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思案の外  5
高校生になったら毎日弁当。息子のはわたしが作ってましたが、娘は自分で作りなさいと以前から言っております。夏の塾講座時はキャラ弁を作っていたので、問題は無いんじゃないかな?今日はグラタンを作ってくれました。褒めて褒めておだてております(^^)





では、どうぞ。














「我が妃の試しは上手く進んでいるようだな」

侍女を下がらせた妃の部屋で、何故か狼陛下が機嫌悪く問い質してきた。 
夕鈴は戸惑いながら頷くが、何故に狼陛下で問い掛けられているのか判らない。
 
「ええ、賀祥様は額に汗を滲ませ、身体を震わせながらも、どうにか耐えてますよ。 ただ、わたしにあれだけ震えているようでは、綺麗どころの女官に手を触れられたら気を失ってしまうかも。 
・・・・道が果てないように思えて、ちょっと思案しているところです」

嘆息して陛下へとお茶を差し出す。 狼陛下はそろそろ解かれたかしらと顔を上げると、薄く笑顔を貼り付けたままの狼が今だ健在で意味が判らないと夕鈴は口を尖らせた。

「・・・・・どうしていつまでも狼陛下なのですか? わたし、何かしましたか?」
「まだ、掛かりそうか?」
「賀祥様は愛しい女性のために誠心誠意頑張ってはいますが、すぐには無理です。 陛下が怒っているのは、それですか? 一日二日でどうにかなると思っていたのですか? そーですか、わたしの指導が悪いって言いたいのですね!」

涙目で強く言い放つと途端に小犬になった陛下から、拗ねた口調で文句が飛び出した。

「ゆーりんが賀祥にいっぱい触っているなんて思っても居なかったから・・・・・」
「へ?」

拗ねた口調のすっかり小犬になった陛下に注目すると、耳と尻尾を下げているのが判る。

「いくら侍官姿とはいえ、背中から頭から触り過ぎだよ、ゆーりん。 今日は背中に抱き付いたんだって? 浩大から聞いて驚いた。 そこまでするとは思ってもいなかったし・・・・」
「・・・・・スキンシップが一番手っ取り早いと思ったのですが、他に何かいい手はありますか? 確かに全身を震わせて額に汗を浮かべてましたし、精神的に逼迫されながら行うのは無理がありますよね。 かと言って、時間も余りないとのことですし。 ・・・・・明日は妃衣装で会おうと思っていたのですが、そこまでは無理でしょうか、陛下」

急に真面目な顔で話しを振って来た夕鈴に陛下は戸惑った。 自分の想像以上に夕鈴は真摯に対応してくれている。 だからこそ、彼女は自分の悋気など全く理解していない。 
依頼したのは確かに自分だが、賀祥が女性に、ましてや妃に触れさせることを許容するとは思ってもいなかった。 奴の女性恐怖症は国境警備隊でも有名な話し。 四阿では陛下の前だというのに無愛想な物言いをし、急ぎ退いたほどだ。 陛下にとってこの展開は想定外。 

「・・・・うん。 夕鈴は確かに頑張っているよね。 だけど」
「お見合いは絶対なのでしょう? 賀祥様はお好きな方がいるのに御辛いですよね。 高い御身分であるがゆえに思うよう、にならない、と・・・・・・」

急に夕鈴の目の前が真っ白になった。 胸に突かれたような痛みが走り、言葉が宙を彷徨う。
手の感覚が急に無くなったような気がして視線を落とすと、手は確かにある。 指先が痺れたように震えているが、確かに存在している。

「・・・・・夕鈴? どうしたの」

白い幕が下りたように陛下の姿が霞んで見え出し、頭の奥を何かに掻き回されながら嘲笑されているような不快感に襲われる。  

「夕鈴、少し横になろうか。 ・・・・大丈夫か?」

首の後ろを大きな手で鷲掴みされ泥の中へ頭から押し込まれているような胸苦しさに、手を伸ばした。 指先に何かが触れ、わたしは急いでそれを掴まえた。 掴まえたその感触に何故か判らないが涙が溢れてくる。 必死に口を開けるが空気を吸い込めているのだろうかすら判らないでいると、強く身体が束縛された。
胸が苦しいのに、強く束縛されたその暖かさに身体から力が抜け、痛みも苦しさもゆっくりと治まるのを感じる。 頭の奥に残る鈍い痛みはそのままに、わたしは全ての力を抜いて身を預けた。

「苦しくはないか? 貧血かな。 ・・・・・少し口を開けて」

咥内に流れ込むそれを嚥下すると、急に視界が開けて来た。 瞬きを繰り返して顔を上げると眉根を寄せた陛下の顔が至近距離に見え、一気に目が覚める。

「えっ、あれ? ・・・・あれ?」
「急に胸を押えてしゃがみ込もうとするから、驚いた。 吐き気はないか、痛みは?」
「い、いえ。 だいじょうぶ、です。 白い・・・・・ いえ、大丈夫です」

頭重感は残るが、痛みは随分薄れている。 急に襲われた感覚に身を震わせたが、身体を包み込む束縛に深く安堵出来、わたしは息を吐いた。 目を閉じると飲み込まれそうな闇が広がったが、それを振り切るように瞳を開く。 

「数日前に頭痛があったのですが、それと同じようです。 風邪かも知れませんので早めに薬湯を頂きますね。 でも咽喉の痛みも咳もないので大丈夫です」
「でも指先がこんなに冷たくて、震えている。 明日はゆっくり休んでいて」
「いいえ! 大丈夫です。 時間がないとのことですし、もう大丈夫です」

何だったのだろう。 一瞬の虚脱感と頭痛、胸の痛さはもどかしそうに消えていったが、漠然とした不安感だけが残る。 手の痺れも消失し、わたしは笑顔を浮かべて陛下を見上げた。 身体の突然の不調に驚きながらも、胸の奥深いところでは小さな箱が蓋を開けろとカタカタ振動している。 今はその箱に布を被せて見ないように心を閉じた。

「そういえば周宰相から 『嵐が来る』 から頑張れと予言を頂きました。 災いに振り回されぬようにって。 視察の際、陛下にはお変わりありませんでしたか?」
「・・・・・あいつの戯言は気にせずともいい。 悪質な隠し芸だと思っておけばいいから」
「嵐が賀祥様とは思いませんが、緊張して何事にも取り組むことは必要でしょう。 宰相様の言葉って奥が深いですから、まずは目の前のことから地道に取り組むべきだと思うのです」

拳を振り上げる夕鈴はすっかり体調が戻ったようで、自分の悋気を伝えることも出来なくなった陛下は降参とばかりにゆっくりと妃の身体を解放した。 「早く眠るように」 と伝えて、退室した陛下を見送り、夕鈴は寝台へと横たわる。 もやもやした胸の裡を隠しながら目を閉じると暗闇が広がり、今度はその闇に身を任せるように、そのまま意識を投げ出した。 



闇の中、誰かが近付いて来る。
近付くたびに周囲には白い霧が立ち込め始め、やはり今日もその人の顔がわからない。
差し出された手を強く握るが今回も手から力が抜け、まるでそれがわたしの願いだというような言葉を最後に、真白い霧の中、ひとり置き去りにされてしまう。

わたしの願いは叶わない。 
最後の瞬間まであの人の役に立ちたいと、力になりたいと努力することさえ・・・・・・・・。




「・・・・・き様、お妃様? だ、大丈夫ですか?」

逼迫した声に意識を取り戻すと、いつの間にか身体が前のめりになっていた。 
侍官姿の浩大が四阿に身体を半分入れ掛け、留まっているのが判り、卓に顔が着きそうだったわたしは何かに引っ張られている感じに違和感を感じて横を向いて驚いた。 妃衣装の両肩口を必死に摘みながら、逃げ腰で思い切り腕を伸ばしている賀祥さんの姿に脱力しそうになる。

「わあ! ご、ごめんなさい。 賀祥様、手を離しても、もう大丈夫ですから」
「具合が悪いようであれば、きょ、今日はもう止めにしても・・・・」

それは貴方の方でしょうと苦笑が浮かぶ。 
妃衣装のわたしが傍にいるせいで賀祥さんの額にはこの時期にしては何故と思うほどの汗が滲んでいるのが判り、懐から手布を取り出すと怯えるように身体を強張らせるのが伝わる。

「本当にごめんない。 なんで急に眠くなったのかしら。 夕べ夢見が悪かったからそのせいかな? あ、でも試しには問題ありませんから。 時間がありませんのでしょう?」

賀祥さんの額の汗を拭き取りながら伝えると、視線を彷徨わせながらも安堵の表情が窺えた。
優しい人だ。 しかし心を鬼にして授業を再開する。

「では、今日は賀祥様がわたしの手に触れて下さい。 あ、浩大。 陛下に余計な報告はしないでよね。 昨夜は・・・・・・・・・・ いえ、何でもありません」

卓上に手を置き賀祥さんに触るよう指示を出しながら、わたしは気を引き締めた。 賀祥さんに小犬陛下のことを知られる訳にはいかない。 口元をきゅっと結んで余計なことを言わないように肝に銘じて浩大を睨ねつけた。 薄く嗤った浩大に腹が立つが、視線を賀祥さんに戻す。 

「さ、どうぞ。 手首からでも良いですので、御自身から触れるようお努め下さい」
「・・・・ふ、触れる。 自分から・・・・ む」
「無理ではありませんよね。 お好きな方にもいずれ触れたいとお思いでしょう?」
「・・・・・・は、はい。 出来ることなら・・・・・」
「出来ます! 誰しも皆、女性であるお母さんから産まれて来たんですから、触れることは基本、出来るはずです! 為せばなります!」

至極当たり前の、現状に役に立つのか判らないことを強く言い切って、さあ!と促す。 
時間がないのだから半強制的にもなる。 その気迫に押されてか賀祥は震える手を伸ばし、もう少しで夕鈴の手に触れる寸前で止めた。

「・・・・あ、あの。 陛下唯一のお妃様のお手に触れることはやはり無理があると・・・・」
「はい」

夕鈴が宙に彷徨っている手を押さえ込むように上から下から挟み込む。 「ひぁっ!」 の可愛らしい叫び声に浩大が盛大に吹き出すが、構わずにわたしはその手をぐりぐりと擦った。 
蒼褪めた賀祥さんが慌てて手を引こうとするから 「為せばなる!」 と叱り付ける。

「わたしの顔を見る! じっと、ちゃんと、しっかりと見る!」
「お妃ちゃぁ~ん、もっと優しくしてやんなよ。 あと声を抑えてね」

浩大の声に急ぎ声を潜めて 「頑張って下さい」 と告げながら賀祥さんの顔を注視した。 彷徨う賀祥さんの視線をわたしは顔を動かしながら追い捉え、じっと見つめる。 汗が滝のように流れ戦慄く唇からは意味のない言葉が漏れ出てくるが、心を鬼にして見つめ続けていると、急に賀祥さんが背筋を伸ばしてわたしの手を振り払った。

「へ、陛下!」
「え? まあ、陛下。 御休憩でしょうか」

後宮立ち入り禁止区域近くの人気のない四阿まで足を運ぶなんて、李順さんから逃げて来たのだろうと眉間に皺を寄せたままの陛下に苦笑した。 立ち上がり茶器を広げてお茶の用意を始めると、腕を引かれて抱え上げられ、言葉を発する暇もなく四阿から移動させられた。

賀祥が見たことのある風景に目を瞠っていると、浩大が四阿の椅子に腰掛け、卓上の菓子に手を伸ばし 「暫くは戻って来ないだろうな」 と勝手に食べ始める。

「陛下の御不興を買ってしまったのだろうか。 やはりお妃様の御手を煩わせることは・・・・」
「あー、大丈夫。 やる気のお妃ちゃんを止めることは陛下でも難しいかもね。 戻って来るまで少し休憩でも取って休んでいたら? またべったべたに触られるからさ~」
「べたべたに・・・・・。 これで・・・・ 本当に女性への苦手意識は消えるのだろうか」

がっかりと肩を落とす国内有数の剣豪でもある副隊長を見て、浩大は鼻で笑う。

「もうお妃ちゃんとは随分話せているじゃんか。 妃衣装のお妃ちゃんに手を握られても嘔気も無いし、それって進歩じゃないのか? ちっとは前向きに考えようぜ」
「・・・・・・・・言われてみれば」

手を広げると汗は掻いているが震えは既に止まっている。 
いつもなら手を触れられただけで身体が勝手に逃げ出し、胃液が込み上げ、震えを止められずに酷い眩暈に苦しんでいるはず。 これだけで済んでいるのは初めてかも知れない。 少しは進歩があったのかと実感がジワリと湧いてきて、浩大を見ると薄く嗤われた。
見合いでは手を触れ合うことなどないだろう。 見合いに時間を掛けている間に兄の体調が少しでも良くなるよう、更に効果のある薬を探し出し治るのだと信じて頑張ろう。 
お妃様の言われたとおり、為せばなるのだと固く信じて。

春先の、まだ少し冷たい風が賀祥の汗ばんだ額に心地良く感じた。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:05 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
陛下ったら自分でふっておいて、かなり動揺してますね夕鈴も暴走しそうな勢いですしね気になるのは夕鈴の気持ちのバランスでしょうか?なにやら異変が…
続きをドキドキしながら待ちます・
2013-04-04 木 06:41:19 | URL | ともぞう [編集]
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2013-04-04 木 10:24:57 | | [編集]
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2013-04-04 木 12:22:41 | | [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。そうそう自爆する陛下。一度書いてみたかった。翻弄される陛下。ちょい楽しいです。痛いことなし、牢屋もなしで話が進んでいるので、楽ですしね。えへへ。 
2013-04-04 木 19:34:31 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。賀祥さんに好きな人がいてちょっと残念・・・・・・。でなきゃ陛下が許可する訳がありませんがな、奥さん。(爆) ビスカス様、緊張の余り変な成分を出すって、それは何? 涙が出るほどにや付いてしましましたー!ありがとー! あ、バック直りました。同色のミシン糸を探していたんだって。助かっちゃった。気に入っているバックだけにね~。
2013-04-04 木 19:44:49 | URL | あお [編集]
Re: 少し進歩!!
ダブルS様、コメありがとう御座います。 夢と予言はじんわり滲んで浸透してくれたらいいです。そんなに重要ではない・・・? あれ? まあ、それは置いておいて。(笑) ハッピーエンドになれるように頑張ります。
2013-04-04 木 19:53:36 | URL | あお [編集]
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2013-04-05 金 07:44:48 | | [編集]
Re: まさかの!?
makimacura様、コメありがとう御座います。口移し・・・・ に、した方が楽しかったかな。でも、うん、まだ無理。 コミックではまだですから。 我慢しましょう(笑) ちょいのんびりモードで進みます。
2013-04-05 金 20:59:24 | URL | あお [編集]
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