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思案の外  6
日曜日に出掛ける予定だったのに恐ろしいほどの悪天候により駄目になるだろうと凹んでいる娘。 月曜日は入学式だというのに、余裕じゃのう。 

では、どうぞ。















「陛下、ど、どうされたのですか? 政務は? まさか本当に李順さんに追われているのですか? 一体何をされたんですか? どうしてわたしを連れ出したんですか!?」
「ゆーりんは・・・・・ 夕鈴は僕のお嫁さんだよね。 そうだよね?」

庭園の奥へと誘われ・・・・ というか、抱きかかえれたまま問われた夕鈴は眉を顰めて頷いた。

「・・・・そうです。 臨時花嫁です。 下っ端妃です。 唯一の妃です」
「うん、そうだよね。 なのに何で賀祥の手を握っているの? 明らかにすりすりしていたよね。 
・・・・・そこまで我が妃である君がしなくてもいいのではないか? 夕鈴」

何で後半だけ急に狼陛下ぁ? コレでは昨日の晩と同じじゃないのと夕鈴は頭を抱えた。
狼陛下は笑顔もない顔で問い詰めるように聞いてくるから、威圧されながらも眉間に皺を寄せ、夕鈴は許可を出したのは誰だと文句を言おうとして______。
 
口を開いた途端眩暈にも似た眠気に襲われ身体から力が抜けていく。 
抱えられていたため倒れることはないが、急に脱力した夕鈴に驚いた陛下は横抱きに変えると、その場に片膝をつき顔を覗き込んだ。

「昨日みたいに胸が苦しい? 顔色が少し悪いようだが」
「・・・・ん・・・・ だ、大丈夫、です。 急に・・・・ ちょっと眩暈がしただけ、です。 なんだろう、寝不足なのかも知れません。 でも大丈夫、一瞬だけでしたから」
「何か味がおかしいものを口にした記憶はないか? またはいつもと違った品を受けたりはしていないか? 毒見は全て行ってはいる筈だが」

心配げな視線を受け、夕鈴は少し記憶を探り首を横に振った。

「ない、です。 大丈夫、何ともありません。 本当にちょっとふら付いただけ。 でも陛下に抱えられていたから倒れることも無く助かりました。  ・・・・・時間がないので、賀祥様のお試しを続けさせて頂きます。 今日は早めに終わらせますから、駄目って言わないで下さいね」

縋るような視線を向けると片眉を上げた陛下の顔が見えて、夕鈴は駄目押しとばかりにお願いしますと両手を合わせる。 暫くの間自分を見下ろす陛下の顔に心臓が飛び出さんばかりに跳ね続けたが、結果は夕鈴の粘り勝ちとなり、小さな嘆息と共にぎゅっと抱き締められた。

「早めに終わらせると言ったな。 絶対だ・・・・・」
「はい。 お約束します」
「あと、夕鈴から奴に触れるのは禁止だ」
「それでは、賀祥様に触れて貰いますね」
「・・・・・・・・・・・それも駄目」

夕鈴は陛下の胸を押して、むっとした表情を見せる。 
次の段階に進むために触れることは必須だと思っている夕鈴は口を尖らせて陛下を見つめた。 
しかし互いに黙ったままでは時間ばかりが過ぎると判ったため、表情を落とした陛下に対抗するにはコレしかないだろうと夕鈴は羞恥を押さえ込んでプロ妃を演じてみることにした。

「陛下、わたしの心は陛下だけで御座います。 い、愛しい陛下の臣下のために微力ながらでも力になりたいと思うわたしの気持ちを汲んで頂きとう御座います」
「だが妃から奴に触れるなど許可は出来ない。 ましてや他の男が妃の肌に触れるなぞ」
「わたしが行うことは全て陛下の為で御座います。 他の人など眼中にもありませんわ。 どうぞわたしの行うことを大きな御心で見守って下さいませ」

恥ずかしさで潤んだ瞳を瞬かせながら陛下を見ると、面白くなさそうに息を吐くのが判る。

「・・・・・・・まったく、君は時に悪女のように私を翻弄する」

プロ妃として上手い口上が出来たと思ったのに、悪女と言われて夕鈴は唇を尖らせた。 
ではこれではどうだと陛下の首に腕を回して強く抱き付いた夕鈴は、陛下の耳元に囁くようにお願いを繰り返す。 半分焼けくそ、半分本気の渾身の演技。

「陛下。 ・・・・・わたしは陛下の役に立ちたいのです」

その台詞に対し、陛下からの・・・・・・・・ 返答がない。 
狼陛下にはバイト妃の囁きなんて届かないかと腕から力を抜いた瞬間、いきなり抱きかかえられたまま立ち上がる動きに驚いた。 横抱きの状態なので陛下の顔が良く見えるが、目の前の怜悧な表情は何を考えているのか判らない。 
このまま後宮に連れて行かれ出るなと言われるかも知れないと、夕鈴が抗う前に四阿に戻っていることがわかり、陛下に振り返ると憮然とした表情で 「君には敵わない」 と呟かれた。
その言葉に夕鈴は思わず陛下を見つめ、自分の気持ちが伝わったのだと心から喜んでいると、賀祥と浩大の前だというのに・・・・・・ 前だというのに・・・・・・・ いうのにぃ・・・・・!

____ 突然、頬をぺろりと舐められた。 

「これから政務に取り掛かる。 その前に愛しい妃から英気を養わせて貰うことにした。 君はさっきそう言った筈だ。 私の役に立ちたいと」

笑顔のまま固まった夕鈴がギッギッと錆びた扉をこじ開けるような動きで僕に振り向いた。 
その顔も可愛いと額に口づけを落とすと小さく震えが伝わり、これ以上は駄目だろうなと自重して君を四阿の椅子へと下ろす。 
浩大が意地の悪そうな笑みを浮かべているが、そんなのは気にはならない。 

花恵宴でも君は僕の気持ちを知らないから、方淵や水月の間を取り持つために連日二人の傍にいた。 僕が文句を言うと何を言っているんだと逆に怒り出し、妃としての立場よりも宴を中心に日々頑張ってくれていた。 それが面白くなかったことを思い出し、さらに意地悪したくなる。 
髪を撫でた手を頬に添えて、「約束は守るように」 と甘く耳元に囁くと、君は真っ赤な顔で何度も大きく頷いてくれた。 それに満足した僕は賀祥を一瞥して、言葉を残さずに王宮へと向かうことにしたが、妙にやる気の顔をした奴が少し気になり、足を止めて浩大を呼び付ける。

「昨日の夜、夕鈴の体調がおかしかった。 短い時間で切り上げるようには伝えてあるが、お前も気を付けて見ているように。 ・・・・・賀祥を王宮に呼んだことで少し動きもあるからな」
「お妃ちゃん、さっきも少し寝掛けていたぜ。 寝不足だといっていたけど・・・・。 ま、了解。 早々に切り上げるようにするよ。 動きの件は了承済みっす」

未だ呆けた夕鈴の横で賀祥が拳を握り締めて何やら唱えているのを見て、本当に早く切り上げてくれと願いながら王宮へと足を向けた。



陛下が去った姿を見送った夕鈴は一度額を押えながら息を整え、拳を握り締めてやる気を見せている賀祥に視線を移す。 触れ合っても大丈夫になれば、顔を見て話しをすることも可能だろう。 そこまでいけば見合いでも逃げ出すこともないだろうし、彼の父も安堵するはずだ。
賀祥が町で受け取って来た薬が彼の兄様に効くことを願って、夕鈴は彼に向き直った。

「賀祥様、再開します。 わたしの顔を見ながら手に触れて下さい。 まずこれを乗り越えて次の段階へ進みたいと思います。 焦ることはないでしょうが、頑張りましょう!」
「はぃっ! でぇ、では・・・・・」

大きな身体を一度大きく震わせて、卓上に置いたわたしの手に・・・・ いや手首に触れた。 
袖の上からだが、自ら手を伸ばして触れたことは進歩だろうと夕鈴は笑みを零す。 賀祥はその笑みに涙を滲ませながら頷き、二人は嬉しさに見つめあった。
浩大の眇めた視線が二人の背を撫でるが、勿論気付くはずもない。

「そのまま手の甲へとずらしていきましょうか。 ゆっくりでいいですから」
「はぁ・・・ は、は、肌に触れて、しまいますが・・・・・」

情けない声に鋭く厳しい視線を向けると、賀祥は恐る恐る手を動かし手の甲に触れてくれた。 
しばらくそのままでいると、小さく息を呑む音がして掠れた声が聞こえてくる。

「手が・・・・ 触れていますが、震えてはいません」
「そうですね。 賀祥様、素晴らしいです! わたしの顔を見られますか?」

覗き込むように訊ねると、静かにわたしを見つめる目に驚く。 柔らかい笑みを浮かべた彼は強張りも見られず、薄っすらと額に汗を滲ませてはいるが、一歩前進したことを表していた。 
では、と夕鈴は身体をずらして賀祥に近付くと、少し身体を震わせたがどうにか耐え切ったようで、長く息を漏らしながらも逃げる素振りは見られない。
ほっとした夕鈴が肩から力を抜くと、いきなり卓上の手が握られた。

「へ?」

目を瞠る暇も無く握られた手が椅子へと移動したかと思ったら、身体ごと押さえ付けるように賀祥が覆い被さって来た。 そこまでは幾らなんでも教えることは出来ません! と思った瞬間、浩大の緊張した声が耳に届く。

「そのまま動くなよっと!」
「浩大、乾の方角に一人!」

椅子から身体を押し下げられると同時に地面に伏せるように指示され、そこで刺客が来たのだと判った。 こんな後宮奥の四阿にまで?と夕鈴が身を竦ませていると、賀祥の手が背を擦りながら声を掛けてきた。

「お妃様、大丈夫です。 偵察だったようで、今浩大が追っています。 さ、起きて下さいませ。 ああ・・・・ お衣装が汚れてしまい、大変申し訳御座いません」

周囲を警戒しながら私の手を取ると力強く立たせてくれた後、裾の汚れを手で払う賀祥を見て、夕鈴は感動を覚えていた。 背を正した賀祥の手を取ると、頬を紅潮させた夕鈴は興奮の余り、ぶんぶんと振り回してしまう。

「賀祥様、手に触れているじゃありませんか! 普通に、極自然にっ! 出来るんです。 女性が苦手なんて気の持ちようなんです! 大丈夫ですよ、見合いくらい問題ありません! お好きな方にも触れることが出来ますよ!」
「・・・・・あ、ほ・・・ んとうだ。 手が・・・・ 触れている」

しかしそれは妃が危ないと思ったからだろう。 武官として身体が自然に動いただけ。
だが目の前で心から嬉しそうに自分の手を握り締める妃を見て、確かに自分の顔が緩むのを感じている。 危ない目に遭ったばかりだというのに、自身のことよりも一介の武官である自分に気を配って下さる妃に驚きながら、賀祥は深く尊敬の念を深めた。 
強張りも恐怖も不快感も無く、自然に妃の手を握り締める手に力が入る。

「ちょ、ちょっと、賀祥様、いっ、痛いです。 手に力入れ過ぎですって!」
「・・・っ! もっ、申し訳御座いません!」

顔を赤くした賀祥が慌てて手を離してくれたが、痛みよりもやはり嬉しさが大きいと夕鈴は離れた手を握り直す。

「あと二日間、頑張ってどんどん慣れていきましょう!」
「・・・・・あ、ありがとう御座います!」

浩大が戻って来ると、四阿では狼陛下唯一の妃(バイト)と、辺境の守り神とも喩えられるほどの剣豪が涙を浮かべながら打ち震えているのが見え、隠密は肩を震わせて思わず呟いた。


「こーんなお妃ちゃん相手に焼きもちなんて、へーかも面白いね~・・・・・」








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:26:26 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
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2013-04-06 土 00:35:08 | | [編集]
Re: どうすればいいんだ!?(笑)
ダブルS様、コメありがとう御座います。 焼きもち妬きの陛下って可愛いですよね。今日、コミック買って来て悶え死にました。今回は本誌でも判っている筈なのに、じたばたしながら読み進め、娘から白い目で見られてしまいましたよ。 まあ、いつものことですが。 翻弄される陛下って大好物です。
2013-04-06 土 00:56:30 | URL | あお [編集]
陛下まんまと翻弄されてますね(*≧m≦*)もっと振り回されればいい・たまには陛下がじたばたすればいいんだっ

浩大ニヤニヤしっぱなしですね私もかっ・

それにしても、夕鈴どうしたんでしょう?原因がはっきりするといいですが・
2013-04-06 土 06:17:12 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。 翻弄される陛下に、次回は夕鈴が翻弄されます。次は明るさが少ないので申し訳ないのですが、引き続きご覧頂けたら嬉しいです。 浩大大好きなので、出すのが楽しいです!
2013-04-06 土 22:06:31 | URL | あお [編集]
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