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殷紅彩  6
今回、夕鈴は痛い思いをします。 って今回初っ端からそうか。 
あー、鼻水とくしゃみが止まりません。 薬飲んで、目薬して、完全防備で外に出る。 
れも、時間の経過と共にはなみずが・・・・・。 去年もこの時期同じこと書いてたな・・・・。 
うさぎのしっぽ様、新しい場所でも元気に頑張りましょ! 何処でも明るく楽しく!


では、どうぞ。















政務室に向う途中で李順に声を掛けられ、夕鈴は先の回廊に侍女を待たせて執務室に向った。

「連日政務室に足を運んで貰っておりますが、宗広国使節団も明日でお帰りになることになりました。 急ぎ陛下に裁断して頂きたい仕事が溜まって来ましたので、妃の政務室通いを中止して頂きます。 今日は短時間で退室して頂き、あとは掃除でもして下さい」
「はい。 判りました。 ・・・・・あの、縁談はどうなったのでしょうか・・・・・」

そっと伺うと、李順は眼鏡を持ち上げて薄く口端を持ち上げる。

「夕鈴殿が陛下と四阿で夫婦演技を見た後は、多少口篭るようになりました。 まだ諦めはしていないようですが、以前と比べると積極性は見られません。 いい演技でしたが陛下を遊ばせる・・・ いえ、これ以上政務を滞らせる訳にはいきませんので」
「・・・・縁談は断る方向なのですね。 かなり良い条件と伺っておりますが・・・・」

李順が以前夕鈴に伝えていたお妃様の条件を全てクリアしているように見えるが、理想はもっと高いということなのだろうかと思い口にすると、側近から冷たい視線を投げ掛けられた。 
その視線に首を竦めると、李順は眼鏡を持ち上げ薄く口を開いたので言われそうな台詞が頭に浮かび、夕鈴は慌てて手を振る。

「も、申し訳御座いません! バイトとしてこれ以上は越えてはいけない一線ですね! では直ぐに政務室に行って短時間滞在し、その後掃除に入ります!」
「・・・・・判っているなら宜しいです。 くれぐれも妃演技を忘れないように」
「はいっ!」

執務室から出ると自分が知らず涙目になっているのに気付いた夕鈴は、侍女にそんな顔は見せられないと、待たせている回廊とは反対へ足を進めて懐から手布を取り出し顔に押し当てた。 
判っているはずなのに、何故聞いてしまうのか。
バイトとして一線を越えてはいけないと、ちゃんと理解している筈なのに・・・・ どうして。

「はぁ・・・・ ちゃんとしなきゃ! さ、笑顔で政務室に・・・」
「・・・・お妃様? お一人でしょうか」

声を掛けられ振り向くと、書簡を持った官吏が驚いた顔で立っていた。 侍女が居ないことを不思議に思われているのかと 「侍女はこの先に居ます」 と伝えると、官吏が安堵の顔を浮かべるのが判る。 妃が何度か狙われていることを皆が気を遣っていることに申し訳なく思っていると、官吏が 「これから陛下の下へ行かれるのですか」 と尋ねてきた。 夕鈴が妃らしく微笑み頷くと、官吏はそうですかと恭しく低頭する。 
夕鈴も小さく頭を下げて踵を返した瞬間、頭上から大きな声が回廊に響いた。

「お妃ちゃん、伏せろっ!!」
「・・・っ!」

浩大の声が聞こえたと同時に、反射的に前のめりに倒れた。 頭上で金属音が数回聞こえ、刺客が来たんだと判った夕鈴は邪魔にならないように回廊手摺側に急ぎ身体を寄せて身体を丸める。 回廊に大きな音が幾度か聞こえ、身体を竦ませると 「動くなよっ!」 と浩大の鋭い声が耳に届き、夕鈴は激しく頷いた。 書簡を持った官吏は刺客だったようで、更に人数が増えているのが見え、邪魔にならぬよう身を縮めることしか出来ない自分が不甲斐無く感じる。
不用意に侍女さんが待っている方向と違う場所に足を向けた自分が悪いと。
心臓がドキドキして怖いというより、浩大に申し訳なく、自分の愚かさに動悸がする。

「お覚悟っ!」
「え・・・・っ?」

突然近距離からの声に顔を向けると、回廊下から輝く刃が自分に向けて突き上げられたのが判った。 夕鈴が熱いと思った瞬間、くぐもった呻き声が聞こえ 「そのまま動くなっ!」 と桐さんの声が耳に届く。 眼下に熱く感じた正体が見えた。 
左下肢に突き刺さった刃と、ジワリと滲み出した赤黒い染みに自分の愚かな行動の結果が判り、痛みより先に後悔が頭の中を渦巻き、唇が戦慄く。
浩大と桐に守って貰っているのに、余計な考えに囚われて・・・ 余計な危険に自ら身を晒した。

「そのまま動くなよ。 息は苦しくないか?」
「あ・・・・は・・・。 ごめんなさい・・・ わたし・・・・」

裾が下から勢いよく切り裂かれ、足に細い布がきつく幾重にも巻かれた。 桐が刺さったままの刃を抜き、携帯水筒の水を勢いよく掛けて傷口を洗い流す。 警護兵が侍医を呼んで来たようで、浩大が捕縛した官吏姿の刺客と他の刺客らを警備兵に引き渡している間に、陛下が走って来るのが見えた。

「夕鈴っ! 襲われたと聞いたが、傷は!?」
「取りあえず傷の上部を縛ってますが、動かさずに刀を調べて下さい!」
「侍医っ、医官っ! 直ちに刀を調べて妃の傷を診よ! 急げ!」

やめて・・・・ 私が悪い。 勝手に動いた私が悪い。 
ごめんなさい。 皆に迷惑掛けてごめんなさい。

周囲の動きが夕鈴の心臓を激しく跳ねさせる。 重苦しい動悸に襲われ、目の前がぐらりと暗転していく。 誰かの手が身体に回った感触に酷く震えが走った。

「・・・っ! 夕鈴っ!」

迷惑掛けたのはわたし・・・・・。 一線を越えて、陛下を好きになった私がわるい・・・・。














身体がひどく熱いと感じた。 全身が重くて息が切れる。 ・・・・・胸が苦しい。  
意識が浮上すると同時に、額に冷たいものが触れた。 でも瞼が開かない。 鉛を流し込まれたように身体は思うように動かず、ただその冷たさに深く息が零れる。

「・・・・夕鈴、気が付いた?」

耳に届いた声が陛下だと判り、頷きたいけど思うようにならない身体。 指先を少し動かすと、陛下は気付いてくれたのだろう、直ぐに手が温かいものに包まれた。 体中がひどく熱いのに、私の手を包むその温かい感触はとても心地良く感じる。

「・・・・陛下、氾大臣がお待ちです。 宗広国使節団が帰国の途につきますので」
「夕鈴が気付いたようだ。 暫し待て・・・・」

聞こえる言葉の内容に、夕鈴は手を引こうとした。 陛下の仕事の邪魔はしたくない。
もう少し身体が思うように動けたら、そう伝えるのに。 だけど包まれた手は私の動きを封じるように動くことは無く、それが泣きたくなるほど切なかった。 

「陛下、夕鈴殿は私が看ておりますので謁見の間へ行って下さい。 お願いします。 刺客は全て捕らえましたし、宗広国との今後の折衝に有利になる証拠も揃え、手筈も整えております。 もちろん相手側がどのような言い訳、言い逃れをしようとも逃れる術は御座いません。 ですから今だけは・・・・・ そのような表情を抑えて下さい」
「李順。 ・・・・・妃が傷付けられ、心穏やかな表情を浮かべることなぞ出来る訳がない。 使節団に向けて佩いたものに手が伸びぬだけマシと思って貰わねばな」
「陛下、それは・・・・・」

聞こえてくる内容に私の胸が苦しさを増す。 そんなことは駄目だ。 
折角同盟国になったというのに、下っ端妃一人のことで壊れるのは本意ではないだろう。 
泥の中に沈んでいるような身体を無理やり動かし、私は自分を叱咤して目を抉じ開けた。

「・・・・だ、めで、す」

そこに居たのは恐ろしいほど冷酷な表情を浮かべている狼陛下。 
いつも冷酷非情な孤高の国王陛下を演じ続け、白陽国のために自分を偽ってでも冷徹であろうとする彼の姿だ。 だけど私の声を聞いて素に戻った陛下は掴んでいた手に力を込めて、まるで本当に愛おしそうな演技をして私を覗き込んだ。
 
「夕鈴っ! ・・・・良かった。 一昼夜魘され続けていたんだよ。 気分はどう? 何か飲む? 何処か痛いところとか、気分が悪いところは」
「へいか・・・・ おしごと、がんばって・・・・」

どうにか強張らずに微笑むことが出来ただろうか。 妃として陛下を送り出すのも私の仕事だ。
陛下が心配する価値のない私よりも、国のための仕事を優先させて欲しい。

「まってる、から。 おしごと、がんばって、ください」
「陛下・・・・。 私が付いておりますので、お願いします」
「ゆう・・・・・」

大きく目を見開いた陛下を見上げ、私はもう一度口端を持ち上げて目を細めた。 
唇を強く噛んだ陛下が眉根を寄せて、何か言いたげな顔を見せたが、直ぐに踵を返して部屋を出て行くのが判る。 そこで漸く私は目を閉じ、詰めていた息を吐くことが出来た。

「夕鈴殿、ありがとう御座います。 気分が悪いところはありますか?」

李順さんから褒められても、もう遅い。 私はバイトとして失敗してしまったのだから。
力を抜くと、途端に闇が私を飲み込んだ。




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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:36:36 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
今回もスリリングですね
動悸が収まらず、2度見ならず2度読しちゃいました
2013-03-13 水 01:23:20 | URL | [編集]
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2013-03-13 水 10:14:52 | | [編集]
Re: タイトルなし
秋様、コメありがとう御座います。刺客さんがいっぱい登場ですが、そこはあっさり流して、今回は李順さんが結構おしゃべり? 二度見、ありがとう御座います!
2013-03-13 水 11:23:06 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。そうですね、あっちとこっちは全く違う話ですね。鬼畜ぶりは・・・・・ははは。半端無くレベルを上げてますので、陛下より酷いかも。夕鈴だったら家出してますね。どちらも、もう少し続きますのでお付き合い頂けたら嬉しいです。今日もめちゃ風が酷いです~! とほほ。
2013-03-13 水 11:25:27 | URL | あお [編集]
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2013-03-13 水 20:15:15 | | [編集]
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2013-03-13 水 23:27:55 | | [編集]
Re: 囮…
ダブルS様、コメありがとう御座います。 痛い目のオンパレード! もう少し掘り下げようかと思ったのですが、シツコクなりそうなので、次からは新たな展開に。あと少しですので、もう少しお付き合い下さいませ。
2013-03-15 金 01:14:27 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 次に大まかなまとめが入ります。ヒロインを助ける男達。いいですね~。傅かれて、跪かれて、抱っこで運ばれる。 これは王道ですよね。 以前酔っ払って玄関に放置された時に旦那に文句言ったら 「・・・・・・ウェイトが」と返答され、それから自力で帰って布団に潜り込む程度に飲むようになりましたー! そろそろ飲みに行きたいけど、花粉が・・・・。多少の雨も午後には役に立ちませんでしたね。
2013-03-15 金 01:17:33 | URL | あお [編集]
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