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殷紅彩  8

最近気付けばよく寝ている犬。 9歳になったからそれなりに御歳なのかしら? 
まあ散歩は楽しげに歩いてくれるけど、食欲もあるけど、おやつの言葉に激しく反応するけど、他の犬に突進するけど、強風や地震に怯えて煩いほど吠えまくるけど・・・・・・・。 
あれ、元気だな。



では、どうぞ。












宗広国領内へ同盟を結び国交折衝を終えたばかりの白陽国から使節団が訪れたのを聞き、一番に喜んだのは皇女だ。
国王ら臣下は全ての刺客が失敗したとの報告を受けた後だっただけに訝しみながらも、皇女との縁談を受ける気になったのかと王宮へ招き入れると、冷たい双眸に陰鬱な笑みを浮かべた白陽国国王と共に、表情を強張らせた血色の悪い大臣と高官、護衛兵が入宮して来た。
この時ばかりは国王も皇女をこの場へ招き入れることは出来ず、機会を設けるからと皇女宮で待つように強く指示を出していた。 苛立ちも露わな皇女だったが、機会を設けてくれるならと父王の意見を渋々ながら受け入れる。 


「白陽国国王、よくぞ参られた。 此度の話し合いで互いのより良き発展が為されることを祝いたい。 ・・・・・そして過日の皇女の件では大変な迷惑を掛けたことを、まずは詫びたいのだが、そなたの妃の塩梅は如何だろうか。 それに関して深い謝罪と詫びの品を用意しているところだ。 真に申し訳なく・・・・ しかし、それだけ皇女は本気で白陽国正妃を望んでいるということなのだ。 もう一度考えてはくれないだろうか」

宗広国国王が謁見の間にて、穏やかな表情を浮かべて声高らかに伝えると、途端に場の空気に変化が見え始める。 陛下の背後に控える大臣、高官らが視線を落として沈黙し、宗広国謁見の間は異様な静けさに満ちた。 国王側近らがその静けさに慌てて宴会を用意していると場所の移動を勧めたのだが、白陽国側は誰一人立ち上がることなく、その場は再び重苦しい沈黙が広がることとなる。

整った顔は凪いだ海のように静かに見えるが、その瞳が全てを裏切るが如く激昂していた。
冷酷な表情で王の象徴ともいえる毛皮のついた外套を払いながら立ち上がった陛下に、氾大臣以下、付き従ってきた臣下はこの後の惨劇を思い浮かべ、息を呑む。
氾大臣が柔和な瞳で陛下の背を見つめ、李順が小さく息を吐いた。

「宗広国国王、そなたの娘御が我が妃に何をしたのか、重々承知でそのような戯言を口にするとはな・・・・・。 あれは我が唯一の妃だ。 その唯一を失うことになるところだったというのに、何を再考しろと謂うのか理解が出来ぬが?」
「・・・・それは、皇女の想いがそれだけ貴殿に重きをおいている証として・・・・」
「はっ! では我が妃の、私への想いは皇女に比ぶると軽いと申すか? 更には我が国の王宮や後宮奥にまで刺客を送って寄越す、その行動すらも愛しく思えと申すか?」
「い、いえ、そうではなく・・・。 しかし今後の国交を鑑みるに、皇女との婚姻は両国にとって最良と考えられないだろうか。 多少の遺恨は残るだろうが、是非とも皇女との婚姻を考えて頂きたい」

薄い笑みを浮かべた陛下は瞼を伏せ、咽喉の奥でくぐもった哂いを漏らした。 
李順が思わず立ち上がろうとした時、氾大臣が拱手しながら恭しく進み出る。

「恐れながら宗広国国王陛下へ申し上げます。 皇女様のお気持ちは別として、しかし我が国としても陛下唯一の妃が危うく命を落としかねない状況で御座いました。 その責はただ謝罪を受け取りましても、我が陛下の御立腹は解消されません。 我が国の宮刑は先に送り届けた刺客の骸を・・・・ 失礼、送り届けた品をご覧になっているのでしたら御理解も出来ましょう。 これ以上の戯言を陛下に対して申し上げるのでしたら、まずは謝罪よりも妃暗殺の首謀者に刑罰を与えて差し上げたいと存じます」

氾大臣の言葉に対し、宗広国国王側大臣らが 「幾ら皇女が認めても証拠はないだろう」 「第一皇女に宮刑なぞ畏れ多い」 「我が国に戦いを申し込むつもりか」 「下っ端妃の命と同等にされるとは」 などと憤りを露わに一斉にざわめき出す。 そのざわめきに、氾大臣の背後に控えていた二人の高官が静かに立ち上がると書簡を紐解き、滔々と読み上げ始めた。

「今回、妃殺害に関して使われた毒茶、刃に付着した毒薬、使用された刺客を詳細に調べましたところ、宗広国王宮縁の薬師二名が関わっていること証拠として押えて御座います。 誰の指示によるものか、毒の入手経路、刺客の足取りなど、全て揃っております」
「刺客の言上を御疑いであれば、この場に引き立てることも構いませんが如何様に?」
 
冷静な声が謁見の間に透るように響き、水を打ったかのように静まり返ったのを確かめ、李順が合図をすると縄を打たれた刺客が引き立てられた。 片袖を引き千切られており、その肩には刺青が彫られている。 宗広国皇女の名を称える意味合いを持つ、宗広国では知られた隠語が彫られており、この国の人間であることは明らかだった。
更に運ばれた刃や茶に使用された毒は薬師の手によるものであるが、茶葉はこの国の特産品であり、刃は刀鍛冶を調べればどの流派の仕業が知れたものだ。 もちろん白陽国にいる鍛冶の手のものではない。
薬師の名前も告げられ、そこまで揃えられた証拠を前に、宗広国国王及び大臣らは黙り込むしかない。 黙り込んだ国王へと、陛下は静かに視線を向けた。

「・・・・もう一度伝えよう。 私が慈しむ唯一の妃に対し、貴国の皇女は刃を向けた。 それなのにまだ話をしたいと申すのだろうか。 これ以上話しをしていると貴国の謁見の間を血で穢しそうになる。 私がその責を求めたら貴殿は差し出してくれるのだろうか」
「そ、それは・・・・。 皇女のしたことと我が認めているのだ、これ以上隠し立てはすまい。 全てにおいて詫びをし改めて謝罪の場を設け、今後の国交に関して幾つかの条件変更を申し出よう。 だから皇女に責を負わせることは・・・・・お願い申し上げる」
「何度我が妃が狙われ、傷ついたか・・・・王は御承知か?」
 
右肩に掛かっている外套を払い、腰に佩いているモノを撫でながら陛下が妖艶に微笑んだ。
飾り気のない、細かな傷を付け薄汚れた感がある実用重視の大刀は陛下の指になぞられ、その存在感を周囲の者たちへと示した。
口端を薄っすらと持ち上げながらもその瞳は底冷えするような残酷な昏いもので、陛下が何を謂わんとしているか隠すつもりがないと態で示していると判る。 

「白陽国国王陛下のお気持ちは重々伝わった。 ・・・・再度深く陳謝すると共に此度の詫びとして両国間で取り決めた規約を見直しし、貴国の条件を・・・全て呑もう・・・・」
「それに関しては大臣らに任せるとする。 氾史晴、李順、任せる」
「陛下の御心のままに」
 
外套を元に戻した陛下が用は済んだとばかりに退室しようとした時、謁見の間扉向こうで甲高い声とそれを抑える弱々しい声が重なって聞こえて来た。

「放しなさいっ! わたくしに手を出せば如何なるか、承知の上で止めると言うの!? わたくしは父王に話しがあるだけですわ! 手出し無用です!」
「しかし白陽国使節団の皆々様がいらっしゃいますので、暫しお待ちを願いますっ」
「国王より宮より御出にならないようにと、お話しがあったと伺っております!」
「お願いで御座います、皇女様。 暫しお待ち下さいませ!」
「もう長いこと待ち続けたわ! わたくしもお会いする用事があるのです、お退き!」

聞き間違いようのない皇女の声に国王は顔に手を宛がい、息を吐く。 そして片手を持ち上げ扉を開けるよう伝えると、先ほど聞こえて来た声の人物とは思えない可愛らしい顔立ちの華奢な皇女が現れた。 豪奢な衣装に身を包んだ皇女は静々と王の元へと足を進め恭しく拱手する。

「御父様、白陽国国王陛下が此方にいらっしゃると伺い、待ち切れなくて来てしまいましたわ。 御挨拶させて頂いても宜しいでしょうか」

静まり返った場の雰囲気に気付くことなく、頬を染め可愛らしい仕草で父王を見上げる皇女に国王は瞑目した。 このまま珀黎翔が場を去れば、後でどのようにも言い包めることが出来ようものを、皇女が嬉しそうに姿を見せては、これでは火に油だ。
そっと瞼を開くと、珀陛下が残酷な視線で娘を見下ろしているのがわかり、眩暈に襲われる。

「・・・・珀陛下、紹介する。 我が国の皇女であり、娘の涼華だ」
「用件は終わった。 国境視察があるため失礼する」

視線を逸らした陛下は扉へと足を進め立ち去ろうとした。 その動きに驚愕の表情を呈した皇女が陛下に急ぎ声を掛け、思いの丈を切々と訴え出す。

「珀陛下っ! 以前より父王から幾度もわたくしとの縁談の話しが出ていると思います。 使節団からもそのような話しを伺ってはおりませんか? 陛下はわたくしを所望したいと御思いになりませんか? 陛下のために、わたくしなら今の妃よりも充分役に立つと」
「・・・・・李順」

皇女の言葉を断ち切り、陛下は側近に声を掛けた。 
低頭した側近が短く返答して視線を向けると、陛下は大仰に溜息を吐いた。 

「この場は空気が悪い。 急ぎ王宮に戻るから馬を用意させろ」 

そう告げると警護兵と共に謁見の間を足早に離れて行った。
大きく瞳を見開いた皇女が陛下の背を見送り、そして父王に振り返った。 国王は首を横に振り皇女の気持ちは無駄だと伝えようとしたが、それよりも早く侍女らを伴い、彼女は足早に陛下を追い掛け出してしまう。 国王はそれを見て、慌てて警護兵に後を追うよう伝え、そして椅子へと力なく身を沈めた。

氾大臣が小さく苦笑し、折角同盟を為したが、その内我が国の属国になる日も近いのかなと口の中で呟いき、新たに結ぶ国交に関しての話し合いをすべく立ち上がった。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:08:08 | トラックバック(0) | コメント(4)
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2013-03-17 日 16:41:26 | | [編集]
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2013-03-17 日 17:46:37 | | [編集]
Re: 終始狼Σ(゜Д゜)
ダブルS様、コメありがとう御座います。実は、昨年のストーカー被害件数が過去最大と知って思いついた話。怖い人物の増加が、自分達の身の回りには居ないことを願うばかりです。 今回も夕鈴不在ですが、ラストはイチャイチャ出来るように妄想中です。 ラストまでもう少し、お付き合い下さいませ。
2013-03-18 月 08:04:32 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 次も夕鈴お留守番です。 ああ、主人公不在が続いてるー! ラストは出来るだけ壊れた陛下を出しますのでお待ち下さい。(待ってない?) 嫁いで来た時に居たワンコは11歳で亡くなり最後を自宅で看取りました。 それから5年して今のワンコが来ましたが、前のも今のも結構おばかさん。 そこが可愛いんですけどって、言ってる事態「親ばか」してます。 ペンション、キャンプ、温泉など、結構一緒に出掛けてますね~。洋服は着せてませんけど・・・ 似合わないんです。
2013-03-18 月 08:10:00 | URL | あお [編集]
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