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思案の外  7
最近は新しいドラマや関連した再放送があって、嬉々として録画するのだけど見る暇がない。
溜まっていく一方なのに、つい映画も買っちゃうのは、もう性分だな。
本も溜まっていく一方で今にも崩れそう出し。 8巻 超萌え萌えで楽しかったです!



では、どうぞ。















「へーか、後宮立ち入り禁止区域側まで偵察に入られるって、あれだろ?」

執務室に潜り込んで来た隠密が楽しそうに問い掛けて来た。 書簡の山から顔を上げて、面倒だとばかりに眉を顰めると、隠密はやっぱりと呟く。

「賀祥が王都に来たのは奴の家庭事情だが、それに付随して多少問題があるのも確かだ」
「国境の、あの貴族さんだろ? 密輸してるってマジだったのかー!」

密輸なんかで儲けようとは考えが浅いね~と、嘯いても仕方がない。 利己主義な輩をこれから如何するかが問題だ。 それに関する調査は行っているが、隠すのが上手い輩な為、少し手こずっていると報告が来ている。 偵察にやって来た間諜は裏を調べている最中に、丁度良いタイミングで来たものだと、浩大は嗤いながら持参の酒を一口含む。 
遠方まで足を運んでいる仲間の情報が集まれば、捕らえた間諜と共に差し出して叩くことは可能となるだろう。 問題はその貴族の娘が賀祥の見合い相手だということ。
警備隊舎に詰めている賀祥自身は知らないことだが、父親も密かに捜査対象になっている。

「まあ、あいつが望んで見合いをするとは思ってもないが、関係があるかどうか調べなければなるまい。 兄の為に薬を取りに王都に来ると聞いて、丁度いい機会だと思ったんだが・・・・・。 
夕鈴まで巻き込まれそうで、それは厭だな」

それもあるから李順が許可を出しているんだろうとは、今言えない。 
機嫌が更に悪くなるのが判っている隠密はただ黙って酒を呑むだけだ。 新たに提出された書類を持ち上げた陛下は、それをしばらく眺めていたが口端を持ち上げると薄く嗤い、浩大に差し出した。 受け取った書類に目を通した浩大は 「あららら」 と呟いて後頭部を指で掻いた後、困った顔で陛下に視線を投げる。 

「そっちは賀大人次第だが、面倒ごとになる前に少し手を貸すか。 他人の家庭事情に、いつまでも夕鈴を束縛されては面白くないからな」
「まあ、見てる分には超面白いっすよ。 なんかやる気満々の二人でね、傍から見てても何やってるんだって突込みを入れたいくらいに楽しいっす。 それに効果も現れているしね」

冷たい視線を受けて、早速四阿報告を始めると徐に立ち上がる陛下に笑いが漏れる。 
残念ながら執務室から出る前に大量の書簡を携えた側近が眼鏡を輝かせて退路を立つが、俄然やる気になった陛下を止めることは出来ないだろう。 最も陛下のやる気が脱走に重視され、少しばかり側近が目を離した隙にまんまと逃げられたのは言うまでもない。






「我が妃よ」

陛下突然の訪問に部屋にいた全ての人間が驚いたが、大股で妃に近付くと妖艶な笑みで頬を撫で上げ、片手を上げるのを見た侍女は、直ぐに微笑んで退室して行く。 
驚きが顔に貼り付いたままなのは夕鈴だけで、自分がいつの間にか陛下の膝上にいると気付いた時には、お腹に手が回り身動きが取れない状態となっていた。

「お渡りになるとは伺っていませんでしたので驚きました。 もしかして四阿に来た刺客のことでしょうか。 あんな奥の四阿にまで来るなんて・・・・・。 また妃狙いですかね」
「刺客じゃなくて偵察に来た間諜だったようだよ。 まあ、そんな奴は結構出入りしているし、対策も取れているから安心して。 それより・・・・・・・・」

声色が変わったのが判り、夕鈴は背筋に厭なざわつきを覚える。 そろりと背後を振り返ると肩口に陛下の不満顔が迫っていて、思わず叫びそうになった。

「そ、それより何ですか?」
「賀祥に触らせちゃ駄目って言ったのに、手を握り合って見つめ合っていたんだって?」
「・・・・・その報告は浩大ですね。 あ、でも進歩されたんですよ! 手の震えも嘔気もされずに、ちゃんと妃衣装のわたしの顔を見る時間が増えましたもの! 明日は少し衣装を変えて、再度挑戦してみます。 お見合いさえ終えたら、賀祥様もお好きな方と・・・・・・・。 あれ?」

話している途中で夕鈴は首を傾げてしまう。 もの凄い違和感が胸を過ぎり、もう一度頭の中で自分が紡いだ台詞を繰り返してみた。

「賀祥様が見合いをするのは絶対・・・・・。 このまま兄様御夫婦にお子様が出来なければ、賀祥様の子供が跡継ぎとして取り上げられてしまう。 ・・・・って事は結婚するのは決定? 
あれ? 見合いさえしたら好きな人と一緒に居られるって・・・・・。 え、それって・・・・・」
「・・・・・まあ、側室でも妾でも傍に置けるってことなんじゃないのかな。 賀祥も豪商貴族の一員だから、それは了承しているのだろう。 あいつにしては驚きだったけどな」

あんなに汗を掻き、身体を震わせて頑張っているのに、本当に好きな女性を側室に?
賀祥さんはそれでもいいの? そういうものだと思っているの? 
いや・・・・・ 貴族は家名や血筋を絶やさぬことを第一に考えているというのは何度も耳した。
そういうものだと、それが貴族なのだと耳にしていたじゃないか。 紅珠だって最初は自分の意思ではなく、大臣である親に薦められて狼陛下の後宮へと入りたがっていた。
賀祥さんがまさかと自分が思っているだけで、彼自身は至極当たり前に捉えているのかも知れない。 だから陛下もそう言うんだ。 それは了承しているのだろうと。

急に指先が痺れたように感覚が無くなる。 眩暈にも似た喪失感が襲って来たが、だけど今はそれどころじゃないと無理やり口を開いた。

「・・・・賀祥様が見合い後に婚姻を結ぶのは、決まりですか」
「子を為すためだけに、または新たに貴族同士の繋がりを持つためかも知れないけどね。 まあよくある話しだろう。 武官となり、家を離れた筈なのに難儀なことだとは思うが」

ひとつひとつの言葉が夕鈴の胸に突き刺さるように感じるが、立場や身分の違いによって感じ方は違うのだろう。 それが普通なのだと、この世界では当たり前なのだと突きつけられているようで、鼻の奥が熱く感じ出した。 自分には解からない社会、知りたくもない世界を教えられ、立場の違いをまざまざと見せ付けられたようで胸までが苦しくなる。 

「だからあの人も、そう言うのね・・・・・・」

ぽつんと零した言葉は幸いにも陛下に届かなかったようで、何か言ったかと訊ねられた。 
小さく首を振った途端に涙が零れそうになり、強く目を瞑ると深い闇に飲み込まれそうになる。
 
血筋を絶やさぬために、または内乱などの抗争に巻き込まれても幾人かは残れるように、高貴な立場になればなるほど、子は多く求められる。 勿論強固な後ろ盾を持った奥方を幾人娶るかでも各々の立場は変わり、より強固な後ろ盾を持った妃を娶るよう求められている陛下には、周囲の希望通りの正妃が近い将来、来ることになるだろう。
沢山の妃を侍らせ、沢山の御子を為す。 それは国王陛下の責務でもある。
だから後宮があるのだ。

急に何を考えるのだと吐息が零れる。 臨時花嫁は王宮内の磐石な体勢が整い、財政難が払拭されるまでの期間限定のバイトであり、善からぬ考えをもつ輩に対しての囮であることに今更、何を悩む必要があるのだろう。
・・・・・悩んではいない。 解かりきったことだから、悩む必要もない。 
短期が長期になり、知るべきではなかったことを知る機会が多くなっただけだ。

「夕鈴、また具合が悪くなったのかな? 少し・・・・ 震えている」
「・・・・早めに横になりますね。 陛下はまだお仕事ですか?」

慣れて来た妃演技で振り向き、自分の立場と境界線を越えてはいけないという決まり事を心に刻みながら、わたしは苦笑を浮かべて陛下の膝上から静かに下りた。 

「李順さんがここまで足を運ぶ前にお仕事に戻った方がいいですよ。 またわたしまで怒られてしまいます。 ・・・・・あと二日、賀祥様が上手く御見合い出来るように、頑張りますね」
「夕鈴は頑張らなくてもいいよ。 僕のお嫁さんに触り過ぎだ」

小犬でつまらなさそうに口を尖らせる陛下を見て、頭の奥に鈍い痛みが奔る。 
素の陛下からその言葉を投げ掛けて貰える本当の妃に、今は姿形もない妃に、泣きたくなるほどの羨ましさを感じてしまう。 胸から咽喉元へ這い上がりそうな胸苦しさを押し込めて、夕鈴は肩を竦ませながら、いつもの台詞を溜息と共に零した。

「陛下、わたしはバイトですよ。 それに李順さんが来る前に早く戻った方がいいです!」

声は震えなかっただろうか。 ちゃんと演技が出来ていただろうか。
寝所へと足を向けたわたしに 「ゆっくり休んでね」 と柔らかい声を掛ける優しい人。 
本人が望むと望まぬとに関わらず、陛下の許にはいずれ沢山の妃がやってくるだろう。 
正妃と呼ばれる女性も、美しい側室たちも、陛下の御世のためにと後宮に集められるはずだ。 その妃の部屋へと通われることになる陛下。 沢山の御子を、後ろ盾を持つために、それも仕事だと割り切るのだろうか。 それとも真の心を通わせる御方が出来るのだろうか。


夕鈴は緩く頭を振った。 きっとバイトにも優しい陛下なら、妃にはもっと優しくされるだろうことは容易にわかる。 そして、それはわたしが考えることでも想像することでもない。
それこそ立ち入ってはいけない境界線だ。
ただ、陛下を好きでいることは、心の中で密かに想うことは咎められはしないだろう。 
心の中は自由だ。 自由だからこそ窮屈で、勝手に悩み、悔やみ、そして小さな喜びをいつまでも捨てきれずに涙するのだ。 感情の切り替えが下手な自分だと判っている。 だからこそ必死に演技を続けて隠し通すしかない。 

この気持ちだけは気付かれないように、心の奥底に沈めて。






「今だけでいいから・・・・・・・」

差し出された手に、わたしは初めて躊躇する。 それでもその手に伸びていく腕を止めることは出来ない。 そして触れた瞬間、指先を絡め取ろうとする動きに涙が溢れる。 
安寧を得たかのような穏やかな気持ちと、今日も離れるのだろうと悲しくなる思いが交差し、それすらも甘く苛むように胸を抉り続け、必死に指先が離れないようにと力を込めた。

「・・・・・何も考えずに、今だけ」

繰り返される白霧の中の睦言は、絡めた指が離れるまでわたしの胸を焦がし続け、離れてからは尚一層焦がそうとするだろう。 思うようにならない足を力強く進め、今日こそは離れないようにと手に力を入れる。 見えない霧の先を捉えようと目を凝らすが、溢れた涙は零れ落ちることなくわたしの視界をぼやけさせ、不明瞭な世界を更に不透明にする。 
見えない誰かの手を必死に掴みながら、そして今日も熱は離れていくのだ。
それは決定事項だと、この世の理だと教えるかように。

「それは君の願いか?」

繰り返されるその問いに、わたしは何か答えることが出来るのだろうか。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:07:07 | トラックバック(0) | コメント(4)
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2013-04-07 日 17:52:36 | | [編集]
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2013-04-08 月 00:28:47 | | [編集]
Re: まさかの…(^_^;)
ダブルS様、コメありがとう御座います。 特別手当の出しすぎに注意ですよね、確かに! 本当にあとどのくらい残っているのでしょうかね。 そしてそれを陛下が知っているのか、どうかですよね。 身分差らぶ、私も好きなので、じれじれしながら萌えを突き進みます。
2013-04-08 月 10:29:20 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。そうですね、今回は夕鈴のどろーんとしたウジウジ感満載となり、はっきりしろ陛下!と突っ込みを入れたくなります。 新刊の陛下、いいですよね。一皮向けたというか、一歩踏み出した感があって、そのまま突き進めー!って感じですもの! やっぱりいいですわ~。
2013-04-08 月 10:33:15 | URL | あお [編集]
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