スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
思案の外  2
陛下と夕鈴のコントのようなやり取りを書くのが一番楽しい。 
新しいオリジナルキャラさんも、どうぞよろしくお願いします。 
あ、娘がロールケーキを焼いてくれた。シフォン生地のしっとりしたケーキで美味しかった! 



では、どうぞ。














辺境の地の守り神とも比喩されるほどの剣術の遣い手で、陛下が褒めるくらいの人物だ。 
他国にまで流れているという 『後宮の悪女』 を直に見に来たのかも知れないと、慌てた夕鈴は団扇を膝に置き、真面目な顔でじっと賀祥を見つめた。
その視線に彼はゆっくりと手を上げて口元を隠し、視線を彷徨わせて卓上へと向けた。 
夕鈴も同じように卓上に視線を動かし、そこで自分が持ってきた菓子を思い出す。

「あ、あの、お菓子を持って来ましたので召し上がりませんか? とても美味しい菓子を頂いたので、どうぞ! あ、お茶の用意もしてくるんだった。 ちょっと用意に戻っても宜しいでしょうか」
「いい。 君のお茶は私だけが味わうことが出来る。 賀祥はあとで水でも飲めばいいだろう」

遠方から来た大事な臣下に何を言うんだと夕鈴が目を剥くと、賀祥は咳払いをして菓子に手を出した。 陛下の言葉に憤慨もせずに自分が持ってきた菓子に手を出してくれるなんて、なんて懐の大きな人だろうと夕鈴が改めて賀祥を見つめると、また視線を逸らされる。
初めて会った人を不躾に見つめ過ぎたのかと夕鈴が急ぎ言葉を探す。

「ど、どうですか? お口に合いますでしょうか?」
「・・・・・・・・」

返事も無く黙々と食べ進める賀祥だが、美味しいと思ってくれたのだろう。 
手は休み無く菓子へと伸びて口へ運んでいる。 
それは安心したわと夕鈴がほっと笑みを零すと、途端に賀祥の手が強張った。

「む、咽ましたか? お茶をお持ちしますか? 大丈夫ですか?」

夕鈴が立ち上がり慌てて賀祥の背を擦ると、彼は酷く驚いて四阿から飛び出さんばかりに後ろへと退いた。 その顔は何をするんだと憤っている・・・・・・ だけではなく、どう見ても真っ赤な動揺を示しており、どうしたらいいのだろうと夕鈴が恐る恐る声を掛ける。

「あ、の・・・・・・」
「ふ、不用意に・・・・ 触る、な・・・・・」

夕鈴の耳に聞こえてくるのは彼が佩いている刀が椅子に触れてカタカタと鳴る小さな音と、次第に大きくなる陛下の嗚咽にも似た笑い声。
 
きょとんとしたまま夕鈴が背後の二人に顔を向けると、二人がにこやかに頷き、浩大がおもむろに賀祥の肩を抑えた。 そして陛下が夕鈴の手を取り、彼の肩に触れさせると驚くほどに賀祥の体が震えて更に後ろへと退こうとするのが判る。

「・・・・・・陛下、如何見ても嫌がっているように見えますので、私の手を離して下さい」

下っ端妃になど触れることを赦さぬといった彼の睨み付けるような雰囲気に、真っ赤になっていたのは怒気なのだろうと、夕鈴は眉根を寄せて恥ずかしそうに椅子の端へと移動した。

「賀祥様、許しも無く触れてしまい誠に申し訳御座いません。 陛下、わたしは後宮に」
「違うよ、夕鈴。 奴は重度の女性恐怖症なだけだ」
「ちっ・・・・ 違う! 少し苦手なだけですっ!!」

真っ赤な顔で身体を震わせ叫ぶような賀祥の声に驚き、女性が苦手だと言う人に無理やり触れてしまったと夕鈴はざっと蒼褪めた。

「も、申し訳御座いません! わ、わたし直ぐに退席致しますので、賀祥様はどうぞ御ゆるりとお過ごし下さいませ! ほ、本当にごめんなさい!」

立ち上がり謝罪を繰り返して四阿から離れようとする夕鈴の腰を攫い、陛下は膝の上に座らせ、背後から腕を回して動けないよう抱え込んだ。 何をするんだと夕鈴が驚愕の眼差しで陛下を見ると、楽しそうに微笑んでいるのが判り、思わず羞恥混じりの怒りに震えてしまう。

「ん? 夕鈴、寒いのか? 震えているぞ」
「寒くはありません! そ、それより御客様の前で何をされるのでしょうか!」
「今日の妃はいつもと違う髪形で愛らしいな。 下ろされた髪が分けられ、君の項がまるで私を誘っているかのようだが」
「誘ってません! それよりも苦手だと御存知の方の近くにわたしを近付けるなど、どうしてそのような嫌がらせをされるのですか? 酷いじゃありませんか! 賀祥様、大丈夫ですからね、直ぐにわたしは離れま・・・・ 離れ・・・・ 陛下、離して下さい!!」

陛下の膝上で足をバタつかせ怒声を上げ始めた妃の姿に、賀祥はぽかんと口を開けた。 
更に妃が暴れているのを嬉しそうな表情で見つめる陛下が、それでも離すまいと腰に回した手に力を入れ、彼女の項に口付ける様を見せ付けられ、賀祥が慌てて視線を逸らした瞬間。

「ぬわあああっ!! な、な・・・・ な、舐めた? 舐めました? 陛下、ひ、人の首を・・・・ 何をするんですかぁっ!!」
「我が妃を食するのは久方振りだからな。 目の前にあるから、つい手が出てしまった」
「てっ、手が出たじゃなくて・・・・・・ くぅうう! いいから離して下さい!」

更に暴れ出した妃の顔は真っ赤に染まり、上品とか気品とかお淑やかとは無縁の、賀祥が見たことの無い女性。 彼女の暴れっぷりに目が離せず、口を開けたまま二人のやり取りを見ていた賀祥に浩大が 「あんな陛下、見たこと無いだろう?」 と含み笑いしながら呟いてくる。
その言葉に確かにと頷くと、漸く賀祥の視線に気がついたのだろう、妃が真っ赤な顔を深紅に染めつつ急に大人しくなり、陛下の膝の上で身を竦ませながら小さく声を漏らす。

「も・・・・ 申し訳御座いません。 お恥ずかしいところを・・・」

いつもと違う陛下の様子に、夕鈴は妃演技のことをすっかり忘れて騒ぎまくってしまった。 
そんな自分を振り返り、激しく落ち込むと同時に鬼のような形相の上司が脳裏に浮かび、夕鈴はガタガタと震え出した。 こんなことが知れたら今月の給料は半分になるかも知れないと蒼白になり、賀祥の顔を見ることも出来ずに深く俯き震え続ける。

恥じ入るように震え俯く妃の様子に、賀祥はひどく驚いていた。 
陛下の唯一とされる妃がこんなに元気な女人だったとは想像すらしていなかったからだ。 
巷で噂される 『後宮の悪女』 『狼陛下を手玉に取り、やりたい放題しているもの凄い美人』 『傾国の美妃』 『後宮の我侭放題な妃』 と謂われている妃が、目の前で恥ずかしげに身を竦ませている娘なのかと驚きを隠せない。
どう見ても 『狼陛下に手玉を取られ、やりたい放題されているもの凄い普通の娘』 にしか見えない。 他者に対して気遣いも出来るし、第一後宮にいるはずの妃の噂がどうして他国にまで流れるのだろうか。 それもこんなにも違った情報が。

「・・・・もしや、陛下。 私を王宮へと呼び出したのは、巷に流れるお妃様の噂の件で御座いますか? 私に噂の出所を調べて欲しいとのことで御座いましょうか」
「違う。 だた私の愛しい妃を賀祥に見せようと思ってな。 女性恐怖症のお前に」

膝上の妃をぎゅっと抱き締めた陛下のその台詞に、眉を顰めた彼女は腹部に回った陛下の手をおもむろに掴み上げ、身体を捻りながら膝上から逃げ出し、振り返ると無言で睨み始めた。
恐ろしいほどに表情を落とした二人は物言わずにしばらくの間、互いを見つめ合うように対峙していたが、妃が口角をふっと持ち上げ薄く口を開いた瞬間、顔色を変えた陛下が急に彼女の身体を担ぎ上げて、四阿から飛び出すように出て行った。

陛下の肩上で妃が何事か騒いでいたが二人の姿はあっという間に後宮庭園の奥へと消え、賀祥が呆然と見送っていると、肩に手を置かれた。 見知った隠密が酷く震えており、真っ赤な顔で目には涙を浮かべながら笑いを堪えている。

「さ・・・ さっきも言ったけど、あんな陛下見たことなんか無いだろ? あー、可笑しい!」

声を抑えて笑い続ける浩大に驚きの表情のまま頷くと、「あれが陛下の唯一だよ」 と我慢も限界と噴き出した。 噂と随分違うじゃないかと伝えると、肩を竦めて 「流言や噂話までは取り締まれないからね~」 と嘯きながら 「ちゃんと出所は確かめているから大丈夫だよん」 と細めた目で昏く嗤い返された。
 
「あ、戻って来た。 ・・・・・知らない振りしてやりなよ」

何がとは聞くまでも無かった。 強張った笑みの妃に対し、少し蒼褪めた感のある陛下が少し距離を開けて四阿へと戻って来たのだ。 多少妃の衣装の乱れが気になるが、言われた通り知らぬふりをする。 場に漂い始めた多少の緊張感は仕方が無いだろう。
椅子に腰掛けた二人は暫し黙っていたが、陛下が嫣然とした笑みを浮かべて妃の手を取ると、少しだけ不機嫌な表情を隠すことなく手を攫われ、妃が顔を陛下へと向けた。

「あー・・・・・ 我が妃に頼みがある。 賀祥は見ての通り女性に対して免疫がない。 話すことも触れることも見られることも苦手だ。 だが彼の父とは先々代の王の時代から懇意にしており、今回奴を見合いが出来るくらいには女性に慣れさせて欲しいと、ついでに頼まれたんだ」
「・・・・ついで?」
「賀祥の実家は地元では一番の豪商。 その上国境近辺の貴族、商人らと懇意にしており、それらを上手く束ねている立場だ。 今後とも上手い付き合いを続けたい。 跡継ぎではないからと、奴はこのまま国境警備隊に従事たいと申し出ているが、それならば見合いくらいしろと父親から厳命されてな。 手伝う羽目になった」
「でも世間には独身の方も大勢居りますし、第一跡継ぎの方がいらっしゃるのでしたら無理に見合いなどなさらなくても良いのではないですか?」
 
夕鈴が首を傾げると、小さな咳払いがして賀祥がその後を引き継いだ。

「歳の離れた兄は体が弱く、子供は望めそうも無いようだと父が話しておりました。 妻を幾人増やしても中々懐妊の兆し無く、その上・・・・・・ その・・・・・」
「夜が弱い旦那の代わりに慰めて欲しいと、夜な夜な寝所に忍び込む女達に辟易したんだって」

最後の浩大の台詞を聞き、眉間に皺を寄せ苦しそうに俯く賀祥に対し、夕鈴は首を傾げる。

「お兄様の代わりに慰めるって・・・・・。 陛下、それはどう言うことなんですか?」

その問いに対して盛大に笑い出したのは浩大。 夕鈴は何よとばかりに頬を膨らませて睨ね付けるが、見ると陛下も震え出し、賀祥は信じられないとばかりに自分を見つめている。 そんなに変なことを口にしたのかしらと夕鈴が慌てて団扇で口元を隠すと、陛下が問いに答えてくれた。

「賀祥の兄嫁たちが、旦那の代わりに自分を抱いて欲しいと寝所に潜り込んでくるそうだ」
「一緒に寝て欲しいってことですよね。 毎夜夢見が悪い・・・・ ってことですか? なかなか子供が出来なくて悪夢に悩んでいるから武官である賀祥様にお縋りしているってこと?」

その問いに浩大が膝を打ちながら転がるように大爆笑を始め、賀祥にすら忍び笑いをされる。 訳が判らない夕鈴は余程変なことを言ったのだろうと、肩を竦めて黙ることにした。 

「まあ、家庭事情は置いておいて、夕鈴に少し時間を貰って賀祥が女性に慣れる手伝いをして貰いたいんだ。 一応好きな女性は居るらしいが声も掛けられず、このままでは親の言う通り無理やり見合いをさせられ、結婚することになるだろう。 おまけに子供が出来たら跡継ぎの子として本家引渡しと言われているそうだ」
「そ、そんな! お兄様の体調改善が先ではありませんか。 結婚を無理強いさせる上に子を取り上げるなんて、そんなこと・・・・・」

笑いをどうにか治めた浩大が、それが貴族間では普通だと話すから、夕鈴は愕然とする。
驚きに動揺を隠せないで居る妃を見て、賀祥が大丈夫ですと続けた。 

「実家は幅広く商いをしており、伝手で頼んでいた薬が届き、その受け取りに来た “ついで” に陛下に捕まった次第で御座います」
「捕まったとは言葉が悪いな。 西方の国境警備副隊長から最近の報告を聞こうと思っただけだ。 直に臣下からの言葉を聞くことも大事だからな。 薬の件は賀大人から聞いてはいるが、どちらが “ついで” だか判らないな」
「・・・・・女性に慣れるお手伝いって、わたしで宜しいのですか。 あ、あの、もっと綺麗な方がいっぱい居ますよ? 侍女さんとか女官さんはわたしよりずっと綺麗でお淑やかです」

先々代の国王陛下の時代から懇意にしている豪商貴族というならば、かなりの身分だろう。 
そんな方の相手にただの庶民が対応していいのだろうか。 何処でぼろを出すか判らないというのに大丈夫なのか?

「そ、それに李順さ・・・ 殿がなんと言うか!」

そうだ、仮とはいえ、臨時とはいえ、一応陛下の妃をしている立場。 
そんな立場のわたしが陛下以外の男性と仲良さげにしていたら駄目なのではないか?? 
・・・・・・でもここまで陛下が話しをするということは。
陛下を見上げると嫣然と微笑んでいて、きっと彼の実家から李順さんが納得するくらい沢山の献上品でも貰ったのだろうなと夕鈴は乾いた笑いを零した。

「・・・・・・では、何から始めたらいいのでしょうか」
「お妃ちゃん、早速で悪いけど、コレを着てね」

浩大が指し示した衣装は。






→ 次へ
スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 02:02:02 | トラックバック(0) | コメント(10)
コメント
なにやら面白いことになってきましたね・

女性に馴れる訓練・馴れたと思ったら実は夕鈴限定だったとかだといい!そして陛下が焼きもちをやく姿に、浩大が笑い転げる様が想像できてしまいます・

いったいどんな展開になるのかしら?とても楽しみです
2013-04-01 月 07:33:14 | URL | ともぞう [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-04-01 月 08:22:54 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-04-01 月 08:35:43 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-04-01 月 10:35:26 | | [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。 なにやら始まってしまいましたが、まだ最後を考えておりません。いつものことじゃ~ん(爆) 陛下が焼きもち妬くのはいいですね~。 浩大ちゃんも活躍・・・・ してくれるかな? うん、頑張って貰いましょう。
2013-04-01 月 19:35:50 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 あらら、お子様大丈夫でしょうか。大変でしたね。ロールケーキを作ってくれた娘ですが、修理を頼んでいるバックはまだやってくれません。 あおはミシンが天敵ですので、直しはお願いしているのですが、まだしてくれません。まだです・・・・。 くすん。 明日やってくれると言ってくれたので涙を堪えて待つことにします。 おまけは突発的に思い浮かびましたので、ちょいと無理やり感がありますが、自分的には楽しかったです。 ビスカス様御家族も楽しい4月になりますよう、祈っております。
2013-04-01 月 19:45:00 | URL | あお [編集]
Re: ワクワク!
makimacura様、コメありがとう御座います。 陛下の焼きもち楽しそうですよね。(ひでぇ!) いろいろな人を巻き込んで妬く陛下って書くのは楽しいです。 今回、いっぱい人が出てくれると楽しいなと思いながら、のんびり書いていきます。御付き合いくだされば幸いです。
2013-04-01 月 19:55:38 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。わくわくして待っていてね~。私自身、まだ何にも考えてないので、焦っておりますが。(笑) 夕鈴の答えに関しては、女性恐怖症の彼は、不思議に思わなかったとしましょう。普段女性と話さないから~(実は焦ってます、私)
2013-04-01 月 19:57:47 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-04-01 月 20:12:42 | | [編集]
Re: やりたい放題(*^^*)
ダブルS様、コメありがとう御座います。大丈夫ですよ。 本誌ではもっと進んでいるので、首舐めくらい良いかと思い、ぺろりとね。 この後の展開を作るのが楽しくて仕方ないのですが、見直しに時間が掛かる手の遅い私です。 SNSでSSを二つ載せたら時間が無くなるし~(笑) のんびり御付き合い頂けると嬉しいです。
2013-04-01 月 23:35:16 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。