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殷紅彩  11
春分の日の夜、急に胃が痛くなり、夜間救急診療所にタクシーで行って来ました。半日以上のた打ち回るほどの激しい胃の痛みと戦って来ましたが、診療所にて15年ぶりに点滴ぷらす痛み止めと御対面。丸一日痛みと付き合い、やっとPCを開くことが出来ました。娘の受験で参っていた胃が卒業式でほっとしたのか、ただの胃腸炎か。
健康のありがたみがひしひしと・・・・。 お粥が美味しいです。くすん。

今回、懐かしい話を掘り起こして来ました。 「飾り付けた鎖を君に」のオリジナルキャラが出て来ます。 懐かしくて自分で読み直して恥ずかしくなった・・・・・。


では、どうぞ。







 








夕鈴は身体を包む腕の強さと共に温かさに包まれ、表面だけ繕った言葉を伝えた自分が恥ずかしく、同時に陛下の傍にまだ居ていいのだと安堵する醜歪な気持ちを知られたくないと抗った。 居た堪れない気持ちのまま、陛下の胸を押し出すが、包み込む力は強く束縛は容易に外れない。 困惑しながらも胸が高まり、自分の手が震えてしまうのを夕鈴は押し隠そうと陛下の胸の内で深く息を呑んだ。
 
「陛下・・・・ 私は大丈夫だったんです。 ですから国のことを一番に考えて下さい」
「君がそういう君だから、僕は僕らしく居られる。 でも君が傷付くことも悲しむことも赦してはおけないと判って欲しいし、今回はこれ以上訊かないで欲しい。 これ以上皇女を庇ったり自分は大丈夫と言い続けると、君に何かしてしまいたくなる。 ・・・・・几家に携わっていた時みたいに僕に翻弄されたくないだろう?」
「そ、それは・・・・! ・・・・・ごめんな・・・・ さい」
「謝って欲しい訳じゃ・・・ はぁ・・・、皇女には手出ししてないよ。 夕鈴ならそう言うだろうと思って我慢した。 多少脅しはしたけど後は氾や李順に任せて来たんだ」
「そう、ですか。 それなら上手く話しは進みそうですね・・・・・」

安堵と共にこれから陛下には同じような話しが幾度も舞い込むのだろうと想像出来た。
出来ることなら借金返済が終わって下町に戻るまでは聞きたくないと願ってしまう。 陛下の御世のために必要だと解かっているのに、こんなことを考える自分は酷く利己的だ。 それが恋なのだと解かっているだけに皇女をどうしても憎めない。 
顔を見てないからかも知れないが、紅珠の時にも彼女本人を嫌うなんて出来なかった。
背に回る陛下の手が温かく、身体を委ねている内に薬湯のせいで眠気が訪れる。 

「陛下・・・・・ ごめんなさい、少し寝ます。 陛下も今の内に少しお休み下さいませ。 お土産、あとで一緒に食べましょ・・・・」


重くなった瞼をゆっくり閉じ、君は僕の胸の中で眠りに入ってしまった。 
本当、無防備にも程があるよね。
僕が食べたいのは胸の内の兎だと伝えたら、君は一体どんな顔を見せてくれるだろうか。 
痩せた君をそっと寝台に寝かせると、口の端に胡麻粒が付いているのが見える。 狼の前で無防備に寝ている君が悪いよねと舌で舐め取ると、擽ったかったのか夕鈴は眉を寄せて寝返りを打った。 君が嫌がるだろうから僕は早々にあの国から離れたが、あれ以上あの輩共に付き合っていたら何を言い出したか、若しくは他国の殿を赤茶色の錆臭い模様に染め上げていたかも知れない。 ただ、手を出さなかったのは夕鈴が嫌がるだろうと思えただけで、そう思えなければ本気であの皇女を引渡して貰うところだ。 
今回どれだけ夕鈴が傷付いたことか、同じ目に遭わすだけでは収まりがつかないだろう。 
それこそ、君には知られたくない一面が増えていくだけだと解かっていようとも、だ。 
しかしやっぱり君は君らしくて、そんなことは望んでいないのは、よくわかっている。

だから君がいいんだと、そんな君を望むのだと強く伝えられる日が来るのが楽しみだ。

「このまま夕鈴と一緒に休みたいけど・・・・・。 今の内に浩大からここ数日の報告でも聞いておくか。 夜にはまた来るからね、夕鈴」
「・・・ん・・・ へ・・・・」

頬を撫でて離れようとした時、小さな声で僕の名を呟いたのが聞こえた。 
呟きにも似たその言葉に僕は顔が綻んでしまうのを止めようがない。 
これから政務室に顔を出すのに、この顔じゃ・・・・無理だろう。 それは流石に駄目だと制する気持ちを無視して、小犬のフリで僕は君の横に転がり込む。 眠り込んだ君の体温に思わず眠りを誘われ、抱き締めながらそっと苦笑を漏らした。

「不思議だけど、夕鈴の傍に居るだけで僕の世界の色が変わっていく。 闇色の昏い赤が夜明け間近の鮮やかな色へ、錆た血色が肥沃な土地の色に変わっていく気がするんだ。 ああ・・・・ もう逃がしたくないから逃がさないことに決めたからね、夕鈴。 君に何度でも 『おかえりなさい』 を言って貰いたいから」

君の耳に届かない独白は僕自身の決意表明。 煩い側近が居ない束の間の泡沫の時間。
夕鈴の身体をそっと抱え込み、暫し甘い夢の中へと沈み込んだ。










翌日の午後、早々と宗広国から戻って来た使節団は満足げな表情で署名調印が済んだ書簡書類を陛下へと差し出した。 その内容は想定以上の結果を示しており、どれだけ宗広国側を追い込んだのか嗤いが漏れてしまう程だ。 側近である李順が満足げに書簡を指し、結果報告を行う様は恐ろしいほど機嫌が良く、槍の雨でも降ってこようかと思われた。

「白陽国国王陛下唯一の妃を傷付けたのですから、これくらいで済んであちらも納得して居りますでしょう。 皇女を差し出すよりはマシなのではないですか?」

その妃殺害を目論んだ過去を持つ氾大臣が朗々と語ると、李順が眇めた視線でちらりと見やったが陛下に顔を向けると恭しく低頭し、全て上手く片付いたと柔和な笑顔で纏めた。
心から陛下唯一の妃への危害が減ることを喜んでいる臣下の笑顔を見せる。

「後日宗広国よりお妃様へ詫びの品が届く予定で御座います。 重々御調べして品に問題ないことを確認し、御礼の書状を出すこととしましょう。 皇女様に関しては李順殿より別報告とさせて頂きます」
「そうか。 氾大臣ら皆、御苦労であった。 今日はこのまま下がってよい」

思った以上に有利となった結果を一番に喜んでいるのは李順と外相大臣だろう。 あとは置いてきた間諜が何かあれば報告を上げる。 あれだけ脅しておけば暫くの間は大人しいだろうが、咽喉元過ぎれば・・・・ となるのは目に見えている。 そうなる前に間諜が新たな楔を探すまでだ。
大臣らが下がった謁見の間より執務室に移動し、陛下は薄く笑って李順を振り返る。

「李順、結果夕鈴を使ってかなりの得をしたのはお前だろうな」
「いいえ、私ではなく国庫で御座いましょう。 しかし、ここまで夕鈴殿が傷付くのは想定外。 執拗な手口と後宮にまで侍女や果物を使うなど、当方側も今後を考えて対応策を考える必要がありますね。 検討課題として申し伝えましょう。 浩大もそのように対策を」
「了解っす! まじお妃ちゃん、可哀想だもんな。 傷が残らなきゃいいけどさ」
「傷・・・・。 そうだ、夕鈴の足の傷・・・・」

浩大の言葉に即座に陛下が反応する。 眉間に皺が寄り、受けた傷を思い浮かべているのだろうと浩大が想像した通り椅子より立ち上がると、李順が訝しむ視線を陛下に投げ掛けた。 山と詰まれた書簡を前にまさか、と眼鏡を持ち上げ、ひとつ咳払いで滔滔と説明を始める。

「・・・・夕鈴殿の傷は残るようなものでは無いと聞いております。 解毒も出来ておりますし、危険手当も上乗せして渡す旨を伝えてあり、夕鈴殿も納得されています」
「傷の具合を見てくるだけだ。 書類は後で目を通す。 気になったままでは捗らない」
 
李順が次の口を開く前に執務室から去って行った陛下に、嘆息の見送りをするしかない。
浩大が 「皇女さんは如何だった?」 と訊いきたので李順が振り返ると、彼の目が殺気立っているのが判る。 それもそうだろう。 警護対象がこれほどまでに何度も襲われ、傷を負っているのだ。 隠密としての彼の矜持もあったものじゃない。

「此方に足を一歩でも踏み入れることようでしたら宮刑に処する旨を宗広国に伝えてあります。 その話し合いの最中に皇女が姿を見せ、陛下は国境視察に向うつもりだったところを掴まったそうですよ」
「皇女に? 陛下が? うわぁ・・・。 よくその場で斬り殺さなかったな」

懐から菓子を取り出した浩大が思わず身体を強張らせた。 これだけ王宮や後宮に刺客を放った黒幕を相手によくぞ手を出さずに堪えたなと、浩大は口角を上げた。

「直前に、国王より謝罪を受けていたのが多少良かったのと、警備隊長が同盟を為したばかりだからと懇願したそうです。 多少その場で皇女と揉めたそうですが、陛下が手を下すことはどうにか免れたと報告を受けています。 脅しはされたそうですがね。 まあ、謝罪と同盟の件だけで手を出すのを止めた訳ではないのでしょうが」

万が一皇女に処断を下したとバイト娘に知られたら、自分がどう思われるかを想像して抑えた可能性も捨てきれないと考えると、それはそれで面倒なことだと顳顬を揉み解す。 
浩大は直ぐに判ったようで、頷いてから菓子を齧り 「それで?」 と促した。

「陛下が宗広国を御発ちになり、我々が貿易関税などの話し合いを行っている最中、皇女が突然乱入されて、改めて自分を推挙するよう国王に懇願されておりましたよ。 御自分が何をされたのか、どうして白陽国に足を入れたら刑に処されるのか理解出来ていない様子に呆れました。 あれでは相思相愛の上、相手が余程の莫迦でなければ一生婚姻は無理でしょう。 これ以上我が国に迷惑を掛けぬよう、たっぷり釘を刺して来ましたが、相手があの皇女では用心はこれからも必要ですね」
「あの量の刺客が引き続き送られてくるのは勘弁・・・・・」

それを聞いて浩大が厭そうな顔をしたが、李順は薄く哂った。

「まあ、それに関して思い出したことがありまして、早速宗広国国王陛下に新たな縁談をお勧めして来ました。 浩大は峯山国を知っていますね」
「それって・・・・・ お妃ちゃんにシツコク付き纏っていた第三皇子の琉鴇が居る国だろ? 知ってるって、怖いほど知ってるよ。 あそこの皇女もすごかったからね。 お妃ちゃんに矢を放っただろう。 身動けないように四阿の支柱に縫い付けてさ~」 

使節団と共に持ってくるのは政ごとだけではない。 
その国と懇意になるには妃献上が至極簡単で、更にその国や政の裏を探りやすいというのがある。 後宮に入ったその後は間諜として王やその周囲の動きを調べたり、王を傀儡としようと寵妃として様々な手管を披露する輩もおり、何を仕出かすのか、それらを調べるのも一苦労だ。
現在 『狼陛下は唯一の妃で満足している』 と妃推挙を全て断っているが、それは関係ないと後宮へ献上しようとする動きは変わらない。 
国として同盟を組みたいがために邪魔な妃を亡き者にしようとする動きや、利己的な考えにより弑逆せんとする動き、陛下への恋に狂って刺客を送ってこともある。 囮としても役立っているバイト娘だが、その小娘に過剰に傾倒する陛下の言動に振り回されるのは、心底面倒だ。

「峯山国の琉鴇より時折、現状貿易に関しての書簡が届きますが、その文章内に下賜とは明確に記されてはいませんが、それを匂わす言葉が混じっており、その度に陛下の機嫌がすこぶる悪くなります。 面倒には面倒をぶつけましょう。 同盟国同士が懇意になるのは多少面倒ですが、皇女からの迷惑が続く方が面倒ですので」
「・・・・確かに、ね」

琉鴇は現在他国との外交に関して、あの一見柔和な相貌で上手く立ち動いているという。
黎翔とは違う面立ちだが、皇女が気に入るように宗広国も此方の意を汲み、上手く勧めていくことだろう。 浩大がそれらを聞き、にやけた顔で執務室から離れて行った。 側近の考えに何かを理解したのか、仕事に戻ったのか。 あとは陛下にそれらを報告したいのだが、後宮に足を向けた陛下がいつ戻るか、それが新たな面倒だと李順は嘆息を漏らす。

「まあ、今回は想定以上に有利な話し合いへと展開出来ましたので、良しとしましょう」

割り増しの危険手当は出すのだから、問題はないでしょうと李順はほくそ笑んだ。
あとは陛下がいつ戻って政務の山を片付けてくれるかだと嘆息を漏らし続けるだけ。 







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 15:11:11 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-03-22 金 20:14:26 | | [編集]
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2013-03-22 金 21:44:02 | | [編集]
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2013-03-23 土 22:33:57 | | [編集]
Re: さすが!李順!
makimacura様、コメありがとう御座います。胃の調子は復活しました。粥とうどんオンリーで、他に食指を伸ばすとトイレの住人と化してしまうという恐ろしい日々を過ごしました。私もようやく5月号ゲットして、悶え狂ってます。ちょっと距離が縮まってもう、鼻血がぶーです!
2013-03-25 月 00:02:03 | URL | あお [編集]
Re: お久し振りのあの御方!?
ダブルS様、コメありがとう御座います。次から皇子登場する予定ですが、なんか書いている内に性格が変わって来てしまい、あれれ?状態です。そこまで引きが強かったかしら??? 陛下が嫉妬するのは楽しいのですけど、ちょっと壊れ気味です。あおが壊れているからか?? 一番のライバル几鍔兄さん、次の登場はいつになるのか、ドキドキですよね。
2013-03-25 月 00:04:23 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。胃の調子はずいぶん良くなりました。時々うぐっと来ますが、食事も通常に戻りつつあり、やっとお粥地獄から脱却です。途中息子に頼んでサンドイッチを買って貰ったのですが食べた途端に痛みが走り・・・・。その後丸二日は粥おんりーでしたー(笑) でも花見は行きます。飲みます。その為に今大人しくしております。ビスカス様も再発しないようにお大事にして下さいね。
2013-03-25 月 00:10:07 | URL | あお [編集]
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