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殷紅彩  7
悪い病気です。長そうで困ります。まあ、先は見えてきたので、あと少しです。
お付き合い頂けたら嬉しいです。 あちらの黎翔さんも悪い病気です。(哂)




では、どうぞ。
















オオバコ科に属する野草から抽出された毒が刀に塗られていたと判り、侍医が直ぐに対応し、薬師が解毒剤を調合し、その調合されたドロドロの薬湯を医官姿の桐さんが持って来た。 
意識が戻ったとはいえ、心の臓に作用する毒が付着しており、直ぐに傷口の洗い出しをしたことと侍医の早急な処置が良かったと聞いたが、刃の角度がもう少し深ければ失明、または最悪そのまま死に至った可能性があったと言われ、夕鈴は今更ながらにぞっとする。

「それにしても皇女様って、ある意味素晴らしく行動的なんですね」

そう呟くと、薬湯を持参した桐に呆れた表情で見下ろされたが、本当に心底感心してしまう。

「お妃ちゃん、行動的にも程があるじゃんかぁ。 唯一いる妃が気に入らないからって、邪魔だからって他国まで刺客を送り込んで殺害しようなんて、皇女の考えにしては怖すぎだって! お妃ちゃん、殺されかけたんだぜ?」
「そ、そうね。 うん・・・・ それはそうだけど、それだけ陛下が御好きだってことでしょう?
今まで望むことは全て手にされていた方でしょうから、私のことは余程腹に据えかねて行動されたのでしょうね」
「・・・・・殺されかけて相手を褒めるとは、お前は大莫迦なのだな」
「桐さん・・・・・・ いつもながら率直な意見ありがとう」

ドロドロの薬湯はやっぱり咽喉越しが最低最悪で、咽込みながらどうにか飲み込み、口直し用の枇杷を急いで食べようとしたら目の前で浩大が最後の果肉を口の中に放り込んだ。

「ご、ごうだい~~!? にっ、苦いっ! にが、い!」
「ご、ごめん、お妃ちゃん! 枇杷はそのためのものだったのか! 悪っ!」
「浩大・・・・・。 ああ、もしかして口直しはこれかも知れないな。 今日は二つ預かって来たんだ。 ほら、泣いてないで食え」

桐が蓋付きの小鉢を開けると、山査子の蜜煮が出て来たので思わず目を輝かせてしまう。 
浩大と桐の呆れ果てたような冷たい視線を受けながら、口中の苦さを消し去ろうと私は蜜煮を口いっぱいに含んで咀嚼し続けた。 その後、浩大と桐から 「余計なことを考えているだろうから教えてやるよ」 と聞かされた内容に、私は愕然としてしまった。






二月ほど前に陛下が出掛けた地方巡察中、国境警備隊隊長らに誘われ町の料亭園庭で宴を開いていた時、偶然旅行中の宗広国皇女が殿下を見かける機会があったらしい。
その際に陛下に・・・・・ ひと目惚れをされたそうだ。 
皇女は自分の身分を重々承知していたので当たり前のように白陽国正妃の立場を望み、その足掛かりとして父王に白陽国との同盟を持ちかけ、そして自身の望みを伝えた。
第五子である皇女は末の子供であり、歳を経てから授かった若い寵妃の御子。
それも初めての娘御子とあり、宗広国国王は目に入れても痛くないとばかりに可愛がり、今まで彼女のどんな我侭も叶えて来た。 父王からの愛情をたっぷり受け、皇女は今まで叶わぬことなど何一つない世界で育って来たのだ。

見目麗しく血統も素晴らしい、後ろ盾にも文句などない正妃として理想的な女性ではあると夕鈴は思っていたのだが、宗広国に忍ばせていた間諜からの報告に、李順は即答で縁談を断る方針を決定した。 宗広国皇女相手では新たな財政難が生じそうだと。

一度袖を通した衣装は着ない。 日に湯浴みは三度。 食事は最高の味にこだわり、茶葉は最上級ばかり。 毎週のように国中の貴族息女を集めての宴を開き、皇女宮殿専用に私設劇団や楽団を設け連日催しを行い、週に数回宝飾店主を呼び寄せ様々な品を気の向くまま購入したりしている。 他にも皇女専用の侍女は百人、沓専用部屋、衣裳部屋、宝飾部屋など、李順は想像すら出来ないそのお嬢様ぶりに悪寒すら覚えたと後に本人から聞かされた。

しかし、いくら縁談を断っても宗広国からの申し込みは立ち消えることなく執拗に請い願われ、その内現在いる  『唯一』 を消せば、皇女がその 『唯一』 になれると考えたのだろうか、連日これでもかと刺客を送り込んで来た。
使節団が白陽国に到着する前に送られて来た刺客のひとりに夕鈴が傷付けられ、陛下の指示のもと警備が敷かれ、李順の指示のもと夕鈴が 『囮』 として配される。
勿論、危険なことがないよう充分配慮はされていたが、皇女の命を受けた刺客は執拗だった。

殆どが捕らえられ、そのうち何体かは人と思われぬ骸と成り果てて宗広国へ運ばれ、それが陛下からの返事と聞いた宗広国王は冷酷非情と呼ばれる珀黎翔の存在に恐れを抱くのだが、恐れを感じなかったのは皇女だけで、彼女は自分が陛下の正妃として遇されるよう 『唯一の妃』 殺害を強行に繰り返し続けたが、使節団逗留期限が来たため諦めざるを得ない状況となった。

折角まとまった同盟国との貿易や国交を考えると、狙われた相手は出自不明の下っ端妃であり幸いにも命が助かったのだから出来れば穏便に済ませるべきと、白陽国大臣間では話がまとまり掛けたのだが、勿論それを 『是』 としないのは陛下だ。

「我が妃が狙われたのだぞ。 穏便にとは考えも出来ぬわ!」

激しい怒気も露わな陛下の視線と言葉に、場に居た大臣は皆一様に押し黙るしかない。
その後は、後宮にまで入り込んだ他国の刺客の動きを阻止出来なかった責を誰が負うか、今回捕らえた存命刺客の処理をどのようにするかなどの話しに変わり、宗広国との今後の折衝に携わる外相大臣は胃を病み、倒れる寸前となった。
外交に関しての能力が高い氾大臣はじめ、数人の大臣らによって陛下の意向を伝えるため使節団を作り、急ぎ宗広国へ赴く話しが出たのだが、急遽、言いたいことは直接伝えることにしようと陛下も参加することになり王宮は俄かに忙しさを増した。

「陛下がわざわざ足を運ばずとも、大臣らで相手を押さえ込むことなど容易でしょう。 今回は氾大臣も赴かれる訳ですし、何をしに行くか判るだけに面倒で溜まりませんよ」

ただのバイトに毎回こだわりを見せる陛下だが、同盟を為した国に足を運ぶなど、変な軋轢を生んだらどうするのだと側近は頭痛に悩まされる羽目になる。

「後宮や王宮にまで刺客を送り込んで来たその手腕を褒めに行くだけだ。 今後どのような国交を望むのか、私としても伺ってみたいからな。 今後は相手をよく見てから話をされるよう躾は必要だろう?  ・・・・妃を傷付けた代償もしっかりと頂かねば割に合わん」
「何度も言っておりますが夕鈴殿はバイト妃ですからね。 くれぐれもお間違えないように」

以前、陛下が気に入りすぎていることが心配だと私が伝えた時 「彼女がごく普通に接してくれるのが、可愛くて楽しくて嬉しいだけだ」 と答えた。 
「そう思わなくなれば、望み通り切り捨てるさ」 と続けたのを御自身は覚えているのだろうかと、心配になる。 最近の陛下を見ていると、果たして本当に彼女を離す気があるのだろうかと背筋に寒いものが走り、彼女のバイト任期が終了したらどうなるのだろうかと、当初よりも長くなったバイト期間と下町にまで着いていくその執着心に、李順は嫌な予感が拭いきれない。

「国境付近の視察を兼ねて、宗広国へと早々に足を運び、同じようなことを繰り返さぬよう釘を刺してくるつもりだが、その際の土産はあの刺客らで充分だろう。 な、李順」
「・・・・・そんなこと出来る訳ないでしょう。 献上品は氾大臣らに任せてあります。 出立の支度は女官が致しますので、急ぎの書簡に目を通して決済をお済ませ下さい」
「その前に妃の様子を見て来るよ。 毒も抜けたと聞くが、まだ薬湯で苦労しているようだからな。 ・・・・土産は美味しい食べ物にしようかな。 夕鈴に希望を聞いて来る」

あっという間に小犬陛下になった彼は足取り軽く執務室から離れて行った。
陛下のお戻りは何時になるのだろうと、李順は眼鏡を外して眉間の皺を揉み解し続ける。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:17:17 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-03-15 金 10:11:03 | | [編集]
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2013-03-15 金 13:08:20 | | [編集]
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2013-03-15 金 20:05:09 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。簡単に出していた皇女のいる国へと向う陛下たちが次回から登場です。やっぱり長くなりそうで困ります。もっと簡潔に纏まられたらいいのですが、書き出すと止まらなくって(笑)浩大&桐はまあ、上手く陛下から逃げることは可能でしょうね。 逃げられないのは兎一匹・・・・?
2013-03-15 金 23:57:05 | URL | あお [編集]
Re: 躾…
makimacura様、コメありがとう御座います。 薬湯って欧米の友達に聞くとハーブの青臭ささが堪らなく咽喉に来ると言ってました。 普通はお湯に乾燥したハーブ類を入れて濾して飲むそうですが、煮詰めたモノになると激苦いと言っておりましたよ。 試したのかな?? ドロドロは流石に無いと思いますが、時代は中国ですからね、ありそうということで。 危険手当は勿論出ますでしょう! 囮として配したのは李順さんですからね。 そこも書きたいので、長くなります。お付き合い戴けると嬉しいです。
2013-03-16 土 00:01:07 | URL | あお [編集]
Re: 大莫迦=心が広い?
ダブルS様、コメありがとう御座います。 李順さんの心配事、「早く逃がしてやるのが彼女のためです」 逃がす気がない陛下には犬に論語ならぬ、狼に論語。 糠に釘。 兎に祭文でしょうね。 本当に「狼陛下の花嫁」になるのは何時になるのでしょうか。いや、焦れ焦れして欲しいです。萌えですから・・・・・でも。(爆)
2013-03-16 土 00:11:18 | URL | あお [編集]
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2013-03-16 土 23:41:41 | | [編集]
Re: タイトルなし
ななすけ様、覚えておりますとも! コメありがとう御座います。夕鈴断ちされていたんですか?ううう、大変でしたね。二ヶ月の間にいろいろ書かせて貰いました。お時間取れたらまた遊びに来て下さいませ!マジに嬉しいですよ。ありがとうです!
2013-03-17 日 13:51:08 | URL | あお [編集]
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