さん刺客!?
久々、夕鈴が痛い目に…(´д`|||)
人間不振に陥らなければいいのですが(笑)

接待補佐の水月さん、ピリピリ狼モードの陛下のせいでゲッソリって(^_^;)
早く元気になって陛下の側にいてあげないと、水月さんや官吏の方々が倒れちゃいますね(^o^)/

陛下のテンションは夕鈴次第ですね~
ホントスゴいや、お妃ちゃん!!
2013-03-08 金 20:14:16 | URL | ダブルS [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-03-08 金 22:42:26 | | [編集]
Re: 殷の意味は?
makimacura様、コメありがとう御座います。殷ですが、今回は中国伝統色として使われている紫紅をイメージしてます。深い紫は何度も染め直して使われる皇帝色とも言われているそうで、陛下に似合いそーと思いまして。もうひとつ、流血を意味する漢字でもあり、刺客に狙われる夕鈴に掛けています。浩大と桐はどうやって使おうか悩みながら話しを進めている、いつもの「見切り発車」で御座います。 お付き合い頂けるよう頑張ります。
2013-03-08 金 23:12:51 | URL | あお [編集]
Re: 侍女さん刺客!?
ダブルS様、コメありがとう御座います。接待好きには見えないな~と思ったら、こんな話しが妄想されて、ついでに久し振りに夕鈴痛くさせちゃおうか・・・・と。(酷いですよね~!) でも余り痛いと可哀想なので、楽しい(誰が?)場面も考えなきゃと悩み中です。
2013-03-08 金 23:15:12 | URL | あお [編集]
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