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殷紅彩  13

皇子が出てきて少々揉め始めましたが、皇女はすんなり乗り換えました。(爆) その後をもう少し書きたいので、お暇な方は御付き合い下さいませ。 あ、陛下は今回も壊れてます。
娘がコンタクト希望を申し出て、人の予定の中へ勝手に眼科受診を押し込みました。 人の休みを何だと思っているのでしょうか。 眼鏡っ娘でいいじゃないか。




では、どうぞ。














案外人を見るのは長けているのかと陛下が琉鴇を見つめると、今度は皇子が見上げて来た。
 
「あの皇女は人の言うことなど聞きはしませんよ。 それに私の気持ちは変わらないと何度も伝えてますでしょう。 ああ・・・・・ 出来ることなら直接お妃様のお顔を見て伝えたいですね」

皇子は陛下の背後に向かって甘く低い声で囁くように言葉を紡いだ。 直後自分の背にしがみ付く夕鈴に気付き、何故脱力したかを知った陛下は青筋を立てて皇子を睨み付け、怒気を揺らめかせる。 飄々とした態度で陛下を見返す皇子は何があったか理解し、嬉しそうな表情を浮かべて笑いを漏らした。

「・・・・・お妃様はやはりお可愛らしいですね」
「人の妃に声を掛けるな! あの国は国王が皇女に甘い。 峯山国も同じだろうから対応はお手の物だろう。 以前我が妃に向けた矢の報復だと思い、面倒でも話を受けたらどうだ? 同じことを私にも勧めたではないか」
「それを陛下に言われると辛いのですが、私の気持ちはお妃様一筋です。 陛下の背後で私の声音に打ち震えるお妃様の姿を想像するだけでぞくぞくしますね」
「・・・っ! 陛下駄目です!」

陛下の手が腰に佩いているモノへと動くのが見え、背後の夕鈴は慌ててそれを止めた。 
背後にいても判るほどの怒気に手が震えてしまうが、他国の皇子に向けて抜刀させる訳にはいかない。 夕鈴が陛下の手にしがみ付き必死に止めようと踏ん張っていると、ゆっくりとその力が抜けてきた。 

「・・・・・では皇子、頑張って皇女から逃げ回るがいい」
「あ、夕鈴様と少しでもお話を・・・・」
「我が妃の名を語るなと伝えたっ! 書簡にも必要のないことは二度と書かぬように!」
「では半年後の話し合いに御会いするのを楽しみにしましょう。 今度は使節団長として御会い出来ますよ。 お妃様に御似合いの献上品を持参しますから、楽しみにお待ち下さいませ」
 
背後の夕鈴を抱き上げた陛下は皇子に返答もせず、後宮へと早足で向って行った。 陛下の肩越しから、にこやかに手を振る皇子が見えたが、夕鈴はなんと言っていいのか判らない。 
目礼だけすると皇子の笑みが一層深まった気がして思わず顔を伏せた。 
夕鈴の部屋に入ると直ぐに侍女を下がらせた陛下は見るからに不機嫌で、狼のまま。

「お、驚きました! 琉鴇皇子の雰囲気が以前と随分変わりましたねー!」
 
夕鈴は焦っていつも以上に明るい声で話し掛けるが、陛下の機嫌は悪いままで浮上する様子がない。 どうしたらいいのか判らず、困ったものだ思いながら夕鈴は話し続けた。

「あの、あのっ陛下! 李順さんが勧めた皇女への縁談相手って、琉鴇皇子だったのですか」
「傍若無人な莫迦には、執念深い輩を充てようと思ってな。 まあ、皇女は上手くその気になったようだから良しとするか。 しかしアイツがここにまで顔を出すのは想定外だ」
「・・・・・まだ下賜の件をお忘れではなかったのですね」

本当に皇子は随分変わったように見えた。 
妃を翻弄する言葉は変わらないが、自己中心的で我が儘だった皇子ではないように思える。 
団長として仕事を任されるようになったという彼に、以前自分に矢を放った妹皇女を庇って蒼褪めていた皇子を思い出した。 あの後から彼が変わったのだとしたら、自分が狙われていたことも追い掛けられていたことも、全て蟠りなく赦せてしまう。 
未だに下賜を繰り返し訴えていることには戸惑うが、通常の貴族子女と掛け離れた当時の私の言動を見て、もの珍しさから興味本位で気持ちが動いているだけだろう。 よく見知ったらただの粗忽者と飽きられることは間違いない。
次に皇子が白陽国へ来た時は、借金返済が終って自分は王宮から姿を消しているかも知れない。 そうなれば後宮で陛下の相手をされるのは次のバイト妃か、もしかすると正式な妃を娶られているだろうから、皇子も私のことなど直ぐに忘れてくれるだろうと夕鈴は瞳を閉じた。
  
それにしても李順さんは動くのが早い。 
宗広国も琉鴇皇子を熱烈歓迎って、陛下はどれだけ脅してきたのだろうか。 豪奢な肩衣を纏った狼陛下に凄まれると確かに怖いだろうなと、夕鈴は自分の想像に笑みを零した。

「夕鈴・・・・ どうして嬉しそう? 琉鴇に会ったから?」
「へ? いえ、違いますよ。 そうではなくて・・・・・ 狼陛下を想像しただけです」
「僕を想像して? 僕が何かした?」

振り向くと長椅子に腰掛けているのは小犬陛下。 きょとんとして自分を見上げている陛下に口端が緩んでしまう。 誰もこちらが素だとは思いもしないだろう。 
夕鈴はお茶を淹れながら小犬陛下に笑ってしまう自分が止められなくなる。

「皇女様が陛下から琉鴇皇子へと御心を変えたのは嬉しいのですが、宗広国をどれだけ脅してきたのだろうと、狼陛下の演技を想像してしまい思わず笑ってしまいました。 陛下は本当に演技がお上手ですからね」
「夕鈴、嬉しいって今の・・・・・・・・」
「え? 何ですか、陛下」
「・・・・・・いや、うん。 何でもない」

余計なことを尋ねて後でがっかりするのは想像に易い。 夕鈴が今零した言葉の意味はきっと自分の想像とは違うだろう。 皇女の気持ちが変わって嬉しいと言うのは、夕鈴が狙われる心配がなくなって嬉しいという意味に違いない。 夕鈴の言葉にドキドキしてして、後で勘違いだったと落ち込むのは目に見えている。   
僕は言葉を誤魔化したまま曖昧な笑顔を浮かべて夕鈴からお茶を受け取った。 顔を上げると、眉根を寄せた夕鈴は何だろうという顔をして、頬を染めている訳でもない。 
その表情を見つめ、やっぱり自分の思い違いかと肩を落とした。

「氾や李順が上手く話を進めることが出来たのは、夕鈴がいっぱい傷付いたからだよ。 本当にごめんね。 今回は割り増しで危険手当が出たとは聞いたけど・・・・・ 足りないよね?」
「いいえ! 季節が変わり新たな教科書代が掛かることをすっかり忘れていたので、大助かりだったんです! もう、どうしようかと悩んでいたので本当に良かったです。 あ、勿論痛いのは厭ですよ? でも本当に臨時収入でもなかったら、最悪父さんが几鍔から借りるんじゃないかと心配していたから良かったです!」

久し振りに聞いた夕鈴の幼馴染君の名前。 忘れていたが、下町にも面倒な輩がいたんだと舌打ちしたくなる。 君は今、後宮で僕のお嫁さんをしているけど、幼馴染君に邪魔されないように彼にも誰か紹介してあげようかな。 夕鈴がここにいる間に幼馴染君が誰かと懇意になっていたら助かるんだけどな。 ああ、最強のライバルが残っているのを忘れていた。 
夕鈴の大事な弟君が官吏になるまで、君は一生懸命に頑張り続けるんだろうな。 
でも夕鈴、君が頑張る姿を見守るのは近くがいい。 いつまでも君の傍で見守らせて欲しい。

「そうか・・・・。 もし足りないようだったら言ってね。 皇子からの迷惑代を追加するよ」
「陛下、それは上司の李順さんがきっと即答で却下すると思いますよ?」

くすくす笑う夕鈴に肩から力が抜ける。 刺客により傷や毒を受け、今度は矢で射られたこともある過去が現れたというのに君は柔らかい笑顔を浮かべている。 
その笑顔に僕は癒されていると言葉にするより自然に手が動いていた。 隣に座っている夕鈴の手を握り締めて君の笑みに微笑を返すと、急に怪訝な顔を向けられてしまう。

「・・・・・夕鈴、何でそんな顔するの?」
「陛下こそ、侍女さんを下がらせているのに何故手を握ります?」

演技では無いと口にする前に君は僕の手を振り払って立ち上がり、菓子を持って戻って来た。

「陛下が宗広国からお戻りの時にお土産に買って来て下さった菓子がまだ残っているんです。 一緒に召し上がりましょう? これは干菓子ですね。 可愛らしい花形で食べるのが勿体無いですよね。 食べちゃいますけど!」

差し出された皿には僕が買った菓子があって、君が楽しそうに口に運ぶから、口を開けて誘ってみた。 ギョッとした顔で僕を見つめる夕鈴に頷くと、君は渋々と菓子を口へと運んでくれる。 
こんな時間が続くように願いながら菓子を噛み砕くと甘酸っぱい味が口いっぱいに広がった。

「なんか夕鈴みたいな味だね」
「・・・・・人の頬を饅頭みたいと言ったこと、私・・・・ 忘れませんからね」

饅頭みたいに頬を膨らませた夕鈴を見ていると、余りの可愛さに頭から齧り付きたくなる。 
そう言ったら君はどんな顔をするだろうか。 きっと真っ赤な顔で怒るんだろうな。 そんな顔も見てみたいと言ったら家出、いや王宮出をしちゃうかも知れない。

「皇子が白陽国から出るまで、夕鈴は後宮から出ちゃ駄目だよ。 連れて行かれちゃうから」
「そんなこと皇子がされる訳ないでしょう? それより陛下はお仕事頑張って下さい! 私は政務室前に置き去りにしている侍女さんを迎えに行って、書庫で少し整理をして来ますね」
「書庫なら・・・・ 大丈夫か、な。 でも皇子が来たら直ぐに逃げてね」

僕の心配を余所に君は大丈夫だと笑いながら立ち上がった。 確かに政務は溜まっている。
仕方なしに立ち上がり夕鈴と一緒に政務室に向かい、夕鈴が書庫へ足を向けたのを見送ると直ぐに李順が大量の書簡を携えて暗い笑みを零しながら寄って来た。 
思い切り厭な顔を見せるも、李順は表情を変えずにさっさと仕事を始めろと睨ねつけて来る。

「峯山国から琉鴇皇子が縁談に関して少々文句を言いに足を運びましたが、皇女が皇子に関心を向けているという事実確認が出来て何よりです。 さて、その問題は上手く片付きましたので、陛下は溜まりに溜まった政務を上手く片付けて下さいませ」
「・・・・・・本当に山を築きそうだな。 琉鴇皇子は帰国の途に着いたか?」
「外相担当大臣らと少々話し合いを行い、その後お帰りになる予定です」

執務室に入ると大量の書簡と書類、振り向けば背後に新たな大量の書簡を持った側近。 
それでも仕方が無いと仕事を始めると、遠くで何か騒いでいる音と声が聞こえて来る。 

「騒がしいが、何だ?」

眉間に皺を寄せて李順に問うと、側近は更に深い皺を刻んで執務室から出て行った。 騒がしいのは政務室方向だと判るが、李順に見に行かせているから報告が来るだろうと目の前の書簡に集中して筆を走らせる。 しばらくすると李順が戻り、何があったか問うと夕鈴が書庫で騒いでいたから厳重に注意してきたと眼鏡を持ち上げ嘆息を漏らした。

「ああ、書庫で柳方淵といつもの睨み合いでも始めたのか。 天敵だな、全く」
「夕鈴殿には逃げ回らずに、妃らしい対応をするよう伝えて来ました。 半刻もすると彼も国へ戻るでしょうし、妃らしく毅然とした態度を取って貰わねば、何のためのお妃教育か」

李順の言葉に厭なものを感じ、陛下は顔を上げた。 
目の前に差し出された書簡を横へとずらし訝しむ視線を投げ掛けると李順は面倒だと口を閉じる。 バイト娘より仕事が先だと目で促されたが、夕鈴に関する嫌な予感は大抵当たる。

「李順、正直に伝えよ」
「・・・・・峯山国の皇子が書庫に顔を出したんですよ。 回廊に佇む侍女の姿を見て、妃が居ると知ったのでしょう。 皇子が書庫に入り込み、夕鈴殿が慌てて逃げ出そうとしたそうで、方淵が騒ぐなと怒鳴り出し、全く御しとやかという意味を再教育しなければなりませんね」
「それより、書庫から皇子は追い出したのか?」 

何故ですかとばかりに首を傾げた李順に苛立ちが増す。 
眼鏡を持ち上げて心底面倒だとばかりに、書簡を広げて書けと促しながら説明を始めた。 

「琉鴇皇子より、また縁談に関しての文句がありましたので、宗広国の皇女により妃が大変苦労された話を伝えましたところ大層驚かれ、それならば皇女の気持ちを自分に向けるよう努めるから、代わりに妃との時間を少し頂けないかと交換条件を出されました」
「あいつは・・・・・っ」

舌打ちをするも李順の態度は変わらず、滔々と話を続ける。

「そこで、皇女の関心が完全に陛下から離れるよう御協力頂けるならと、半刻ばかり夕鈴殿には妃らしく賓客の相手をするように命じております。 陛下、夕鈴殿には桐を配しておりますので、貴方はここで動かずに政務に励まれて下さい」
「夕鈴は我が妃だろう! 何故他国の皇子といちゃいちゃするのを許可するのだ?」
「ですから、夕鈴殿はバイトですと何度・・・・・ 陛下ーっ!!」

李順の怒声の後、執務室に響くは床に転がり落ちた筆の音だけ。 
山と詰まれた書類が崩れそうになり、慌てて押えながら鬼の側近は湯気を立てるが、今さらであることは明白だ。 書庫に顔を出したバイト小娘に沸々と怒りが湧いてくるのを、李順は抑えようがなかった。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:50:13 | トラックバック(0) | コメント(4)
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2013-03-27 水 20:03:13 | | [編集]
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2013-03-27 水 22:10:24 | | [編集]
Re: 悪いのは誰…?
ダブルS様、コメありがとう御座います。 なんか話が紆余曲折してきました。ギャグになってきた様子で、皇子を動かすのが楽しくて仕方が無い。迷走しております。最後までお付き合いして下さるとの有難い言葉に甘え、爆走しております。
2013-03-28 木 18:31:39 | URL | あお [編集]
Re: 夕鈴、がんばれ~!
makimacura様、コメありがとう御座います。 李順の怒り・・・・。 ごめん、本誌を読んでつい・・・・(笑) もう少しだけ皇子出しますので、ご勘弁を。 高貴な身分の男達に振り回される夕鈴って、書いていて超楽しいんです。 次も皇子が出ますので、よろしく御付き合い下さいませ。
2013-03-28 木 18:34:10 | URL | あお [編集]
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